犬が食卓で人の食べ物をねだる|おねだりが続く理由と、マットで待つしつけ・一時的な悪化の乗り切り方
対象の目安: 全ライフステージ


家族で食卓を囲んでいると、足もとからじっと見上げる視線を感じる。無視していると「クゥーン」と鼻を鳴らし、やがて「ワン!」とひと声。膝を前足でかいてきたり、椅子に手をかけてテーブルの上をのぞき込もうとしたりする子もいます。あまりに一生懸命なので、ついひと口あげてしまった——という経験は、犬と暮らす多くの人に覚えがあるのではないでしょうか。
食卓でのおねだりは、犬がわがままだから起きるわけではありません。「こうすると食べ物が出てくることがある」と学んだ結果です。学んだ行動なので、学び直してもらうこともできます。ただし、やり方を間違えると、かえっておねだりを強くしてしまうのがこのテーマの難しいところです。
この記事では、おねだりが続く理由を行動学の考え方で整理したうえで、家族のルールのそろえ方、食事中にマットで待つ練習の手順、途中で一時的に悪化する「消去バースト」の乗り切り方、人の食べ物を与えることの健康面のリスク、子どもがいる家庭での注意点を順にまとめます。
犬が食卓でねだるのはなぜ?
食べ物は、犬にとっていちばん強いごほうび
PetMDは、犬にとって食べ物は「primary reinforcer(一次強化子。学習しなくても最初から価値があるごほうび)」であり、食べ物がそこにあるだけで手に入れようとするほど強い力を持つと説明しています。そのうえで、犬は「どこで・どうすれば食べ物が手に入るか」も学ぶため、おねだりの行動ができあがっていくとしています。
英国の保護団体Battersea Dogs & Cats Homeも、おねだりは多くの犬がとても食べ物に意欲的なことから起こる「very common behaviour(とてもよくある行動)」だとしつつ、「this behaviour is also often reinforced by us as owners(この行動は、私たち飼い主によって強化されていることも多い)」と書いています。つまり、おねだりは犬の中だけで完結している問題ではなく、人の側の反応とセットでできあがっている行動です。
「たまにもらえる」が、いちばん強く習慣を育てる
おねだりをやめてもらううえで、いちばん知っておきたいのがこの点です。
米国獣医行動学専門医(DACVB)の資格をもつ獣医師らが執筆に名を連ねるVCA Animal Hospitalsの解説は、犬の要求行動について「demanding behaviors are sometimes effective, so dogs naturally try harder until the reward finally comes(要求行動はときどきうまくいくので、犬はごほうびがようやく来るまで自然とがんばり続ける)」と説明し、続けて「A basic principle of learning is that intermittent reinforcement strengthens behavior(間欠強化、つまりときどきだけ報われることが行動を強めるのは、学習の基本原則である)」と述べています。
MSD(Merck)獣医マニュアルも、飛びついてくる犬を例に、なでるのをやめれば飛びつきはやがて止まるが、「even occasional petting of the dog in response to its jumping will reinforce the pattern(飛びつきに対してときどきでもなでると、そのパターンは強化される)」と書いています。同マニュアルはさらに、もとのごほうびの価値が高いほど、その状態が長く続いていたほど、そして「本当にもうもらえないのか」があいまいなほど、行動は消えにくくなるとしています。
食卓のおねだりに当てはめると、次のような状況です。
- 毎回ではないけれど、ときどき誰かがひと口くれる
- 吠え続けると、最後には根負けした誰かがくれる
- お父さんはくれないけれど、おばあちゃんはくれる
どれも犬にとっては「あきらめずに続ければ、いつかもらえる」という経験になります。「ほんの少しだから」「今日だけ」は、人にとっては例外でも、犬にとっては次への期待を育てるできごとです。Batterseaも「A dog won't understand the meaning of "just this once"(犬は『今回だけ』の意味を理解しない)」とし、代わりに「粘ればいつか自分のものになる」と学んでしまうと注意しています。
