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犬の睡眠時間と眠りの質|1日何時間が目安?寝すぎ・夜中に起きる・寝ながらピクピクの読み解き方

対象の目安: 全ライフステージ

アサヒ・編集長 / お迎え・住環境担当
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犬の睡眠時間と眠りの質|1日何時間が目安?寝すぎ・夜中に起きる・寝ながらピクピクの読み解き方

うちの犬、寝すぎではないだろうか。逆に、夜中に何度も起きてカチャカチャと爪の音を立てて歩き回るのは大丈夫なのだろうか。寝ながら足をピクピクさせて「ウッ」と声を出すのは、夢を見ているだけなのか、それとも。

犬の睡眠は、飼い主が毎日いちばん長く眺めている犬の姿でありながら、いちばん解釈に困る場面でもあります。しかも検索すると「成犬は12〜14時間」「シニアは18〜19時間」「1日の半分」と、資料ごとに数字が違います。どれを信じればいいのか分からなくなって、結局「まあ元気だから大丈夫か」と保留にしてしまう。

この記事では、数字の幅がなぜ生まれるのかを含めて、犬の睡眠を落ち着いて読み解くための材料を並べます。そのうえで、眠りの質を立て直すために家庭でできることと、これは睡眠の話ではなく体の話かもしれない、という線引きを整理します。夜鳴きや認知症、ベッド選びそれぞれの詳細は個別の記事に譲り、ここは「睡眠そのものの理解」に集中します。

犬は1日どれくらい寝るのか

まず数字を並べます。ただし先にお伝えしておきたいのは、これらは「その時間眠らせなければいけない」というノルマではなく、「だいたいこのくらい眠るものだ」という観察の目安だということです。

ライフステージ別の目安

資料子犬成犬シニア
RSPCA NSW(豪州)24時間で16〜20時間24時間で14時間さらに多くの睡眠が必要になることがある
PDSA(英国)より多く必要24時間で14〜16時間以上より多く必要
AKC(米国)18〜20時間1日の約半分を睡眠に充てるほとんどの老犬で12〜15時間
ワンクォール(獣医師監修)1日平均18〜19時間1日平均12〜14時間1日平均18〜19時間

RSPCA NSWの資料は「どの犬も必要な睡眠量は違う」と明記し、いつ・どこで・どのくらい眠るのを好むかを観察するよう勧めています。PDSAも「ほとんどの犬は24時間のうち14〜16時間以上の睡眠が必要だが、個体によってばらつきがある」としたうえで、子犬・高齢犬・体調が悪い犬やけがや病気から回復中の犬がもっとも多くの睡眠を必要とするとしています。

AKCの記事は、犬が1日の半分ほどを眠って過ごし、30%は起きているが休息している状態、活動しているのは20%ほどだという配分を挙げています。時間に直せば12時間前後が睡眠、7時間前後がごろごろ、5時間前後が活動というイメージです。

なぜ資料によって数字が違うのか

表を見て「シニアは12〜15時間なのか18〜19時間なのか、どっちなんだ」と思われたはずです。ここは正直にお伝えします。犬の睡眠時間には、人の睡眠指針のような単一の合意値がありません。

理由はいくつかあります。ひとつは測り方の違いです。飼い主の申告、活動量計(アクチグラフ)、ビデオ観察、脳波を含む睡眠ポリグラフ検査(ポリソムノグラフィ)では、同じ犬でも「眠っている」と判定される時間が変わります。ふたつめは対象の違いです。研究では家庭犬、シェルターの犬、実験施設の犬、特定犬種のビーグルなど、生活環境が大きく違う集団が使われます。

その差は実際に大きく出ます。Schorkらが2022年にScientific Reportsで報告した研究では、施設で暮らす成犬の夜間睡眠は平均6.1時間(370分、夜間時間の64.9%)で、平均10.8回のブロックに分かれていました。そして日中に眠っていたのは観察時間の6.02%だけでした。論文自身が、先行研究ではシェルター犬で660分、施設犬で720分という夜間睡眠が報告されており、日中の睡眠も20〜40%とされてきたのに対し、自分たちの犬は「これまで報告されてきたよりも大幅に少なく眠っていた」と述べています。

つまり、環境が変われば犬の睡眠は数時間単位で動きます。だからこそ「何時間が正解か」を追いかけるより、次の見方に切り替えたほうが役に立ちます。

ヒント

数字は「その子のいつも」を測るための物差しとして使ってください。今週の様子を1日ぶん書き出してみて、去年の同じ季節と比べてどうか。散歩を渋るようになっていないか。夜に起きる回数が増えていないか。絶対値より変化のほうが、ずっと多くのことを教えてくれます。

体格・犬種による傾向

体の大きい犬のほうが長く眠るという傾向は、複数の資料で触れられています。ワンクォール(獣医師の平松育子先生監修)は、小型犬でチワワ10〜12時間、ポメラニアン12〜13時間、トイ・プードル約14時間、中型犬で12〜15時間、大型犬ではゴールデン・レトリーバー18〜20時間、セント・バーナードやマスティフで16時間程度という目安を挙げ、大型犬では1日20時間ほど眠る子もいるとしています。

ただし犬種ごとの睡眠時間は、大規模な計測データにもとづく確立した数値というより、経験的な目安として紹介されているものです。同じ犬種でも活動量や生活環境で変わります。「うちのトイ・プードルは12時間しか寝ていないから足りない」と心配する必要はありません。

子犬の睡眠は「発達そのもの」

子犬の睡眠だけは、少し特別に扱ってよいと思います。AKCは、子犬が1日18〜20時間眠り、昼寝は30分から2時間程度で、およそ1時間おきに訪れると説明しています。そしてこの睡眠が中枢神経系・脳・免疫系・筋肉の発達に寄与するとしています。

同じ記事は、寝ている子犬はそのままにしておくこと、抱き上げて起こしたり、人に触られていないと眠れない状態にしてしまわないことを勧めています。また、刺激が多すぎて疲れきった状態(overtired)になると行動上の問題につながりうるとも述べています。

子犬が寝ているのを見ると、つい触りたくなります。写真も撮りたくなります。でも、寝かせておくこと自体が育てることでもある、と考えてみてください。

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犬の眠りは、人とどこが違うのか

「よく寝る動物なんだな」で終わらせるともったいない部分です。犬の眠りは、量が多いだけでなく構造が人と違います。

眠りが細かく分割される(多相性睡眠)

人の睡眠は基本的に単相性(monophasic)で、夜にひとつの大きなブロックとして眠ります。これに対して犬は多相性睡眠(polyphasic)で、睡眠がいくつものブロックに分かれます。Schorkらの論文はこの対比を明示し、キリンや犬を多相性睡眠の例として挙げています。

