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保護犬を迎えるには?譲渡の流れと最新統計でわかる「収容されている犬」の実像

対象の目安: 成犬・シニア犬が中心

アサヒ編集長 / お迎え・住環境担当
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保護犬を迎えるには?譲渡の流れと最新統計でわかる「収容されている犬」の実像

毎年9月20日から26日は、動物愛護管理法にもとづく「動物愛護週間」です。この時期は自治体や保護団体の譲渡会・啓発イベントが増えるため、「秋になったら保護犬を迎えることを考えてみようかな」と情報を集め始める人が多い季節でもあります。

保護犬を迎えるという選択は、たしかに尊いものです。ただ、この記事でいちばん伝えたいのは「かわいそうだから助けてあげる」ではなく、「うちの暮らしと、その子の暮らしが合うか」という視点です。相性が合わないまま迎えてしまうと、いちばん苦しい思いをするのは犬のほうだからです。

この記事では、環境省が公表している最新の統計から「いま実際に収容されている犬」の姿を数字で確かめたうえで、自治体と保護団体それぞれの譲渡の流れ、譲渡条件の違い、費用の目安、そして迎えた後の最初の数週間までを整理します。

まず数字で見る「いま収容されている犬」

環境省は毎年、全国の自治体(都道府県・指定都市・中核市)がまとめた「動物愛護管理行政事務提要」をもとに、犬・猫の引取りと処分の状況を公表しています。2026年8月時点で公表されている最新は令和6年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)の数字です。

犬の内訳は次のとおりです。

項目犬(令和6年度)参考:猫(令和6年度)
引取り数 合計17,399頭22,010頭
うち 飼い主から2,215頭(成熟2,072・幼齢143)8,322頭(成熟6,612・幼齢1,710)
うち 所有者不明15,184頭(成熟12,300・幼齢2,884)13,688頭(成熟2,626・幼齢11,062)
返還数6,630頭225頭
譲渡数8,797頭16,854頭
殺処分数1,964頭4,866頭

環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」(令和6年度、動物愛護管理行政事務提要より作成)の数値です。「飼い主から」「所有者不明」の合計、および本文中の割合は、公表されている実数から編集部で計算しました。同資料の注記により、引取り数の所有者不明の成熟個体には狂犬病予防法にもとづく抑留が含まれ、所有者不明には一部、県・市条例にもとづく収容も含まれます。「幼齢の個体」とは主に離乳していない個体を指し、成熟個体と幼齢個体を区別していない自治体では、すべて成熟個体として計上されています。

長期的な変化も見ておきましょう。同じ資料の年次推移によると、犬の引取り数は平成16年度に181,167頭、殺処分数は155,870頭でした。令和6年度はそれぞれ17,399頭・1,964頭ですから、20年で引取り数はおよそ10分の1に、殺処分数はおよそ80分の1にまで減っています。前年の令和5年度(引取り19,352頭・殺処分2,118頭)と比べても、どちらも減少が続いています。

なお、統計上の「殺処分数」は一律の意味ではありません。環境省は令和元年度の事務提要から、殺処分数を「1. 譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)」「2. 1以外の処分(譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難)」「3. 引取り後の死亡」の3つに分けて集計しています。令和6年度の犬1,964頭の内訳は、1が1,459頭、2が112頭、3が393頭でした。つまり「譲渡先が見つからずに処分された犬」にあたるのは112頭で、飼養管理中の病気や事故による死亡(393頭)も同じ数字の中に含まれています。

メモ

この統計は「自治体が引き取った犬」の数字です。民間の保護団体が独自に保護している犬は含まれません。つまり、譲渡を待っている犬の実数はこの数字より多いと考えられます。

統計から読み取れる3つの実像

数字を並べただけでは、実際に迎える立場からは少し遠い話に感じるかもしれません。ここからは、この統計が「これから保護犬を迎える人」にとって何を意味するのかを3つに分けて整理します。

1. 引取りの約9割は「所有者不明」、飼い主の持ち込みは約13%

令和6年度に引き取られた犬17,399頭のうち、飼い主が自分の意思で手放した(飼い主から引き取られた)犬は2,215頭で、全体の約13%です。残りの15,184頭、およそ87%は「所有者不明」として収容されています。

