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犬が足を引きずる・足を上げて歩く(跛行)とき|急に?徐々に?年齢・前足後ろ足別の原因と受診の目安

対象の目安: 全ライフステージ

ツムギ・食事・健康担当
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犬が足を引きずる・足を上げて歩く(跛行)とき|急に?徐々に?年齢・前足後ろ足別の原因と受診の目安

散歩の途中で急に片方の前足を浮かせて、3本足でひょこひょこ歩き出した。朝起きてきたら、後ろ足をかばうように引きずっている。ドッグランで走り回ったあと、帰りの車から降りるときに足を着こうとしない。あるいは、ここ数か月で「なんとなく歩き方がぎこちない」気がしてきた。犬と暮らしていると、足を引きずる、びっこをひく、足を上げて歩くといった場面には、どこかで必ず出会います。

このとき飼い主がいちばん迷うのは、「肉球にトゲが刺さっただけ?」「骨折していたらどうしよう」「様子を見ていいの?今すぐ病院?」という判断です。足を引きずる原因は、爪が折れたような小さなけがから、靭帯・関節の病気、神経の病気、まれに骨の腫瘍まで、とても幅があります。

この記事は、個別の病気を詳しく解説するものではなく、「どんな引きずり方か」「いつからか」「何歳か」「前足か後ろ足か」という手がかりから考えられる原因の方向を整理し、受診の判断につなげるための地図です。MSD(Merck)獣医マニュアル、コーネル大学獣医学部、米国獣医外科学会(ACVS)、VCA動物病院グループ、国内の動物病院や保険会社の獣医師監修記事をもとにまとめています。原因を突き止め治療を決めるのは獣医師の役割です。気になる様子があれば、この記事を読み終える前でも動物病院に相談してください。

「足を引きずる」は病名ではなくサイン

獣医師は、足を引きずる、かばう、足を上げて歩くといった状態をまとめて「跛行(はこう)」と呼びます。MSD獣医マニュアルは、跛行について「病気のサインであって、特定の病気ではない」と説明しています。同じ「引きずる」でも、痛みで足を着けないのか、筋力や神経の働きが落ちて足をうまく運べないのかで、考えるべき方向が変わります。

家庭で観察するときは、次のような違いに注目すると、あとで獣医師に伝えやすくなります。

見え方考えられる方向の例
片足をまったく着かずに浮かせている強い痛み。骨折・脱臼・靭帯の断裂、爪や肉球の大きなけがなど
着くけれど体重をかけたがらない・ひょこひょこする足先のけが、捻挫、関節の痛みなど幅広い
数歩だけ足を上げて、また普通に歩く(スキップ)小型犬では膝蓋骨脱臼(パテラ)などでよく見られる
足先をこするように引きずる、足の甲を地面に着いてしまう神経の働きの低下(椎間板の病気など)の可能性
ふらつく、腰が左右に揺れる、後ろ足が交差する神経の病気の可能性。関節や骨の病気だけでは典型的ではない
左右どちらかわからないが全体にぎこちない・動きたがらない両側の関節の病気、全身の不調など

アニコム損保の獣医師監修記事は、胸や腰の椎間板ヘルニアで軽い麻痺が出始めると、歩くときにふらつく、足先がひっくり返るといった症状が見られると説明しています。また、MSD獣医マニュアルの獣医師向け解説は、筋骨格の病気は歩き方の異常を起こしても、ふつうは運動失調(ふらつき)は起こさないとし、ふらつきや足先の位置感覚の異常があるときは神経の検査が必要になるとしています。

どの足が痛いかの手がかり:頭の上下

片足をかばっているのはわかっても、どちらの足かがはっきりしないことはよくあります。MSD獣医マニュアルは、前足に跛行がある場合、犬はその足に体重をかけるときに頭を上げ、後ろ足に跛行がある場合は、その足に体重をかけるときに頭を下げる傾向があると説明しています。歩く犬を正面や横から見て、頭がどの足の着地に合わせて上下しているかを観察すると、手がかりになることがあります。ただし家庭での判定は難しいので、断定せず、後述する動画に残しておくのがおすすめです。

「跛行は病気のサインであり特定の病気ではない」、前足・後ろ足の跛行と頭の上下の関係はMSD獣医マニュアル(飼い主向け「Lameness in Dogs」)、筋骨格の病気はふつう運動失調を起こさず、ふらつきがあれば神経の評価が必要という点は同マニュアルの獣医師向け解説「Overview of Lameness in Small Animals」、椎間板ヘルニアでふらつきや足先のひっくり返りが見られる点はアニコム損保の獣医師監修記事(椎間板ヘルニア)に基づきます。

まず確認:すぐ動物病院に連絡したいサイン

原因を考える前に、次のようなサインがないかを確認してください。ひとつでも当てはまるときは、「明日まで様子を見る」より先に、かかりつけ医か夜間救急に電話で相談しましょう。

注意

次のような場合は、早めに(夜間でも)動物病院へ連絡してください。

  • 足をまったく地面に着かない、触らせないほど痛がる
  • 足が腫れている、不自然な角度に曲がっている、ぶらぶらしている
  • 出血が止まらない、肉球や爪の根元から出血している、深い傷がある
  • 交通事故、高い所からの落下、ほかの犬とのけんかなどのあと
  • ふらつく、足先がひっくり返ったまま歩く、後ろ足が立たない・動かない
  • おしっこが出ない、または漏らしてしまう、うんちを漏らす
  • 背中や首を触ると痛がる、背中を丸めてじっとしている、抱っこでキャンと鳴く
  • ぐったりしている、食欲がない、熱っぽい
  • 両方の後ろ足が同時に動かない