RSPCA NSWの資料は、これを飼い主向けにこう言い換えています。犬は夜に長く眠り、そのうえで日中に短い昼寝を積み重ねる。その昼寝で最大6時間ぶんの追加睡眠になることがある、と。

この構造を知っていると、いくつかの「心配」が解けます。夜中に犬が数回起きて水を飲み、また寝る。これは人の基準では「中途覚醒」ですが、犬にとっては眠りが分割されているだけかもしれません。ワンクォールでは、オーストラリアで行われた研究として、夜8時間のあいだに「睡眠16分・覚醒5分」という21分周期が平均23回繰り返されたという観察が紹介されています。Schorkらの論文でも、先行研究が報告してきた睡眠ブロックの数は23回から60回までの幅があると整理されています(同論文自身が観察した施設犬は、1晩あたり平均10.8回でした)。

メモ

「夜中に起きること」自体は異常ではありません。問題になるのは、起きたあと眠りに戻れないこと、起きているあいだに苦しそうだったり無目的に歩き回ったりすること、そして日中まで様子が変わってしまうことです。このあとの「夜中に起きる」の節で切り分けます。

活動には朝夕のふたつの山がある

Woodsらが2020年にScientific Reportsで報告した研究は、健康な家庭犬42頭(2〜9歳)に首輪型の活動量計を14日間つけて活動リズムを分析しました。その結果、活動は二峰性(bimodal)のパターンを示し、およそ午前7時ごろと午後7時ごろにピークがあり、正午ごろに谷が来ていました。若い犬は日中の活動量が高く、その差はピークの時間帯にとくに表れましたが、夜間の活動量には年齢による差はありませんでした。

興味深いのは、週末のほうが平日より日中の活動が多かったという結果です。犬の1日は、飼い主の1日に同調して形づくられているということです。

レム睡眠の割合は、出典によって大きく違う

ここは慎重に書きます。「犬はレム睡眠が少ないから長く眠る必要がある」という説明を目にすることがあります。AKCの記事は、犬が眠っている時間のうちレム睡眠は約10%で、人は最大25%であるとし、犬は失われたレム睡眠を補うために総睡眠時間が多く必要だという説明を載せています。同記事は、寝入ってからレム睡眠に移行するまでおよそ10分だとも述べています。

一方、Schorkらの論文は先行研究を整理する部分で、犬は通常24時間の43〜60%を眠って過ごし、レム睡眠は総睡眠時間の20〜36%の割合で生じるとしています。10%と20〜36%では、ずいぶん違います。

どちらかが間違いだと決めつけることは、この記事ではできません。測定方法、対象となった犬、レム睡眠の判定基準が異なれば、数値は動きます。確実に言えるのは、犬の眠りは人と同じようにノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返すが、その周期は人よりずっと短く、割合については単一の確定値が定まっていない、ということです。

AKC「Why Do Dogs Sleep So Much?」、Schork IGら「The cyclic interaction between daytime behavior and the sleep behavior of laboratory dogs」(Scientific Reports, 2022)より。後者のレム睡眠の割合は、同論文が引用する先行研究にもとづく記述です。数値の幅については、記事の性質上どちらかを採用せず、両方を併記しています。

眠ることは、覚えること

睡眠が学習と結びついていることも、犬で確かめられています。Kisらが2017年にScientific Reportsで報告した研究では、家庭犬15頭に、すでに知っている動作(おすわり・ふせ)を、聞いたことのない英語の合図と結びつける学習をさせました。そのあと3時間の睡眠ポリグラフ検査を行い、睡眠の前後で成績を比べると、睡眠後の成績は学習直前のベースラインより有意に向上していました。

RSPCA NSWの資料も、睡眠の情緒面の効果として、集中力の向上、ストレスへの対処能力、脳が学習と記憶を処理すること、不安・イライラ・落ち込みの軽減を挙げています。身体面では、日中のエネルギー、免疫機能の支え、心臓や筋肉といった体のシステムの休息と回復を挙げています。

しつけがうまく進まないとき、練習の回数を増やすより、まず眠れているかを見る。これは意外に効く視点です。PDSAは、睡眠が足りない犬はイライラしやすく、1日10時間未満の睡眠しかとれていない犬は、唸る・歯を当てる・噛むといった対立的な行動を示しやすい可能性があると述べています。

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寝相・寝言・ピクピクは心配なのか

結論から書きます。多くは生理的なもので、心配のいらない範囲です。ただし「多くは」であって「すべては」ではないので、見分け方を次の節で扱います。

レム睡眠中に起きること

AKCの記事で、同会の最高獣医責任者であるJerry Klein獣医師は「すべての犬は夢を見る。そして一部の犬は、ピクピクする・足で水をかくような動き・キックといった形で夢を表現する」と説明しています。同記事によると、こうした動きは多くが30秒未満で断続的です。中型犬では、寝入ってからおよそ20分で夢が始まるとされています。

レム睡眠中の犬には、浅く不規則な呼吸、筋肉のピクつき、閉じたまぶたの下で目が動くといった様子が見られます。いぬのきもちWEB MAGAZINE(獣医師の石田陽子先生監修)も、睡眠時に足や目をピクピクさせるのは浅い眠りであるレム睡眠のときに見られる行動で、脳の活発な活動に体が反応していると考えられるとし、心配は不要だとしています。

寝ている犬を起こすときは、手より声で

ひとつ実用的な注意があります。AKCの同じ記事は、レム睡眠中の犬を邪魔すると、本人の意図とは関係なく噛んだり引っかいたりしてしまうことがあるとし、どうしても起こす必要があるときは、触るのではなく名前を大きめに呼ぶか音を立てるよう勧めています。

子どもがいる家庭では、これは安全の話になります。RSPCAは、家族全員(子どもを含む)が、犬がベッドにいるあいだはそっとしておくと知っておくべきだとし、これは子どもの安全を守り犬を幸せにするうえで重要な部分だと述べています。

寝相に意味はあるのか

仰向けでお腹を出して寝る、いわゆる「へそ天」について、AKCは3つの説明を挙げています。体温調節(犬は足の裏から汗をかくため、お腹と足裏を空気にさらすと効率よく冷やせる)、痛みの軽減(筋肉や関節への圧迫が減るため、シニアや術後の犬に向くことがある)、そして安心している状態のあらわれ。

ただし同記事は、警備や牧羊の役割を担ってきた犬種は警戒を保つ必要から仰向けで寝ないことが多い、寒いときは丸まって熱を保つ、といった但し書きも付けています。寝相は「その子の好み」であって、性格診断の道具ではありません。寒ければ丸くなり、暑ければ伸びます。季節で変わるのが自然です。