所有者不明の中身は、道路や公共の場所で保護された迷子の犬、遺棄されたと考えられる犬、そして狂犬病予防法にもとづいて抑留された犬などです。ただし、迷子・遺棄・抑留がそれぞれ何頭ずつだったかという内訳は公表されていません。それでも「保護犬=飼育放棄された犬」というイメージとは違い、飼い主が自分の意思で手放した犬は全体の約13%にとどまります。次に見る返還率の高さとあわせて考えると、統計上の大多数は「もともと誰かの家で暮らしていて、何かの拍子に外へ出てしまった犬」だと考えられます。

2. 引取られた犬の約38%は飼い主のもとへ戻っている

返還数6,630頭は、引取り数17,399頭の約38%にあたります。同じ年度の猫の返還数は225頭で、引取り数の約1%にすぎません。この差は非常に大きいものです。

犬は首輪や鑑札、迷子札、マイクロチップなどで身元がわかる状態にあることが多く、また市区町村への登録制度があるため、飼い主にたどり着ける確率が高いのだと考えられます。この「約38%」という数字は、逆に言えば「愛犬が脱走したときに備えておくことには意味がある」という裏付けでもあります。

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3. 「子犬はほとんどいない」。譲渡の主役は成犬とシニア犬

引取られた犬17,399頭のうち、離乳前の幼齢個体は3,027頭(飼い主から143頭・所有者不明2,884頭)で、全体の約17%です。譲渡された8,797頭に限ってみても、幼齢個体は2,341頭で約27%にとどまり、残りの約73%は離乳を終えた犬でした。

ここで注意が必要なのは、統計上の「幼齢」は主に離乳していない個体を指す言葉なので、「幼齢でない=すべて成犬」という意味ではないという点です。離乳を終えた子犬も成熟個体として数えられます。それでも、生後まもない子犬が譲渡対象の中心ではないことは、この数字からも読み取れます。

自治体の説明はもっと直接的です。東京都動物愛護相談センターは、譲渡対象の犬について「犬はほとんどが成犬です。純血種もいれば雑種もいます。年齢も性格も様々です。子犬はほとんどいません」と明記しています。理由として、都内では室内飼育や不妊去勢手術が普及したため、飼い主から子犬を引き取ることも、子犬が捨てられることもほとんどなくなったことを挙げています。

ヒント

同センターは、成犬・成猫から飼い始める利点として「自分のライフスタイルにあった性格の成犬・成猫を探せる」「世話の負担が軽くなる」「人と暮らしていた経験がある」の3点を挙げています。子犬の育て方を一から学ぶ時間が取りにくい人にとっては、むしろ成犬のほうが暮らしに馴染みやすい場合もあります。

保護犬という選択肢の現在地と、迎える動機

犬を迎えた人の半数は「シェルター」を知らなかった

一般社団法人ペットフード協会の「令和7年(2025年)全国犬猫飼育実態調査」では、犬を1年以内に飼い始めた人(n=185)の入手先が調べられています。複数回答で、上位は次のとおりでした。

入手先割合
ペットショップで購入57.3%
業者のブリーダーから直接購入11.4%
友人/知人のブリーダーから直接購入8.1%
友人/知人/親族からの無償譲渡5.9%
友人/知人/親族からの譲渡・購入4.9%
里親探しのマッチングサイトからの譲渡・購入3.8%
シェルターからの有償譲渡・購入3.2%
シェルターからの無償譲渡2.2%
譲渡会を通じての無償譲渡1.1%
里親探しのマッチングサイトからの無償譲渡1.1%
インターネットのペット販売を通じて購入1.1%

同じ調査で、シェルター以外から犬を迎えた飼育者(n=1,195)に「シェルター」からの入手を検討したかを尋ねた設問では、「シェルターを知らなかった」が50.4%、「知っているが入手は検討しなかった」が34.9%、「検討したが入手はしなかった」が14.7%という結果でした。つまり、シェルター以外から犬を迎えた人の半数は、そもそも選択肢として認識していなかったことになります。

