ワンレッジ
健康・ケア

犬の膀胱炎・頻尿・血尿|サインの見分け方と検査・治療、再発を防ぐ家庭のケア

対象の目安: 全ライフステージ

ツムギ・食事・健康担当
・ 約31分で読めます
犬の膀胱炎・頻尿・血尿|サインの見分け方と検査・治療、再発を防ぐ家庭のケア

さっきトイレに行ったばかりなのに、また同じ場所でしゃがんでいる。長い時間いきんでいるのに、出ているのはほんの数滴。ペットシーツに、うっすらピンク色のしみ。犬のおしっこのトラブルは、こうした「いつもとちょっと違う」から始まることがほとんどです。

おしっこの異常は、飼い主が気づける数少ない体のサインのひとつです。そして膀胱炎のように治療でよくなるものから、尿道が詰まって命に関わるものまで、幅がとても広いのも特徴です。とくに気温が下がる季節は水を飲む量が減り、尿が濃く少なくなることで泌尿器のトラブルが起きやすくなると、複数の動物病院が注意を呼びかけています。

この記事では、家庭で気づけるサイン、細菌性膀胱炎と尿石症の関係、オスとメスで違う点、待ってはいけない緊急事態、動物病院で行われる検査と治療の流れ、そして再発を防ぐための家庭のケアを順にまとめます。診断と治療は獣医師の仕事です。ここでの情報は、落ち着いて観察し、必要なときに迷わず動物病院へ行くための地図としてお読みください。

まず知っておきたい、犬のおしっこの「ふつう」

異常に気づくには、その子のふだんを知っておくのがいちばんの近道です。

排尿の回数は、あらたま動物医療センターの解説では成犬で1日3〜5回程度、子犬で5〜7回程度が目安とされています。ただし食事の内容、飲水量、散歩の回数、季節、年齢によって幅があります。「一般的な回数」より、「その子のいつもの回数」からどれだけずれたかのほうが、はるかに役に立つ情報です。

飲水量の目安は、湘南ルアナ動物病院の解説で体重1kgあたり50〜60mL程度が挙げられています。5kgなら250〜300mL、10kgなら500〜600mL、20kgなら1,000〜1,200mLという計算です。逆に体重1kgあたり100mL以上を飲むようになったら多飲と判断され、糖尿病や腎臓の病気などが隠れていることがあるため受診の対象になります。

メモ

この数字は「これだけ飲ませなければいけないノルマ」ではありません。ウェットフードや手作り食の犬は食事から水分をとるため、水皿から飲む量は少なくなります。季節や運動量でも変わります。飲水量の目安や療法食の要否は、その子の体格・持病・食事内容によって変わるので、必ずかかりつけの獣医師の指示のもとで判断してください。

排尿回数の目安(成犬1日3〜5回、子犬5〜7回)はあらたま動物医療センターの解説、飲水量の目安(体重1kgあたり50〜60mL)と多飲の基準(同100mL以上)、ウェットフードや手作り食では水皿からの飲水が減る点は、湘南ルアナ動物病院(福長誉之院長監修)の解説に基づきます。

家庭で気づけるサイン

膀胱や尿道にトラブルが起きたときに現れやすいのは、次のような変化です。ひとつだけのこともあれば、いくつも重なることもあります。

回数と量の変化

もっとも多いのが頻尿です。回数は増えているのに、1回に出る量はごく少ない。この組み合わせがポイントで、「たくさん飲んでたくさん出る」多飲多尿とは意味が違います。アニコム損保の獣医師監修記事では、初期には頻尿と残尿感が目立ち、膀胱に十分な尿がたまる前に排尿してしまう、排尿が終わったはずなのに排尿姿勢を続ける、排尿姿勢をとっているのに尿が出ていない、といった様子が説明されています。

色とにおいの変化

血が混じると、量によってピンク色から赤、赤黒い色までさまざまに見えます。アニコム損保の解説によれば、出血している部位が尿道口から遠いほど(いちばん遠いのが腎臓)、赤というより赤黒い色として確認されることがあるとされています。ごく少量だと肉眼では分からず、尿検査ではじめて潜血が見つかることも珍しくありません。

濁って白っぽく見える場合は、膿や細胞が混じっている可能性があります。においがいつもより強くなる、アンモニア臭がきつくなる、といった変化も報告されています。

ヒント

色の変化は、片づける前にスマートフォンで写真を撮っておきましょう。ペットシーツの上でも構いません。時刻がデータに残るので、診察のときにそのまま見せられます。アニコム損保の解説でも、排泄した尿の写真を撮っておくとよいと案内されています。