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発作を疑うサインとの違い

ここがこの記事でいちばん慎重に書きたい部分です。夢と発作は、外から見ると似ていることがあります。そして見分けを飼い主が自力で確定させる必要はありません。必要なのは「これは獣医師に見てもらう材料だ」と気づけることです。

見た目の違い

見るところ夢・レム睡眠中の動き発作を疑うとき
体の張りやわらかいまま。ピクつく四肢が硬くなり、突っ張る
動きの激しさ小さく断続的激しく、不規則に全身が動く
続く長さ多くは30秒未満数十秒から数分続くことがある
声をかけたとき起きて、ふつうに反応する起こしても反応しない
排泄ふつうは起こらない排尿・排便・流涎が起こることがある
その後すぐふだんの様子に戻る混乱、見当識障害、うろつき、一時的な視覚の低下が続く
起きるタイミング眠っているとき起きているときや目覚めた直後が多いが、寝入りばなや睡眠中にも起こりうる

AKCの記事は、発作では四肢がより硬く突っ張り、動きがより激しくなり、発作中の犬は簡単には起こせず、排尿や排便をすることがあると説明しています。そして発作の多くは起きているときか目覚めた直後に起こるとしています。ただし同記事は「一部の犬は眠っている最中に発作を起こすことがある」とも述べ、夢ではなく睡眠中の発作を疑うなら獣医師に相談するよう勧めています。VCAも、遊びや食事のとき、あるいは寝入るときや目覚めるときのように脳の活動が変化する時間帯には発作が起こりやすいとしています。

VCA Animal Hospitalsは発作を3つの段階で整理しています。前兆期(pre-ictal phase)は隠れる・落ち着かない・そばに来るなど行動が変わる時期で、数秒から数時間続きます。発作期(ictal phase)は発作が実際に起きている時期で、数秒から数分。全般発作は通常1〜2分で、全身の筋肉が不規則に動き、足が無意味に水をかくように動き、頭が後ろに引かれ、排尿・排便・流涎が起こることがあります。発作後期(post-ictal phase)には、混乱、見当識障害、流涎、うろつき、落ち着かなさ、一時的な失明などが現れます。

迷ったら動画を撮る

自宅で起きた出来事を言葉で正確に伝えるのは、とても難しいことです。いぬのきもちWEB MAGAZINE(獣医師の石田陽子先生監修)は、痙攣が起きたときに飼い主が取るべき対応として、診察の手助けになるので痙攣している状況を記録したり動画を撮影したりすることを挙げています。コーネル大学Riney Canine Health Centerも、受診の前に写真・動画・メモで犬の行動を記録して獣医師に共有するよう勧めています。診察室では不安や恐怖でサインが隠れてしまうことがあるため、家庭での記録が重要な手がかりになるという理由です。なおVCAは動画について触れてはいませんが、発作がいつ始まったか、どのくらい続いたか、睡眠や興奮・食事との関連があるかといった注意深い観察から得られる情報が、原因を絞り込むうえで役立つとしています。

  1. 1

    まず自分と犬の安全を確保する

    周囲の危険なものをどかし、階段や段差から落ちないようにします。押さえつけない、大きな声で刺激しない、口にタオルや指を入れない。VCAは、犬は発作中に舌を飲み込まないと明記しており、口に指や物を入れても助けにはならず、ひどく噛まれるか犬を傷つける危険が高いと述べています。
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    時計を見る

    始まった時刻と、続いた長さを確認します。体感の時間は実際より長く感じられます。
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    横から動画を撮る

    全身が入るように、明るさを確保して。顔だけでなく四肢の動き、意識の有無が分かるように撮ります。
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    収まったら静かにしておく

    発作後はぼんやりしたり歩き回ったりします。刺激せず、転倒しないよう見守ります。
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    動物病院に連絡する

    動画と、起きた時刻・長さ・回数、直前の様子、最近の変化(食事、薬、体調)をまとめて伝えます。

注意

VCAは、5分以上続く発作(てんかん重積状態)は救急であり、直ちに動物病院での処置が必要だとしています。短い時間に複数回起きるクラスター発作も緊急の対応が必要です。また、いぬのきもちWEB MAGAZINEの記事は、痙攣が3分以上続く、呼吸をしていない・意識がない、短い痙攣でも繰り返す場合を注意が必要なケースとして挙げています。判断に迷う時間があるなら、迷わず電話してください。

なお、同記事は、ひどいいびきをかく、睡眠中に激しい動きをする、あるいはその行動を何度も繰り返す場合には、のどや気管、脳の疾患などの疑いもあるとしています。「夢だから大丈夫」で片づけず、繰り返すなら記録を残しておくのが安全です。

いびき・寝ているときの呼吸が気になるとき

寝ているあいだの呼吸は、家庭でも気づきやすい変化です。とくに短頭種では、いびきが「その犬らしさ」として受け入れられがちで、受診が遅れることがあります。

Niinikoskiらが2024年にJournal of Veterinary Internal Medicineで報告した研究は、犬63頭(短頭種28頭、非短頭種35頭)に首につける携帯型の装置をつけ、自宅で一晩の睡眠中の呼吸を記録しました。閉塞性呼吸イベント指数(OREI、観察時間あたりの閉塞性無呼吸と低呼吸の回数)の中央値は、全体で1.4、短頭種で3.8、非短頭種で0.7でした。短頭種であることは高いOREIの有意な危険因子で、OREI値の幾何平均で5.6倍(95%信頼区間3.2〜9.9)、過体重(ボディコンディションスコアが9段階で5を超える)であることも3.5倍(同1.8〜6.7)でした。これは「何倍発症しやすいか」というリスクの倍率ではなく、OREI値そのものの比である点に注意が必要です。さらに、来院した短頭種19頭にかぎった解析では、BOAS(短頭種気道症候群)が中等度から重度(グレード2・3)のBOAS陽性群で、OREIが2.5倍高くなっていました(軽度の所見にとどまるグレード1は陰性側に分類されています)。いびきをかいていた時間の割合の中央値は、短頭種で21.8%、非短頭種で0.0%でした。加齢は有意な因子ではありませんでした。

VCA Animal Hospitalsは、BOASについて、軽度では運動時のノイズを伴う呼吸が見られ、多くの犬は興奮すると鼻を鳴らし、眠っているときにいびきをかくと説明しています。重度になると運動で疲れやすく、運動後に倒れたり気を失ったりすることがあり、暑さのなかでは体を冷やす能力が損なわれているため症状が悪化するとしています。そして肥満が症状を大きく悪化させるため、減量が管理の重要な要素になるとしています。