なお、入手先がシェルターだった犬の飼育者(n=65)への追加設問では、「行政機関(自治体の動物愛護センター等)が運営するシェルターからの譲渡」「愛護団体・ボランティア等が運営するシェルターからの譲渡」がいずれも55.4%でした(複数回答)。回答者数が少ない参考値ですが、行政ルートと民間ルートがほぼ並んで使われていることがうかがえます。

一般社団法人ペットフード協会「令和7年(2025年)全国犬猫飼育実態調査」資料9「ペット入手時の情報源・入手先」より、設問ごとに次を参照しました。入手先はQ27(1)「ペットの入手先」(複数回答、集計ベースは犬飼育者。上表は1年以内飼育開始者2025年 n=185の値)、シェルター内訳はQ27_1(1)「ペットの入手先/シェルター詳細」(複数回答、集計ベースは現在飼育犬猫の入手先がシェルターの方 n=65)、検討有無はQ29(1)「『シェルター』からの入手検討有無」(単一回答、集計ベースはシェルターからの譲渡以外かつ現在犬猫各飼育者 n=1,195)です。

「かわいそうだから」ではなく「暮らしが合うか」で選ぶ

同じ調査の「飼育きっかけ」の設問では、1年以内に犬を飼い始めた人のうち「不幸な動物を助けてあげたいと思ったから」を挙げた人は10.8%でした。もっとも多かったのは「日々の生活に癒しや安らぎが欲しいと思ったから」の45.9%です。

助けたいという気持ちは、保護犬を迎えるきっかけとしてまったく間違っていません。ただ、それだけを動機にすると、迎えた後に「思っていたのと違う」と感じたときの落差が大きくなりがちです。

東京都動物愛護相談センターも、譲渡を受けるときの注意点として次の3点を挙げています。

  • 年齢や病歴、保護されるまでの飼育環境などの情報が不明な場合がある
  • 保護施設の飼育環境は一般家庭と異なるため、譲渡後に新たな性格が現れることがある
  • 種類や年齢、大きさなど、希望する動物に出会えない場合や、譲渡を受ける側の環境などにより譲渡を受けられない場合もある

保護犬に問題行動が多いとか、逆に少ないといった一般化はできません。犬の行動は、生まれ持った気質、これまでの生活環境、健康状態、そして新しい家庭での過ごし方が複雑に絡み合って表れるもので、個体差がとても大きいからです。「保護犬だから」ではなく「この子だから」という見方をしていくことが、結果としていちばん現実的な準備になります。

最初は「助けたい」という気持ちが先に立っていました。でも実際に暮らしてみると、うちの生活リズムに合っていたことのほうがずっと大きかったと思います。朝がゆっくりの子だったので、朝が苦手な私たちにちょうどよかったんです。
保護犬を迎えた飼い主

迎える前に、暮らしのほうを点検するチェックリスト

  • 平日の日中、犬が留守番する時間はどれくらいになるか具体的に書き出した
  • 毎日の散歩に使える時間帯と長さを、家族の誰が担当するか決めた
  • 住居がペット飼育可であることを、管理規約や賃貸借契約書で確認した
  • 同居している家族全員が迎えることに賛成している
  • 家族に動物アレルギーの人がいないか確認した
  • フード代・医療費・トリミング代など、月々と突発の費用を見積もった
  • 自分が入院するなど飼えなくなったときに預けられる先を考えた
  • 先住犬・先住猫がいる場合、その子の性格と生活動線を書き出した
  • 希望する犬種・年齢・体格に強いこだわりがあるなら、その理由を言葉にしてみた

迎えるルートは大きく2つ。自治体と保護団体の違い

保護犬を迎えるルートは、大きく分けて「自治体の動物愛護センター・保健所から」と「民間の保護団体・ボランティアから」の2つです。それぞれ性格が違います。

項目自治体(動物愛護センター等)民間の保護団体・ボランティア
主な犬収容された犬のうち譲渡に向くと判断された犬自治体から引き出した犬、多頭飼育崩壊やレスキュー由来の犬など
費用譲渡自体は原則無償。登録手数料や注射費用など実費がかかる医療費実費などを「譲渡費用」として負担する形が一般的
事前手続き譲渡前(事前)講習会の受講を必須とする自治体が多い面談・アンケート・家庭訪問などを行う団体が多い
トライアル実施しない自治体もある(神奈川県は「行っていません」と明記)1週間から1か月程度のトライアルを設ける団体が多い
情報の量保護時の状況や健康チェックの記録が中心預かりボランティア宅での生活ぶりを詳しく聞けることがある
相談の継続譲渡後の状況報告を求める自治体がある譲渡後も継続的に相談に乗る団体が多い