叱ることも「反応」になる
「ダメ!」「あっちに行って」と声をかけるのも、実は注意が必要です。AKC(アメリカンケネルクラブ)の記事は、叱ることは犬に「negative attention(否定的な形ではあるが、注目)」を与えるだけだとしています。VCAの解説も、ペットによっては罰そのものを注目の一種として受け取ることがあり、一方で罰は不安や飼い主への恐怖、攻撃行動などの問題につながりうると述べています。
犬の側から見れば、見つめても反応がなかったのに、吠えたら人がこちらを向いて声を出した、という変化そのものが「何かが起きた」手応えになります。
「一次強化子」「間欠強化」「消去」は行動学(学習理論)の用語です。本文の説明は、PetMD、VCA Animal Hospitals(Ellen Lindell獣医師、Debra Horwitz獣医師、Gary Landsberg獣医師ほか)、MSD(Merck)獣医マニュアル(Gary M. Landsberg獣医師)の記述に基づき、食卓の場面への当てはめは編集部の整理です。
空腹・退屈・体の不調が隠れていないかも見ておく
学習によるおねだりが大半だとしても、ほかの理由が重なっていることもあります。いぬのきもちWEB MAGAZINEで獣医師の岡本りさ先生は、犬が空腹のサインを見せるときは、まずフードの量や与え方に問題がないかを確認し、痩せているようなら栄養不足から欲しがっている可能性もあると説明しています。
同じ記事では、食後なのに空腹のようなサインを見せる場合の例として、クッシング症候群(ホルモンの病気)、ステロイドの内服薬による治療中、糖尿病などで多食の傾向が出ることがあり、病気で多食になっている子は多飲多尿も同時に見られる場合が多いと解説されています。病気が原因ではない場合は、人の食べ物がおいしそうで欲しがっていたり、ほかに楽しみがないから食べたいというケースが考えられるとし、アピールのたびに何か与えると要求がエスカレートしたり、余分なカロリーで肥満になったりするとしています。
注意
おねだりの形と、それを育てやすい人の反応
おねだりの「見た目」は犬によって違いますが、どれも「その行動のあとに何が起きたか」で強さが決まっていきます。編集部で、よくある形と、知らずにそれを育ててしまいやすい反応を整理しました。
| おねだりの形 | 育ててしまいやすい人の反応 | 代わりにしたいこと |
|---|---|---|
| じっと見つめる、足もとで待機する | 目が合うと話しかける、ひと口あげる | 視線を合わせず、マットにいるときにごほうびを出す |
| 鼻を鳴らす、「ワン」と吠える | 静かにさせたくて食べ物を渡す、叱って反応する | 吠えには反応せず、静かになった・マットに戻った瞬間を認める |
| 膝や足を前足でかく | 手でどける、なでてなだめる | 立ち上がらずに体を少しそらし、マットに誘導する |
| 椅子や膝に乗る、テーブルに乗ろうとする | 乗ったまま食べ物を与える、抱き上げる | ゲートやクレートで物理的に届かない状態を作ってから練習する |
この表は、PetMD、AKC、Battersea Dogs & Cats Home、VCA Animal Hospitalsの説明をもとに編集部が整理したものです。
ヒント
最初のステップは、家族全員でルールをそろえること
おねだり対策は、1人ががんばってもうまくいきません。Batterseaは、子犬のうちから良い習慣をつけるには、テーブル・ソファ・そのほか人が食べる場所では決して食べ物を与えないことをルールにし、家族全員が同じ方針で取り組むことが大切だとしています。そして「if a dog is given food even once, it becomes far more difficult to discourage the behaviour in the future(一度でも食べ物を与えられると、その後にやめさせるのがずっと難しくなる)」と書いています。
先ほどの「間欠強化」の考え方からすると、家族のうち1人だけが与えている状態は、犬にとっては「ときどきもらえる」状態そのものです。PetMDも、子犬や迎えたばかりの保護犬のおねだり予防として「Don't feed your dog from your eating area.(食事をする場所から犬に食べ物を与えない)」というシンプルなルールを挙げ、キッチンカウンターで立ったままスナックを分けるような場面でも、おねだりは身につくと注意しています。