メモ

この研究で分かるのは「短頭種では睡眠中の呼吸の乱れが起きやすく、体重が重いとさらに起きやすい」という傾向です。うちの子が何回無呼吸になっているかを家庭で測ることはできません。できるのは、いびきの音が以前より大きくなった、眠っているときに呼吸が止まったように見える瞬間がある、起き上がって呼吸を整えるような動きが増えた、といった変化を記録して受診時に伝えることです。動画は音もいっしょに残るので役立ちます。

「寝すぎ」が気になるとき

「寝てばかりで心配」という相談は、実はとても多いものです。ここでの落とし穴は、犬の睡眠時間がもともと長いので、「増えた」ことに気づきにくい点にあります。

AKCの老犬の睡眠についての記事は、ほとんどの老犬が1日12〜15時間の睡眠を必要とするとしたうえで、心配になるのは1日20時間を超えて眠る場合、そしてより重要なのは睡眠パターンの顕著な変化だとしています。同記事は、睡眠が増える背景として、犬の認知機能の低下(犬の認知症)、痛みや関節炎、腎臓の病気、甲状腺機能低下症、心疾患、がん、聴力の低下を挙げています。犬がシニアと呼ばれるのは、大型犬で6歳、小型犬でおおむね7歳からだとしています。

別のAKCの記事も、過剰な睡眠が犬のうつ状態、糖尿病、甲状腺機能低下症、聴力の喪失などのサインになりうるとし、まず行動の問題か医学的な問題かを判別することが第一歩だとしています。ワンクォール(獣医師監修)も、睡眠に関わる病気としてナルコレプシー、甲状腺機能低下症、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)を挙げています。

「よく寝ている」と「ぐったりしている」を分けるチェック

  • 起きているときの様子はふだんどおりか。呼びかけに反応し、ごはんを喜び、散歩に行きたがるか
  • 寝ている場所が変わっていないか。いつもの寝床ではなく、冷たい床や隅に移っていないか
  • 起き上がるとき、段差を上がるときに、ためらいや痛そうな様子がないか
  • 水を飲む量やおしっこの量が変わっていないか
  • 呼吸が速い、あえぐ、休んでいるのにハアハアが続く、といった変化がないか
  • 体重が短期間で変わっていないか、毛づやや皮膚に変化がないか
  • 日中に眠り、夜に落ち着かない、という昼夜の入れかわりが起きていないか

コーネル大学獣医学部Riney Canine Health Centerは、犬の痛みのサインとして、うろうろする・落ち着けない、ふだんより疲れて見える・動きたがらない、よく眠るようになるか眠ろうとしても楽な姿勢が見つからない、休んでいるのに過剰にあえぐ、歩くのが遅くなる・階段を上がったり寝ている姿勢から起き上がるのを嫌がるといった項目を挙げています。同センターは、犬は痛みを言葉で伝えられず、行動の変化はしばしば少しずつ進むため、ふだん見ている人の注意深い観察が早期発見に重要だとしています。

つまり「よく寝ている」と「痛くて動かない」は、家庭からは同じように見えることがあります。ここは自己判断せず、動物病院で診てもらう場面です。

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夜中に起きる・落ち着かないときの切り分け

いよいよ実務的なところです。順番が大切なので、順番で書きます。体の理由を先に外し、そのあとで生活リズムと環境を見て、最後に不安や加齢の話に進みます。逆にすると、必要な受診が遅れます。

1. 排泄

いちばん見落とされやすい理由です。トイレに行きたくて起きているだけ、という場合があります。SNoRE 3.0という飼い主記入式の犬の睡眠評価票(Scientific Reports, 2023)では、睡眠の質を測る因子の項目に「夜間の排泄の頻度」が含まれています。夜のおしっこは、睡眠の質を語るうえで無視できない要素として位置づけられているということです。

チェックしたいのは、トイレの場所まで行ける動線になっているか(暗い、滑る、段差がある、扉が閉まっている)、ペットシーツが汚れたままになっていないか、そして飲水量とおしっこの量が増えていないか。桑原動物病院の解説も、老犬の夜間不眠の原因として排泄の問題やトイレへのアクセスの困難さを挙げ、トイレまでの道筋を照明やマットで工夫することを勧めています。同院は、排泄障害のために苦痛を感じて鳴いている場合はすぐに受診してほしいとも述べています。

飲水量とおしっこが明らかに増えている場合は、睡眠の問題として扱うべきではありません。

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2. 痛み

前の節で触れたとおり、痛みは「落ち着けない」という形で表れます。日中は気が紛れていても、静かになった夜に痛みが前面に出てくることがあります。湘南ルアナ動物病院の解説も、夜間に眠れない原因として関節痛を挙げ、痛みやかゆみの兆候があれば早期受診を勧めています。いぬのきもちWEB MAGAZINEの記事(いぬ・ねこのきもち獣医師相談室の原先生監修)も、夜間のウロウロの背景としてお腹の張り、関節の痛み、皮膚のかゆみといった痛みや不快感を挙げています。

見るポイントは、寝てから姿勢を何度も変える、起き上がるときに時間がかかる、寝床に入るのをためらう、特定の場所を触ると振り向く、といった様子です。

3. かゆみ

かゆみは夜に強まることがあり、掻く・舐める・体をこすりつけるために眠りが分断されます。掻く音で飼い主が目を覚まし、「夜中に起きる」として相談されることも多い理由です。

耳を気にしている、足先を舐め続けている、同じ場所の毛が薄くなっている、といったサインがあれば、睡眠ではなく皮膚や耳の問題として受診してください。

4. 空腹とのどの渇き

桑原動物病院は、夕食から朝食までの時間が長い場合の空腹や渇きを、老犬の夜間不眠の原因のひとつに挙げ、対策として夜食の提供と、寝床の近くに水飲み場を置くことを勧めています。夕食が早い家庭では、夜が長くなりすぎている可能性があります。

活動リズムの研究でも、食事の時刻は睡眠に影響しうる要素として扱われています。Woodsらの研究が示した「活動の二峰性」も、朝と夕方の食事や散歩という人間側の予定と切り離せません。

5. 暑さ・寒さ・湿度

RSPCAは、犬に「快適で乾いており、すきま風のない、清潔で静かな、邪魔されずに休める場所」を与えるべきだとし、冷えた場所や湿った場所で暮らすと体調を崩しうるとしています。寝床の位置がエアコンの風の通り道にある、窓際で冬は冷え夏は西日が入る、床暖房の上で暑すぎる、といったことは珍しくありません。