東京都は、団体からの譲渡について「各団体によって条件や手続等は異なります」としたうえで、「誤解やトラブルを避けるためにも、費用の負担や譲渡後の報告等の条件についてよく話し合い、書面等で確認しておく」ことを呼びかけています。これは民間ルートを選ぶときの実務上、いちばん大切な注意点です。

注意

団体の情報を見るときは、医療履歴や動物病院発行の領収書を提示してもらえるか、医療費の実費以外に寄付金や賛助会費などの支払いが実質的に必須になっていないかを確認しましょう。金額そのものより、内訳を説明してもらえるかどうかが判断材料になります。

譲渡の実際の流れ

自治体によって手順は違いますが、「講習会を受けてから、犬を選ぶ」という順序は共通していることが多いです。まずは実際に公開されている自治体の2つの例を見て、そのあとに民間の保護団体の流れを見ていきます。

自治体の例1:東京都動物愛護相談センター

  1. 1

    譲渡を受けるための条件を確認する

    都は8つの条件を公開しています。都内在住の20歳以上60歳以下であること、現在犬や猫を飼育していないこと、家族の中に動物アレルギーを持つ人がいないこと、家族全員が飼うことに同意していること、最期まで責任を持って飼い続けられること、経済的・時間的に余裕があること、不妊去勢手術による繁殖制限措置を確実に実施できること、集合住宅・賃貸住宅の場合は規約等で飼育が許されていることです。
  2. 2

    譲渡事前講習会に申し込む

    事前申込が必要で、参加費は無料、先着順です。猫は本センター(世田谷区)で原則毎週木曜日に開催されていますが、犬の講習会は申込状況等に応じて日時を決定しているため、センターまたは多摩支所へ電話で問い合わせる形になっています。
  3. 3

    講習会を受講する

    当日は本人確認書類(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど氏名・住所の記載があるもの)、集合住宅・賃貸住宅の場合は居室内での飼育を認める旨が明記された管理規約や契約書、筆記用具を持参します。講習会の当日に犬・猫を連れて帰ることはできません。
  4. 4

    譲渡動物情報をチェックする

    都の「ワンニャンとうきょう」サイトに掲載される譲渡対象動物一覧を見て、迎えたい犬を探します。譲渡を受けられるのは原則として講習会受講後1年間です。
  5. 5

    センターへ連絡し、犬を迎える

    気になる犬が見つかったら電話で相談します。譲渡当日は事務手続や説明で1時間程度かかります。犬の性質や健康状態、飼い主の飼育環境等により、希望に添えないこともあると案内されています。
  6. 6

    1年以内に飼養状況を報告する

    譲渡を受けた人は、1年以内に飼養状況について報告することが求められています。

自治体の例2:神奈川県動物愛護センター

神奈川県は流れが3ステップにまとめられており、講習会はオンラインで受講できるのが特徴です。

  1. 1

    譲渡前講習会を受ける

    オンラインの約40分の動画セミナーで受講できます。内容は動物を飼う心構えと法令等で、受講後に受講証が交付されます(有効期間は受講日から3年間)。
  2. 2

    個別面接を受ける

    電話または電子申請による事前予約制です。予約時に面接を希望する犬・猫の名前を伝える必要があり、面接は連絡した日から原則1週間後以降の日程になります。面接当日に譲り渡すことはなく、後日あらためて受け渡しの日程を調整します。
  3. 3

