犬インフルエンザとは?人にうつる?|2026年9月の東大研究でわかったことと、日本の飼い主が秋冬に気をつけたいこと
対象の目安: 全ライフステージ


2026年9月、東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループが、「犬から人へ?―インフルエンザウイルスが感染する仕組みを探る」と題した犬インフルエンザウイルスの研究成果を発表しました。「犬のインフルエンザが人にうつるの?」と、タイトルだけを目にしてドキッとした方もいるかもしれません。ちょうど人のインフルエンザも、昨年の同じ時期より報告数が多くなっている時期です。
ただ、発表の中身を読むと、伝えたいことはもう少し落ち着いたものでした。この記事では、まず犬インフルエンザがどんな病気なのか、日本ではどういう状況なのかを一次資料から整理し、そのうえで今回の研究が何を示し、何を示していないのかを飼い主の目線で読み解きます。最後に、ペットホテルやドッグランに出かける機会が増える秋冬に、家庭でできることをまとめました。
犬インフルエンザとはどんな病気か
犬インフルエンザは、犬に感染して犬から犬へ広がる、A型インフルエンザウイルスによる呼吸器の感染症です。米国獣医師会(AVMA)は、犬に感染することが知られている2種類のA型インフルエンザウイルスによる、感染力の強い呼吸器疾患だと説明しています。犬種・年齢・性別・健康状態にかかわらずどの犬にもリスクがあり、ウイルスにさらされた犬のほとんどが感染すること、季節を問わず感染が起こりうることもあわせて書かれています。
人のインフルエンザは冬に流行する印象が強いですが、犬インフルエンザワクチンの製造販売元であるMerck Animal Health(米国)の飼い主向けページも、犬のインフルエンザには季節性がなく、一年を通じて感染しうるとしています。
2つの系統: H3N8とH3N2
日本獣医師会雑誌に掲載された東京大学・堀本泰介教授の総説「犬インフルエンザ」(2017年)によると、犬インフルエンザには由来の異なる2つの系統があります。
| 系統 | 由来 | 経緯(総説・各機関の資料より) |
|---|---|---|
| H3N8 | 馬のインフルエンザウイルス | 2004年、米国フロリダ州のレース用グレイハウンド22頭が呼吸器疾患にかかり、8頭が急死。その後、全米40州のペット犬に広がった。東京大学の2024年の発表では「人への感染が起きることなく終息」とされている |
| H3N2 | 鳥のインフルエンザウイルス | 2007年に韓国で犬への感染が確認され、血清調査から2005年には韓国で広がっていたことが判明。中国南部やタイでも分離された。米国では2015年にシカゴ周辺で1,000頭を超える犬の呼吸器疾患が発生し、その後各地に広がった |
米国ロサンゼルス郡公衆衛生局の獣医公衆衛生部門が2026年3月に出した獣医師向けの通知では、同郡で2021〜2022年に少なくとも1,344頭が感染し21頭の死亡が把握された大規模な流行があったこと、近年の同郡での発生のほとんどが海外から輸入された犬と結びついていたことが報告されています。2024年6月から2025年8月にかけての事例としては、中国から保護団体を通じて輸入され到着時に発症していた犬や、イランへの渡航歴がある犬に関連したものが列挙されています。
H3N8・H3N2の由来と経緯は、日本獣医師会雑誌70巻の総説「犬インフルエンザ」(堀本泰介、2017年)に基づきます。H3N8の終息については東京大学大学院農学生命科学研究科の2024年9月の発表、ロサンゼルス郡の状況は同郡公衆衛生局の2026年3月4日付の通知に基づきます。
どんな症状が出るのか
AVMAは、犬インフルエンザのサインはケンネルコフ(犬伝染性呼吸器疾患複合体)と似ているとして、次のような症状を挙げています。
- 長引く咳
- 濃い鼻水
- 発熱(華氏104〜105度、摂氏でおよそ40〜40.6度になることが多い)
- 元気がない
- 目がうるむ、涙が出る
- 食欲が落ちる