温度・湿度の目安と留守番中のエアコンの扱いは、別の記事にまとめています。

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6. 生活リズムと運動量

ここでようやく「日中の過ごし方」の話に入ります。

Schorkらの研究が見つけたのは、悪循環の存在です。夜間の睡眠が分断されると、日中の不活発が増え、遊びや警戒といった行動が減り、食べる時間が増えました。そして日中に活動しないことが、次の夜のよい睡眠につながらない。論文は、夜の睡眠の乱れによって犬が日中に活動する意欲や能力を失い、その結果として日中の活動不足が夜の睡眠を改善しないという循環的な効果を指摘しています。さらに、前の夜の睡眠時間が次の夜の睡眠時間に有意な影響を与えていました。

一方、Bunfordらが2018年にScientific Reportsで報告した研究は、逆向きの手がかりを与えてくれます。家庭犬16頭(1.5〜7歳)を対象に、睡眠前の活動、時間帯、場所が睡眠の構造にどう影響するかを調べたところ、活動的な日のあとには、犬はより多く眠り、うとうと(drowsiness)の状態に早く入りやすく、うとうとで過ごす時間が減ってノンレム睡眠とレム睡眠の時間が増えていました。

つまり、日中の過ごし方は夜に返ってきます。ただし「疲れさせれば眠る」という単純な話ではありません。RSPCA NSWの資料は、よい睡眠を促すために、朝と夜寝る前の2回に活動を置くと健康的な睡眠スケジュールができるとしたうえで、「活動はいつも運動でなくてよい」と明記し、リラックスにつながる活動を選ぶよう勧めています。挙げられているのは、短くゆっくり近所を歩き、運動としてではなく好きなだけ嗅がせる「sniff-a-thon」、スナッフルマットや草むら、家の中の物の後ろにおやつを隠す宝探し、そして凍らせた知育トイやリックマット、好きな噛むおもちゃです。

7. 不安・分離不安

眠るという行為は、安心していないと成立しません。湘南ルアナ動物病院の解説は、環境ストレスの例として引っ越しや雷・花火などの騒音を挙げています。いぬのきもちWEB MAGAZINEの記事も、ストレスや分離不安から夜間に不安になり、飼い主を探してウロウロするケースがあるとしています。

留守番中の吠えや破壊、そそうがあわせて見られる場合は、分離不安の枠組みで考えたほうが早いことがあります。

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雷や花火のように特定の音がきっかけになっている場合は、音への恐怖として扱います。

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8. シニアの認知機能不全(CDS)

シニア期に「夜間に無目的に歩き回る」「昼夜が入れかわる」が出てきたときは、認知機能不全症候群(CDS、犬の認知症)が候補に入ります。

AAHA(米国動物病院協会)の2023年シニアケアガイドラインは、認知機能不全で見られる臨床サインの分類にDISHAAという頭字語が歴史的に用いられてきたと説明しています。Disorientation(見当識障害)、社会的なInteractionsの変化、Sleep-wake cycles(睡眠と覚醒のサイクル)の変化、House trainingやその他の学習した行動の喪失、Activityレベルの変化、そしてAnxiety(不安)の増加です。そのうえで「犬においてもっとも多い臨床サインは、日中の睡眠と夜間の落ち着かなさ、交流の減少、家の中での見当識障害、そして不安である」と記しています。

コーネル大学Riney Canine Health Centerは、CDSのサインとして「夜に家の中を歩き回る、日中に多く眠る」を挙げ、犬は9歳ごろから、あるいはそれ以降にCDSを発症しはじめることがあるとしています。そして獣医師は、痛み、関節炎、発作性疾患、全身の病気、視覚や聴覚の喪失といった似たサインを示す他の状態を除外するため、詳細な身体検査と血液・尿検査を勧めるとしています。

睡眠の乱れがCDSの重症度と結びついていることは、検査でも確かめられています。Reicherらが2023年にFrontiers in Veterinary Scienceで報告した研究は、シニア犬28頭(平均13.25歳)に午後の2時間の昼寝で睡眠ポリグラフ検査を行い、CADES(犬の認知症スケール)のスコアが高い犬ほどノンレム睡眠とレム睡眠の時間が短く、問題解決課題の成績が悪い犬ほどノンレム睡眠とレム睡眠の時間が短かったと報告しています。高齢の犬はより多くの時間を覚醒して過ごし、ノンレム睡眠が少ない傾向も見られました(ただし多重比較の補正後は統計的な強さが弱まっています)。

Schorkらの論文も、加齢に伴って夜間のレム睡眠が減り、日中のノンレム睡眠のブロックが長くなり、夜間の覚醒が増えることが犬でも確かめられていると整理しています。Zanghiらが2016年に報告した高齢ビーグル33頭(9〜16歳)の研究では、作業記憶の成績が悪い犬ほど日中の昼寝の回数が多いという逆相関が見られ(90秒遅延課題との相関でr=-0.39、有意水準5%未満)、11歳を超える犬では日中の活動が29%低くなっていました。

CDSのサインと家庭でのケアの詳細は、専用の記事にまとめています。

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注意

夜間の徘徊や夜鳴きを「年のせい」で片づけないでください。コーネル大学が挙げているとおり、痛み、関節炎、発作性疾患、全身の病気、視覚や聴覚の低下は、CDSと似たサインを示します。RSPCAも、高齢犬の睡眠サイクルが変わることがあるとしたうえで、こうした変化を引き起こしている医学的な原因を除外するよう獣医師に依頼することが重要だと述べています。行動の変化は、単に年をとったからではなく、その裏にある問題のサインかもしれないという立場です。

9. 認知症以外の病気

シニアでなくても、夜の落ち着かなさが病気のサインであることはあります。前述のとおり、腎臓の病気、糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、心疾患、痛みを伴う整形外科的な問題などが挙げられます。AAHAのガイドラインは、シニアのペットの最小限の検査項目として、甲状腺パネルを含む詳細な血液検査と尿検査を挙げています。

メモ

AAHAのガイドラインには、介護する人の負担に触れた印象的な記述があります。犬が夜通しあえぎ、歩き回っているなら、たとえ医学的にもっとも治療すべき問題が歯であっても、歯科処置を勧めるのが最善とは限らない。まず睡眠の障害を和らげることが飼い主のストレスを軽減し、そのあとで他の医学的な問題に取り組めるようになる、という考え方です。眠れない夜が続いているなら、その苦しさ自体を遠慮せずに獣医師に伝えてください。

