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犬と暮らす高齢者は要介護認知症のリスクが48%低い?国立環境研究所の研究と、シニア世代が犬を迎える前に現実的に考えること

対象の目安: 全ライフステージ

アサヒ・編集長 / お迎え・住環境担当
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犬と暮らす高齢者は要介護認知症のリスクが48%低い?国立環境研究所の研究と、シニア世代が犬を迎える前に現実的に考えること

2026年8月18日、国立環境研究所と東京都健康長寿医療センターが連名で、ひとつのプレスリリースを公表しました。タイトルは「犬と暮らす高齢者が増えると4年間で約5,920億円の公的支出削減」。約11,200名の高齢者を7.5年間追跡した疫学研究で、犬を飼育している人は飼育経験のない人にくらべて要介護認知症の発症リスクが48%低かった、という内容です。

数字のインパクトが大きいぶん、ニュースの見出しだけを見ると「犬を飼えば認知症にならない」と読めてしまいます。けれど、研究チーム自身は「可能性が示された」という慎重な言い方をしていますし、そもそも犬を迎えるという決断は、健康効果の話だけで決めていいものではありません。犬にも15年前後の一生があり、その一生を最後まで引き受けられるかどうかが問われます。

この記事では前半で、公表された研究の中身をできるだけ原文に忠実に整理し、どこまで言えてどこから言えないのかを確認します。後半では、シニア世代が実際に犬を迎えることを考えるときに、あらかじめ向き合っておきたい現実的な論点を、公的資料をもとにまとめます。おすすめでも反対でもなく、判断の材料をそろえるための記事です。

2026年8月発表の研究: 何を、どう調べたのか

まず、プレスリリースと論文抄録に書かれている内容を整理します。

項目内容
発表2026年8月18日、国立環境研究所・東京都健康長寿医療センター連名のプレスリリース
研究チーム国立環境研究所環境リスク・健康領域の谷口優主任研究員、東京都健康長寿医療センター、東京大学らの研究チーム
対象東京都健康長寿医療センターが実施する大規模疫学研究に参加した、自宅で暮らす高齢者11,224名(2016年に層化無作為抽出)
追跡期間約7.5年間
曝露の分け方「犬を飼育している」「過去に飼育していた」「飼育経験がない」の3群
アウトカム要介護認知症の発症(介護保険制度における医師の判定にもとづく)と死亡(人口動態統計で把握)
解析犬の飼い主の身体的・社会的・心理的な特徴にもとづく傾向スコア重み付け、および操作変数モデルによる因果性の検討、費用対効果分析
掲載誌International Journal of Environmental Research and Public Health(MDPI刊)、2026年7月22日付、DOI: 10.3390/ijerph23070938
著者谷口優、齋藤良行、清野諭、秦俊貴、森裕樹、小林江里香

主な結果

論文抄録によると、傾向スコア重み付けを用いた解析では、飼育経験がない人を基準として、現在犬を飼育している人の要介護認知症発症のオッズ比は0.53(95%信頼区間0.43-0.66)、過去に飼育していた人は0.97(0.86-1.09)でした。死亡についてのオッズ比は現在飼育で0.63(0.51-0.79)、過去飼育で0.88(0.78-0.99)です。

そのうえで因果性を検討する操作変数解析を行うと、現在犬を飼育している人の要介護認知症のオッズ比は0.52(0.27-0.98)、過去に飼育していた人は0.75(0.55-1.03)でした。プレスリリースが「48%低い」と表現しているのは、この0.52という値のことです。一方、死亡については現在飼育で0.59(0.35-1.01)、過去飼育で0.77(0.60-1.00)と、いずれも1を下回るものの、現在の飼い主では統計的に有意な差にはなりませんでした。

数値は国立環境研究所・東京都健康長寿医療センターのプレスリリース(2026年8月18日)および、Europe PMCに収載された同論文の抄録にもとづきます。オッズ比は「1」が「差がない」状態で、1より小さいほど発症が少なかったことを意味します。信頼区間が1をまたぐ場合は「差があるとは言い切れない」と読みます。

「4年間で約5,920億円」の中身

この研究がニュースになった最大の理由は、費用の試算でしょう。ただ、ここは誤解されやすいところなので、プレスリリースの記述をそのまま確認します。

プレスリリースは、犬と暮らす高齢者が増加する(犬の飼育率13.4%)と仮定した予算影響分析として、次の2つを並べて書いています。

  • 犬を飼育することによる家計からの支出を含めた社会全体の追加費用は、4年間で約4.63兆円になる
  • 公的支払者視点での医療・介護費は、4年間で約5,920億円の削減になる