行動の変化

  • トイレのそばから離れない、落ち着かない
  • 排尿のときに鳴く、うなる、途中でやめてしまう
  • 排尿の前後に陰部をしきりに舐める、気にする
  • トイレを覚えていたのに、そそう(粗相)が増えた
  • 背中を丸めてお腹に力が入っている、お腹を触ろうとすると嫌がる

MSD(Merck)獣医マニュアルの飼い主向け解説でも、細菌性膀胱炎の典型的なサインとして、頻尿、痛みや困難を伴う排尿、そして不適切な場所での排尿が挙げられています。同時に「まったく症状を示さない犬もいる」とも書かれており、健康診断の尿検査で偶然見つかることもあります。

初期に頻尿と残尿感が目立つこと、排尿姿勢をとっても尿が出ないこと、進行すると膿尿や血尿・排尿痛が現れることはアニコム損保「犬との暮らし大百科」(獣医師・増田国充氏監修)、出血部位が尿道口から遠いほど赤黒く見えること・尿の写真を撮っておく助言も同サイトの血尿の解説によります。頻尿・排尿困難・不適切な場所での排尿という3つのサイン、および無症状の犬がいる点はMSD獣医マニュアルの飼い主向け解説に基づきます。

気づいたらメモしておきたいこと

  • いつから、1日に何回トイレに行っているか
  • 1回に出る量はいつもと比べてどうか(数滴か、ふつうか)
  • 尿の色(透明・淡黄色・ピンク・赤・赤黒い・白く濁る)
  • においの変化
  • 排尿のときの様子(いきむ、鳴く、途中でやめる)
  • 陰部を舐める・気にする回数
  • 飲水量の変化(水皿を計量して比べる)
  • 食欲・元気・体温・嘔吐や下痢の有無
  • そそうの有無と場所

いちばん急ぐのは「おしっこが出ない」

注意

トイレの姿勢を何度もとるのに、まったく、あるいはほんの数滴しか出ない。この状態は、尿道が詰まる尿道閉塞のおそれがある緊急事態です。「明日の朝、病院が開いたら」ではなく、夜間・休日でも救急対応の動物病院へすぐ連絡してください。

MSD獣医マニュアルの飼い主向け解説では、犬の尿道閉塞は緊急の状態でただちに獣医師の治療が必要とされ、完全に詰まった場合は1〜2日で体内に毒素がたまり、元気消失・食欲低下・嘔吐・下痢・脱水・昏睡を経て、およそ3日で死に至ると記載されています。獣医師向けの解説でも、完全閉塞では36〜48時間で尿毒症となり、約72時間で死亡するとされ、血液中のカリウムが上がることで命に関わる不整脈が起こりうる点も指摘されています。またVCA Animal Hospitalsは、閉塞が解除されないと膀胱が破裂することがあるとしています。

見た目では「頻尿」と「まったく出ていない」の区別がつきにくいのが、この状態のこわいところです。何度も姿勢をとるので排尿できているように見えてしまいます。ペットシーツが濡れているか、地面にしみができているかを必ず確認してください。お腹が張って硬く、触ろうとすると強く痛がるときも、膀胱に尿がたまり続けているサインのことがあります。

尿道閉塞は、犬でも猫でもオスに起こりやすいことが知られています。21動物病院の解説では、オスのほうが尿道が長く細いためと説明されており、VCA Animal Hospitalsも、オスは尿道がはるかに長く細いため閉塞が起こりやすいとしています。ただしメスで起こらないわけではありません。

メモ

判断に迷ったら、電話で相談するのがいちばん確実です。「何度も姿勢をとるのに出ていないように見える」「お腹が張っている」と伝えれば、来院すべきかどうかを判断してもらえます。深夜や休日に備えて、近隣の夜間救急動物病院の連絡先を、いま冷蔵庫かスマートフォンに登録しておくことをおすすめします。

尿道閉塞が緊急でただちに受診が必要であること、完全閉塞で1〜2日のうちに毒素が蓄積し約3日で死に至るという記述はMSD(Merck)獣医マニュアルの飼い主向け解説、36〜48時間で尿毒症・約72時間で死亡、高カリウム血症による致死的不整脈のリスクは同マニュアルの獣医師向け「Urethral Obstruction in Small Animals」によります。オスに閉塞が起こりやすい理由(尿道が長く細い)と、閉塞が解除されない場合に膀胱が破裂しうることは21動物病院およびVCA Animal Hospitals「Bladder Stones in Dogs」の解説に基づきます。

