ワンレッジ
犬グッズ・おもちゃ

犬の口輪(マズル)の選び方|バスケット型とソフト型の違い、サイズの測り方と嫌がらない慣らし方

対象の目安: 全ライフステージ

ミナト・グッズ・運動・シニア担当
・ 約44分で読めます
犬の口輪(マズル)の選び方|バスケット型とソフト型の違い、サイズの測り方と嫌がらない慣らし方

動物病院の診察台で体をこわばらせ、爪切りのたびに口が出てしまう。散歩中、目を離したすきに何かを飲み込もうとする。そんな場面が続くと、「口輪をつけたほうがいいのかな」と一度は考えるものの、口輪にはどうしても「怖い犬につけるもの」「かわいそう」というイメージがつきまといます。

米国の獣医学部や動物病院の資料を読むと、口輪の位置づけはかなり違います。VCA Animal Hospitalsの獣医行動学の専門医らによる解説は、口輪を車のシートベルトにたとえています。事故が起きないことを願いながら毎回締めるシートベルトと同じで、困った事態を防ぐための、ふつうに身につける道具だという考え方です。

この記事では、グッズ担当として、口輪を「罰の道具」ではなく「安全を確保しながら通院や練習を続けるための道具」として選ぶ方法をまとめます。最初にはっきりさせておくと、無駄吠えを止めるために口を閉じさせる使い方はすすめません。その理由も含めて、タイプ別の違い、サイズの測り方、慣らし方、やってはいけない使い方を順に見ていきます。

口輪は「罰の道具」ではなく、安全を確保するための道具

どんな場面で役に立つのか

コーネル大学獣医学部のRiney Canine Health Centerは、口輪は「人や動物を咬もうとするのではないかと心配なとき」にはいつでも使えるとして、いくつかの場面を挙げています。犬の群れで走り回るうちに興奮しすぎてくわえようとする犬、家の前を通る人や犬に向かっていく犬、爪切りのように特定の場面でストレスを感じる犬、そしてけがをした緊急時です。どんな犬でも、痛みがあれば咬むことがある、としています。

同じ記事で、コーネル大学の小動物診療に携わるLeni Kaplan獣医師は「Most of the time, we do not need to use muzzles」——ほとんどの場合、口輪は必要ないと前置きしたうえで、「We use muzzles when necessary and without hesitation」——必要なときはためらわずに使う、と話しています。記事はさらに、獣医師やトリマーから口輪をつけたいと言われても気を悪くしないでほしい、それは犬がトラブルに巻きこまれるのを避けようとしているのだから、とも添えています。

家庭の飼い主にとって口輪が役立ちやすいのは、たとえば次のような場面です。

場面口輪の役割関連する出典の考え方
動物病院・トリミング・爪切り慣れない扱いや痛みで口が出てしまうときの安全確保コーネル大学は、見知らぬ人に扱われるときや痛みがあるときは、とても人なつこい犬でもうなったり咬んだりしやすくなるとしている
拾い食いがやめられない散歩中に危険な物を口に入れるのを物理的に防ぐVCAは、危険な物を飲み込む犬の行動治療計画の一時的な一部として口輪がすすめられることが多いとしている
人や犬に向かっていく・咬んだことがある行動の改善に取り組む間の安全確保AKCは、口輪は問題を解決せず、行動修正に取り組む間みんなの安全を守るものだとしている
けが・災害などの緊急時痛みや恐怖で咬む事故を防ぐAKCは、大けがをした犬を運んだり手当てしたりするときは咬まれるリスクが大きく高まるとしている

災害時についても触れておきます。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」は、避難時にはペットもストレスや恐怖で攻撃行動など平時と違う反応を示す可能性があり、ふだんは問題のない接触が咬傷やひっかき傷につながりやすくなる、と注意を促しています。ガイドライン自体は口輪について書いているわけではありませんが、慣れない場所で人やほかの動物と距離が近くなる場面を想像すると、ふだんから口輪に慣れておくことは備えのひとつになります。

あわせて読みたい

犬の応急処置と心肺蘇生(CPR)|2026年に出た世界初の獣医応急処置ガイドラインで整理する

「咬むかもしれない」サインを知っておく

口輪が必要かどうかを考えるうえで、先に知っておきたいのが、咬む前に犬が出しているサインです。コーネル大学獣医学部は、居心地が悪く咬むことにエスカレートするかもしれないサインとして、次のようなものを挙げています。

  • 体がこわばる
  • 白目が見える
  • 身を縮めて離れようとする
  • 首や背中の毛が逆立つ
  • じっと強くにらむ
  • うなる
  • 突進する
  • 痛がるそぶりを見せる

これらが見られる場面こそ、口輪が役立つ場面であり、同時に「なぜそうなるのか」を解決していく必要がある場面でもあります。

無駄吠え防止・罰としては使わない

ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。

AKC(アメリカンケネルクラブ)の記事は「They are not for preventing problem behaviors by forcing your dog's mouth closed」——口輪は、口を無理に閉じさせて問題行動を防ぐためのものではない、とし、吠え・かじる行動・そのほか継続的な行動の問題に口輪を使わないよう求めています。理由として、口輪は短時間、見守りのもとで使うものであること、吠えやかじりは続いていく問題なので一時的な道具では解決にならないことを挙げています。VCA Animal Hospitalsも「Muzzles should not be used to prevent a dog from opening its mouth or as a tool to stop barking」——犬が口を開けるのを防ぐためや、吠えを止める道具として使うべきではない、としています。

吠えるのには理由があります。AKCは、分離不安、退屈、警戒、縄張り、注目を引きたい気持ちなどを例に挙げ、まず原因を突き止めて、必要なら専門家の助けを借りて対処するようすすめています。口を閉じさせても、その理由は残ったままです。

