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犬が異物を飲み込んだときの対処|家庭で吐かせてはいけない理由と、動物病院へ伝えること

対象の目安: 全ライフステージ

ツムギ食事・健康担当
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犬が異物を飲み込んだときの対処|家庭で吐かせてはいけない理由と、動物病院へ伝えること

目を離したのは数十秒。振り返ったら、テーブルにあったはずの焼き鳥の串が消えていた。ゴミ箱がひっくり返り、洗濯かごから靴下が1枚足りない——犬と暮らしていると、こうした「ヒヤリ」は珍しくありません。しかもたいていは、かかりつけの動物病院が閉まっている夜や休日に起こります。

このとき最初に浮かぶのは「吐かせたほうがいいのだろうか」という考えではないでしょうか。検索すると、塩を飲ませる、オキシドールを飲ませるといった方法が今も出てきます。けれどもこれらは、犬の命をさらに危険にさらしかねない行為として複数の動物病院が明確に警告しています。

この記事では、犬が異物を飲み込んだ(疑いを含む)ときに家庭で最初にすべきこと、避けたいこと、とくに危険度が高い物、病院での処置の流れ、予防を順にまとめます。散歩中の拾い食いを減らすトレーニングは拾い食い対策の記事、玉ねぎやチョコレートなど食べ物としての危険は食べてはいけない食べ物の記事へ。ここでは「飲み込んでしまったあと」に焦点を当てます。

まず落ち着いて、この3つを確保する

飲み込む場面を見てしまうと、反射的に口の中へ手を入れたくなります。けれども無理に指や器具を口の奥へ入れる行為は、口腔や食道を傷つけるうえ、パニックになった犬に噛まれて飼い主自身がけがをする危険もあると動物病院が注意を促しています。まずは深呼吸をひとつ。落ち着いて次の3つを確保してください。

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    「何を・いつ・どれくらい」を把握する

    飲み込んだ物の材質・大きさ・個数と、飲み込んだ時刻。この3点が、獣医師が処置を選ぶうえでの土台になります。時刻がはっきりしないときは「最後に無事だったのを見たのが何時か」で幅を伝えれば十分です。同じ物が家にあるなら1つ手元に残し、パッケージも捨てずに取っておきます。
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    現場と残骸を撮影する

    かじり跡のある包装、散らばった破片、こぼれた薬のシート。片づける前にスマートフォンで撮っておきます。「何錠減っているか」がわかる写真は、量の推定にそのまま使えます。犬の様子も動画で残せると理想的です。
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    動物病院へ電話する

    かかりつけが開いていればかかりつけへ、閉まっていれば夜間救急に対応している病院へ。「何を・いつ・どれくらい」に加えて体重・年齢・持病を伝えると、すぐ来てくださいなのか様子を見てよいのか、その場で判断してもらえます。体重は処置を決める重要な情報なので、最近測っていなければ抱っこして体重計に乗り自分の体重を引く方法でおおよその値を出しておくとスムーズです。

材質・大きさ・数量と時間経過の把握、同じ異物の持参はアニコム損保「犬との暮らし大百科」の獣医師監修記事、指や器具を口の奥へ入れる行為の危険は東中野アック動物医療センターによります。

夜10時にソファの下からおもちゃの破片が出てきて、数えたら1個足りなくて血の気が引きました。慌てて救急に電話したら、まず落ち着いてどんな素材か教えてくださいと言われて、その一言でこちらが冷静になれました。
子犬と暮らす飼い主

家庭で吐かせようとしてはいけない

いちばん伝えたいのがここです。「早く出させたほうがいい」という気持ちはよくわかります。けれども家庭での催吐(吐かせる処置)は、獣医療の現場から明確に止められています。

注意

次の方法は、犬に重い障害を残したり命を落とす原因になったりするおそれがあります。獣医師の指示がない限り、家庭では行わないでください。

  • 食塩(塩)を飲ませる。ナトリウムの過剰摂取による食塩中毒を起こし、軽度でも元気消失や頻回の嘔吐、重症例では意識混濁などの神経症状が出ることがあるとされています
  • オキシドール(過酸化水素)を飲ませる。胃や食道の粘膜を重度に傷つけ、びらんや潰瘍を作るおそれがあります
  • 牛乳や水をたくさん飲ませて薄める。吸収を早めたり、誤嚥のきっかけになったりします
  • 指や棒を口の奥に入れて掻き出そうとする。粘膜を傷つけ、異物を奥へ押し込み、飼い主が噛まれるリスクもあります
  • 人用の吐き気止め・下剤・胃薬を与える。犬では代謝が異なり、中毒を起こす成分があります