家族で共有したいルール
- 食卓・ソファ・キッチンカウンターなど、人が食べている場所からは誰も与えない
- 「今日だけ」「ひと口だけ」をしない。祖父母や来客にも事前に伝えておく
- おねだりには、見る・話しかける・叱る・どける、のどれもしない
- 犬用のごほうびは、マットにいるとき・静かにしているときに出す
- 食べ残しは食卓から犬の器に移さない
- 人の食事中の犬の居場所(マット・クレート・ゲートの内側)を決めておく
- ルールを守れなかった日があっても責め合わず、翌日から同じルールに戻る
来客や親戚の集まりは、ルールが崩れやすい場面です。AKCの記事では、トレーナーのMelissa McCue-McGrath氏が、食卓から離れている間に夢中になれる知育トイなどを用意しておくことを勧めており、記事はこの方法が、来客が犬にこっそり食べ残しを与えてトレーニングを台無しにしがちな休日の食事会のような慌ただしいときに特に便利だとしています。動物薬メーカーMerck Animal Health(米国)の飼い主向け記事も、来客や子どもには犬に合ったおやつを渡しておく、食べ物の代わりにボール投げ遊びを提案する、といった工夫を紹介しています。
「反応しない」と「代わりの行動を教える」はセットで
ルールをそろえたら、次はおねだりの行動そのものへの対応です。
おねだりには反応しない
Batterseaは、すでにおねだりが習慣になっている犬には「もうこの行動は通用しない」と示す必要があるとし、食べ終わるまでは犬を見たり話しかけたりしないこと、やめるように言うことも含めて反応しないことを勧めています。ちらっと目をやるだけでも、反応が返ってきたことになり、犬がねばり続けるきっかけになりうると説明しています。VCAの解説も、要求するような行動や興奮した行動には「inattention(注意を向けないこと)」で応じ、落ち着いた・要求しない行動を遊びや愛情・注目で報いるよう述べています。
ただし「無視だけ」で終わらせない
ここで大切なのは、反応しないことだけに頼らないことです。あじな動物病院行動セクションの解説は、強化を差し控える「消去」について、それだけでは情動が不安定になるため、臨床では単独で用いるべきではなく、心身の評価、環境整備、望ましい行動の強化と組み合わせて用いられるとしています。
VCAも、望ましくない行動を取り除くと別の何かに置き換わると指摘し、してほしくない行動を罰するのではなく、してほしい行動を教えて強化することが大切だとしています。MSD(Merck)獣医マニュアルは、望ましくない反応を望ましい反応に置き換える方法を「response substitution(反応の置き換え)」と呼び、飛びつきの代わりに伏せを教える例を挙げています。
食卓の場面でいえば、「おねだりをしない」ではなく「食事のあいだはマットでくつろぐ」「自分のおもちゃで過ごす」を教える、ということです。犬にとって何をすればいいのかがはっきりしているほうが、ずっと学びやすくなります。
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食事中にマットで待つ練習のしかた
AKCの記事でMcGrath氏は、飼い主の家でおねだりをやめたいと相談されたときは、まず犬が代わりに何をすればいいかを分解し、代わりの行動を教えながら、必要なら困る行動が起きない管理もすると話しています。その代わりの行動の一例として挙げられているのが、「Go to Your Spot(自分の場所へ)」といった合図で、テーブルから離れたベッド・クレート・マットなど決まった場所へ行ってもらう方法です。家族と同じ空間にいながら、居心地のいい場所で過ごせるのが利点とされています。
以下は、PetMD、VCA、AKCが紹介している手順をもとに、編集部が家庭で取り組みやすい順に並べ直したものです。
- 1
食事以外の時間にマットを「いい場所」にする
まずは人の食事と関係のない時間に、マットに乗ったらほめておやつをあげる練習をします。AKCの記事でMcGrath氏は、トレーニングは散歩などの運動のあとに行うと、犬が落ち着いていて取り組みやすいとしています。VCAは、落ち着いて休む練習を始める前に、十分な運動・食事・排泄の機会を確保しておくよう勧めています。 - 2
マットの上でくつろぐ時間を少しずつのばす