罰として使うことも同じです。AKCは「Never muzzle your dog to teach a lesson」——教訓を与えるために口輪をつけてはいけない、とし、根本的な問題は何も解決せず、犬が口輪と罰を結びつけて覚えてしまうので、本当に必要な緊急時に、よけいに怖がって口輪をつけにくくなる、と説明しています。米国で口輪への偏見をなくす活動をしているThe Muzzle Up! Projectも、罰の道具として使うと口輪によい印象を持ってもらうことが妨げられ、望ましくない行動や感情面の影響につながりうるとしています。

注意

販売ページの中には、口輪の用途として「無駄吠え防止」を挙げているものもあります。この記事で紹介する商品にも、メーカーや販売店の説明にそうした表現が含まれるものがありますが、上の理由から、吠えを止める目的での使用はすすめません。吠えが気になるときは、原因を探るところから始めてください。

タイプ別の比較: バスケット型が基本、ソフト型は短時間だけ

口輪は大きく、口のまわりをかごで囲む「バスケット型」と、布などで口を包みこむ「ソフト型(スリーブ型)」に分かれます。VCA Animal Hospitalsは「Basket muzzles are preferred」——バスケット型が望ましい、としています。

タイプ主な素材パンティング・飲水おやつ向く場面注意点
バスケット型(プラスチック・ラバー)プラスチック、TPRなどのラバー多くはできる設計多くは網目から与えられる通院、散歩、長めの練習顔の形に合わないと擦れる・外れる
バスケット型(ワイヤー)金属多くはできる設計多くは網目から与えられる通院、散歩プラスチック製より重くなりやすい。暑さ寒さで不快になりうる
ソフト型(スリーブ型)布、ナイロン、メッシュ、革妨げられる与えにくい爪切りなどごく短時間の処置暑い時期は使わない。軽くくわえる程度の咬み方は防げないことがある
短頭種向けポリエステル、革など商品による商品によるパグ、フレンチ・ブルドッグなど鼻の短い犬一般的な形では合いにくいことがある。フィットを必ず確認
拾い食い防止ガード付きバスケット型に目の細かいガードを追加バスケット型に準じるガード装着中は与えにくい散歩中の拾い食い対策口輪だけで拾い食いは直らない

バスケット型とソフト型の特徴はコーネル大学獣医学部「Muzzle choices」、AKC、VCA Animal Hospitalsの記述を、ワイヤー型の重さと暑さ寒さの指摘はThe Muzzle Up! Projectの装備ガイドを、拾い食い防止ガードはCompany of AnimalsのCLASSIC Basket Muzzleの製品説明をもとに、編集部が整理したものです。短頭種向けは商品ごとに設計が大きく違うため「商品による」としています。

バスケット型: パンティングも水もおやつもできる

コーネル大学獣医学部は、バスケット型を「Best for extended use(長めの使用に最適)」「Provide the most protection(もっとも確実に守れる)」と位置づけ、ふつうは硬いプラスチックか金属製で、革やナイロンのストラップを頭の後ろに回して固定する、と説明しています。そして「Dogs can pant normally in a basket muzzle, drink water, and eat treats. However, they cannot bite」——バスケット型なら犬はふつうにパンティングでき、水も飲め、おやつも食べられる。それでいて咬むことはできない、としています。

見た目は「檻」のようで、いちばん人道的でない選択肢に見えるかもしれません。AKCはそれを認めたうえで「the opposite is true」——実際はその逆だとし、口を押さえつけられないので、多くの犬はソフト型よりバスケット型のほうが快適そうだ、としています。VCAは、よく合ったバスケット型なら、口を開ける、パンティングする、おやつを食べる、体のサインを見せる、ということができて、咬むことだけは防げると説明しています。

「体のサインを見せられる」というのは、見落としがちですが大事な点です。うなって歯を見せるようなサインが見えれば、飼い主も獣医師も、犬が限界に近づいていることに気づけます。

素材による違いもあります。The Muzzle Up! Projectの装備ガイドは、ワイヤー製は安全で効果的な選択肢になりうるものの、プラスチック製より重くなりやすく、暑い気候や寒い気候では金属が犬にとって不快になりうるとしています。革製は快適さを増すことがある一方で、デザインによっては食べ物や水をとりにくいものがある、とも指摘しています。

メモ

バスケット型をしていても、咬傷事故のリスクがゼロになるわけではありません。ペンシルベニア大学獣医学部の行動診療科の資料は、口輪をしていても、飛びついたり突進したりして口輪ごとぶつかることで人や動物にけがをさせることがあり、とくにワイヤー製ではそれが起こりやすく、硬いプラスチック製でも起こりうるとしています。また、しつこく外そうとすれば犬が自分で外してしまうこともあり、とくにサイズが合っていないときやストラップがゆるいときに起こりやすいとしています。

ソフト型: 口を閉じる設計なので、短時間だけ・暑い時期は使わない

ソフト型は、ナイロンやメッシュ、ときには革で口を包みこむタイプです。コーネル大学獣医学部は、ソフト型を「Best for temporary use, such as nail trims」——爪切りのような一時的な使用に最適、と位置づけ、パンティングと飲水が制限されること、それでも軽くくわえるような咬み方は防げない場合があることを挙げています。同大学のバスケット型の解説では「Nylon muzzles that constrict your dog's mouth are not appropriate for most situations」——口を締めつけるナイロン製の口輪は、ほとんどの場面に適さない、とまで書いています。

問題の中心はパンティングです。AKCは、ソフト型は口を包んで閉じた状態に保つため、バスケット型より快適でないうえに、より危険になりうるとし、その理由を次のように説明しています。「Soft muzzles prevent your dog from panting, which is the only way he has of dispersing heat」——ソフト型はパンティングを妨げるが、パンティングは犬にとって熱を逃がす唯一の方法である。そのうえで、ソフト型は「should only be used for very short periods of time and never in hot weather」——ごく短時間だけ使い、暑い日には決して使わないこと、としています。