眠りやすい環境をつくる

環境は、飼い主がその日から変えられるところです。犬の睡眠の研究は、環境が睡眠を大きく動かすことを一貫して示しています。

Bunfordらの研究では、自宅ではない場所で眠るとき、最初のノンレム睡眠のあとにレム睡眠に入る可能性が低くなっていました。慣れない場所では、深いところまで眠りきれないということです。PLOS ONEに2016年に掲載されたシェルター犬の研究では、犬が日中に眠っていた時間は2.8%だけで、先行研究の14.3%より大幅に少なく、研究者たちはこれを忙しいシェルター環境によるものだと考えています。犬たちは夜間の71.8%を眠ることで補い、スタッフが帰ったあとおよそ17分で眠りに入っていました。眠りたいのに眠れない環境が、実際に存在するということです。

寝床の場所

RSPCAは、犬用ベッドの置き場所について、暖かくすきま風のない場所に置き、選択肢を与えることを勧めています。具体的には、家の静かな部分に1つ置いて邪魔されずに休めるようにし、家族が過ごす部屋にもう1つ置いて、人のそばでくつろいだり眠ったりできるようにする、という提案です。

RSPCA NSWの資料も、犬のベッドを静かな場所に置き、目を覚まさせるような騒音や人の行き来が最小限になるようにすることを挙げています。

家庭で見直したいのは次の点です。

  • エアコンや扇風機の風が直接当たっていないか。夏も冬も、風が当たり続ける場所は休みにくい場所です。
  • 人の動線に入っていないか。廊下、キッチンの前、トイレに行く通り道、ドアの開閉の真横は、通るたびに犬が目を覚まします。
  • テレビやスピーカーのすぐ横になっていないか。
  • 人の気配がまったくない部屋に隔離されていないか。逆のパターンです。多くの犬は、家族の気配がある場所でくつろぎます。
  • 玄関やインターホンの音が直撃する位置になっていないか。

寝床の数と種類

「1頭に1つ」ではなく、「1頭に複数」が基本です。PDSAは、家の中に複数の「うたたねスポット」を用意することを挙げています。RSPCAは、多頭飼いでは取り合いを避けるために最低でも1頭に1つのベッドが必要だとし、いっしょにくっついて寝るのが好きな場合は、それに加えて2頭で余裕をもって共有できる大きさのベッドをもう1つ用意することを勧めています。

RSPCA NSWの資料は、置くベッドの種類にまで踏み込んでいます。体を伸ばせるものと丸まれるもの、暖かい季節向きのものと寒い時期向きのもの、覆いがなく開けたものと隠れ家のように覆われたもの、そして高齢の犬や関節に痛みがある犬のための厚みのあるパッド入りのもの。犬が自分で選べるように、家のあちこちに種類の違う寝床を置くという発想です。

ベッドのサイズについてRSPCAは、犬が自然な姿勢すべてで快適に横になれる大きさであるべきだとしています。タイプ別の比較は別記事にまとめています。

明るさと音、そして家族のルール

犬は人よりも少ない光で眠れますが、点いたり消えたりする光や、突然の音には反応します。夜のあいだ廊下の照明が点いていて人が行き来する、深夜にテレビを観る、といった生活は、犬の睡眠を分断します。

そして環境以上に効くのが、家族のルールです。RSPCAは、家族全員(子どもを含む)が犬がベッドにいるあいだはそっとしておくと知っておくようにすること、これは子どもの安全と犬の幸福の両方にとって重要だとしています。PDSAも、家の人が休んでいる犬を邪魔しないようにすることを挙げています。

寝床まわりの見直しチェック

  • 寝床が人の動線(廊下・ドアの横・キッチンの前)から外れているか
  • エアコンや扇風機の風が直接当たっていないか
  • 窓際で西日や冷気の影響を受けていないか
  • 家の中に寝床が2つ以上あり、静かな場所と家族のそばの両方を選べるか
  • 伸びて寝る姿勢でも体が収まる大きさか
  • 夜間に廊下の照明やテレビの光・音が届いていないか
  • 家族全員(子どもを含む)が、寝ている犬に触らないというルールを知っているか
  • シニアなら、寝床からトイレまでの動線に段差・滑り・暗さがないか

1日の組み立てで眠りの質を上げる

環境を整えたら、次は時間の設計です。ここで大事なのは「量を増やす」より「置き場所を決める」ことです。

朝と夕方に活動を置く

RSPCA NSWの資料は、朝と、夜寝る前のもう一度という2回に活動を置くことで、健康的な睡眠スケジュールができると説明しています。Woodsらの研究が示した二峰性の活動リズム(朝7時ごろと夕方7時ごろのピーク)とも整合します。犬がもともと動きたい時間帯に活動を置き、その間の時間は静かに過ごす。それだけで1日の輪郭がはっきりします。

走らせるより、嗅がせる

夕方の活動を「思いきり走らせる」に振ると、興奮が抜けないまま夜を迎えることがあります。RSPCA NSWが「活動はいつも運動でなくてよい」とし、リラックスにつながる活動としてゆっくり嗅がせる散歩や宝探しを挙げているのは、この点をふまえた提案だと読めます。

  • 夕方の散歩は、距離より「嗅ぐ時間」を長めに。歩数より満足度を優先します。
  • 帰宅後に、スナッフルマットや隠したおやつ探しを5〜10分。
  • 凍らせた知育トイやリックマットで、舐める・噛むという落ち着く行動を引き出す。

就寝前のルーティンをつくる

RSPCA NSWの資料は、毎日同じ日課にし、眠るための時間を明確に取ることを勧めています。そして寝る前にトイレに連れ出すこと、休む時間が来たら噛むものや舐めるものを与えることを挙げています。舐めることと噛むことは、眠る前に落ち着くのを助けるからだとしています。

湘南ルアナ動物病院の解説も、毎晩同じ時間に静かな環境で寝かせるルーティンを確立することを対処法の最初に挙げています。

  1. 1

    夕方: 嗅ぐ散歩と頭を使う遊び

    運動量ではなく、嗅覚と思考を使う時間として組みます。強い興奮を伴う遊びは、就寝の直前には置きません。
  2. 2

    夕食は早すぎない時刻に

    夕食から翌朝までが長くなりすぎると、空腹で夜中に起きる要因になります。桑原動物病院は、夕食から朝食までの時間が長い場合の空腹や渇きを原因に挙げ、夜食の提供や寝床近くの水を勧めています。量や回数を変えるときは、かかりつけの獣医師に相談してください。
  3. 3

    就寝前に刺激を落とす

    照明を落とし、テレビの音量を下げ、遊びに誘わない時間をつくります。人がそわそわしていると、犬もそわそわします。
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    寝る前にトイレへ