乗ることができたら、伏せてリラックスしている間に、ときどきおやつを置いていきます。VCAは、はじめはマットを自分のすぐ近くに置き、休んでいる間にごほうびを与え、5〜10分ほどの短い練習から始めることを勧めています。 - 3
人の食事の時間に、テーブルの近くで試す
合図でマットに行けるようになったら、実際の食事中に取り入れます。PetMDは、食事中にマットで伏せてリラックスしている間、ときどきおやつを与え、立ち上がらずに渡せるようマットをテーブルの近くに置くよう説明しています。ここで使うのは、自分の皿の料理ではなく、あらかじめ用意した犬用のごほうびです。AKCでもMcGrath氏が、テーブルの上から与えるとおねだりを促すだけだと注意しています。 - 4
ごほうびの間隔をのばしていく
うまくいく日が続いたら、ごほうびとごほうびの間を少しずつあけます。PetMDは、最終的には最初に伏せたときに1回、食事の終わりに1回ごほうびをもらうだけで満足して過ごせるところを目指すとしています。 - 5
マットを少しずつテーブルから離す
間隔をのばしても落ち着いていられるようになったら、マットの位置を少しずつ食卓から遠ざけます。VCAとPetMDのどちらも、この順番(ごほうびの間隔 -> 距離)で進める流れを紹介しています。
ヒント
メモ
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一時的に悪化する「消去バースト」を知っておく
ルールをそろえ、反応しないようにした最初の数日、「前よりひどくなった」と感じることがあります。これは多くの場合、失敗ではありません。
なぜ一時的にひどくなるのか
MSD(Merck)獣医マニュアルは、ごほうびを得ることと行動の強さにはしばしば結びつきがあるため、「the intensity or frequency of the behavior you are trying to eliminate usually increases at the beginning of extinction(消去の初期には、なくしたい行動の強さや頻度がたいてい増す)」と説明しています。言い換えれば「a behavior you are trying to extinguish may get worse before it gets better(なくそうとしている行動は、良くなる前に悪くなることがある)」ということです。
PetMDは、この「extinction burst(消去バースト)」の具体的な姿として、犬が「whine louder, paw harder, pace faster, and bark louder(もっと大きく鳴き、もっと強く前足でかき、もっと速くうろうろし、もっと大きく吠える)」ようになると書いています。これまでその方法で食べ物がもらえていたから、というのが理由です。
あじな動物病院行動セクションの解説も、強化子が差し控えられると一時的に行動が増えたり激しくなったりする現象を消去バーストとして挙げ、これは犬が「試している」のではなく、過去の強化の履歴によるものだと説明しています。犬が飼い主を試したり、根比べを挑んだりしているわけではありません。これまでのやり方が急に通じなくなって、手持ちの方法を強めている状態です。
ここで根負けすると、いちばん強い形が残る
消去バーストで最も避けたいのは、激しくなったところで与えてしまうことです。MSD(Merck)獣医マニュアルは「It is critical that you do not give in. Giving in will only make extinction more difficult.(根負けしないことが決定的に重要で、根負けすれば消去はより難しくなるだけ)」とし、犬は飼い主の我慢の限界が上がったとしても、もっとがんばれば乗り越えられると学ぶと述べています。PetMDも、要求が激しくなったところで与えると、強く押せばもらえると犬が学ぶと注意しています。
つまり、吠えが大きくなった瞬間に「もう、しかたないな」とひと口あげると、「大きく吠えればもらえる」という、以前より強いおねだりを教えることになってしまいます。
注意
乗り切るためのコツ
消去バーストがどのくらい続くかは、これまでの強化の歴史やごほうびの価値によって犬ごとに違い、一律の目安は示されていません。そのうえで、編集部として次のような工夫をおすすめします。