VCA Animal Hospitalsは、ソフト型はパンティングも、恐怖を示すうなりのようなサインも出せなくし、トレーニング用のおやつも受け取りにくくするとして、ほかに手段がない緊急の場面で、ごく短時間だけ使うべきだとしています。

また、コーネル大学やAKCは、手元に口輪がない緊急時に包帯(ガーゼ)やリードなどで一時的に口を縛る方法にも触れていますが、AKCは、ほかに選択肢がないときだけの一時的な方法とし、応急手当てのセットにきちんとした口輪を入れておくほうがよいとしています。

残暑が続く9月は、ソフト型の出番をさらに減らす

口輪の話で季節を持ち出すのは、ソフト型の危険が暑さと直結しているからです。

日本気象協会のtenki.jpによると、気象庁が2026年9月3日に発表した1か月予報では、9月も全国的に厳しい残暑が続き、東日本や西日本では30℃以上の真夏日、東海以西では35℃以上の猛暑日となる日もありそうだとされています。同日には「高温に関する全般気象情報」も発表され、東北から九州にかけての広い範囲で9月9日頃から17日頃にかけて、その時期としては10年に一度程度しか起きないような著しい高温となる可能性が高まっている、と伝えられています。

ペンシルベニア大学獣医学部の行動診療科の資料は、はっきりこう書いています。「A muzzle that interferes with your dog's ability to pant should never be used for more than a few minutes, because of the risk of overheating and even heatstroke」——パンティングを妨げる口輪は、過熱や熱中症のおそれがあるため、決して数分を超えて使ってはいけない。

「秋だから散歩にソフト型の口輪をつけても大丈夫」とは考えないでください。散歩や移動、車での通院など、屋外や暑くなりやすい場所で口輪を使うなら、バスケット型を選びます。バスケット型でも、暑い時間帯の長時間の使用は避け、パンティングが激しくなっていないか、水を飲めているかをこまめに確かめてください。

あわせて読みたい

夏の犬の散歩と熱中症対策|時間帯・路面チェック・危険なサイン

短頭種(鼻の短い犬)の場合

パグやフレンチ・ブルドッグのような鼻の短い犬は、顔の形の違いから、一般的な形の口輪では合いにくいことがあります。AKCは、パグのような鼻の短い犬でも口輪をつけることはできるとしたうえで、オーダーメイドで合わせたものが最善の解決策かもしれない、としています。

VCA Animal Hospitalsは、パグやブルドッグなどの短頭種の中には、口輪の代わりにエリザベスカラー(コーン型のカラー)をつけることを覚えられる犬もいる、と紹介しています。動物病院での処置の場面などでは、口輪にこだわらず、かかりつけの獣医師にどちらがよいか相談してみてください。

呼吸への配慮も欠かせません。コーネル大学獣医学部は、短頭種に多い短頭種気道症候群(BOAS)について、気道の構造の違いから程度の差はあれ呼吸がしにくくなることがあり、症状として口を開けての呼吸などを挙げ、軽い場合の管理として過度な暑さや湿気を避けること、ストレスを減らすことなどを挙げています。短頭種に口輪を使うなら、着けたまま口を開けて呼吸やパンティングができるかを、ほかの犬種以上に慎重に確かめてください。いびきのような呼吸音が強い、疲れやすいといった様子がある子は、口輪を選ぶ前にかかりつけの獣医師に相談してください。

あわせて読みたい

犬のエリザベスカラーと術後服(術後ウェア)の選び方|7タイプ比較と、傷の部位・性格から決めるコツ

拾い食い対策に使う場合

拾い食いのために口輪を使う家庭もあります。コーネル大学獣医学部のKaplan獣医師は、石や桃の種、ボールなど食べ物でない物を食べる傾向があり、異物を取り出す手術が必要になった犬の中には、外に出るときや散歩のたびに何年もバスケット型の口輪をつけている犬もいる、と話しています。

メーカーによっては、拾い食い対策用のガードを追加できるモデルを用意しています。英国のCompany of Animalsは、同社の「CLASSIC Basket Muzzle」について、散歩中の食べ物や野生動物の拾い食い、石を食べること、食糞などを防ぐためのガードが付属するとし、拾い食いが心配な犬にはこのモデルをすすめています。一方で、ガードを外せばおやつを与えられる、としていて、裏を返せばガードを入れている間はおやつを与えにくくなります。なお、このモデルは、この記事の執筆時点で編集部が確認した国内の販売ページではいずれも在庫切れだったため、商品カードは置いていません。

拾い食いは、口輪で物理的に防ぎながら、「ちょうだい」「放して」の練習や、散歩ルートの見直しといった対策を並行して進めるのが基本です。

あわせて読みたい

犬の拾い食い対策|散歩中の誤飲を防ぐしつけと環境づくり

サイズの測り方とフィットの確認

口輪は、体重や犬種名だけで選ぶとうまくいきません。VCA Animal Hospitalsは、犬の鼻や顔の形はそれぞれ違い、合う口輪を探す時間と手間をかける価値がある、としています。AKCも、とくにネット通販で買うときは測ることが大切だとしています。

測る場所

多くのメーカーのサイズ表は、鼻の長さと鼻回りを基準にしています。ここでは、バスカービル(Baskerville)ブランドの口輪を作る英国Company of Animalsの案内をもとに、測り方を整理します。

  1. 1

    鼻の長さを測る

    鼻先から、目のすぐ下にある鼻の付け根までの長さを測ります。Company of Animalsは、鼻の長さと鼻回りでサイズ区分が分かれる場合は、鼻の長さを基準にサイズを決めるよう案内しています。
  2. 2