    譲り受ける

    譲受までに「動物の確認と説明(面接)」と「譲渡」で原則2回の来所が必要です。譲受の際は受講証と「犬、猫の飼養環境事前確認書」の提出が求められます。

神奈川県の譲受条件は、神奈川県または隣接都県(東京都・山梨県・静岡県)に在住で原則65歳以下の成人であること、飼育場所で動物の飼養が認められていること、適正に最期まで飼えること、飼えなくなったときの預け先があること(預け先予定者も65歳以下)、家族全員が賛成し協力しあえること、誓約書の内容を遵守できることなどです。60歳を超える場合は、譲渡対象が中齢から高齢の動物や小型犬に限られるなどの条件があると案内されています。

メモ

神奈川県は「譲受にあたり先住動物と相性を確認する等のためのトライアルは行っていません」「先住動物がいる場合は、譲渡をお断りする場合があります」と明記しています。先住犬がいる家庭が保護犬を迎えたい場合、自治体ルートでは条件が厳しくなることがあると知っておくと、探し方の計画が立てやすくなります。

保護団体の例

民間の保護団体の流れは団体ごとに異なりますが、公開されている情報を整理すると、おおむね次のような段階を踏みます。

  1. 1

    探す

    団体のサイトや里親募集サイト、譲渡会で候補の犬を探します。年齢・体格・性格の記述だけでなく、医療歴や現在の預かり先での様子まで書かれているかを見ておくと、その団体の情報開示の姿勢がわかります。
  2. 2

    問い合わせ・アンケート

    住居、家族構成、留守番時間、先住動物の有無などをアンケートで確認されるのが一般的です。ここで正直に書くことが、後のミスマッチを防ぎます。
  3. 3

    面談・見学

    団体の施設や預かりボランティア宅で実際に会います。同居する家族全員での参加を求められることも多く、家庭訪問を行う団体もあります。
  4. 4

    トライアル(お試し期間)

    自宅で一定期間一緒に暮らし、相性や暮らしの適合を確かめます。公益社団法人アニマル・ドネーションの解説では、期間の目安は「短くて1週間、長いところでは約1か月程度」とされています。
  5. 5

    正式譲渡

    問題がなければ譲渡誓約書などの書面を交わし、正式に家族になります。このタイミングで医療費実費などの譲渡費用を負担するのが一般的です。
  6. 6

    譲渡後の報告

    近況報告を求める団体が多く、困りごとの相談窓口になってくれることもあります。

トライアルは「気に入らなければ返せる制度」ではありません。アニマル・ドネーションは、気軽な返還は動物に大きなストレスをもたらすため、開始時に譲受希望者へ「そのまま正式譲渡となることを理解してもらう」ことが重要だとしたうえで、先住犬・先住猫との相性が悪くお互いに体調を崩してしまった場合など、返還を認める柔軟さも必要だと述べています。トライアル中に見るべきなのは、家族との相性、先住動物との相性、行動面の様子、健康状態、そしてアレルギーなど予測していなかった事態の有無です。

注意

トライアル中に不安が出てきたときは、我慢して抱え込まず、まず団体へ連絡してください。多くの団体は、犬の背景を誰よりも知っている立場から具体的な助言をくれます。連絡が取れない、相談しても取り合ってもらえないという場合は、その団体との相性そのものを見直す判断材料になります。

譲渡条件は「団体によって違う」が大前提

保護犬の譲渡条件は「厳しすぎるのでは」と話題になることがあります。ただ、実際には自治体・団体ごとにかなり幅があり、一律の基準はありません。よく設けられている条件を整理すると次のようになります。

条件の項目よくある設定の例
年齢20歳以上で上限を60歳や65歳とする例。上限を超える場合は高齢犬・小型犬に限る、後見人を立てるなどの代替条件を設ける例もある
同居家族の同意家族全員の同意を求めるのが一般的。面談に家族全員の参加を求める団体もある
アレルギー家族に動物アレルギーの人がいないことを条件とする例
住居ペット飼育可であることの書面確認(管理規約・賃貸借契約書など)
飼育形態室内飼育を必須とする例。脱走防止の設備を求める例もある
単身者断られることもあるが、緊急時に世話を代われる保証人がいれば可とする例もある
留守番時間長時間の留守番が続く見込みだと難しくなる場合がある
先住動物不妊去勢済みであること、登録と狂犬病予防注射が済んでいることを求める例。先住動物がいると譲渡を断る自治体もある
不妊去勢手術確実に実施することを条件とする例が多い
預け先飼えなくなったときの預け先を求める例(神奈川県は預け先予定者も65歳以下と規定)