犬の膀胱炎でもっとも多いのは細菌感染

膀胱炎とは、膀胱の粘膜に炎症が起きている状態を指す言葉です。原因はひとつではありません。

犬でもっとも多いのは細菌感染です。PetMDの解説では、尿路感染症は犬のおよそ14%が影響を受けるとされています。また池田動物病院の解説では、約10頭に1頭の犬が一生に一度は細菌性の膀胱炎を発症すると説明されています。この2つは数え方も対象とする範囲も違う別々の数値ですが、いずれにせよ決して珍しい病気ではありません。

原因菌は、肛門まわりや皮膚、消化管にふだんからいる細菌です。大腸菌がもっとも多く、ブドウ球菌、腸球菌、レンサ球菌、プロテウス属などが挙げられます。これらが尿道の出口から入り込み、膀胱までさかのぼって炎症を起こします。

細菌以外では、膀胱結石、腫瘍(膀胱の腫瘍では移行上皮がんが代表的)、オスの前立腺の病気、メスの膣や子宮のトラブルなどが背景にあることがあります。アニコム損保の獣医師監修記事では、ストレスが関係する膀胱炎も原因のひとつとして挙げられています。

オス・メスで違う点

メスオス
尿道の形短く太い長く細い
起こりやすいこと細菌が膀胱に到達しやすく、細菌性膀胱炎が多い尿道に石が詰まる閉塞が起こりやすい
関連する臓器の病気膣炎、子宮蓄膿症、子宮内膜炎前立腺肥大、前立腺炎
結石の傾向ストルバイト結石の犬の最大85%がメスという報告シュウ酸カルシウム結石は小型犬のオスに多い

MSD獣医マニュアルの飼い主向け解説でも、メスはオスより尿路感染症になりやすいこと、去勢していない高齢のオスは前立腺の感染を起こしやすいことが記載されています。アニコム損保の獣医師監修記事にも、メスのほうがなりやすく、とくに高齢のメスで発生リスクが高いという報告が紹介されています。

犬の約14%が尿路感染症の影響を受けるという数値はPetMD、約10頭に1頭が生涯に一度は細菌性膀胱炎を発症するという説明は池田動物病院の解説(執筆:愛玩動物看護師、監修:獣医師)によります。原因菌の種類はPetMDおよびピースワンコ・ジャパンの獣医師監修記事、メスが尿路感染症になりやすくオスは前立腺感染を起こしやすい点はMSD獣医マニュアル、高齢のメスでリスクが高いという報告と移行上皮がん・ストレス性膀胱炎への言及はアニコム損保の獣医師監修記事に基づきます。

尿石症と膀胱炎は、切り離して考えられない

膀胱炎を繰り返す犬では、尿の中で結晶や結石ができていることがあります。逆に、結石が膀胱の粘膜をこすって傷つけ、そこに細菌がついて膀胱炎になることもあります。原因と結果が循環するので、動物病院では両方を同時に調べます。

VCA Animal Hospitalsは、膀胱結石のもっとも多いサインとして血尿と排尿困難(いきみ)を挙げ、血尿が出る理由を「結石が膀胱の壁にこすれ、組織を刺激して傷つけるため」と説明しています。

21動物病院の解説では、犬と猫の尿石症のうちストルバイトとシュウ酸カルシウムを含む結晶・結石が90%以上を占めるとされています。この2つは、性質がまったく違います。

ストルバイト結石シュウ酸カルシウム結石
感染との関係尿路感染がもっとも大きなリスク要因ストルバイトのように感染が主要因とはされていない
でき方細菌が出すウレアーゼが尿素を分解しアンモニアが増え、尿がアルカリ性に傾く詳しい発生メカニズムはまだ解明されていない部分がある
尿のpHアルカリ性に傾くと析出しやすいどのpHでも析出しうるが、酸性に傾きすぎるとより析出しやすい
多いのはメス(ストルバイト結石の犬の最大85%がメスという報告)小型犬のオスに多い
溶けるか療法食で溶けることがある(2週間〜12週間ほど)溶けないため、摘出が基本

注意したいのは、シュウ酸カルシウムはpHを問わず析出しうるという点です。ストルバイト対策として尿を酸性に傾ける療法食が使われる場面もあるため、pHの管理だけでシュウ酸カルシウムを防げるわけではありません。どの結石を想定してどんな食事を選ぶかは、必ず獣医師の判断のもとで決めてください。

シュウ酸カルシウム結石が診断されやすい犬種として、VCAはシー・ズー、ミニチュア・シュナウザー、ビション・フリーゼ、ラサ・アプソ、ヨークシャー・テリアを挙げています。また、食事や生活に気をつけていても再発率がやや高いことも明記されています。