多くの犬は軽症で2〜3週間以内に回復する一方、まったく健康そうに見える犬もいれば、細菌性の肺炎などを併発して重くなる犬もいる、というのがAVMAの説明です。Merck Veterinary Manual(飼い主向け版)は、ウイルスにさらされた犬の多く(80%)は軽い呼吸器感染を起こして1〜3週間続く咳が出ること、一部の犬は高熱や肺炎、細菌の二次感染を起こして重症になることを記載しています。
注意したいのは、症状のない犬からもうつるという点です。Merck Veterinary Manualは、感染した犬のおよそ20%は症状を示さないままウイルスを広げうるとしています。2017年の総説でも、20〜25%は不顕性感染(感染しても症状が出ない)とされ、潜伏期間中からウイルスが排出されることが説明されています。
メモ
死亡する割合は資料によって書き方が異なります。AVMAは「全体としての死亡リスクは低いと考えられており、感染した犬の約1〜5%」、Merck Veterinary Manualは「発症した犬の10%未満」、2017年の総説は「ペット犬を含めた全体的な死亡率は10%以下」としています。どの資料も、多くの犬は回復する一方で、肺炎などを起こすと重くなりうる病気だと位置づけています。子犬、シニア犬、持病のある犬は、とくに早めの受診を心がけてください。
どうやってうつるのか
AVMAは、主なうつり方として次のものを挙げています。
- 犬同士が舐め合う、鼻を寄せ合うといった直接の接触
- 咳・くしゃみ・吠えたときに飛ぶしぶき
- 食器や水入れ、おもちゃ、ケージの表面、衣類など、ウイルスが付いた物
- 感染した犬に触れた人の皮膚や衣類
同じページでは、感染した犬は具合が悪そうに見えなくても感染力をもつことがあり、最初にウイルスにさらされてから最大4週間ウイルスを広げうること、ウイルスは環境中で1〜2日生き残るものの、一般的な消毒薬で簡単に死滅することも説明されています。潜伏期間(ウイルスにさらされてから症状が出るまで)は、Merck Veterinary Manualと2017年の総説のどちらも2〜4日としています。
犬が屋内で近い距離に集まる場面ほど広がりやすく、AVMAは、流行が起きている地域では、ペットホテルに預けられる犬、ドッグデイケアやドッグパーク、ドッグショー、アジリティ競技などでほかの犬と交わる犬、旅行する犬がとくにリスクが高いとしています。
コーネル大学獣医学部のH3N2に関するFAQも、リスクが高いのはほかの犬と接触する機会のある犬、とくに呼吸器症状のある犬と接する犬だとし、具体的な場面としてペットホテル、トリミングサロン、犬のデイケア、ドッグパーク、動物シェルターなど犬同士が交流する場所を挙げています。子犬・高齢犬・免疫が低下している犬では、ほかの感染症と同じく追加の注意が必要だとも述べています。
ヒント
AVMAは、猫にも時折感染が確認されている(とくに保護施設の猫)とも書いています。犬と猫を一緒に飼っていて、犬が咳をしはじめたときは、猫との接触もいったん控えて獣医師に相談すると安心です。
日本の状況: 国内の犬での報告は確認できなかった
では、日本ではどうなのでしょうか。
2017年の日本獣医師会雑誌の総説は、H3N8について「現在まで、わが国にはH3N8犬ウイルスは侵入していない」、H3N2について「わが国ではH3N2犬ウイルスの侵入は確認されていない」と記載し、まとめでも「犬インフルエンザ(H3N8,H3N2)はわが国では報告されていない」としています。また、東京大学の2024年9月の発表文には、H3N2犬インフルエンザが北米と東アジアで流行していることを述べる箇所で「日本は清浄国」という表記があります。
編集部では、2026年9月時点で、その後に国内の犬で犬インフルエンザの発生を報告した公的機関の一次資料を探しましたが、見つけることはできませんでした。インターネット上の解説記事のなかには国内での散発的な発生に触れているものもありましたが、その根拠となる一次資料は確認できていません。この記事では、確認できた範囲として「国内の犬での公式な発生報告は、編集部では確認できなかった」とお伝えするにとどめます。
注意