食塩中毒(ナトリウムの過剰摂取)による元気消失・頻回の嘔吐・神経症状、オキシドールによる粘膜損傷は上板橋リズ犬猫病院「催吐処置に関して」、自己流の催吐や人用の薬を避けるべき点は東中野アック動物医療センターによります。

そもそも「吐かせてはいけない物」がある

もうひとつ大事なのは、獣医療の現場でも催吐が禁忌とされるケースがあることです。夜間救急に対応する動物病院の解説では、催吐処置を行ってはいけない状況として次が挙げられています。

  • 意識を失っている、呼吸が苦しそう、嚥下(飲み込む)機能に障害がある
  • すでに何度も吐いている
  • 強酸性・強アルカリ性の製剤を口にした
  • 突起のある異物(先の尖った物)を飲み込んだ
  • ガソリンや灯油などの石油系炭化水素を口にした
  • ボタン電池を飲み込んだ

つまり、飼い主が「吐かせたほうがいい」と感じる状況こそ、実は吐かせてはいけない状況だったということが起こり得ます。串やつまようじのような鋭利な物は吐き戻す途中で食道を傷つけ、腐食性のある物は逆流するときに食道と口の中をもう一度傷めます。判断は電話一本で獣医師に渡してしまうのが安全です。

メモ

動物病院では、注射薬や点眼薬を使って吐き気を起こす方法がとられます。「病院なら吐かせられるのに、なぜ家ではだめなのか」の答えは、使う手段の違いと、吐かせてよい状態かを判断できるかどうかの違いにあります。

催吐処置の禁忌(意識消失・呼吸困難・嚥下障害・すでに何度も嘔吐・強酸性/強アルカリ性製剤・突起物のある異物・石油系炭化水素・ボタン電池)は、三鷹獣医科グループ「犬猫の誤飲・誤食における催吐処置について」に記載された内容です。

とくに危険度が高いもの

飲み込んだ物によって緊急度はまったく変わります。家庭で起こりやすいものを整理しますが、「表にないから安全」という意味ではありません。判断は獣医師に委ねてください。

分類具体例主に心配されること
ひも状のもの糸、ストッキング、靴下、タオル、リボン、デンタルフロス腸がたぐり寄せられる形の閉塞、腸に穴があく(穿孔)
鋭利なもの焼き鳥の竹串、アイスの棒、つまようじ、骨、ガラス片、縫い針口・食道・胃・腸の損傷。催吐が禁忌になりやすい
電池ボタン電池、コイン形リチウム電池、乾電池アルカリ成分による化学やけど、消化管の穿孔
硬くて消化できないものとうもろこしの芯、桃やスモモの種、石、ボトルのキャップ喉に詰まる、消化管の閉塞
腐食性・発熱性のもの生石灰の乾燥剤、漂白剤、洗剤、パイプ洗浄剤口・食道・胃の粘膜のやけど。催吐は禁忌
中毒性のあるものたばこ、人用の医薬品、ネギ類、チョコレート、観葉植物中毒症状。物によっては短時間で発症
かさばる・膨らむものおもちゃ、ボール、布、スポンジ、保冷剤のパック消化管の閉塞、包装ごとの詰まり

注意

ひも状のものが口や肛門から出ている場合でも、絶対に引っ張らないでください。腸のどこかで引っかかったまま強く引くと、消化管を傷つけるおそれがあります。見えている部分を自己判断で切ることもせず、そのままの状態で動物病院へ向かってください(切る・引くの判断は獣医師に委ねます)。

危険度の分類と「糸が口や肛門から出ていても絶対に引っ張らない」「尖ったものを飲み込んだ場合は決して吐かせない」という注意は、アニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」によります。紙・ティッシュ・衣類・木の枝・骨・食品の包装・石などが犬に飲み込まれやすい物として挙げられる点は、VCA Animal Hospitalsを参照しました。

ひも状異物がとくに厄介な理由

「ひも1本くらい」と思われがちですが、獣医療ではひも状異物(線状異物)は特別扱いされます。詰まり方が他の異物とまったく違うからです。

ひもの一端が舌の付け根や胃の出口など1カ所に引っかかり、もう一方の端は腸の蠕動運動に押されて先へ進みます。すると固定された一端に向かって腸そのものがたぐり寄せられ、アコーディオンのようにひだを作った状態になります。この状態で腸が動き続けると、張ったひもが内側から腸壁をこすり、穴があく(穿孔)ことがあります。