条件の具体例は、東京都動物愛護相談センター、神奈川県動物愛護センターの公開情報と、ピースワンコ・ジャパンによる譲渡条件の解説を参照して整理しました。条件は自治体・団体ごとに異なり、また改定されることがあるため、必ず最新の公式情報を確認してください。

条件を見て「自分は当てはまらない」と感じても、すぐにあきらめる必要はありません。年齢上限を超えていても代替条件で受け入れる団体はありますし、単身者でも保証人を立てれば可とするところもあります。1か所の条件を全体の基準だと思い込まず、住んでいる地域の複数の自治体・団体を調べてみることをおすすめします。

費用の目安:譲渡費用と、迎えた後にかかるお金

自治体からの譲渡は、譲渡自体は原則として無償です。ただし、犬を迎えた後には市区町村への登録と狂犬病予防注射が必要で、その手数料や注射費用は飼い主の負担になります。狂犬病予防法では、犬を取得した飼い主は原則として取得の日から30日以内に登録を申請することとされています(生後90日以内の犬を取得した場合は生後90日を経過した日から30日以内)。

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民間の保護団体では、保護中にかかった医療費の実費などを「譲渡費用」として負担する形が一般的です。ピースワンコ・ジャパンの解説では、保健所・動物愛護センターは基本無料(手数料を含めても1万円程度)、NPO法人は1万円から6万円程度、法人格のない団体や個人は1万円から5万円程度となることが多いとされています。費用に含まれる項目としては、登録の届け出、不妊・去勢手術、健康診断、ワクチン接種、マイクロチップ装着、フィラリア・ノミダニの駆虫および予防、交通費(実費に限る)などが挙げられています。

見落とされがちなのは、譲渡費用よりも「その後」のほうがはるかに大きいという点です。一般社団法人ペットフード協会の令和7年(2025年)調査では、犬1頭を飼う人の1か月あたりの支出総額(医療費等を含む)は平均16,030円、平均寿命14.82歳をもとに算出した生涯必要経費は平均278万4,190円という結果でした。保護犬は成犬・シニア犬が中心なので、若い犬より通院や投薬が必要になる可能性も見込んでおくと安心です。

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ヒント

面談のときに、その子の現在の健康状態、これまでに受けた検査や治療、継続中の投薬、フィラリアやノミ・ダニの予防状況を具体的に聞いておきましょう。持病がある子を迎える場合は、月々の薬代や通院頻度まで確認しておくと、家計の見積もりが現実的になります。

迎えた後の最初の数週間をどう過ごすか

保護犬の飼い主やトレーナーの間では「3日・3週間・3か月」という目安がよく語られます。最初の3日はとても緊張していて、3週間ほどで新しい環境の様子がわかってきて、3か月ほどで信頼関係ができてくる、という経験則です。

ただ、これは科学的に検証された基準ではなく、あくまで語り継がれてきた目安です。まったく緊張しない犬もいれば、数か月かかる犬もいます。数字に自分の犬を当てはめて「うちの子は遅れている」と焦る必要はまったくありません。

現場でよく言われるのは、むしろ「最初の2週間は静かに過ごす」という考え方です。最初の数日から2週間ほどは、犬が新しい環境に圧倒されて、おとなしく見えることがあります。これは落ち着いているのではなく、緊張して行動が抑えられている状態のことがあり、慣れてくるにつれて本来の性格が出てきます。東京都も「保護施設の飼育環境は一般家庭の飼育環境と異なるため、譲渡後に犬や猫の新たな性格が現れることがあります」と注意点として挙げています。