つまり「約5,920億円の削減」は、医療保険・介護保険という公的な財布から見た数字です。飼い主一人ひとりがフードや医療費に払うお金まで含めれば、社会全体としてはむしろ支出が増える計算になっています。プレスリリースも「犬関連産業への支出が拡大するとともに、公的な医療・介護費の節減にも寄与することが期待されます」と、両方を並べた書き方をしています。

費用対効果分析では、公的支払者の視点では費用を減らしながら質調整生存年(QALY)を増やす「支配的」な結果になった一方、飼い主の自己負担を含めるシナリオでは、犬を飼わない場合とくらべた増分費用効果比が1QALYあたり674万4,174円と算出されています。「安上がりな認知症対策」という話ではないことがわかります。

なお、13.4%という飼育率はあくまで仮定として置かれた数値です。ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査では、犬の世帯飼育率は近年減少傾向が続いていると報告されており、この試算は「今より増えたら」という前提での推計だと理解しておく必要があります。

この研究をどう受け止めるか

注意

この研究は、犬を飼うことで認知症を予防できると証明したものではありません。プレスリリース自身も「犬との暮らしが認知症発症を抑制する可能性を示す結果」という表現にとどめています。認知症が心配な方は、まずかかりつけ医や地域包括支援センターに相談してください。

観察研究であるという前提

この研究は、実際に暮らしている人を追いかけて調べる観察研究です。「犬を飼うグループ」と「飼わないグループ」にくじ引きで割り付ける介入研究ではありません。そのため、次のような可能性が常につきまといます。

  • 逆因果: もともと心身が元気で外に出られる人だから犬を飼えている、という向きの関係。認知機能が落ちはじめた人は犬を新たに迎えにくく、飼っていた犬を手放すこともある
  • 未測定の交絡: 経済的な余裕、住まいの広さ、家族構成、もともとの活動的な性格など、犬の飼育と健康の両方に影響する要因が測りきれていない可能性

操作変数解析は、まさにこうした問題をできるだけ減らすために使われた手法です。プレスリリースでも「観察研究で問題となる逆因果や測定できない交絡の影響をできるだけ除き、因果関係を推定するための統計手法」と注釈されています。ただし「できるだけ除き」という言い方が示すとおり、この手法を使えば因果関係が確定するわけではありません。操作変数解析の推定値は信頼区間も広く(0.27-0.98)、95%信頼区間の上限は1のすぐ手前です。効果の大きさは、かなり幅を持って読む必要があります。

同じ研究グループの2023年の報告

谷口氏らは2023年にも、犬の飼育と要介護認知症についての論文をPreventive Medicine Reports誌で報告しています。そちらは東京都大田区に住む65歳から84歳の11,194名(平均74.2歳)を2016年から約4年追跡したもので、現在犬を飼育している人の要介護認知症発症のオッズ比は0.60(95%信頼区間0.37-0.97)でした。

この2023年の報告では、あわせて次の点も示されています。

  • 猫を飼育している人のオッズ比は0.98(0.62-1.55)で、猫では関連が見られなかった
  • 犬の飼い主のうち、運動習慣がある人ではオッズ比0.37(0.20-0.68)と関連が強く、運動習慣がない人では0.89(0.36-2.03)と有意ではなかった
  • 社会的孤立がない人ではオッズ比0.41(0.23-0.73)だった

同論文は自ら限界も挙げており、ベースライン時点で認知機能を測定していないこと、追跡が約4年と比較的短く逆因果の可能性が残ること、新型コロナウイルス感染症の第1波の影響で2020年3月から5月にかけて介護保険の新規申請が大幅に減り、追跡期間中の発症者数が過小評価されている可能性があることなどを述べています。

「犬そのもの」ではなく「犬がいることで生まれる歩く習慣や人とのつながり」が効いているのかもしれない、という読み方は、この結果からは自然に出てきます。

WHOのガイドラインが言っていること

認知症のリスク低減について、世界保健機関(WHO)は2019年にガイドラインを公表しています(日本語版は令和元年度厚生労働省老人保健健康増進等事業として邦訳されました)。そこでは身体活動について「身体活動は、認知機能正常の成人に対して認知機能低下のリスクを低減するために推奨される」とされ、エビデンスの質は中、推奨の強さは強いと位置づけられています。

一方で社会活動については、「社会活動と認知機能低下や認知症のリスクの低減との関連については十分なエビデンスはない。ただ、社会参加と社会的な支援は健康と幸福とに強く結びついており、社会的な関わりに組み込まれることは一生を通じて支援されるべきである」と書かれています。