「日本にはないから関係ない」と言い切れるわけでもありません。2017年の総説は、検疫で見つからないまま、たとえば症状のない感染犬や、人や物に付着してウイルスが入ってくる可能性は十分にあると指摘しています。同時に、仮に持ち込まれて感染が起きたとしても、診察する獣医師が正確な知識をもって適切に対処すれば、孤発例として押さえ込むことが可能だとも述べています。怖がりすぎず、咳が出たときの行動を知っておくことが、飼い主にできるいちばんの備えです。
2026年9月の東京大学の研究を読み解く
ここからが、今回話題になった研究です。東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻の関根渉助教、堀本泰介教授らの研究グループが、学術誌Virologyに論文を発表しました。
研究の背景: 犬のウイルスは「鳥型」の入り口を使っている
インフルエンザウイルスは、細胞の表面にある「受容体」と呼ばれる入り口に結合して感染します。発表文によると、鳥から伝わったとされる犬インフルエンザウイルス(H3N2)は、細胞に感染するときに鳥型の受容体(α2,3結合型シアル酸)を優先して使います。犬のウイルスが人に効率よく感染するようになるには、人型の受容体(α2,6結合型シアル酸)に結合する力を身につける必要があります。
研究グループが注目したのは、犬の呼吸器の細胞には両方のタイプの受容体があるという点です。犬の体内でウイルスが増殖を繰り返すうちに、人型の受容体への結合力が高まる可能性があるため、その仕組みを実験で探りました。
どんな実験をしたのか
実験は、安全面に配慮した方法で行われています。発表文によると、研究グループは増殖に必要なタンパク質(PB2)をあらかじめ取り除き、特別な細胞の中でしか増えられないようにした犬インフルエンザウイルスを作りました。そして、鳥型の受容体をなくし人型の受容体を主にもつように改変した培養細胞で、このウイルスを繰り返し育てました(連続継代)。
その結果、人型の細胞でよく増えるようになったウイルスが得られ、HAタンパク質(ウイルスの表面にあり、受容体への結合を担うタンパク質)に5つの変異が見つかりました。1つずつ調べたところ、受容体に結合する部分にある2つの変異、HA1-T138AとHA1-Q226Lをもつウイルスで、人型の細胞での増えやすさが大きく高まりました。さらに、これらの変異によって人型受容体への結合力が高まり、鳥型受容体への結合と同じくらいのレベルになることもわかったとされています。
研究が示したこと、示していないこと
発表文は、この結果から「犬インフルエンザウイルス(H3N2亜型)は、人型受容体に効率よく結合できる変異を獲得し得ることが示されました」とまとめています。そのうえで、こうした変異は感染した犬の体内でウイルスが増殖・適応する過程で獲得される可能性があり、変異したウイルスが飼い主などの人に感染する可能性も考えられることから、犬インフルエンザの人獣共通感染症としてのリスクについて「継続的な監視と評価が重要です」と結んでいます。
飼い主として押さえておきたいのは、次のような点です。
| 研究が示したこと | 発表文に書かれていないこと |
|---|---|
| 2つの変異で、ウイルスが人型の受容体に結合しやすくなり、人型の培養細胞で増えやすくなった | 犬のH3N2が人に感染したという報告(発表文は「報告はありません」と明記) |
| こうした変異は、感染した犬の体内で獲得される「可能性がある」 | この2つの変異が、いま流行している犬のウイルスに広がっているという話 |
| 将来の人への感染リスクを早めに評価し、監視につなげるうえで役立つと期待される | 飼い主が犬との暮らし方を変えるべきだという提言 |
また発表文は、犬インフルエンザウイルスは人の季節性インフルエンザである香港型(H3N2亜型)とは抗原性が異なる、と補足しています。名前は同じ「H3N2」でも、人のあいだで毎年流行するウイルスとは別物だということです。
メモ