MSD(Merck)獣医マニュアルでも、線状異物による閉塞は腸穿孔のリスクが高いとされ、画像診断では特徴的な腸のひだ(plication)が手がかりになると説明されています。犬は非線状の異物を飲み込むことが多く線状異物は猫でより多いとされますが、犬でも起こります。国内の動物病院の解説では、ひも状異物は完全な閉塞に至りにくいために腸管の拡張がはっきりせず、とくに猫では診断や治療が遅れやすい傾向があると指摘されています。

腸がたぐり寄せられて折りたたまれること、線状異物で腸穿孔のリスクが高いこと、腸のひだ(plication)が特徴的な画像所見であること、犬では非線状異物が多く猫で線状異物が多いとされることは、MSD(Merck)獣医マニュアル「Gastrointestinal Obstruction in Small Animals」によります。腸管拡張が見られず診断が遅れやすい点はさだひろ動物病院を参照しました。

電池はなぜ「すぐ」なのか

電池は、詰まるかどうか以前に化学的な損傷が心配されます。獣医師監修の解説では、アルカリ電池には融解壊死といって組織や細胞を壊死させ壊死領域を液化させる作用があり、アルカリ成分は中和されるまで深部組織へ浸透すると説明されています。かじって中身が漏れた場合は、激しく鳴く、涙やよだれが出る、口の中の潰瘍ややけどといった症状が現れることがあり、腹痛や吐血、ショックの報告もあります。そして先に触れたとおり、ボタン電池は催吐の禁忌です。吐かせれば済む話ではないため、気づいた時点で時間帯を問わず連絡してください。

アルカリ電池の融解壊死作用と深部組織への浸透、口腔粘膜の刺激症状や腹痛・吐血・ショックの報告は、ペトコトの獣医師監修記事によります。

乾燥剤・保冷剤・夏の食べ残し

お菓子の袋の乾燥剤は、シリカゲルと生石灰(酸化カルシウム)で事情がまったく違います。生石灰は水と反応して強く発熱し、消化管の粘膜や組織の水分と反応してアルカリによる腐食を起こします。二次診療施設の症例解説でも、一般的なシリカゲルとはまったく異なり非常に危険だと明記されています。保冷剤は逆で、現在市販されている多くは水と高吸水性ポリマーでできており、獣医師の解説では高吸水性ポリマーやプロピレングリコールは安全性が高く犬が食べても体調に問題をきたす可能性は低いとされています。ただし、かつて流通していた保冷剤にはエチレングリコール(不凍液の成分)が使われ、誤飲すると急性の腎不全を起こすとされます。パックごと丸のみした場合は腸閉塞のリスクもあります。

夏に増えるのが、とうもろこしの芯と桃の種です。芯は硬くて消化されず腸閉塞を起こす危険があるとされています。桃やスモモの種も喉や消化管に詰まることがあり、加えて種に含まれるアミグダリンをかみ砕くと腸内で分解されて青酸化合物となり、摂取量によっては下痢・嘔吐・けいれん・呼吸困難などの中毒症状を起こすことがあるとされます。芯や種はテーブルではなくフタつきのゴミ箱へ直行させる習慣が効きます。

生石灰の発熱と粘膜腐食、シリカゲルとは異なり非常に危険である点はオールハート動物リファーラルセンターの症例解説、保冷剤の主成分と安全性の評価・エチレングリコールによる急性腎不全・パックごとの丸のみによる腸閉塞はいぬのきもちWEB MAGAZINEの獣医師解説、とうもろこしの芯による腸閉塞は日本ペットフード、桃の種の詰まりとアミグダリンによる中毒症状はアニコム損保の獣医師監修記事によります。

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症状のサインと、「元気そう」の落とし穴

異物を飲み込んだあとに現れやすい症状として、獣医師監修の医療事典では嘔吐、気持ち悪そうにする、元気や食欲の低下が挙げられています。海外の動物病院の解説でも、嘔吐・下痢・腹部の痛み・食欲低下・排便のいきみや便量の減少・元気消失が代表的なサインとされています。加えて、吐こうとしてえづくのに何も出てこない、よだれが増えて前足で口元を掻く、お腹を触られるのを嫌がる、前足を伏せてお尻を上げる姿勢をとる、そわそわして落ち着かない、といった様子も手がかりになります。