注意

結石があると分かっても、「療法食を買えば溶ける」とは限りません。溶けるのはストルバイトなど一部の種類だけで、シュウ酸カルシウムは溶けません。しかも結石の種類は見た目では分からず、尿検査や画像検査、摘出後の結石分析で判断されます。市販の「尿ケア」をうたうフードやサプリメントを自己判断で使って様子を見ると、閉塞のリスクを抱えたまま時間が過ぎてしまうことがあります。療法食は必ず獣医師の診断と指示のもとで始めてください。

膀胱結石の主なサインが血尿と排尿困難であること、結石が膀胱壁をこすって出血すること、レントゲンや超音波で多くの結石が確認できることはVCA Animal Hospitals「Bladder Stones in Dogs」、ウレアーゼ産生菌による尿のアルカリ化・ストルバイト結石の犬の最大85%がメス・療法食による溶解に2〜12週間かかる点は同「Struvite Bladder Stones in Dogs」、シュウ酸カルシウム結石が小型犬のオスに多く再発率がやや高いこと・好発犬種は同「Calcium Oxalate Bladder Stones in Dogs」によります。ストルバイトとシュウ酸カルシウムで尿石症の90%以上を占めること、ストルバイトがアルカリ性で析出しやすい一方シュウ酸カルシウムはどのpHでも析出しうること、シュウ酸カルシウムは溶解しないことは21動物病院の解説に基づきます。シュウ酸カルシウム結石の発生機序が十分に解明されていないという記述は、VCA「Calcium Oxalate Bladder Stones in Dogs」が原因を「複雑で現時点では十分に解明されていない」としている点に基づきます。

動物病院で行われる検査

尿検査と尿沈渣

診断の中心になるのが尿検査です。永原動物病院の解説では、色調・におい・透明度といった一般性状に加え、尿比重(尿の濃さ)、タンパク、糖、ケトン体、ビリルビン、潜血、pHを調べること、そして尿沈渣で細菌・白血球・赤血球・細胞・結晶などを顕微鏡で確認することが説明されています。潜血が検出された場合は、腎臓・尿管・膀胱・尿道のどこかで出血があることを疑うとされています。

つまり尿検査だけで、炎症があるか、細菌がいるか、結晶ができているか、腎臓に負担がかかっていそうか、といった手がかりが一度に得られます。

尿培養と薬剤感受性試験

細菌が原因と考えられるときは、どの菌がいて、どの抗菌薬が効くのかを調べる尿培養・薬剤感受性試験が行われることがあります。この検査では、外から菌が混ざらないよう、超音波で膀胱を見ながら針で直接尿を採る方法(膀胱穿刺)やカテーテルでの採尿が選ばれることがあります。池田動物病院の解説でも、自宅で採る方法に加えてこの2つの採尿法が紹介されています。

画像検査

レントゲン検査と超音波(エコー)検査で、結石の有無、膀胱の壁の厚み、腫瘤の有無、前立腺の大きさなどを確認します。VCAによれば、多くの膀胱結石はレントゲンまたは超音波で確認できますが、レントゲンに写らないタイプの結石もあり、その場合は超音波や造影検査が必要になります。

必要に応じて血液検査も行われ、腎臓の数値や炎症の程度、糖尿病などの背景疾患の有無が調べられます。

家での採尿のコツと、持参の目安

自宅で採ったおしっこを持参できると、診察がスムーズに進みます。

  1. 1

    清潔な容器を用意する

    新しい紙コップ、おたま、動物病院でもらえる採尿容器などを使います。使い古しの容器や、洗剤が残った容器は避けてください。永原動物病院の解説では、検査には最低2mL程度、できれば5〜10mL程度あるとよいとされています。
  2. 2

    ペットシーツは裏返す

    室内トイレの場合は、ペットシーツを裏返して吸収されない面で受けるか、上にラップやビニールを敷き、たまった尿をスポイトで吸い取ります。散歩中なら、しゃがんだ瞬間に容器をそっと差し入れます。無理に体勢を崩させないよう、静かに。
  3. 3

    できれば朝いちばんの尿を

    光が丘動物病院グループの解説では、できる限り朝いちばんの尿を採取するとよいとされています。食べ物の影響を受けにくく、運動後だと尿にタンパクが混ざりやすいためです。
  4. 4

    密閉して、冷暗所で保管する

    空気に触れないようすぐ密閉容器に入れ、冷暗所で保管します。気温の高い日は保冷剤を当てて持参します。
  5. 5

    3時間以内を目安に持参する

    尿は新鮮なほど結果が正確に出ます。獣医師監修のPetanの解説では3時間以内が目安とされています。時間が空くときは冷蔵保管し、採尿した時刻を伝えてください。

ヒント

採れなかったときは、無理をしなくて大丈夫です。「採れませんでした」と伝えれば、病院で採尿してもらえます。無理に押さえつけて採ろうとすると、次から排尿そのものを我慢するようになってしまうことがあります。