「監視が大事」という結論は、「危ないから犬を遠ざけよう」という意味ではありません。どんな変異が入ると人に感染しやすくなるのかを前もって知っておけば、流行している地域で犬から見つかったウイルスの遺伝子を調べたときに、その変異があるかどうかをチェックでき、早めに警戒のレベルを判断できます。今回の研究は、そのための「目印」を増やしたものと受け止めるのが実態に近いと、編集部は考えています。
ロサンゼルス郡の2026年3月の通知でも、アジアの犬インフルエンザウイルスには遺伝的な多様性があり、人のインフルエンザウイルスに関連する遺伝子の一部やアミノ酸の置き換わりをもつH3N2犬ウイルスも見つかっていると紹介されています。研究者や公衆衛生機関が監視を続けているのは、こうした変化を見逃さないためです。
2024年9月の前報とのつながり
同じ研究グループは、2024年9月にも関連する研究を発表しています。こちらは、もう1つの系統であるH3N8の犬インフルエンザウイルスを、人の呼吸器に由来する培養細胞(A549細胞)で繰り返し育てたもので、増殖性が10,000倍以上に上がった変異ウイルスが得られました。詳しく調べると、HAが細胞の膜と融合するときの条件(pH)や、HAともう1つの表面タンパク質NAとの働きのバランスを、人の呼吸器の細胞に合わせる変異が重要だったと報告されています(学術誌Scientific Reports)。
| 2024年9月の発表 | 2026年9月の発表 | |
|---|---|---|
| 対象のウイルス | H3N8犬インフルエンザ | H3N2犬インフルエンザ |
| 使った細胞 | 人の呼吸器由来の細胞(A549) | 人型の受容体を主にもつよう改変した細胞 |
| 見つかったこと | 膜融合の条件とHA-NAのバランスを人の細胞に合わせる変異で、増殖性が大きく上がった | 受容体に結合する部分の2つの変異で、人型受容体への結合力と人型細胞での増殖性が高まった |
いずれも、実験室の細胞でウイルスを繰り返し育てて「どんな変異が入ると人の細胞に馴染むのか」を調べた研究です。2024年の発表文では、すでに哺乳動物である犬に定着したウイルスが人に感染する可能性や、犬が人と濃厚に接触することにふれ、犬がパンデミック発生の中間宿主になる可能性は否定できないとしたうえで、見つかった変異がウイルスモニタリングに役立つことが期待されるとしています。飼い主にできることは、過度に心配することではなく、研究者がこうした監視を続けていることを知っておくこと、そして犬の呼吸器の不調を放置しないことだと言えそうです。
逆に、人のインフルエンザは犬にうつるのか
ここは気になるところだと思います。順番に確認できた範囲を書きます。
2017年の総説によると、人の季節性インフルエンザウイルスが犬に感染した事例は1970年代から示されているものの、犬での集団発生はこれまでに報告がないとされています。2009年に流行したH1N1パンデミックウイルスがペット犬に感染した例が米国と中国で報告されており、米国の症例ではインフルエンザにかかった飼い主からの感染が疑われ、呼吸器症状から肺炎に進行したものの治療により回復したと記載されています。
日本については、同じ総説が国内のペット犬の血清調査に言及しています。引用元の1つである山口大学などの研究(2011年、J Vet Med Sci)では、2002〜2008年に集めた犬582頭の血清のうち12頭(2.1%)で人のH3ウイルスに対する抗体が見つかり、過去に人のH3N2インフルエンザウイルスの感染が起きていたことが示唆されました。ただし総説は、こうした調査で過去の感染歴が示された一方で「発症例は記録されていない」としています。
メモ
つまり、確認できた範囲でまとめると、「人のインフルエンザウイルスが犬に感染した報告はある(海外では発症例も)」「日本の犬でも感染したとみられる抗体は見つかっている」「ただし国内で発症した記録は、参照した総説の範囲では確認できなかった」となります。飼い主がインフルエンザにかかったときに、犬が必ず具合を悪くするという意味ではありません。それでも、体調が悪いときに顔を舐めさせたり同じ布団で寝たりするのを少し控えるのは、犬にとっても自分にとっても無理のない配慮です。