    鼻回りを測る

    鼻のいちばん太いところ、ふつうは目のすぐ下あたりの周囲を、やわらかいメジャーで一周させて測ります。
  3. 3

    口を開けたときの幅を見ておく

    パンティングして口を大きく開けたとき、どのくらい幅が広がるかを見ておきます。Company of Animalsは、口輪の周囲は犬が自由にパンティングし水を飲めるだけの余裕があることを確かめるよう求め、口をいっぱいに開けてパンティングしたときの幅は飼い主がいちばんよく知っているので、自分の判断も使ってほしい、としています。散歩のあとなど、自然にハアハアしているときの口の開き具合を見ておくと参考になります(これは編集部の目安です)。
  4. 4

    首回り(ストラップが通る位置)を測る

    耳のすぐ後ろから首にかけて、ストラップが通るあたりの周囲を測っておくと、商品のストラップの長さが足りるかを確かめやすくなります(これは編集部の目安です。商品によってストラップの長さの表示方法は違います)。

測った数値は、必ずその商品のサイズ表と照らし合わせてください。同じ「Mサイズ」でも、メーカーによって寸法はまったく違います。

着けてみて確かめるポイント

届いたら、慣らしの練習を進めながら、次の点を確かめます。

  • 鼻先とかごの間にすき間があるか。Company of Animalsは、このすき間を1cm程度にするのが理想としている
  • 目のまわりに当たっていないか。Company of Animalsは、口輪が目のまわりに触れないよう求めている。VCAも、鼻の柔らかい部分や鼻の穴の上に乗らず、目にも触れないものを選ぶよう求めている
  • 口を開けてパンティングでき、水を飲めるか
  • 自分で外せないか。VCAは、犬が自分で外せないものを選ぶよう求めている
  • ストラップはきつすぎず、ゆるすぎないか

ストラップのきつさの目安は、資料によって少し表現が違います。AKCは、犬の頭とストラップの間に指がちょうど1本入るくらい、としています。コーネル大学獣医学部は、頭から抜けないように調整し、ストラップの下に指が1〜2本入るくらい、としています。ペンシルベニア大学の行動診療科は、ストラップを耳のすぐ下の首まわりでしっかり、確実に留めるよう求めています。いずれにしても「頭から抜けない」「締めつけない」の両方を満たすことが条件です。AKCは、ゆるすぎると外せてしまい、きつすぎると呼吸やパンティング、飲水を妨げ、痛い擦れの原因になるとしています。

ヒント

バスカービルのウルトラマズルのように、お湯で温めて形を調整できる商品もあります。Company of Animalsは、熱い水道のお湯に2分ほどつけ、触っても安全な温度になってから手で形を整え、冷たい水で冷やして形を固定し、犬に着けて確認する手順を案内しています。素材は時間がたつと元の形に戻ることがあるので、ときどき調整し直す必要があるとも書かれています。同社の測り方の案内は、温めて形を整えたあとは冷ましてから犬に着けるよう求めています。

The Muzzle Up! Projectの装備ガイドは、支持者からの声として、ウルトラマズルでは犬によってはプラスチックが鼻の上の皮膚に擦れることがあり、布の細切れを当てると皮膚の傷みを防ぎ、フィットもよくなる、と紹介しています。どの商品でも、着けたあとは鼻筋や耳の後ろ、あごの下に赤みや脱毛がないか見てください。

サイズ選びとフィットのチェック

  • 鼻の長さと鼻回りを実測した(体重や犬種名だけで選んでいない)
  • 長さと鼻回りでサイズが分かれたときは、メーカーの案内に従って選んだ
  • 鼻先とかごの間にすき間がある
  • 目や鼻の穴のまわりに当たっていない
  • 着けたまま口を開けてパンティングでき、水を飲める
  • ストラップは頭から抜けず、締めつけてもいない
  • 前足でこすっても簡単には外れない
  • 外したあと、鼻筋・耳の後ろ・あごの下に擦れや赤みがない

装着時間の目安: 「何時間まで」と言い切れない理由

「口輪は何分、何時間まで着けていいのか」は、多くの人が知りたいところだと思います。ただ、調べた範囲では、タイプを問わず一律の上限時間を示す資料は見当たりませんでした。資料ごとの表現を、そのまま並べておきます。

出典対象書かれていること
ペンシルベニア大学 行動診療科パンティングを妨げる口輪過熱や熱中症のおそれがあるため、決して数分を超えて使わない
AKCソフト型ごく短時間だけ使い、暑い日には決して使わない
AKC口輪全般短時間、見守りのもとでだけ使うもの
VCA Animal Hospitalsソフト型(スリーブ型)ほかに手段がない緊急の場面で、ごく短時間だけ
VCA Animal Hospitalsバスケット型(慣らしが進んだあと)喉が渇いたら水を与える限り、1時間以上着けていられる
コーネル大学獣医学部バスケット型 / ソフト型バスケット型は長めの使用に最適、ソフト型は爪切りのような一時的な使用に最適
Company of Animals(メーカー)同社のバスケット型毎日の散歩など長めに着けられるが、どうしても必要な場合を除き長時間着けっぱなしにはすすめない。着けている間は常に見守る

読み取れるのは、ソフト型は「数分単位」、バスケット型は「慣らしが進んでいれば散歩や通院の間くらいは着けていられる」という大まかな違いです。VCAの「1時間以上」も、段階を踏んで慣らしたあとの話で、水を与えることが条件になっています。

実際に着けていられる時間は、犬の慣れ具合、気温、運動の強さ、口輪のフィットによって変わります。数字を目標にするのではなく、パンティングが苦しそうでないか、水を飲めているか、しきりに外そうとしていないかを見ながら、その子にとって無理のない長さを探してください。

嫌がらない慣らし方: 「中におやつ」から始めて、ストラップは最後

AKCの記事には、印象に残る一文があります。「The first time you put a muzzle on your dog should not be the first time you need to put one on」——初めて口輪を着けるのが、初めて口輪が必要になったときであってはいけない。けがをして痛いときや、怖くてたまらないときに初めて口輪を着けられると、口輪そのものをつらい出来事と結びつけて覚えてしまい、次からはさらに着けにくくなるからです。