つまり現時点で確立しているのは「体を動かすこと」であって、「犬を飼うこと」ではありません。犬との暮らしは、毎日外に出て歩く理由をつくってくれる手段のひとつとして期待されている段階だと考えるのが妥当です。

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それでも、迎えるかどうかは別の問題

ここからは、実際にシニア世代が犬を迎えることを考えるときの論点です。環境省はパンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」で、「ペットの寿命は年々伸び、犬や猫は15年以上生きることも珍しくありません。万が一自分が病気などになってしまって、飼い続けることができなくなったときにどうするか……。そんな事も考えて、対策をとっておくことがシルバー世代のペットへの責任です」と呼びかけています。この一文が、以下すべての土台になります。

1. 体力と散歩をどう見積もるか

犬との暮らしのメリットとして語られる身体活動は、そのまま転倒のリスクにもなります。米国の救急外来データ(全米電子傷害監視システム)を分析し、医学誌JAMA Surgeryに2019年に発表された研究では、リードでつないだ犬の散歩に関連した転倒による骨折で救急外来を受診した65歳以上の件数が、2004年の1,671件から2017年の4,396件へと増えていたと報告されています。骨折の53%は上腕、17%は股関節(大腿骨近位部)で、およそ30%が入院を要したとされます。受傷者の78.6%は女性でした。

日本でも、消費者庁は高齢者の「転倒・転落・墜落」による死亡者数が「交通事故」による死亡者数の約4倍にのぼること、要介護になった主な原因として「骨折・転倒」が4番目に多いことを指摘しています。東京消防庁の集計でも、令和6年に日常生活の事故で救急搬送された高齢者のうち、「ころぶ」事故が7万3,500人と大半を占めています。

これは「シニア世代は犬を飼うな」という話ではありません。犬のサイズや引っ張り癖、散歩コースの選び方、リードの持ち方といった具体的な準備で、リスクの大きさは変わります。環境省のパンフレットも、犬について「犬種によって大きさ・特性・性格、必要な運動量が異なります。将来の自身の体力なども考えて選択しましょう」と書いています。

ヒント

10年後の自分の体力で、その犬を毎日散歩させられるか。膝や腰に不安が出たとき、代わりに歩かせてくれる人がいるか。この2つを、迎える前に具体的に想像してみてください。

2. 自分にもしものときの引き取り手を決めておく

動物愛護管理法は、動物の所有者に対し、その動物が命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)を努力義務として定めています。東京都動物愛護相談センターも、都の条例で「動物をその終生にわたり飼養するよう努めなければならない」「終生にわたり飼養することが困難となった場合には、新たな飼い主を見つけるよう努めなければならない」と定められていると案内しています。

飼い主が入院したり亡くなったりしたとき、犬を引き取ってくれる人が決まっていなければ、この責任は宙に浮きます。環境省のパンフレットは、困ったときに備えて次のような準備をすすめています。

  • 一時的な預け先を見つけておく(家族、友人、近所の人など、いつも会っている人ならペットも安心)
  • かかりつけの動物病院をつくる(歩いて通える距離、普段から検診などで信頼関係を築く、一時的な預かりができる場合もある)
  • ペットホテルやペットシッターを調べておく(事前に探して、試しに短期間利用してみる)

さらに「将来にもっと備えるために」として、ペットのための遺言・信託(自分が先に亡くなったときに誰に託すか、残した財産をどう使うかを決めておく)、老犬・老猫ホーム(ペットを預かり亡くなるまで世話をする第一種動物取扱業の民間業者)、ペット保険の3つが紹介されています。老犬ホームなどを利用する場合は、よく調べて相談のうえで、と注意が添えられています。

「自分が先に逝ったらこの子はどうなるの」と娘に言われて、はじめて具体的に考えました。結局、娘夫婦に引き受けてもらう約束を書面にしてから迎えました。——シニア世代の飼い主からは、こうした声がよく聞かれます。
70代で犬を迎えた飼い主

3. お金の見通しを立てる

犬にかかるお金は、フード代だけではありません。ワクチンや予防薬、健康診断、病気やけがの治療費、シニア期の介護用品まで含めた生涯費用を見積もる必要があります。年金生活に入ってからの支出として無理がないか、家族とも共有しておきたいところです。

具体的な金額の目安は、ペットフード協会の最新調査をもとにした犬の飼育費用の記事でまとめています。あわせて、高額になりやすい手術・入院に備えるペット保険は、加入できる年齢の上限が設定されていることが多いため、迎えるタイミングで検討しておくと選択肢が広がります。