なお、鳥インフルエンザ(H5N1)と生の肉・生食フードについては、別の記事で米国FDAの資料をもとに詳しくまとめています。生食を取り入れている家庭は、そちらもあわせてご覧ください。
あわせて読みたい
犬に生肉・ローフード(生食)を与えても大丈夫?|2026年も続く米国の回収・FDA警告から考える、細菌リスクと家庭での扱い方
混合ワクチンでは防げない: 「パラインフルエンザ」との違い
「うちの子は混合ワクチンを打っているから大丈夫」と思った方もいるかもしれません。ここは間違えやすいところなので、整理しておきます。
国内で広く使われている混合ワクチンには「犬パラインフルエンザ」が含まれていることが多いのですが、これは犬インフルエンザとは別のウイルスです。学術誌Pathogensに掲載された2023年の論文では、犬パラインフルエンザウイルスはパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)に属するRNAウイルスだと説明されています。一方の犬インフルエンザはA型インフルエンザウイルスで、ウイルスの分類上まったく別のグループにあたります。名前が似ているだけで、防げる相手が違うということです。
注意
犬インフルエンザのワクチンについて。米国では、2017年の総説によれば、H3N8用(2009年に米国農務省が承認)とH3N2用(2015年に承認)の犬用不活化ワクチンが実用化されています。日本については、編集部が農林水産省 動物医薬品検査所の「動物用医薬品等データベース」を「インフルエンザ」で検索した範囲では、犬インフルエンザ用のワクチンにあたる製品は見当たりませんでした(犬パラインフルエンザを含む犬用混合ワクチンや、馬・豚のインフルエンザ用、牛パラインフルエンザ用の製品などはヒットします)。データベースの検索方法によって結果が変わる可能性はあるため断定は避けますが、少なくとも「毎年の混合ワクチンで犬インフルエンザも予防できている」とは考えないほうがよいでしょう。接種しているワクチンが何を防ぐものかは、かかりつけの動物病院で確認してください。
ワクチン全般の考え方(コアとノンコアの違い、子犬期のスケジュール、副反応への備え)は、次の記事で詳しくまとめています。
あわせて読みたい
犬のワクチンと健康診断の基礎|狂犬病・混合ワクチンと受ける頻度の目安
秋冬、犬が集まる場面でできること
人のインフルエンザは、今年は早い時期から報告が増えています。厚生労働省が公表した令和8年第37週(9月7〜13日)のインフルエンザの発生状況では、全国の定点あたり報告数は5.54で、昨年の同じ時期の0.72を大きく上回りました。前の週(第36週)の3.29からも増えています。人の側で「そろそろ気をつけよう」という空気になるこの時期は、犬の呼吸器の健康についても見直しておくのにちょうどよいタイミングです。
犬インフルエンザに限らず、ケンネルコフ(CIRDC)を含む犬の呼吸器感染症に共通する対策として、AVMAが挙げているのは次のような点です。
犬が集まる場面での基本
- 自分の犬が咳やくしゃみをしているときは、ほかの犬に近づけない
- 明らかに具合が悪そうな犬には近づけない
- 知らない犬が多数集まる場面での接触を減らす
- 地域で流行の情報が出ていないか気にかけ、流行中は犬が集まる場所を避ける
- どの犬に触れたあとも、とくに具合の悪い犬に触れたあとは手を洗う
- 外で食器・水入れ・おもちゃを他の犬と共用しない
- 1
預ける前に、施設の感染症対策を聞いておく
AVMAは、ペットホテルに預ける、旅行に連れていく、ドッグショーや競技会・トレーニングクラスなど犬が集まる活動に参加させる予定があるなら、日常的にどんな感染管理をしているか、呼吸器の病気が問題になったことがあるかを尋ねるようすすめています。呼吸器症状が出た犬を隔離する仕組みがあるか、ほかの犬が接触した場合に飼い主へ知らせる体制があるかも確認しておきたい点です。 - 2
咳が出たら、予定をいったん止める
ドッグラン、トリミング、ドッグカフェ、多頭飼育の家への訪問など、ほかの犬と接する予定は延期します。症状が軽くても、感染性の咳であればほかの犬にうつす可能性があります。AVMAは、犬インフルエンザの犬の隔離期間として、症状が最初に出てから4週間を推奨しています。予定をいつ再開してよいかは、自己判断せず獣医師に相談してください。 - 3