    最後の排泄を済ませます。シニアなら、夜中に行きたくなったときの動線(照明・滑り止め)も確認します。
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    舐める・噛むで締める

    寝床に入ったタイミングで、リックマットや長く噛めるおもちゃを。毎日同じ流れにすることで、「これが来たら寝る時間」という合図になります。

日中の睡眠を守る

見落とされがちですが、これは大きな要素です。RSPCA NSWの資料は、よい睡眠を助ける方法の最初に「1日の真ん中に昼寝のための時間と場所を与えること」を挙げています。

在宅で仕事をしている、小さな子どもがいる、来客が多い、といった家庭では、犬は日中に細切れの覚醒を強いられます。シェルター犬の研究が示したように、環境が忙しいと日中の睡眠は削られます。子犬なら、1時間おきの昼寝が必要な時期です。「起きているなら遊んであげよう」ではなく、「寝そうならそのままにする」を優先してみてください。

生活リズムが変わるとき

人の生活が変わると、犬の睡眠も変わります。PLOS ONEに2025年に掲載された研究は、そり犬25頭と家庭犬29頭、およびその世話をする人の活動を、サマータイム(DST)の切りかえ前後に活動量計で記録しました。そり犬はDSTの日に影響を受けたのに対し、家庭犬は飼い主が平日に早く起きるようになっても、それまでの活動パターンを保っていました。研究者たちは、柔軟な日課のほうが、急な予定の変更に犬が適応しやすくなると結論づけています。

厳密に分単位で同じである必要はない、ということです。大枠の流れ(朝の散歩、夕方の活動、夜の静けさ)を保ちつつ、時刻には少しの幅を持たせておく。そのほうが、飼い主の予定が変わったときに犬が動じにくくなります。

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留守番中、犬はちゃんと寝ているのか

見守りカメラを入れた飼い主が、いちばん最初に確認したくなるのがこれです。

まず、見守りカメラの映像を見るかぎり、留守番中の大半を横になって過ごす犬は多いようです。ただしここには2つの注意点があります。

ひとつは、横になっていることが「よく眠れている」とは限らないということです。Bunfordらの研究が示したように、環境が慣れない場所だと眠りが浅くなります。カメラに映る「静かに横になっている姿」は、深く眠っている姿とは別かもしれません。

もうひとつは、留守番中の睡眠には個体差が非常に大きいということです。留守番中に吠える、歩き回る、そそうをする、破壊するといった様子がある場合、それは睡眠の問題ではなく、ひとりでいることへの不安の問題です。

ヒント

見守りカメラは「安心するため」ではなく「記録するため」に使うと役立ちます。何時ごろに起きて動いたか、どこで寝ていたか、何の音に反応したか。1週間ぶんのメモは、受診のときにも留守番の練習を組むときにも、確かな材料になります。ただし、映像を見て不安になりすぎないこと。犬が数回起きて水を飲み、また寝るのは、多相性睡眠のふつうの姿です。

留守番そのものの練習と環境づくりは、別の記事で扱っています。

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動物病院に相談する目安

ここまで環境と生活リズムの話をしてきましたが、次のような変化があるときは、工夫を試す前に動物病院に相談してください。睡眠は多くの病気の窓になります。

動物病院に相談したい変化

  • 睡眠時間が急に増えた。または急に減った。とくに1日20時間を超えて眠るようになった
  • 起きているときの様子が変わった。呼びかけへの反応が鈍い、ごはんや散歩を喜ばなくなった
  • 夜間に無目的に歩き回る、同じ場所を行き来する、壁のほうを向いて立ち止まる
  • 夜鳴きが始まった。とくにシニアで、昼と夜の生活が入れかわっている
  • 寝ているときの呼吸が苦しそう。いびきが以前より大きい、呼吸が止まったように見える瞬間がある
  • 休んでいるのにあえぎ(パンティング)が続く
  • 寝ているとき以外もふらつく、足がもつれる、段差でつまずく
  • 体が硬くなって激しく動く、起こしても反応しない、そのあとぼんやりする(動画を撮って受診)
  • 寝床に入るのをためらう、起き上がるのに時間がかかる、楽な姿勢が見つからず何度も姿勢を変える
  • 水を飲む量やおしっこの量が増えた。夜間の排泄が増えた
  • 体をかき続ける、舐め続ける、耳を気にする
  • 体重や毛づや、皮膚の状態が変わった

注意

次の場合は、様子を見ずにその場で動物病院に連絡してください。発作が5分以上続く(VCAはこれをてんかん重積状態とし、救急としています)。短い発作を短時間に繰り返す。意識がない、呼吸をしていない。呼吸が明らかに苦しく、舌や歯ぐきの色が悪い。夜間や休診日でも、救急対応している施設の連絡先をあらかじめ調べておくと、迷う時間が短くなります。

受診のときに持っていくとよいものを挙げておきます。

  • 1週間ぶんの睡眠メモ(寝た時刻、起きた回数と時刻、日中の様子)
  • 気になる動きの動画(夜間なら、明るさを確保して全身が入るように)
  • 飲水量と排泄の回数・量の記録
  • 寝床の場所と部屋の写真。AAHAのガイドラインも、食事と水の場所や眠る環境の画像が役立つことがあると述べています
  • 与えている食事・おやつ・サプリメント・薬の一覧