尿検査の項目(尿比重・タンパク・潜血・pH・尿沈渣など)、必要な尿量(最低2mL、できれば5〜10mL)は永原動物病院(永原未悠院長執筆)の解説、朝いちばんの尿が望ましい理由と密閉・冷暗所保管は光が丘動物病院グループの解説、3時間以内を目安に持参する点と保冷剤の活用はPetanの獣医師監修記事、膀胱穿刺・カテーテルによる採尿は池田動物病院の解説、レントゲンに写らない結石があることはVCA Animal Hospitalsによります。

あわせて読みたい

犬が動物病院を嫌がる理由と慣らし方|震える・暴れる子への通院ストレス対策

治療の流れ

細菌が原因のとき

抗菌薬による治療が基本です。桑原動物病院の解説では、最初は範囲の広い抗菌薬を使い、細菌培養検査の結果に合わせて薬を変更することもあると説明されています。さかきばら動物病院の解説では、細菌感染が原因の場合に抗生物質とあわせて消炎剤が用いられることもあるとされています。

投薬期間については、情報源によって幅があります。MSD獣医マニュアルの飼い主向け解説では、単純な感染で2週間の内服、必要ならそれ以上とされています。一方、国際的な専門家組織であるISCAID(International Society for Companion Animal Infectious Diseases)が2019年に改訂した犬猫の細菌性尿路感染症ガイドラインでは、散発性の細菌性膀胱炎に対してアモキシシリンまたはトリメトプリム・サルファ剤を3〜5日間という、より短い投与期間が推奨されています。ただしこの短期投与を支持する研究はまだ限られています。2025年にBMC Veterinary Researchに掲載された系統的レビュー・メタアナリシスで統合できたのは3件・計54頭のみで、いずれも実験的に感染を起こした実験動物を対象とした研究でした。結果は、短期投与のほうが治癒率が数値上は低い方向(統合リスク比0.55、95%信頼区間0.23〜1.27)を示したものの統計学的に有意な差ではなく、エビデンスの確実性も「非常に低い」と評価されています。著者らも、このデータだけでは短期と長期の優劣について結論は出せないとしています。

注意

大事なのは、処方された薬を指示どおりに飲みきることです。桑原動物病院の解説でも、抗菌薬は最後まで飲み切ることが重要と明記されています。「症状が消えたからもういいだろう」と途中でやめると、菌が残って再発したり、薬が効きにくい菌を増やしてしまったりする原因になります。逆に、余った薬を次のときに自己判断で使うことも避けてください。

なお、抗菌薬による治療のあと、症状は出ていないのに尿から細菌が見つかることがあります。前述の系統的レビューでは、臨床徴候がないまま細菌が残っている状態は「潜在性(不顕性)細菌尿(subclinical bacteriuria)」に分類され、それ以上の抗菌薬治療は必要としないと整理されています。「菌がいる=必ず薬を飲む」ではない、という判断も獣医師は行っています。

結石が原因のとき

種類によって方針が分かれます。ストルバイト結石では、療法食と(感染がある場合は)抗菌薬を組み合わせて溶かす方法が選ばれることがあります。VCAによると、2週間ほどで溶ける犬もいれば12週間ほどかかる犬もいます。シュウ酸カルシウム結石は溶けないため、外科的な摘出やカテーテルによる処置が基本になります。閉塞を起こしている場合は、まず詰まりを取り除く処置が最優先です。

結石の治療後も、再発予防のために療法食を続け、定期的に尿検査とレントゲンで確認していくのが一般的です。VCAは、治療の1か月後、その後は3〜6か月ごとの尿検査とレントゲンによる経過観察を挙げています。

広域の抗菌薬から始め培養結果で変更すること・飲み切ることの重要性は桑原動物病院の解説、細菌感染時に抗生物質とあわせて消炎剤が用いられることはさかきばら動物病院の解説、単純な感染で2週間の内服という記載と治療中・治療後に尿を採って治癒を確認することがある点はMSD獣医マニュアルの飼い主向け解説、散発性膀胱炎に対する3〜5日間のアモキシシリンまたはトリメトプリム・サルファ剤という推奨はISCAID2019年ガイドラインの内容としてBMC Veterinary Research掲載の系統的レビュー(Emdin et al., 2025)が紹介しているもの、3件・計54頭という規模と統合リスク比0.55(95%信頼区間0.23〜1.27)・確実性「非常に低い」という評価、潜在性(不顕性)細菌尿の扱いも同レビューによります。ストルバイトの溶解期間、結石治療後の経過観察の頻度はVCA Animal Hospitalsに基づきます。