- 始める前に、家族全員で「最初は悪化することがある」と共有しておく。知らずに始めると、悪化を見た誰かが与えてしまいやすい
- 始めるのは、時間と気持ちに余裕のある時期にする。来客や行事の多い日から始めない
- 悪化しても続けられるよう、最初から「マットに行ったらごほうび」の練習と組み合わせる。代わりの行動で報われる道があると、犬も切り替えやすい
- 食卓の近くで練習するのが難しい日は、ゲートやクレートの内側で知育トイを楽しんでもらう日にしてよい。管理も立派な対策
- 数日ごとに、おねだりの回数・強さ・続いた時間をメモしておく。小さな変化に気づけると、続ける力になる
人の食べ物を与えることの健康面のリスク
おねだりをやめてもらいたい理由は、行儀だけではありません。人の食べ物そのものに、犬の体にとってのリスクがあります。
栄養の偏りと肥満
英国の動物福祉団体RSPCAは、人の食事の多くは犬に必要な栄養を満たさないため理想的ではないとしています。同じく英国のDogs Trustは、食べ残しをおやつとして与えることを避けるよう勧め、多くの人の食べ物は消化不良の原因になり、ネギ類のように中毒を起こすものもあること、さらに肥満の一因になり食事のバランスを崩すことを挙げています。同団体は「Feeding your dog a slice of toast is equivalent to a human eating a portion of chips!(犬にトースト1枚を与えるのは、人がフライドポテト1人前を食べるのに相当する)」というたとえも紹介しています。
米ウィスコンシン大学獣医学部のAmy Nichelason氏は、祝日や行事のごちそうは油やバターを多く使うことがあり、こうした脂っこい食べ物に慣れていない犬や猫では、消化器の不調や、頻度は低いものの膵臓の炎症(膵炎)のような、より深刻な問題を起こすことがあると話しています。PetMDも、脂肪分の多い食べ物などの与えすぎが、肥満や膵炎などの健康問題につながりうるとしています。
おやつの量の目安は、資料によって幅があります。環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」は、おやつは一日に必要なエネルギー量の20%以内を目安にし、与えた分だけ主要な食事の量も減らすよう勧めています。一方、Dogs Trustは一般的なルールとして、おやつが食事全体の10%を超えないようにとしています。いずれにしても、「おやつや人の食べ物は、ごはんとは別腹」ではなく、足した分は差し引く必要があるという点は共通しています。
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中毒を起こす食べ物・危険な食べ物
食卓には、犬にとって危険な食べ物も並びます。環境省のガイドラインは、人の食べ物でも犬や猫に害を及ぼす場合があるとして、次のようなものを「与えてはいけないもの」に挙げています。
- タマネギ・ネギ・ニラ・ニンニク。有害成分が赤血球を壊し、加熱しても分解されない。ハンバーグやカレーのような加工食品、エキスがしみ出た味噌汁やすきやきの煮汁も与えてはいけないとしている
- チョコレート。テオブロミンが原因で嘔吐・下痢・発熱・けいれんの発作などを起こす
- キシリトール入りのガムなど。少量でも血糖値の低下や嘔吐、肝不全などを起こす
- 鶏の骨。縦にさけやすく、とがった形になってのどや消化管を傷つけることがある
- ブドウ・干しブドウ。腎不全の原因になる
同じガイドラインは、竹串に刺さった食べ物、トウモロコシの芯、種の大きい果物をそのまま与えると丸ごと飲み込み、胃や腸に刺さったり詰まったりする重大な事故につながることがあるとも注意しています。焼き鳥やとうもろこし、桃など、食卓でよく見かけるものばかりです。
米国のASPCA動物中毒管理センターも、アルコール、パン生地(発酵する生地)、チョコレート・コーヒー・カフェイン、ぶどう・レーズン、ネギ類、マカダミアナッツ、キシリトール、塩分の多い食べ物などを、ペットに与えるのを避けたい人の食べ物として挙げています。
危険
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子どもがいる家庭で気をつけたいこと
小さな子どもがいる家庭は、おねだりが育ちやすく、同時に事故も起きやすい環境です。子どもは食べ物を手に持ったまま歩き回ったり、食べこぼしが多かったり、犬の目線に近い高さで食べたりしやすいため、犬にとっては「食べ物が手に入りやすい相手」になりがちです(編集部の整理)。子ども自身が「かわいそうだから」とこっそり分けてしまうことも少なくありません。