コーネル大学獣医学部は、とくに子犬期は口輪で嫌な経験をしていないことが多いので練習にぴったりの時期だとしつつ、どの年齢の犬でも口輪を快適に着けられるよう練習できるし、練習すべきだとしています。

始める前の準備

  • 犬が大好きな、特別なおやつを用意する。コーネル大学獣医学部は、ピーナッツバターやチーズ、味つけしていない鶏肉などを例に挙げています。VCAは、小さくて柔らかいおやつに加えて、なめて食べられるペースト状のおやつも用意しておくようすすめています(ピーナッツバターを使う場合は注意が必要です。VCA Animal Hospitalsは、犬に中毒を起こすキシリトールが含まれうる食品の例にピーナッツバターを挙げています。原材料表示を確認してキシリトールが入っていないものを選び、量はごく少しにとどめてください)
  • 1回の練習は短く。コーネル大学獣医学部は1セッション5〜10分、VCAは最初の段階では長くても1〜2分としています
  • 犬がリラックスしていて、ストレスのない落ち着いた場所で始める
  • 口輪とおやつを、犬の届かない決まった場所にセットしておくと、思い立ったときにすぐ練習できる(コーネル大学獣医学部の提案です)

手順

  1. 1

    見せて、においをかがせる

    口輪を見せ、においをかいだり近づいたりしたら、おやつをあげます。VCAは、この段階では口輪を着けようとせず、口輪に関わったらおやつを与えるだけにするよう求めています。AKCの記事で紹介されている手順も、まずにおいをかがせておやつ、を数回くり返すところから始まります。
  2. 2

    中にペースト状のおやつを塗り、自分から鼻を入れてもらう

    口輪のかごの先端の内側にペースト状のおやつを塗り、犬が自分のペースで近づくのを待ちます。コーネル大学獣医学部は、口輪を犬のほうへ押しつけないよう求めています。ペンシルベニア大学の行動診療科は、鼻を奥まで入れることを教えるには、口輪の前方の内側になめられる物を塗るのが効果的だとしています。
  3. 3

    鼻を入れたら、ほめて、ゆっくり口輪を引く

    おやつを食べようと鼻を入れたら、ほめてから、口輪をゆっくり鼻から離します(コーネル大学獣医学部の手順)。
  4. 4

    おやつなしで鼻を入れたら、網目からおやつ

    次は中におやつを入れずに口輪を差し出し、犬が鼻を入れたら、すぐに網目からおやつを与えてほめます。おやつなしでは鼻を入れないようなら、ひとつ前の段階に戻ります。コーネル大学獣医学部は、これを数回くり返して1〜2分で練習を終え、週に数回、よい経験を何度か積むまで続けるようすすめています。
  5. 5

    角度を変えたり、一歩下がったりしてみる

    VCAは、鼻を丸ごと入れられるようになったら、口輪を左右や上下に少し向きを変えて差し出し、それでも自分から入れにくるかを確かめ、さらに口輪を持ったまま数歩下がって、犬がついてきて鼻を入れ続けるかを見る手順を紹介しています。
  6. 6

    ストラップに触る・ゆるく留める

    自分から進んで鼻を入れるようになってから、初めてストラップを扱います。ペンシルベニア大学の行動診療科は、まずストラップに触ったり動かしたりすることに慣らし、次に食べている間だけストラップを後ろで合わせて持ち、食べ終わったらすぐ放す、という段階を踏むようすすめています。コーネル大学獣医学部は、首のストラップを最初はゆるく留め、すぐに網目からおやつを与えるとしています。
  7. 7

    留めたら1〜2秒で外すところから

    VCAは、ストラップを留めたらすぐにおやつを与え、1〜2秒たったらおやつをやめてストラップを外し、口輪を外す、としています。慣れてきたら、少しずつ着けている時間を延ばします。
  8. 8

    10秒ほど着けられたら、得意な合図を出す

    VCAは、10秒ほど着けていられるようになったら、おすわり・タッチ・ふせ・お手など、その子が好きな合図を出して、ごほうびを網目から与えるようすすめています。口輪を着けていても、いつもの楽しいことができる、と覚えてもらう段階です。
  9. 9

    日常のいろいろな場所で使う

    VCAは、新しい環境でも落ち着いていられる犬なら、散歩や外出先、家の別の部屋や庭などでも練習し、口輪がリードや首輪と同じくらい当たり前のものになるようにしていく、としています。The Muzzle Up! Projectは、口輪を着けたあとには散歩や遊び、おやつなど、犬にとって楽しいことが続くようにするとよい、としています。

手順は、コーネル大学獣医学部「Basket muzzle training」、VCA Animal Hospitals「Muzzle Training for Dogs」、ペンシルベニア大学獣医学部行動診療科の資料、AKCの記事をもとに、編集部が家庭向けにまとめたものです。

どのくらいの期間で進むかは、犬によって大きく違います。AKCの記事で紹介されている飼い主は、口輪を怖いものと結びつける前に始めていれば、数分から1日もかからずに進められたかもしれない一方、動物病院を怖がるようになっていた犬では数日かけて、ひとつずつ慣れたのを確かめながら進めた、と話しています。

うまくいかないとき

  • 近づくのをためらったら、呼び寄せない。VCAは、ためらう犬を誘ったりおびき寄せたりすると、急いで飛びついておやつを取り、さっと後ずさりすることがあり、それは望む行動の反対で、犬が怖がりすぎていて練習を続けられないサインだとしています
  • 前足でこすって外そうとするのは、よくある反応。Company of Animalsは、顔に新しい物が着くのは犬にとって違和感があり、外そうとするのはまったく普通の反応だとして、おやつや好きなおもちゃで気をそらすようすすめています。慣らし始めの時期は、首輪に通すループなどが付いた商品なら、それも使って口輪がずれにくいようにするよう案内しています
  • 前の段階に戻る。ペンシルベニア大学の行動診療科は、常に体のサインを見て、居心地が悪そうなら前の段階に戻るよう求めています
  • 練習の様子を動画に撮る。コーネル大学獣医学部は、トレーナーや獣医行動診療の専門家に見てもらえるよう、練習を動画に残すようすすめています