秋冬に増えやすい理由と、家庭でできる再発予防

さかきばら動物病院の解説では、気温の下がる冬場は飲水量が減り、免疫力も低下するため、とくに膀胱炎になりやすいとされています。ちゅら動物病院のサイトに掲載された獣医師ライターの解説でも、冬期は飲水量が減少するため尿石症に注意が必要とされ、ウェットフードやふやかしたフードで水分摂取を促すことが挙げられています。

尿の量が減ると、細菌を洗い流す力が弱まり、ミネラルの濃度も上がって結晶ができやすくなります。逆にいえば、家庭でできる予防のいちばんの柱は「尿を薄く、たくさん出す」ことです。

1. 飲水量を増やす工夫

水を飲む量を増やすアイデア

  • 水飲み場を複数の部屋に置く(リビング、寝室、犬のハウスの近くなど)
  • 器の素材を変えてみる(陶器・ステンレス・ガラスで好みが分かれる)
  • 冬は少し温めた水にして香りを立たせる
  • ドライフードをぬるま湯でふやかす、ウェットフードを一部混ぜる
  • 犬用のスープやささみのゆで汁(味付けなし)を少量足す
  • 毎日決まった時間に新しい水に替える
  • 水皿を計量してから出し、翌日の残量で1日の飲水量をつかむ

ただし、水を飲む量が急に増えた場合は別の病気のサインのことがあります。体重1kgあたり100mLを超えるようなら、増えたこと自体を獣医師に伝えてください。

あわせて読みたい

犬の夏の水分補給と脱水対策|飲水量の目安・脱水サイン・飲ませる工夫

あわせて読みたい

犬の給水器・自動給水器の選び方|循環式・ボウル・ノズル型・ディスペンサー型を比較

2. トイレを我慢させない

尿が膀胱にとどまる時間が長いほど、細菌が増える余地が生まれます。ピースワンコ・ジャパンの獣医師監修記事でも、水をしっかり飲ませることが一番の予防・再発防止策とされ、排尿を我慢させない環境づくりが挙げられています。

散歩でしか排尿しない犬は、天気が悪い日や飼い主の帰りが遅い日に、長時間我慢することになりがちです。室内トイレでも排尿できるようにしておくと、そうした日の負担を減らせます。長時間の留守番が続く場合は、途中で排尿できる仕組み(室内トイレ、家族やペットシッターの立ち寄り)を検討してください。

あわせて読みたい

子犬のトイレトレーニングの基本|失敗を減らす環境づくりと教え方

3. 排尿を記録する

治療中も再発予防でも、記録は驚くほど役に立ちます。難しく考えず、スマートフォンのメモに「9/4 6:30 ふつう / 11:00 少量 / 14:20 ピンク」程度で十分です。ペットシーツの重さを量る、写真を1日1枚残す、といった方法もあります。回数・量・色の変化を並べて見せられると、獣医師は状態の推移をつかみやすくなります。

4. 体重管理

太っていると、陰部まわりに皮膚のたるみができて汚れがたまりやすくなったり、自分で毛づくろいしにくくなったりします。PetMDでは、陰部が皮膚に埋もれた状態(recessed vulva)などの構造的な要因が尿路感染のリスクを上げることが挙げられています。適正体重を保つことは、泌尿器の健康にとっても意味があります。

あわせて読みたい

犬の肥満・ダイエットと適正体重|BCS(ボディコンディションスコア)で愛犬の体型を見極める

5. 陰部まわりを清潔に保つ

ピースワンコ・ジャパンの獣医師監修記事では、お尻まわりの毛をトリミングで短くしてもらう、排泄の後は拭き取る、といったケアが挙げられています。アニコム損保の獣医師監修記事でも、外陰部を清潔に保つこと、トイレを長時間我慢させないこと、排泄しやすい環境を整えること、排尿の様子を定期的に観察することが予防として示されています。

ただし、こすりすぎ・洗いすぎは逆に皮膚を傷めます。犬用の柔らかいウェットティッシュなどで、やさしく押さえるように拭き取る程度で十分です。

メモ

クランベリーなどをうたった市販のサプリメントについて、「これを飲ませておけば膀胱炎が治る」と考えるのは避けてください。犬の膀胱炎は細菌感染・結石・腫瘍など背景がさまざまで、サプリメントで様子を見ている間に閉塞や腎臓への波及が進むことがあります。サプリメントを使いたい場合も、まず診断を受けたうえで、かかりつけの獣医師に相談してから取り入れてください。