迎えて最初の2週間、意識したいこと

  • 来客やお披露目の予定を入れず、静かな環境で過ごす
  • クレートやサークルなど、いつでも逃げ込める『その子だけの場所』を用意する
  • 食事・散歩・就寝の時間をなるべく毎日同じにする
  • 抱っこや撫でるのは、犬のほうから近づいてきたときにする
  • 散歩は無理に距離を伸ばさず、家の周りの短い時間から始める
  • 首輪・ハーネス・リードは二重にするなど、脱走対策を最優先にする
  • トイレの失敗を叱らない(環境が変わればできていたことも崩れる)
  • 気になる様子はメモしておき、譲渡元へ相談できるようにする

注意

迎えた直後は脱走のリスクがもっとも高い時期です。玄関やベランダの動線を見直し、散歩ではハーネスと首輪を併用して2本のリードでつなぐなどの備えをしておきましょう。あわせて、迷子札とマイクロチップの登録情報(飼い主の変更登録)を早めに整えておくと安心です。

先住犬がいる家庭が保護犬を迎えるとき

先住犬がいる場合は、条件面でも生活面でもハードルが一段上がります。前述のとおり、神奈川県のように先住動物がいると譲渡を断る場合があると明記している自治体もありますし、先住犬の不妊去勢手術や登録・狂犬病予防注射の実施を条件とする例も一般的です。

保護団体の場合は、むしろトライアルが役に立ちます。相性の確認こそがトライアルの主目的のひとつだからです。ただし、トライアルの期間中に「仲良くならなかったから返す」と短絡的に判断するのではなく、対面のさせ方や生活動線の分け方が適切だったかを、団体と一緒に振り返ることが大切です。

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危険

先住犬と新しく迎えた犬の間で、流血を伴う喧嘩や、一方が逃げられずに攻撃され続ける状況が起きた場合は、すぐに引き離してください。無理に慣れさせようとせず、譲渡元の団体・自治体と、ドッグトレーナーや動物病院の獣医行動診療科に相談しましょう。

うまくいかないと感じたときの相談先

迎えた後に不安が大きくなることは、決して珍しいことではありません。相談先を先に知っておくだけでも気持ちの負担が変わります。

  • 譲渡元(自治体・保護団体): その犬の背景をいちばんよく知っている相手です。多くの団体は譲渡後の相談を受け付けています。自治体でも、譲渡した犬について相談に応じてくれる場合があります。
  • かかりつけの動物病院: 食欲不振、下痢、皮膚の状態、繰り返す咳など、体調に関わることはまず動物病院へ。行動の変化が体の不調に由来していることもあります。
  • 獣医行動診療科: 強い不安や攻撃性など、行動面の悩みが大きい場合の専門的な相談先です。かかりつけ医からの紹介が必要なこともあります。
  • ドッグトレーナー: 日常の困りごと(引っ張り、吠え、留守番など)は、犬の学習理論にもとづいた指導ができるトレーナーに相談すると、家庭で実践しやすい手順に落とし込んでもらえます。
  • 住んでいる自治体の動物愛護担当窓口: 飼育が続けられなくなりそうな場合も、早めに相談することで選択肢が広がります。
最初の1か月はほとんど目も合わせてくれなくて、正直「失敗したかも」と思いました。団体さんに相談したら「その子は前の環境でも時間がかかったタイプなので、こちらの想定内です」と言われて、ずいぶん気が楽になりました。今はソファの隣で寝ています。
迎えて3か月の飼い主

動物愛護週間(9月20日から26日)を情報収集に使う

動物愛護週間は、動物愛護管理法第4条にもとづくものです。同条は「ひろく国民の間に命あるものである動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるようにするため、動物愛護週間を設ける」と定めており、期間は毎年9月20日から26日までです。

この時期は、自治体の動物愛護センターの施設公開、譲渡会、動物愛護に関する講演会などが各地で開かれます。まだ迎えるかどうか決めていない段階でも、実際に施設を見学したり、譲渡会で団体の人と話したりできる貴重な機会です。

2026年度(令和8年度)は特別な節目でもあります。環境省が2026年4月24日に公表した報道発表によると、1927年に日本で初めての動物愛護週間の催しが行われてから2026年で100年を迎えるため、ポスターのデザイン絵画コンクールのテーマは「動物愛護週間100年〜人と動物との適正なかかわり方について〜」とされました。同発表は、今年の動物愛護週間ではこのテーマに沿って、100年間で育まれた人と動物の関係やその変遷を振り返りながら、人と動物がより良く共生する未来を考えるためのイベント等の実施を予定していると記しています。表彰式は令和8年9月下旬の「どうぶつ愛護フェスティバル」で行われる予定です。