メモ

すでに口輪を怖がっている、練習を強く避ける、咬んだことがある、体を触られることにとても敏感、といった場合は、自己流で進めないでください。VCAは、口輪をすでに怖がっていたり練習を強く避けたりする犬では、行動の専門家の指導を受けるよう、コーネル大学獣医学部は、咬んだことがある犬や扱われることに敏感な犬では、ほめて教えるトレーナーや獣医行動診療の専門医に相談するよう、それぞれすすめています。

通院のときの着け外し

口輪に慣れてきたら、通院の場面でも使えます。コーネル大学獣医学部は、ふだん攻撃的になったり怖がったりする犬なら、口輪を持参して動物病院に入る前に着けておくよう、ただし口輪にまだ慣れている途中の犬を、強い恐怖を示すような場面にあえて連れて行かないよう(動物病院でどうしても必要な場合を除く)求めています。怖さを強めてしまうおそれがあるためです。

外すタイミングにもコツがあります。ペンシルベニア大学の行動診療科は、犬の気がそれているときに外すのがもっとも安全だとし、たとえば病院を出るとき、外の景色やにおいに気を取られていたり、車に戻りたがっていたりする瞬間に外す方法を紹介しています。そのときは、近くにほかの犬や人がいないことを確かめてから外すよう求めています。

あわせて読みたい

犬が動物病院を嫌がる理由と慣らし方|震える・暴れる子への通院ストレス対策

あわせて読みたい

犬が体を触られるのを嫌がる|足拭き・爪切り・歯みがきができるようになるハンドリング練習

商品の比較: バスケット型を中心に、ソフト型・短頭種用を並べる

ここからは、実際の商品を挙げながら特徴を見ていきます。バスケット型を中心に、比較のためにソフト型と短頭種向けも並べました。いずれの商品も、効果や安全を約束するものではありません。価格や在庫、サイズ展開は販売店や時期によって変わり、同じ商品でもサイズごとに別の販売ページになっていることがあります。購入前に各販売ページで、サイズの表記と寸法を必ず確認してください。

バスケット型

バスカービル(Baskerville) ウルトラマズル

広告
バスカービル(Baskerville) ウルトラマズル

英国Company of Animalsのバスケット型の口輪。コーネル大学獣医学部の解説でも、おやつを与えられ、快適にパンティングや飲水ができるバスケット型の例として名前が挙がっています。メーカーは、熱可塑性ラバー(TPR)製で、着けたままパンティング・飲水・おやつができる設計とし、お湯で温めて形を調整できるとしています。サイズは1〜6の6サイズで、メーカーは鼻の長さと鼻回りを測って選ぶよう案内しています。国内の販売ページでは、サイズごとに口周りなどの寸法が示されているものがあります。慣らし始めの時期は、首輪に通すループとヘッドストラップを使ってずれにくくするよう、メーカーはすすめています。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

トリクシー(TRIXIE) マズルフレックス

広告
トリクシー(TRIXIE) マズルフレックス

ドイツのペット用品メーカーTRIXIEのバスケット型。メーカーの公式サイトでは、素材をラバー・ナイロン・ネオプレン(国内の販売ページでは「シリコン」と表記されていることもあります)とし、パンティング・飲水・おやつに支障がない設計、無段階で調整できる額と首のストラップに首のループが付き、3か所で留めることで外れにくいこと、ストラップの一部にネオプレンのパッド、としています。サイズはSからXL〜XXLまでの6種類で、サイズごとに内側の口回り、ヘッドストラップの長さ、かご上部の長さが示されています。国内ではサイズ別の販売ページになっていることが多いので、実測した数値と照らし合わせて選んでください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ソフト型(比較用)

ペティオ(Petio) ソフト口輪

広告
ペティオ(Petio) ソフト口輪

国内のペット用品メーカー、ペティオのソフト型。メーカーによると、生地部はポリエステル、メッシュ部はポリエステル(PVCコーティング)、テープ部はナイロンで、バックルで装着しアジャスターで調節します。サイズは1号から7号までで、号ごとに「くち回り」と「くち先」の寸法が示されています。メーカー自身も、長時間着け続けるのはすすめないとしています。口を包むタイプなので、この記事では、爪切りなどのごく短い処置に限った使い方をおすすめします。暑い日や散歩中の使用は避けてください。メーカーの説明には無駄吠え防止の用途も書かれていますが、上で説明した理由から、その使い方はすすめません。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

短頭種向け(比較用)

トリクシー(TRIXIE) ショートノーズマズル

広告
トリクシー(TRIXIE) ショートノーズマズル

TRIXIEの鼻の短い犬種向けの口輪で、国内では「ショートノーズナイロンマズル」などの名称で販売されています。メーカーの公式サイトでは、ポリエステル製で、額のストラップと首のストラップを無段階で調整でき、おやつを与えられる、としています。ただし、同じメーカーのマズルフレックスと違い、公式サイトの商品情報にはパンティングや飲水についての記載は見当たりませんでした。届いたら、着けたまま口を開けてパンティングでき、水を飲めるかを必ず自分の目で確かめ、確認できない場合は短時間の使用にとどめ、暑い日や散歩中には使わないでください。国内の販売ページには無駄吠え防止をうたう表現もありますが、その使い方はすすめません。短頭種は呼吸への配慮が特に必要なので、上の「短頭種(鼻の短い犬)の場合」もあわせて読んでください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

商品の仕様は、Company of Animals(Baskerville Ultra Muzzle、How to measure a dog for a muzzle)、TRIXIE(Muzzle Flex、Muzzle for short-nosed breeds)、ペティオ オンライン ショップ本店の各商品ページの記載に基づきます。