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4. 預け先を「迎える前に」試しておく

入院は突然決まります。そのときに初めてペットホテルを探すのでは、犬にとっても負担が大きくなります。環境省のパンフレットが「事前に探して、試しに短期間で利用してみましょう」とすすめているのは、この理由からです。

預け先の選択肢と特徴は犬の預け先の選び方の記事で比較しています。あわせて、預けられる子にしておくための準備(トイレのしつけ、ケージの中で落ち着ける、他人に触られることに慣れる、ノミ・ダニの予防、ワクチン接種、寄生虫の駆除、健康手帳の記録)も、パンフレットで具体的に挙げられています。これらは災害時の避難でもそのまま必要になります。

5. どんな犬を迎えるか: 成犬・シニア犬という選択肢

環境省のパンフレットは、シルバー世代には成犬・成猫からが飼いやすいとして、「おとなの犬や猫は、大きさや性格がある程度分かっているという利点があります」と書いています。保護施設からの譲渡には年齢制限等の条件もあるとしたうえで、犬や猫の紹介、トライアル期間(試しに飼ってみる期間)、飼い方のアドバイスなども行われているので、選択肢のひとつとして考えてみてはどうか、という案内です。

一方で、譲渡の年齢条件は現実的なハードルにもなります。東京都動物愛護相談センターは、譲渡を受けるための条件のひとつとして「都内にお住まいの20歳以上60歳以下の方」を挙げています。民間団体でも、NPO法人犬と猫のためのライフボートは、生後1年以内の子犬・子猫の里親については上限を60歳としつつ、後見人がいる場合や、「里親の年齢マイナス60」以上の年齢の犬猫であれば譲渡するケースがあると説明しています。

これは高齢者を排除するためのルールというより、犬のほうの一生を最後まで見届けられるかを担保するための条件です。60歳を過ぎてから犬を迎えたい場合は、次のような形が現実的な落としどころになります。

  • 子犬ではなく、成犬・シニア犬を迎える(残りの年数の見通しが立てやすい)
  • 後見人・身元引受人になってくれる家族を立てる
  • 譲渡条件を団体ごとに個別に確認する(条件は団体・自治体によってかなり違う)
  • トライアル期間を活用し、生活が実際に回るかを確かめる

保護犬を迎える流れや、いま自治体に収容されている犬の実像は保護犬を迎える記事にまとめています。

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6. 住まいと、その先の住まい

賃貸なら契約でペット飼育が認められているか、分譲でも管理規約はどうかを確認します。環境省のパンフレットも「飼う前にチェック」の項目に「ペットを飼える住まいですか?」を挙げ、賃貸の場合は契約内容を確認するよう促しています。

その先も考えておきたいのが、施設に移ることになった場合です。ペットと一緒に入居できる高齢者向け施設は少しずつ出てきているものの、まだ数は限られ、多くは「ペット相談可」として個別の審査になります。介護施設の検索サイトでも、入居条件や空室状況は施設ごとに異なるため運営事業者への確認が必要だと注記されています。特別養護老人ホームでペットとの入居を受け入れている例(神奈川県横須賀市の「さくらの里 山科」)も報じられていますが、こうした施設は全国的にまだ限られているのが実情です。

7. 犬側から見て、この暮らしは幸せか

ここまでは人の側の話でした。最後に、犬の側から見ておきたいと思います。

犬は、散歩とにおいをかぐ時間、人との関わり、安心して眠れる場所、体調が悪いときにすぐ動物病院に連れて行ってもらえること、そして一生涯の居場所を必要としています。飼い主の健康効果のために迎えられた犬が、散歩に十分連れ出してもらえず、途中で行き場を失うようなことになれば、それは犬にとって不幸です。

逆に言えば、上の1から6が整っている家であれば、犬にとっても穏やかで、生活リズムの安定した良い環境になり得ます。「人の役に立つから飼う」ではなく「この子と一緒に暮らしたい、そして最後まで責任を持てる」という順番であることが、犬側の福祉を守る一番の条件だと考えています。

シニア世代が犬を迎える前のチェックリスト

  • 10年後の自分の体力でも、その犬種・サイズの散歩を続けられそうか
  • 散歩を代わってくれる家族・知人がいるか。転びにくい靴やコースを用意できるか
  • 自分が入院したとき、すぐに預けられる先(家族・知人・ペットホテル・シッター)が具体的に決まっているか
  • 自分が飼い続けられなくなったときの引き取り手について、家族と話し合い、同意を得ているか
  • フード・予防・医療・介護まで含めた生涯費用を年金生活の中で払っていけるか
  • 歩いて通える距離にかかりつけの動物病院を確保できるか
  • 住まいの契約・管理規約でペット飼育が認められているか
  • 子犬にこだわらず、成犬・シニア犬という選択肢も検討したか
  • 家族全員が飼うことに賛成しているか、動物アレルギーの人はいないか
  • マイクロチップの登録や狂犬病予防注射など、法律上の手続きを続けられるか