ヒント

行事の内容や日程は自治体ごとに異なります。「(お住まいの都道府県名) 動物愛護週間 行事」で検索するか、地域の動物愛護センターのサイトを8月下旬から9月上旬にチェックしておくと、見学や譲渡会の予定を押さえやすくなります。

よくある質問

保護犬にはどんな犬が多いのですか。
環境省の令和6年度統計では、自治体が引き取った犬17,399頭のうち約87%が所有者不明で、離乳前の幼齢個体は全体の約17%でした。東京都動物愛護相談センターも譲渡対象の犬について『犬はほとんどが成犬です。子犬はほとんどいません』と説明しています。純血種も雑種もいて、年齢も性格もさまざまです。
保護犬は問題行動が多いのですか。
保護犬だから問題行動が多い、あるいは少ないと一般化することはできません。犬の行動は生まれ持った気質、これまでの生活環境、健康状態、新しい家庭での過ごし方によって大きく変わり、個体差がとても大きいためです。ただし、東京都は保護施設と一般家庭では環境が異なるため、譲渡後に新たな性格が現れることがあると注意点として挙げています。気になる様子があれば、譲渡元や動物病院、ドッグトレーナーに早めに相談してください。
譲渡にはどれくらいの費用がかかりますか。
自治体からの譲渡は原則として無償ですが、迎えた後の市区町村への登録手数料や狂犬病予防注射の費用は飼い主負担です。民間の保護団体では、保護中の医療費実費などを譲渡費用として負担する形が一般的で、ピースワンコ・ジャパンの解説ではNPO法人で1万円から6万円程度が多いとされています。費用の内訳(不妊去勢手術、ワクチン、マイクロチップ、駆虫など)を説明してもらえるかどうかを確認しましょう。
一人暮らしでも保護犬を迎えられますか。
団体や自治体によって扱いが異なります。断られることもありますが、緊急時に世話を代われる保証人がいれば可とする例もあります。年齢の上限についても、上限を超える場合は高齢犬や小型犬に限る、後見人を立てるといった代替条件を設ける例があります。1か所の条件を全体の基準と思わず、複数の自治体・団体に問い合わせてみてください。
トライアル(お試し期間)は必ずありますか。
ありません。神奈川県動物愛護センターのように『トライアルは行っていません』と明記している自治体もあります。一方、民間の保護団体では1週間から1か月程度のトライアルを設けるところが多いとされています。トライアルは気軽に返すための制度ではなく、譲渡審査の一環として相性を確かめる期間だと理解しておきましょう。
先住犬がいても保護犬を迎えられますか。
迎えられる場合もありますが、条件は厳しくなる傾向があります。先住犬の不妊去勢手術、市区町村への登録、狂犬病予防注射の実施を求められるのが一般的で、神奈川県のように先住動物がいると譲渡を断る場合があると明記している自治体もあります。相性の確認のためトライアルを行う団体を選ぶという方法もあります。

まとめ

環境省の令和6年度統計が示しているのは、「引取られる犬の大多数は迷子で、その約38%は飼い主のもとへ戻り、譲渡を待っているのは主に成犬・シニア犬」という姿でした。20年前と比べて引取り数はおよそ10分の1に、殺処分数はおよそ80分の1にまで減っており、日本の状況は着実に変わってきています。

そのうえで、これから迎える人に必要なのは、悲惨な数字への反応ではなく、暮らしの現実的な点検です。留守番の時間、散歩に使える時間、住居の条件、家族の同意、費用の見通し、そして飼えなくなったときの備え。この点検が済んでいる人ほど、面談でも正直に話すことができ、結果としてその子に合った家庭かどうかを団体側も判断しやすくなります。

9月の動物愛護週間は、その第一歩を踏み出すのにちょうどよい時期です。まずは住んでいる地域の動物愛護センターのサイトを開いて、譲渡の条件と講習会の日程を見てみるところから始めてみてください。

出典・参考

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