米国の小児医療機関Nemours KidsHealthは、どんなに穏やかでよく訓練された家庭犬でも、驚いたり、怖かったり、脅かされたと感じたり、空腹だったりすると咬むことがあるとし、食事中・睡眠中・子育て中の犬には決してちょっかいを出さないよう子どもに教えることを勧めています。米国の動物福祉団体Best Friends Animal Societyも、犬の口からものを取らないこと、食べている犬をそっとしておくことを子どもに教えるよう述べています。
子どもがいる家庭では、次のような工夫が考えられます。
- 子どもの食事やおやつの時間は、犬にゲートの向こうやクレートの中で過ごしてもらう
- 子どもが食べ物を持ったまま犬のそばを歩き回らないようにする
- 床に落ちた食べ物を、犬と子どもが取り合う状況を作らない。大人が先に片づける
- 子どもが犬におやつをあげたいときは、食卓以外の場所・時間で、大人と一緒に犬用のおやつを使う。Nemours KidsHealthは、指でつまんで与えず、指をそろえた手のひらにのせて与えるよう勧めている
- 子どもにも「食卓からはあげない」の理由を、年齢に合わせて伝える
注意
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よくあるNG対応
やってしまいがちだけれど、おねだりを長引かせやすい対応を整理しました。
- 「今日だけ」「ひと口だけ」とときどき与える。たまにもらえる経験が、いちばん習慣を強くします
- 吠えが激しくなったところで与える。「強く要求すればもらえる」と教えることになります
- 静かにさせるために、おやつや食べ物を渡す。VCAは、やめさせようとしてなでる・注目する・おやつを与えることは、望まない行動を強化してしまうよくある失敗だとしています
- 大声で叱る、叩く、押しのける。注目になるうえ、恐怖や不安を生むおそれがあります。AVSAB(米国獣医動物行動学会)は2021年の声明で、力や痛み、心身の不快感に頼る方法は「should not be used in canine training or for the treatment of behavioral disorders(犬のトレーニングや行動上の問題の治療に用いるべきではない)」としています
- 家族の中で1人だけ与えている。犬はその人に集中しておねだりするようになりがちです
- 食べ残しを、食卓で直接または食卓から犬の器に移して与える。食卓と食べ物が結びつきます
- テーブルの上に食べ物を置いたまま席を離れる。盗み食いが成功すると、それも強力なごほうびになります
- 無視するだけで、代わりの行動を教えない。何をすればいいかわからないまま、犬の不満だけがたまります
それでも人の食べ物を分けたいときは
「絶対に何もあげない」が難しい家庭もあると思います。PetMDは、犬に適した食べ物を適量分けること自体は一般に問題ないとしたうえで、いつ・どこで分けるかに気をつければおねだりの習慣を作らずにすむとし、決まった場所で静かに待つことを教えてから与える方法を紹介しています。Merck Animal Healthの記事も、食卓でのおねだりの習慣をつけないために、分けるなら別の時間にとっておくことを勧めています。
分けるときの考え方を、編集部で整理すると次のとおりです。
- 食卓や人の食事中ではなく、食事が終わってから、別の場所で犬用の器に入れて与える
- 味つけ前の、犬に与えてよい食材だけにする。ネギ類やぶどうなど危険な食材が混ざる料理や、煮汁・スープは避ける
- ごく少量にして、その日のおやつの量やごはんの量から差し引く
- 持病や療法食がある子は、先に獣医師に相談する
よくある質問
もう何年もおねだりが続いています。今からでも変えられますか。
無視していたら、前より激しく吠えるようになりました。やり方が間違っていますか。
犬のごはんの時間を、人の食事と同じにしたほうがいいですか。前にしたほうがいいですか。
おねだりのたびにクレートに入れるのは、かわいそうではありませんか。
野菜やゆでた肉など、犬に安全な食べ物なら食卓で分けてもいいですか。
食べてはいけないものを食べてしまったかもしれません。どうすればいいですか。
まとめ