ヒント

実物が手元にあるなら、動物病院やトリミングサロンで「このサイズで合っていますか」と見てもらうのもひとつの方法です。VCAも、たくさんの種類の口輪を知っている獣医療の専門家や経験のあるトレーナー、行動コンサルタントに手伝ってもらうようすすめています。

やってはいけない使い方

ここまでの資料から、避けたい使い方をまとめます。

つけっぱなしにしない・留守番中に着けない

コーネル大学獣医学部は、見守っていないときに口輪を着けたままにしないよう求め、その理由を、口輪が外れて犬がかじったり、かけらを飲み込んだりするおそれがあるから、としています。ペンシルベニア大学の行動診療科も、口輪を着けている犬は常に積極的に見守る必要があり、飼い主が不在の間や、庭で見ていない間に口輪を着けたままにしてはいけない、としています。メーカーのCompany of Animalsも、安全面と福祉の面から、着けている間は完全に見守るようすすめています。

「留守番中にいたずらをしないように」「家具をかじらないように」という目的で口輪を着けるのは、この条件に反します。かじる行動への対策は、環境づくりと練習で進めてください。

あわせて読みたい

犬が家具・壁・コードをかじる|破壊行動の理由と、叱らずに減らす環境づくり

叱った直後や罰として着けない

AKCとThe Muzzle Up! Projectが求めているとおり、罰として口輪を使うと、犬は口輪を嫌なことと結びつけて覚えてしまいます。咬もうとした直後に、叱りながら無理やり口輪を着ける、という流れは避けてください。口輪は、落ち着いている時間に練習し、「着けるといいことがある」道具にしておくことが、いざというときに使える条件です。

口輪があるからと、苦手な場面に連れ出さない

AKCは、口輪を犬を不必要にストレスのかかる場面に置くために使わないよう求めています。たとえば、ドッグランが苦手な犬に、友だちがみんな行くからと口輪を着けて参加させるのは適切ではなく、ストレスのかかる場面と口輪が結びついて、次はさらに恐怖や不安が強まりうる、としています。

咬みつきの根本対策を口輪だけに頼らない

AKCは、口輪を使う理由やタイプにかかわらず「muzzles are not a solution to behavioral issues」——口輪は行動の問題の解決策ではない、とし、一貫したほめて教えるトレーニングの代わりにはならない、としています。口輪は、練習や治療を安全に続けるための時間を作る道具です。口輪を着ければ問題が解決した、と考えないでください。

あわせて読みたい

犬がごはんやおもちゃを守って唸る|リソースガーディングに叱らないで向き合う

口輪をしていれば安全、と過信しない

上で紹介したとおり、ペンシルベニア大学の行動診療科は、口輪をしていても、飛びついたり突進したりして口輪ごとぶつかることで、人や動物にけがをさせることがあるとしています。サイズが合っていなかったりストラップがゆるかったりすると、外してしまうこともあります。口輪を着けていても、リードは短く持ち、人や犬との距離をとる、という基本は変わりません。

使うたびに確認したいこと

  • 着けている間は、ずっと目の届くところにいる
  • 留守番中や、庭などで目を離す時間には着けていない
  • 叱った直後や罰として着けていない
  • 暑い日にソフト型を使っていない
  • パンティングが苦しそうでなく、水を飲めている
  • リードを短く持ち、人や犬との距離をとっている
  • 使ったあとは、ぬるま湯と石けんで洗っている
  • 外したあと、顔に擦れや赤みがない

使用後の洗浄について、コーネル大学獣医学部は、使うたびに温かい石けん水で洗って清潔に保つようすすめています。洗い方の詳細は、各商品の取扱説明に従ってください。

咬みや拾い食いが続くときは、動物病院や行動診療へ

口輪は、目の前の安全を守る道具です。咬もうとする、拾い食いがやめられない、という状態そのものが続くなら、口輪と並行して、原因に向き合う必要があります。

急に咬むようになったら、まず体の不調を疑う

コーネル大学獣医学部は、どんな犬でも痛みがあれば咬むことがあるとし、咬むことにエスカレートするサインのひとつに「痛がるそぶり」を挙げています。これまで触られても平気だった子が、急に特定の場所を触ると怒るようになった、年をとってから口が出るようになった、という場合は、しつけの問題と決めつける前に、動物病院で体に痛みや不調がないか診てもらってください。

行動の専門家に相談する

咬んだことがある、人や犬に向かっていく、物を守ってうなる、といった行動は、家庭だけで抱えこまないでください。AKCは、咬む歴史やリスクがある犬について、口輪で安全を守りながら、動物行動の専門家、獣医師、ドッグトレーナーと一緒に行動修正に取り組むよう求めています。

国内では、一般社団法人日本獣医動物行動学会が、行動診療を行う施設を地域別に紹介しています。まずはかかりつけの動物病院に相談し、必要に応じて行動診療のできる病院を紹介してもらうのもよい方法です。

何かを飲み込んだかもしれないとき

拾い食いの対策中に、何かを飲み込んだかもしれないと気づいたら、元気そうに見えても自己判断で様子を見続けたり、家庭で吐かせようとしたりせず、すぐに動物病院に連絡してください。

あわせて読みたい

犬が異物を飲み込んだときの対処|家庭で吐かせてはいけない理由と、動物病院へ伝えること

危険

口輪を着けているときに、呼吸が苦しそう、舌や歯ぐきの色が悪い、ぐったりしている、吐こうとしている、といった様子が見られたら、すぐに口輪を外し、動物病院に連絡してください。とくに暑い日や運動のあとは、熱中症のサインを見逃さないよう注意してください。