注意

次の様子が見られるときは、時間帯を問わず、すぐに動物病院(夜間なら救急対応の病院)へ連絡してください。

  • 吐き続けている、うまく吐けず口元を掻いている
  • ぐったりして反応が鈍い、呼吸が荒く速い
  • けいれんや震えがある
  • 口や舌が白っぽい、または紫っぽい

ここでいちばん気をつけたいのが、「元気そうに見える」場合です。飲み込んだ直後は何ごともなかったように走り回っていることも多く、それが「様子を見よう」という判断につながります。けれども異物が体内に長くとどまれば消化管を傷つけたり閉塞や穿孔を起こしたりする危険があるとされ、症状がなくても誤飲から24〜72時間は注意深く観察することが必要だと動物病院は説明しています。獣医師監修の医療事典でも、どの治療法を選ぶ場合でも早期の治療が望ましいとされています。

そして、時間そのものが治療の選択肢を左右します。夜間救急に対応する病院の資料では、催吐処置は理想的には1時間以内、2〜3時間以内であれば適応時間内とされ、4〜5時間以内でも物の種類や胃の内容物によっては実施の意義があるとされています。適応となるタイミングを逃すと、内視鏡や開腹手術が必要になる可能性が出てきます。

ヒント

「様子を見る」という判断を飼い主が単独で背負う必要はありません。電話で状況を伝えれば、獣医師のほうから「朝まで様子を見て大丈夫です」あるいは「今すぐ来てください」と示してもらえます。迷う前に電話が、結果的にいちばん負担の軽い方法です。

嘔吐・気持ち悪そうにする・元気や食欲の低下、およびどの治療法を選ぶ場合でも早期の治療が望ましい点はアイペット損保「うちの子おうちの医療事典」、嘔吐・下痢・腹部痛・排便のいきみ等はVCA Animal Hospitals、緊急サインと24〜72時間の観察は東中野アック動物医療センター、適応タイミングを逃すと内視鏡や開腹手術が必要になりうる点は滝野川動物病院、催吐の時間の目安は三鷹獣医科グループによります。

なお、異物とは関係なく犬はもともと吐きやすい動物で、嘔吐そのものの見方(嘔吐と吐き出しの違い、嘔吐物の色、様子を見てよい範囲)は別記事にまとめています。ただし「誤飲の心当たりがある嘔吐」は、そちらの様子見の目安には当てはまりません。

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動物病院での対応の流れ

実際に受診すると何が行われるのか、あらかじめ知っておくと落ち着いて臨めます。

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    問診と身体検査

    いつ・何を・どれくらい飲み込んだか、症状の経過、体重、持病、飲んでいる薬を確認します。ここであなたが撮った写真とパッケージが力を発揮します。
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    画像検査(レントゲン・エコー)

    異物の位置と大きさを確認します。ただし種類によってはレントゲンに写らないこともあり、その場合は超音波検査が有用だと説明されています。必要に応じてバリウム検査や内視鏡検査が加わります。
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    催吐処置

    胃の中にあり時間が経っておらず、吐かせて安全な物であれば、注射薬や点眼薬で吐き気を起こして出す方法がとられます。ただし必ず出るとは限らず、鋭利な物や時間が経った物、すでに腸へ進んだ物には適しません。
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    内視鏡での摘出

    催吐で出せない、あるいは吐かせるべきでないケースで、異物が食道や胃のあたりにあれば、全身麻酔をかけて内視鏡で取り出します。粘膜の状態を直接確認できる利点があります。
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    外科手術(開腹)

    腸まで進んで閉塞を起こしている場合や、内視鏡では取り出せない大きさ・形状の場合は開腹による摘出が必要になります。腸に損傷があれば、その部分を切除してつなぎ直す処置が加わることもあります。

費用は処置の内容で大きく変わるため、ひとくちには言えません。参考として、アニコム損保の獣医師監修記事では1回あたりの治療費は7,344円程度というデータが示される一方、開腹による摘出になると手術後の入院も必要になるため費用が10万円を超えることも珍しくないと説明されています。催吐で済むか手術になるかで桁が変わるということです。受診の際は、処置の選択肢とあわせて概算を確認しておくと安心です。

診断の流れとレントゲンに写らない異物での超音波の有用性は滝野川動物病院、催吐・内視鏡摘出・開腹手術という段階はアイペット損保「うちの子おうちの医療事典」、治療費のデータはアニコム損保の獣医師監修記事によります。実際の費用は病院・地域・処置内容により異なります。