食卓でのおねだりは、犬が「ここにいれば、こうすれば、いつか食べ物が出てくる」と学んだ結果です。そして、その学びをいちばん強くするのが「ときどきもらえる」状態でした。だからこそ、家族全員で「食卓からは誰も与えない」をそろえることが、すべての出発点になります。
そのうえで、おねだりには反応せず、食事のあいだはマットでくつろぐ、自分の知育トイで過ごす、といった代わりの行動をごほうびで育てていきます。途中で一時的におねだりが激しくなる消去バーストは、多くの場合「うまくいかなくなった」のではなく「変わり始めた」サインです。危ないときはゲートやクレートで離れてもらいながら、根負けせずに続けてみてください。
人の食べ物には、肥満や消化不良のもとになるものも、ネギ類やぶどう、チョコレート、キシリトールのように中毒を起こすものもあります。おねだりをやめてもらうことは、犬の健康を守ることにもつながっています。急に食欲が増えた、水をたくさん飲むようになったなど体の変化が気になるときや、食べ物をめぐって唸るような様子があるときは、ひとりで抱え込まず、動物病院や専門家に相談してください。
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出典・参考
- How to Stop Your Dog from Begging at the Table(Melissa McCue-McGrath氏のコメントを含む)|American Kennel Club(AKC)
- Why Dog Begging Happens and How To Stop It(PetMD編集部、レビュー: Erika Lessa, CPDT-KA)|PetMD
- How to stop your dog begging for food|Battersea Dogs & Cats Home
- Using Enrichment, Predictability and Scheduling to Train Your Dog(Lindell, Feyrecilde, Horwitz, Landsberg)|VCA Animal Hospitals
- Disobedient, Unruly and Excitable Dogs(Lindell, Feyrecilde, Horwitz, Landsberg)|VCA Animal Hospitals
- Behavior Modification in Dogs - Dog Owners(Gary M. Landsberg, DVM, DACVB)|MSD(Merck) Veterinary Manual
- 犬の行動が変わる仕組み|行動の結果と学習の構造(中西薫)|あじな動物病院行動セクション
- Position Statement on Humane Dog Training (2021)|AVSAB(米国獣医動物行動学会)
- Dog Diet & Nutrition|Dogs Trust
- How To Feed Your Dog a Healthy Diet|RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)
- People Foods to Avoid Feeding Your Pets|ASPCA Animal Poison Control Center
- 飼い主のためのペットフード・ガイドライン 〜犬・猫の健康を守るために〜(2018年8月版・PDF)|環境省
- Table Scraps? With Many Human Foods, Pets Should Pass(Amy Nichelason)|University of Wisconsin School of Veterinary Medicine
- Feeding table scraps: Do or don't?|Merck Animal Health USA
- 犬が見せる「腹ペコサイン」食後にもおねだりを要求する場合に考えられる「心配な理由」(監修: 獣医師 岡本りさ)|いぬのきもちWEB MAGAZINE
- Preventing Dog Bites (for Parents)|Nemours KidsHealth
- Prevent a Dog From Biting Children|Best Friends Animal Society
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