冬に飲水量が減り免疫力も低下して膀胱炎になりやすいという記述はさかきばら動物病院の解説、冬期は飲水量が減るため尿石症に注意が必要でウェットフード・ふやかしフードが有効という点はちゅら動物病院のサイトに掲載された獣医師ライター(白田氏)の解説(同ページには、内容の正確性を病院が保証するものではない旨が明記されています)、飲水と排尿を我慢させない環境・お尻まわりの毛のトリミングと拭き取りはピースワンコ・ジャパンの獣医師監修記事、外陰部の清潔・トイレを我慢させない・排尿の観察という予防はアニコム損保の獣医師監修記事、陰部が埋もれた構造がリスクになる点はPetMDによります。

受診の目安

その日のうちに動物病院へ連絡したいサイン

  • トイレの姿勢を何度もとるのに、ほとんど、またはまったく尿が出ていない(最優先。夜間でも救急へ)
  • お腹が張って硬い、触ろうとすると強く痛がる
  • 尿に赤い血・赤黒い血が混じっている
  • 排尿のときに鳴く、うなる、明らかに痛がる
  • 嘔吐・食欲不振・元気消失・発熱をともなう
  • ぐったりして反応が鈍い
  • 子犬・シニア犬・持病のある犬に上記のいずれかがある

数日以内に受診を検討したいサイン

  • 頻尿が2〜3日続いている
  • 尿の色がいつもと違う日が続く
  • においが強くなった状態が続く
  • 陰部を舐める・気にする回数が増えた
  • トイレを覚えていたのにそそうが増えた
  • 治療で一度よくなったのに、同じ症状が再び出てきた
  • 飲水量が体重1kgあたり100mLを超えるほど増えた
寒くなってから、夜中に何度もトイレに立つようになりました。量は少しだけ。しつけの問題かと思っていたのですが、ペットシーツをよく見たらうっすらピンク色でした。翌朝の尿を紙コップで採って持って行ったところ、尿検査ですぐに膀胱炎と分かり、その日から薬が始まりました。もう少し早く気づけたなと思っています。
7歳のメス犬と暮らす飼い主

治療が終わったあとも、再発しやすいのがこの領域の特徴です。「治ったからもう大丈夫」ではなく、定期的な健康診断の尿検査を続けることで、症状が出る前の段階で変化に気づけることがあります。

あわせて読みたい

犬のワクチンと健康診断の基礎|狂犬病・混合ワクチンと受ける頻度の目安

なお、成犬になってからのそそうやマーキングそのものへの向き合い方は別の記事にまとめています。病気を除外したあとの環境づくりや学習の立て直しについては、そちらもあわせてご覧ください。