受診は、先に電話してから
AVMAは、犬が咳やくしゃみをしている場合は、連れていく前に動物病院に電話して助言を求めるよう案内しています。待合室に入らず車で待つなど、病院の指示に従うことで、ほかの犬への広がりを防げます。 - 4
海外から来た犬・渡航歴は必ず伝える
ロサンゼルス郡の通知では、呼吸器症状のある犬について、渡航歴やペットホテル・デイケア・グループ活動の利用歴をしっかり聞き取るよう獣医師に求め、とくに最近輸入された犬や渡航歴のある犬では犬インフルエンザH3N2も鑑別に含めるよう呼びかけています。海外から迎えた犬、海外に行っていた犬、そうした犬と接した犬については、その経緯を受診時に伝えてください。診断の手がかりになります。 - 5
家の中の物は洗う・消毒する
ウイルスは食器・水入れ・おもちゃ・リード・寝床、そして人の衣類にも付きます。2017年の総説は、インフルエンザウイルスは各種消毒薬や洗剤で容易に不活化されるとしています。具合の悪い犬がいるときは、身のまわりの物をこまめに洗い、手洗いを徹底しましょう。
あわせて読みたい
犬を預けるならどこがいい?|ペットホテル・ペットシッター・知人の選び方とお盆・帰省前の準備
咳が出たときの受診の目安
咳は犬インフルエンザに限らず、ケンネルコフ、気管虚脱、心臓病、フィラリア症などさまざまな原因で起こります。音の種類や出るタイミング、緊急度の見分け方、動物病院でどんな検査をするのかは、次の記事で詳しくまとめています。ケンネルコフとの違いが気になる方も、こちらをご覧ください。
あわせて読みたい
犬の咳が続くのはなぜ?音でわかる原因の見分け方と受診の目安
注意
呼吸が浅く速い、口を開けて呼吸している、舌や歯ぐきの色が紫っぽい、横になって休めない、ぐったりしている——こうした様子が見られるときは、時間帯にかかわらずすぐに動物病院へ連絡してください。犬インフルエンザかどうかを飼い主が判断する必要はありません。「呼吸が苦しそう」は、それだけで急ぐ理由になります。
よくある質問
今回の東大の研究で、犬から人にインフルエンザがうつるようになったのですか。
飼い主がインフルエンザにかかったら、犬と距離を取るべきですか。
ケンネルコフと犬インフルエンザは何が違うのですか。
混合ワクチンの「パラインフルエンザ」で犬インフルエンザも防げますか。
症状がなければ、ほかの犬と遊ばせても大丈夫ですか。
海外から犬を迎えるときに、気をつけることはありますか。
まとめ
2026年9月に東京大学が発表した研究は、犬インフルエンザウイルス(H3N2)が人型の受容体に結合しやすくなる2つの変異を、培養細胞の実験で特定したものでした。発表文には「犬のインフルエンザウイルス(H3N2亜型)が人に感染したという報告はありません」と明記されており、結論は継続的な監視と評価が重要だというものです。いま犬との暮らしを変えなければならない、という話ではありません。
一方で、犬インフルエンザそのものは知っておく価値のある病気です。咳や鼻水、発熱、元気消失といったサインはケンネルコフと見分けがつきにくく、症状のない犬からもうつること、犬が集まる場面で広がりやすいことが、公的機関や獣医学の資料で説明されています。日本では、参照した総説の範囲で国内の犬での報告は確認できませんでしたが、海外から犬が移動する時代に「絶対に入ってこない」とも言い切れません。
秋冬に向けて飼い主ができることは、シンプルです。咳が出たらほかの犬と接触させない、受診の前に電話する、海外渡航歴や預け先の利用歴を伝える、食器やおもちゃの共用を避けて手を洗う。そして、接種しているワクチンが何を防ぐものかを、かかりつけで一度確認しておく。ニュースの見出しに揺さぶられるより、この積み重ねのほうが、犬の呼吸器をずっと確かに守ってくれます。
あわせて読みたい
ドッグランデビューの進め方|いつから行ける?準備・マナー・トラブル回避と「向いていない犬」の話
出典・参考