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子犬の時期がいちばん多い

誤飲は「うちの子に限って」と思いたくなる事故ですが、データを見ると若い犬に集中しています。アニコム損保が公開している資料では、0歳の犬の誤飲による保険金請求率が2019年の8.1%から2024年には13.0%にまで上昇したことが示されています。さらに、初めて犬を飼う飼い主のもとでは0歳の犬の誤飲事故が約20%にのぼるとされ、1年目に複数回の誤飲があった場合は2年目の請求率も高い傾向が指摘されています(出典は「アニコム家庭どうぶつ白書2025」)。獣医師監修の医療事典でも、異物誤飲はとくに子犬や食欲旺盛な子に見られると説明されています。子犬はかむ欲求が強く、世界を口で確かめる段階にあります。「悪いことをした」というより、発達段階として自然な行動が事故につながっていると捉えるほうが対策を組み立てやすくなります。

また公益財団法人日本中毒情報センターの解説では、中毒110番に寄せられる動物の急性中毒の問い合わせは年間約500件あり、その9割がイヌの事例だと紹介されています。同センターは、イヌは見えないところに置いていても匂いで探し出して口にすることがあると注意を促しています。「引き出しにしまったから大丈夫」が通用しない相手だという前提が、予防の出発点です。

0歳犬の誤飲請求率の推移(2019年8.1%→2024年13.0%)、初めて犬を飼う飼い主のもとでの約20%、繰り返しの傾向は、アニコム損保「STOP誤飲プロジェクト」(出典:アニコム家庭どうぶつ白書2025)によります。子犬や食欲旺盛な犬に多い点はアイペット損保「うちの子おうちの医療事典」、動物の急性中毒の問い合わせが年間約500件でその9割がイヌである点等は日本中毒情報センターによります。

起こる前にできること

誤飲対策は、しつけよりも環境整備のほうが即効性があります。「口に入れさせない」を仕組みで実現するのが基本です。

家の中の誤飲対策チェックリスト

  • ゴミ箱はフタつき・倒れにくいものにし、可能なら扉の中へ収納する
  • 調理台やテーブルの端に食材や串を置いたまま離れない。犬が後ろ足で立てば届く高さを基準に考える
  • 薬・サプリメントは扉のある棚へ。来客のバッグも犬の届かない場所へ
  • 洗濯かご・脱いだ靴下・タオルは床置きせず、フタつきのランドリーボックスにする
  • 裁縫箱、糸くず、リボン、輪ゴム、ヘアゴムなどの小物は引き出しへ
  • 乾燥剤・保冷剤・使い捨てカイロは、袋のまま床やソファに置かない
  • たばこ・電子たばこのカートリッジ・灰皿は犬のいる部屋に置かない
  • 電池はまとめて保管し、リモコンや体重計の電池ぶたが緩んでいないか確認する
  • 家具の隙間やソファ・ベッドの下を定期的に懐中電灯で確認する
  • 観葉植物や切り花は種類を調べ、置き場所を高くする

おもちゃの選び方と点検

おもちゃを選ぶときは、犬の口にすっぽり入ってしまわないサイズであること、かむ力に耐える素材であることが目安になります。そして選んだあとの点検が同じくらい大切です。遊ぶ前後にほつれ・欠け・穴・パーツの外れがないか手で触って確かめ、縫いぐるみは綿や笛が露出したら処分、ロープトイは繊維がほどけてきたら交換します(ほどけた繊維はひも状異物になり得ます)。かみちぎれたボールは破片を回収し、数がそろっているか確認しましょう。

メモ

留守番中は飼い主が異変に気づけません。留守番用と一緒に遊ぶ用でおもちゃを分け、留守番用は「壊れにくく、こわれても大きな破片にならないもの」に絞ると安心です。

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夜間・休日に備えて、連絡先を今すぐ控える

誤飲は診療時間内に起きてくれるとは限りません。あわてて検索しても夜間対応の病院はすぐには出てこないので、落ち着いている今のうちに調べて控えておきましょう。

今日のうちに準備しておきたいこと

  • かかりつけ動物病院の電話番号・診療時間・休診日をスマートフォンに登録する
  • 夜間・休日に救急対応している動物病院を1〜2件調べ、電話番号と所要時間・駐車場の有無を控える
  • 冷蔵庫やリビングの見える場所に連絡先を紙で貼っておく(家族の誰でも動けるように)
  • 愛犬の体重・年齢・持病・服用中の薬をメモにまとめておく
  • ワクチンや健康診断の記録、保険証券の番号をすぐ出せる場所に置く
  • 移動手段(車、タクシー、ペット可の配車アプリ)とキャリーの置き場所を家族で共有しておく