あわせて読みたい

成犬になってからのトイレの失敗(粗相)とマーキング|まず病気を除外し、環境と学習から立て直す

よくある質問

何度もトイレに行きますが、少しは出ています。急いだほうがいいですか。
少量でも出ているなら完全な閉塞ではない可能性が高いものの、部分的に詰まりかけている場合もあります。排尿のたびに鳴く、お腹が張っている、嘔吐や元気消失をともなうといった様子があれば、その日のうちに動物病院へ連絡してください。それらがなく元気も食欲もある場合でも、頻尿が続くこと自体が膀胱炎などのサインなので、数日以内の受診をおすすめします。まったく出ていないように見えるときは、夜間・休日でも救急へ連絡してください。
尿がピンク色でしたが、翌日には普通の色に戻りました。受診は必要ですか。
血が混じる量は日によって変動するため、色が戻ったからといって原因がなくなったとは限りません。膀胱炎、尿石症、腫瘍、オスの前立腺の病気など、背景はさまざまです。ピンク色の尿を撮った写真を持って、早めに受診してください。またアニコム損保の解説では、赤血球が壊れて起こる血色素尿(バベシア症やタマネギ中毒など)のように、血尿と紛らわしい状態もあると説明されています。自己判断はせず、尿を持参して調べてもらうのが確実です。
市販の「尿ケア」フードやクランベリーのサプリで様子を見てもいいですか。
おすすめしません。犬の膀胱炎の原因は細菌感染・結石・腫瘍などさまざまで、原因が違えば必要な対応も変わります。結石も、ストルバイトのように療法食で溶けることがあるものと、シュウ酸カルシウムのように溶けないものがあり、種類は検査をしないと分かりません。サプリメントで様子を見ている間に閉塞や腎臓への波及が進むおそれもあります。療法食もサプリメントも、診断を受けたうえで獣医師の指示のもとで使ってください。
自宅で採尿できませんでした。診察に影響しますか。
問題ありません。病院で採尿してもらえます。むしろ尿培養が必要な場合は、外から菌が混ざらないよう超音波で膀胱を見ながら針で採る方法やカテーテルでの採尿が選ばれることがあります。自宅で採る場合は、清潔な容器で受け、密閉して冷暗所に置き、3時間以内を目安に持参できると精度が上がります。無理に押さえつけて採ろうとすると排尿を我慢するようになることがあるので、採れなければそのまま来院してください。
抗菌薬を飲ませたら症状が消えました。残りはやめてもいいですか。
やめないでください。桑原動物病院の解説でも、処方された抗菌薬は最後まで飲み切ることが重要とされています。症状が消えても膀胱に菌が残っていることがあり、途中でやめると再発や、薬が効きにくい菌を増やす原因になります。またMSD獣医マニュアルの飼い主向け解説では、治療中や治療後にも尿を採って感染が治ったかどうかを確認することがあると説明されています。飲ませ方が難しい、副作用が心配といった事情があるときは、自己判断でやめずにかかりつけへ相談してください。
冬になると膀胱炎を繰り返します。何から見直せばいいですか。
まずは飲水量と排尿の記録です。さかきばら動物病院の解説では、冬は飲水量が減り免疫力も下がるため膀胱炎になりやすいとされています。水飲み場を増やす、少し温めた水にする、ドライフードをぬるま湯でふやかす、ウェットフードを一部混ぜる、といった工夫から始めてみてください。あわせて、室内トイレでも排尿できるようにして我慢の時間を減らすことも有効です。ただし繰り返す膀胱炎の背景には結石や解剖学的な要因が隠れていることもあるため、「またか」と思ったときこそ再発の原因を調べてもらうことをおすすめします。
シニア犬でそそうが増えました。膀胱炎でしょうか。
可能性のひとつです。MSD獣医マニュアルの飼い主向け解説でも、不適切な場所での排尿は細菌性膀胱炎のサインとして挙げられています。一方で、シニア期のそそうには、ホルモンに関係する尿失禁、腎臓病や糖尿病による多尿、関節の痛みでトイレまで間に合わない、認知機能の変化など複数の背景があります。しつけの問題として片づける前に、まず尿検査を含む健康チェックを受けてください。回数・量・色・時間帯のメモがあると診断の助けになります。

まとめ

犬のおしっこのトラブルは、日常のなかで気づけるサインが多い一方、原因の幅が広く、家庭で見分けるのが難しい領域です。だからこそ、観察して記録し、必要なときに迷わず動物病院へ、という流れをつくっておくことが役に立ちます。

見るポイントは4つ。(1)回数と1回量、(2)色とにおい、(3)排尿時の様子と陰部を気にする頻度、(4)飲水量です。そして何よりも優先すべきは、「トイレの姿勢を何度もとるのに出ていない」という状態。これは尿道閉塞のおそれがある緊急事態で、完全に詰まると1〜2日で体内に毒素がたまり、3日ほどで命に関わるとされています。夜間でも救急へ連絡してください。

治療は、細菌感染なら抗菌薬、結石なら種類に応じた療法食や摘出が中心です。飲みきる前にやめない、市販のフードやサプリだけで様子を見ない。この2つを守るだけでも、こじらせるリスクはぐっと下がります。

そして予防の柱は、尿を薄くたくさん出すこと。水飲み場を増やす、フードをふやかす、トイレを我慢させない、記録をつける、適正体重を保つ、陰部まわりを清潔にする。どれも今日から始められることばかりです。気になるサインがあるときは、様子を見る前に、まず一度電話で相談してみてください。

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事

しつけ・問題行動

成犬になってからのトイレの失敗(粗相)とマーキング|まず病気を除外し、環境と学習から立て直す

子犬のころはできていたのに最近そそうをする、来客時だけおしっこをする、去勢後もマーキングが続く。成犬の排せつトラブルを、まず病気を除外する手順、マーキングと粗相の見分け方、トイレ環境と学習の立て直し方、においを残さない掃除、シニア期の配慮まで順を追って整理しました。

犬グッズ・おもちゃ

犬の給水器・自動給水器の選び方|循環式・ボウル・ノズル型・ディスペンサー型を比較

夏はこまめな水分補給が大切です。循環式(流水)・据え置きボウル・ペットボトルのノズル型・タンク式ディスペンサーの4タイプを、長所短所と選び方の軸(容量・静音性・ランニングコスト・洗いやすさ・安全性)で比較。愛犬に合う一台選びの助けにしてください。