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よくある質問

犬は1日何時間寝るのが普通ですか。
資料によって幅があります。PDSA(英国)はほとんどの犬が24時間のうち14〜16時間以上を必要とするとし、RSPCA NSW(豪州)は子犬で16〜20時間、成犬で14時間、シニアはさらに多く必要になることがあるとしています。AKC(米国)は子犬18〜20時間、ほとんどの老犬で12〜15時間としています。いずれも個体差が大きいという前置きつきの目安です。合計時間を暗記するより、その子のふだんの様子からの変化を見るほうが役に立ちます。
夜中に何度も起きるのは異常ですか。
それだけでは異常とは言えません。犬の眠りは多相性で、いくつものブロックに分かれます。施設で暮らす成犬を調べたSchorkらの研究では、夜間睡眠が平均10.8回のブロックに分かれていました。先行研究では、睡眠ブロックの数が23回から60回という幅で報告されてもいます。気をつけたいのは、起きたあと眠りに戻れない、起きているあいだに苦しそう・無目的に歩き回る、日中の様子まで変わってきた、という場合です。このときは動物病院に相談してください。
寝ながら足をピクピクさせたり、寝言を言ったりします。大丈夫でしょうか。
多くは生理的なものです。AKCによると、すべての犬は夢を見て、一部はピクピクや足をかくような動き、キックという形で表れ、その多くは30秒未満で断続的です。レム睡眠中は呼吸が浅く不規則になり、まぶたの下で目が動きます。一方、体が硬く突っ張る、動きが激しい、起こしても反応しない、そのあと混乱してぼんやりするといった場合は発作を疑います。迷うときは動画を撮って動物病院で見てもらってください。
寝ている犬を起こしても大丈夫ですか。
できれば起こさないほうがよく、必要なときは触らずに声で起こしてください。AKCは、レム睡眠中の犬を邪魔すると、本人の意図とは無関係に噛んだり引っかいたりしてしまうことがあるとし、名前を大きめに呼ぶか音を立てる方法を勧めています。RSPCAも、子どもを含む家族全員が、犬がベッドにいるあいだはそっとしておくと知っておくべきだとしています。これは犬のためでもあり、子どもの安全のためでもあります。
寝すぎているようで心配です。どこを見ればいいですか。
起きているときの様子を見てください。呼びかけに反応し、ごはんを喜び、散歩に行きたがるなら、まずは睡眠が長いだけかもしれません。逆に、起き上がるのに時間がかかる、楽な姿勢が見つからず姿勢を変え続ける、休んでいるのにあえぎが続く、といった様子があるときは痛みの可能性があります。コーネル大学Riney Canine Health Centerは、犬の痛みのサインとして、うろうろして落ち着けない、よく眠るようになるか眠ろうとしても楽な姿勢が見つからない、休んでいるのに過剰にあえぐ、といった項目を挙げています。AKCは老犬について、1日20時間を超える睡眠や、睡眠パターンの顕著な変化を受診の目安としています。
シニアになって夜に歩き回るようになりました。認知症でしょうか。
認知機能不全症候群(CDS)は候補のひとつですが、それだけとは限りません。AAHAの2023年シニアケアガイドラインは、犬の認知機能不全でもっとも多いサインとして日中の睡眠と夜間の落ち着かなさを挙げています。一方コーネル大学は、痛み、関節炎、発作性疾患、全身の病気、視覚や聴覚の喪失が似たサインを示すため、血液・尿検査でこれらを除外するとしています。RSPCAも、高齢犬の睡眠サイクルの変化について医学的な原因の除外を獣医師に依頼することが重要だとしています。年のせいと決めつけず、まず受診してください。
留守番中、犬はちゃんと眠っているのでしょうか。
見守りカメラの映像を見るかぎり、留守番中の大半を横になって過ごす犬は多いようです。ただし、横になっていることと深く眠れていることは同じではありません。Bunfordらの研究では、自宅ではない場所で眠るとき、最初のノンレム睡眠のあとにレム睡眠に入る可能性が低くなっていました。また、留守番中に吠える・歩き回る・そそうをする・壊すといった様子があるなら、それは睡眠ではなくひとりでいることへの不安の問題として考えたほうが早道です。
日中によく寝かせると、夜に眠らなくなりませんか。
犬の場合、その心配は当てはまりにくいと考えられます。犬は多相性の眠りで、日中の昼寝も睡眠の一部です。RSPCA NSWの資料は、よい睡眠を助ける方法の最初に「1日の真ん中に昼寝のための時間と場所を与えること」を挙げています。むしろSchorkらの研究は、夜の睡眠が乱れると日中の不活発が増え、それが次の夜のよい睡眠につながらないという悪循環を指摘しています。日中に無理に起こしておくより、日中の活動の質(嗅ぐ・考える)を上げるほうが夜に返ってきます。
いびきがうるさいのですが、放っておいてよいですか。
短頭種では、睡眠中の呼吸の乱れが起きやすいことが分かっています。Niinikoskiらの2024年の研究では、閉塞性呼吸イベント指数の中央値が短頭種3.8、非短頭種0.7で、短頭種であることは高い指数の有意な危険因子で、指数の幾何平均は5.6倍、過体重(ボディコンディションスコアが9段階で5を超える)でも3.5倍でした(いずれも「何倍発症しやすいか」ではなく指数そのものの比です)。いびきをかいていた時間の割合の中央値は、短頭種21.8%、非短頭種0.0%でした。VCAは肥満がBOASの症状を大きく悪化させるため減量が重要だとしています。いびきが以前より大きくなった、呼吸が止まったように見える、といった変化があれば、音も入る動画を撮って受診してください。
犬の睡眠の質を家庭で測る方法はありますか。
研究で用いられる睡眠ポリグラフ検査は家庭ではできませんが、飼い主が記入する評価票は開発されています。Scientific Reportsに2023年に掲載されたSNoRE 3.0は6つの質問からなり、寝つき、夜通し眠れるか、夜間の排泄の頻度、睡眠中の呼吸の中断、鳴き声で目覚めるか、ピクつきで目覚めるかを尋ねる構成です。研究では、このスコアが犬の認知症スケール(CADES)のスコアと中等度の正の相関を示しました。家庭でも、この6つの観点をメモしておくと、受診のときに伝えやすくなります。

まとめ

犬の睡眠には、人の睡眠指針のような単一の正解値がありません。子犬16〜20時間、成犬14時間前後、シニアはさらに多く、という目安はありますが、どの資料も「個体差が大きい」と前置きします。ですから、数字を追いかけるより、その子のいつもを知っておくほうが、ずっと実用的です。

そのうえで、覚えておきたい構造がひとつあります。犬の眠りは分割されるものだということ。夜に一度も起きない犬のほうが、むしろ例外的かもしれません。夜中に起きて水を飲み、また丸くなる。この繰り返しは、心配ではなく仕様です。

心配すべきなのは、変化のほうです。急に増えた、急に減った、夜に無目的に歩き回るようになった、呼吸が苦しそうになった、起きているときもふらつく。こうしたときは、環境の工夫を試す前に動物病院へ。睡眠は多くの病気が最初に顔を出す窓です。

そして、眠りやすさをつくるのは飼い主にできる仕事です。人の動線から外れた静かな寝床を、家の中に複数。朝と夕方に活動を置き、夕方は走らせるより嗅がせる。寝る前にトイレを済ませ、舐めるものや噛むもので締める。日中に眠そうなら、そのままにしておく。そして家族全員で、寝ている犬に触らない。どれも地味ですが、毎日効きます。

わが家の保護犬出身の中型犬は、リビングのソファの陰と、私の机の足元と、廊下の突き当たりに、それぞれ寝床を持っています。昼間は机の足元、夕方はソファの陰、夜は廊下の突き当たり。自分で選んで移動していく姿を見ていると、選べる家にしておいてよかったな、と思います。よく眠れている犬は、起きているときの表情がやわらかい。それが、いちばん分かりやすい指標かもしれません。

出典・参考

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