- 犬から人へ?―インフルエンザウイルスが感染する仕組みを探る|東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部(2026年9月)
- Sekine W, et al. HA1-T138A and HA1-Q226L substitutions in H3N2 canine influenza virus contribute to binding to human-type α2,6-linked sialic acid receptors. Virology (2026)
- 犬インフルエンザウイルスが人の細胞で効率よく増殖する変異を同定|東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部(2024年9月)
- Sekine W, et al. Adaptation potential of H3N8 canine influenza virus in human respiratory cells. Scientific Reports (2024)
- 堀本泰介「犬インフルエンザ」(総説)|日本獣医師会雑誌 70巻 165〜169頁(2017)
- Said AW, et al. A Sero-Survey of Subtype H3 Influenza A Virus Infection in Dogs and Cats in Japan. J Vet Med Sci 73(4) (2011)
- Canine influenza|American Veterinary Medical Association(AVMA)
- Canine Influenza (Flu) - Dog Owners|Merck Veterinary Manual
- Canine Influenza H3N2 FAQ|Cornell University College of Veterinary Medicine
- Update on Canine Influenza H3N2 and Recommendations for LA County(2026年3月4日)|Los Angeles County Department of Public Health, Veterinary Public Health
- Dog Flu(About / Prevention)|Merck Animal Health USA(犬インフルエンザワクチンの製造販売元)
- インフルエンザの発生状況について(令和8年9月18日)|厚生労働省
- 動物用医薬品等データベース|農林水産省 動物医薬品検査所
- Predominance of Canine Parainfluenza Virus and Mycoplasma in Canine Infectious Respiratory Disease Complex in Dogs. Pathogens (2023)
関連する記事
犬の咳が続くのはなぜ?音でわかる原因の見分け方と受診の目安
「カハッ」「ガーガー」——犬の咳は音と出るタイミングで手がかりが変わります。逆くしゃみやえづきとの違い、ケンネルコフ・気管虚脱・心臓病など主な原因、すぐ受診したいサイン、病院での検査、家庭でできる予防を出典つきで整理しました。
犬のワクチンと健康診断の基礎|狂犬病・混合ワクチンと受ける頻度の目安
犬のワクチンと健康診断を基礎から整理。狂犬病は法律で年1回の義務、混合ワクチンはコア・ノンコアの考え方と接種の目安、成犬は年1回・シニアは年2回という健診頻度まで、公的機関や獣医療の情報からまとめました。
犬に生肉・ローフード(生食)を与えても大丈夫?|2026年も続く米国の回収・FDA警告から考える、細菌リスクと家庭での扱い方
2026年、米国では冷凍の生食ドッグフードでリステリアやサルモネラが見つかり、FDAの「与えないで」勧告や回収が相次ぎました。生食で問題になる病原体、元気な犬でも便から菌が出ることがある点、家族への影響、AVMAや環境省の見解、それでも与える家庭の扱い方、回収対象かを確かめる方法を一次情報から整理しました。