よくある質問

口輪をつけるのはかわいそうではありませんか。
正しく選んで慣らせば、口輪は犬の安全を守る道具になります。VCA Animal Hospitalsは口輪を車のシートベルトにたとえ、困った事態を防ぐための当たり前の装備として紹介しています。コーネル大学獣医学部は、口輪を着けた犬はより穏やかに扱われ、体を押さえつけられることも少なくて済み、それはほとんどの犬にとって望ましいとしています。かわいそうになるのは、合わないサイズや口を閉じるタイプを長く着けること、慣らさずにいきなり着けること、罰として使うことです。
無駄吠え防止に口輪を使ってもいいですか。
すすめません。VCA Animal Hospitalsは、犬が口を開けるのを防ぐためや吠えを止める道具として口輪を使うべきではないとし、AKCも、吠えのような継続的な問題に、短時間用の道具である口輪は解決策にならないとしています。口を閉じるタイプはパンティングや飲水もできなくなります。吠えには分離不安や退屈、警戒などの理由があるので、原因を探り、必要なら専門家に相談してください。
バスケット型とソフト型、どちらを選べばいいですか。
多くの場面ではバスケット型です。VCA Animal Hospitalsはバスケット型が望ましいとし、コーネル大学獣医学部は、バスケット型なら着けたままパンティングも飲水もおやつもできるとしています。ソフト型は口を包んで閉じる設計のため、コーネル大学獣医学部は爪切りのような一時的な使用に向くとし、ペンシルベニア大学獣医学部の行動診療科は、パンティングを妨げる口輪を数分を超えて使わないよう求めています。散歩や通院、暑い時期に使うならバスケット型を選んでください。
口輪は何時間までつけていられますか。
一律の上限時間を示した資料は見当たりませんでした。パンティングを妨げる口輪について、ペンシルベニア大学獣医学部の行動診療科は数分を超えて使わないよう求めています。バスケット型については、VCA Animal Hospitalsが、段階を踏んで慣らしたあとなら、喉が渇いたときに水を与える限り1時間以上着けていられるとしています。メーカーのCompany of Animalsは、毎日の散歩など長めに着けられるとしつつ、どうしても必要な場合を除き長時間の着けっぱなしはすすめず、常に見守るよう求めています。
慣れるまでにどれくらいかかりますか。
犬によって大きく違います。AKCの記事で紹介されている飼い主は、口輪を怖いものと結びつける前なら数分から1日もかからずに進められたかもしれない一方、動物病院を怖がるようになっていた犬では数日かけたと話しています。コーネル大学獣医学部は、鼻を入れる練習を1〜2分で区切り、週に数回、よい経験を何度か積むまで続けるようすすめています。日数を目標にせず、その子が自分から鼻を入れにくるかどうかを目安に進めてください。
子犬のうちから練習したほうがいいですか。
コーネル大学獣医学部は、子犬期は口輪で嫌な経験をしていないことが多いので練習に理想的な時期だとしています。同時に、どの年齢の犬でも口輪を快適に着けられるよう練習できるし、練習すべきだともしています。成犬やシニア犬でも、あきらめずにおやつを使って少しずつ始めてください。子犬は成長で顔の大きさが変わるので、サイズはこまめに見直します。
パグやフレンチ・ブルドッグでも口輪はつけられますか。
つけられる商品はありますが、フィットの確認がより大切です。AKCは、パグのような鼻の短い犬でも口輪をつけることはできるとし、オーダーメイドで合わせたものが最善の解決策かもしれないとしています。VCA Animal Hospitalsは、短頭種の中には口輪の代わりにエリザベスカラーを着けることを覚えられる犬もいると紹介しています。コーネル大学獣医学部は短頭種気道症候群の管理として過度な暑さや湿気を避けることを挙げているので、着けたままパンティングと飲水ができるかを必ず確かめ、かかりつけの獣医師にも相談してください。
口輪をしていると、周りの人に怖い犬だと思われませんか。
そう感じる飼い主さんは少なくありません。ただ、口輪は咬んだことのある犬だけのものではありません。コーネル大学獣医学部は、とても人なつこい犬でも、見知らぬ人に扱われるときや痛みがあるときには咬むことがあるとして、すべての犬が口輪に慣れておくことに意味があるとしています。米国のThe Muzzle Up! Projectのように、口輪への偏見をなくす活動をしている団体もあります。口輪を着けて落ち着いて歩く姿は、飼い主が安全に気を配っているしるしでもあります。

まとめ

口輪は、犬を罰したり黙らせたりする道具ではなく、通院やお手入れ、拾い食い対策、行動の改善に取り組む間の安全を守る道具です。選ぶときと使うときのポイントをもう一度まとめます。

  • 無駄吠え防止や罰としては使わない
  • 基本はバスケット型。着けたままパンティング・飲水・おやつができるものを選ぶ
  • ソフト型は爪切りなどごく短時間だけ。暑い時期は使わず、残暑の続く9月も油断しない
  • 鼻の長さと鼻回りを実測し、サイズ表と照らし合わせる。鼻先のすき間、目に当たらないこと、ストラップのきつさを確かめる
  • 慣らしは、中にペースト状のおやつを塗って自分から鼻を入れてもらうところから。ストラップは最後に、1〜2秒から
  • 着けている間は必ず見守る。留守番中や目を離す時間には着けない
  • 咬みや拾い食いが続くなら、口輪だけに頼らず、動物病院や行動診療に相談する

いちばん大切なのは、必要になる前に練習しておくことです。落ち着いた日に、おやつと一緒に少しずつ。いざというときに、口輪が犬にとって「いつものもの」になっていれば、犬も人もずっと楽になります。

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事

しつけ・問題行動

犬が体を触られるのを嫌がる|足拭き・爪切り・歯みがきができるようになるハンドリング練習

足を触ると手を引っ込める、口まわりを避ける、うなる——触られるのが苦手な犬に、系統的脱感作と拮抗条件づけで慣れてもらう家庭のハンドリング練習を、部位の順序・同意の確かめ方・道具への慣らし方・足拭き・爪切り・歯みがきの進め方まで整理しました。