ヒント

スマートフォンの連絡先に「00_夜間動物病院」のように先頭を数字にして登録すると、リストの一番上に固定されて慌てているときも探さずに済みます。家族全員のスマートフォンに入れておきましょう。

キャリーやクレートに慣れていると移動の負担が減ります。動物病院が苦手な子は、平時から少しずつ慣らしておくと、いざという時が違います。

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よくある質問

飲み込んだかどうかはっきりしません。それでも病院に連絡すべきですか。
連絡して構いません。動物病院の解説でも、確信がなくても少しでも心配なら念のため相談することがすすめられています。電話で状況を伝えるだけなら費用もかかりません。逆に迷っている間に催吐処置の適したタイミングを過ぎると、内視鏡や開腹手術が必要になる可能性が出てきます。判断材料が足りないと感じたときこそ、専門家に渡してしまうのが安全です。
元気に走り回っています。うんちで出てくるのを待ってはいけませんか。
自然に排泄されることもありますが、それを家庭で判断するのは困難です。異物が体内に長くとどまると消化管を傷つけたり閉塞や穿孔を起こしたりする危険があるため、症状がなくても誤飲から24〜72時間は注意深く観察するよう動物病院は説明しています。待つかどうかを含めて、まず獣医師に相談してください。とくにひも状のもの、鋭利なもの、電池は、元気に見えても待つ選択は避けたほうがよい種類です。
ネットで見た『オキシドールで吐かせる方法』は本当にだめですか。
家庭では行わないでください。動物病院の解説では、オキシドール(過酸化水素)を飲ませると胃や食道の粘膜を重度に傷つけ、びらんや潰瘍ができてしまうと説明されています。食塩も同様で、ナトリウムの過剰摂取による食塩中毒を起こし、重症例では意識混濁などの神経症状が出ることがあるとされています。加えてボタン電池や鋭利な物、強酸性・強アルカリ性のものは、そもそも吐かせること自体が禁忌とされています。
口からひもが出ています。引っ張って抜いてもいいですか。
絶対に引っ張らないでください。ひも状異物は腸のどこかで一端が固定され、腸がたぐり寄せられている可能性があります。その状態で強く引くと消化管を傷つけるおそれがあります。切ることもせず、そのままの状態で動物病院へ連絡し指示を仰いでください。肛門から出ている場合も同じです。
病院に行くとき、何を持って行けばいいですか。
飲み込んだ物と同じ物(残っていれば)、パッケージや説明書き、残骸や破片、撮影した写真や動画です。薬なら何錠減ったかがわかるシート、食品なら原材料の表示があると助かります。あわせて体重・年齢・持病・服用中の薬、飲み込んだ推定時刻、その後の様子をメモにしておくと、限られた診察時間を有効に使えます。
誤飲を繰り返してしまいます。しつけが悪いのでしょうか。
飼い主の責任と決めつけないでください。誤飲は0歳前後の若い犬に多く、公開データでも1年目に複数回の誤飲があった場合は2年目の請求率が高い傾向が示されています。かむ・口で確かめる行動は発達段階として自然なものです。効果が出やすいのは叱ることよりも環境の作り替えで、届く高さの見直し、フタつきのゴミ箱、留守番中のエリア分け、おもちゃの点検といった仕組みで防ぎましょう。並行して『はなせ』『ちょうだい』を遊びの中で練習しておくと、外でも役立ちます。

まとめ

犬が異物を飲み込んだとき、飼い主に求められているのは処置ではなく、情報を集めて専門家に渡すことです。「何を・いつ・どれくらい」を把握し、パッケージや残骸を確保し、写真を撮って、動物病院に電話する。この4ステップが、そのあとの治療の選択肢を最大限に残します。

そして、家庭で吐かせようとしないこと。食塩やオキシドールは犬に重い障害を残すおそれがある方法として動物病院が警告しており、ボタン電池や鋭利な物、腐食性の物は獣医療でも催吐そのものが禁忌とされています。ひも状のものが口や肛門から出ていても引っ張らないのも同じ理由です。元気そうに見えても油断はできません。「様子を見るかどうか」を自分で背負わず、迷った時点で電話をかけてください。

今日できるいちばん確実なことは、夜間・休日に頼れる動物病院の連絡先を控えることと、家の中の「届く高さ」を一度見直すことです。誤飲は若い時期に集中し、繰り返しやすい事故だからこそ、仕組みで防いだぶんだけ犬も飼い主も穏やかに過ごせます。

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