「迎える」以外の関わり方もある

犬と関わりたい気持ちはあるけれど、終生飼養まで引き受けるのは難しい。そう感じたなら、無理に迎えないという判断も立派な選択です。そのうえで、次のような関わり方があります。

  • 保護団体や動物愛護センターの譲渡会・イベントに参加する
  • 家族や友人の犬の散歩を手伝う(自分の体力で無理のない範囲で)
  • 保護施設のボランティア(犬の散歩や清掃など)に参加する。受け入れ条件は団体により異なるので事前確認を
  • すでに犬と暮らしている家庭を、預かりや通院の面で支える側にまわる

そして、認知症のリスク低減という観点でエビデンスがはっきりしているのは、繰り返しになりますが身体活動です。犬がいなくても、毎日歩くこと自体には価値があります。犬は「歩く理由」を強力につくってくれる存在ですが、歩く理由は他にもつくれます。

よくある質問

犬を飼えば認知症を予防できるということですか?
そこまでは言えません。今回の研究は観察研究で、犬を飼うグループと飼わないグループを無作為に割り付けた介入研究ではありません。研究チームも『認知症発症を抑制する可能性を示す結果』という表現にとどめています。認知症のリスク低減としてWHOが強く推奨しているのは身体活動であり、犬の飼育そのものが推奨項目になっているわけではありません。
48%という数字はどの数字ですか?
操作変数解析で得られた、現在犬を飼育している人の要介護認知症発症のオッズ比0.52(95%信頼区間0.27-0.98)を『48%低い』と表現したものです。信頼区間の上限が0.98と1のすぐ手前まで来ており、効果の大きさには幅があると読むのが妥当です。
5,920億円が節約できるなら、社会全体で得をするのでは?
プレスリリースは、公的支払者から見た医療・介護費の削減が4年間で約5,920億円である一方、家計からの支出を含む社会全体の追加費用は約4.63兆円になると、両方を書いています。公的な財布の負担は減るけれど、社会全体の支出は増えるという試算です。
猫ではどうなのですか?
同じ研究グループが2023年に報告した研究では、猫を飼育している人の要介護認知症発症のオッズ比は0.98(0.62-1.55)で、関連は見られませんでした。散歩という身体活動の有無が関わっている可能性が指摘されていますが、確定した説明ではありません。
60歳を過ぎていると保護犬を迎えられませんか?
団体・自治体によって条件が異なります。東京都動物愛護相談センターは『都内にお住まいの20歳以上60歳以下の方』を条件のひとつとしていますが、民間団体では後見人がいる場合や、迎える犬の年齢によっては譲渡を検討するところもあります。まずは複数の団体に条件を確認してみてください。
すでに犬と暮らしていて、自分が高齢になってきました。何から手をつければよいですか?
環境省のパンフレットが挙げる順で言えば、一時的な預け先の確保、かかりつけの動物病院づくり、ペットホテル・シッターの試し利用、そして自分が飼えなくなったときの引き取り手について家族と話し合うことです。あわせて、犬が預けられる状態(トイレ、ケージ、他人に触られることに慣れる、予防と接種の記録)を整えておくと、災害時にも役立ちます。

まとめ

今回の研究は、日本の大規模なコホートを用いて、犬との暮らしと要介護認知症・死亡との関連を丁寧に検討し、公的支出への影響まで試算した点で、意義のある報告です。同時に、観察研究であるという性質上、「犬を飼えば認知症を防げる」という結論には至っていません。効果の推定にも幅があり、犬がいることで生まれる歩く習慣や人との関わりが効いている可能性も残されています。

だからこそ、この研究をきっかけに犬を迎えるかどうかを考えるときは、健康効果への期待ではなく、その犬の一生を引き受けられるかという問いから始めてほしいと思います。体力、お金、預け先、もしものときの引き取り手、住まい、家族の合意。これらが整ったうえで迎えた犬との毎日は、統計の数字とは関係なく、きっと豊かなものになるはずです。

すでにシニア期の犬と暮らしている方はシニア犬との暮らし方の記事を、飼い主としての法律上の責任を確認したい方は動物愛護管理法の記事もあわせてご覧ください。

出典・参考

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