VCAの応急処置の解説は、骨折や脱臼では腫れが出たり、足が不自然な角度になったりすることがあり、ほとんどの犬は骨折・靭帯の断裂・脱臼のある足では歩こうとしない、と説明しています。

特に見逃したくないのが、神経のサインです。ACVSは椎間板の病気について、ふらつく・後ろ足が交差する「酔ったような歩き方」から、後ろ足がまったく動かない状態まで段階があり、同時におしっこを自力で出せなくなることがあるとしたうえで、椎間板の破裂は一般に「外科的な緊急事態」と考えられていると説明しています。足を引きずっているように見えても、原因が背骨にあることがあるのです。

骨折・脱臼の腫れや不自然な角度、骨折・靭帯断裂・脱臼では多くの犬が歩かない点はVCA「First Aid for Limping Dogs」、椎間板の病気の段階、排尿ができなくなること、外科的緊急事態とされる点はACVS「Intervertebral Disc Disease」、まったく足を着かない・立てない・激しい痛み・外傷直後・両後肢が同時に動かない・発熱やぐったりを伴う場合はすぐ受診という目安はアニホック動物医療センター小平病院の解説に基づきます。

様子を見てもよいのは、どんなときか

一方で、足を引きずる場面のすべてが緊急というわけではありません。VCAは、すぐにおさまる軽い痛みのエピソードは受診が必要ないこともある一方、歩きたがらない・足を使わないほどの痛みは診てもらうべきだとしています。

目安として、各機関は次のように書いています。

  • VCAの応急処置の解説:跛行が24時間以上続くときは動物病院へ
  • コーネル大学獣医学部の解説:1〜2日以上足を引きずっているとき、または痛みが強い・急に始まった・悪化しているときは待たずに受診を。早い評価と治療が、犬の快適さと経過の改善につながることが多い
  • アニホック動物医療センター小平病院の解説:軽い跛行で元気・食欲もふだんどおりなら、半日〜1日ほど運動を控えて様子を見てもよいが、改善しない・悪化する・繰り返す場合は早めに受診を

つまり「様子見」は、上のすぐ受診したいサインがなく、足を着いて歩けていて、元気も食欲もふだんどおりで、安静にしていると良くなっていく場合に限った、短い期間の選択肢と考えるとよいでしょう。様子を見ている間も、良くならない・悪くなる・同じ足を繰り返し引きずるなら、日数を待たずに受診してください。子犬やシニア犬、持病のある犬は、迷ったら早めに相談するほうが安心です。

軽い痛みのエピソードと受診すべき痛みの区別はVCA「Urgent Care for Pain or Limping」、24時間以上続く跛行で受診という目安はVCA「First Aid for Limping Dogs」、1〜2日以上続く・強い・急・悪化する場合は待たないという目安はコーネル大学獣医学部Riney Canine Health Centerの解説、軽い跛行で半日〜1日運動を控えて様子を見る目安はアニホック動物医療センター小平病院の解説に基づきます。

急に始まったか、徐々に進んだか

次の手がかりは、始まり方です。VCAは、急に起こる跛行で多い原因として、爪が折れる、軟部組織のけが(捻挫や筋肉の損傷)、関節のけが、骨折、脱臼を挙げています。一方、慢性的な跛行や出たり引っ込んだりする跛行は、変形性関節症、足や背骨の変形、神経の病気、慢性的な軟部組織のけが、がんなど、多くの状態から起こりうるとしています。

始まり方よくある背景の例
急に(散歩中・遊んだあと・ジャンプのあと)爪の損傷、肉球の傷、トゲや草の実、捻挫、骨折・脱臼、十字靭帯の断裂、膝蓋骨脱臼、椎間板の病気の発症
徐々に(数週間〜数か月でぎこちなくなる)変形性関節症、股関節形成不全・肘関節形成不全、十字靭帯の部分断裂、神経の病気、骨の腫瘍
出たり引っ込んだり(休むと良くなり、また出る)膝蓋骨脱臼、関節炎(寝起きや運動後に目立つ)、成長期の骨の炎症(汎骨炎)

ただし「急に見えた=急に起きた」とは限りません。ACVSは、犬の前十字靭帯(ACVSでは頭側十字靭帯と表記)の断裂について、健康な靭帯が突然のけがで切れることは非常にまれで、多くは時間をかけて進んだ靭帯の変性の結果だと説明しています。部分断裂はよく見られ、時間とともにほぼ必ず完全断裂へ進むとも書かれています。「今朝から急に」と感じた跛行でも、実は少し前から小さなサインが出ていた、ということは珍しくありません。

急性・慢性の跛行で多い原因はVCA「Lameness in Dogs」、十字靭帯の断裂は多くが時間をかけた変性の結果で、健康な靭帯が突然のけがで切れることは非常にまれ、部分断裂はほぼ必ず完全断裂へ進むという点はACVS「Cranial Cruciate Ligament Disease」に基づきます。

年齢と「前足・後ろ足」で原因の方向を整理する

コーネル大学獣医学部の解説は、跛行のよくある原因を「若い犬か、年齢を重ねた犬か」と「前足か、後ろ足か」の組み合わせで整理しています。これに、MSD獣医マニュアルやACVS、国内の獣医師監修記事の情報を合わせると、次のようになります。

前足後ろ足
子犬・若い犬肘関節形成不全、骨軟骨症、汎骨炎・肥大性骨異栄養症、成長板の早期閉鎖、肩の発育の問題や腱・筋肉のけが股関節形成不全、膝蓋骨脱臼、汎骨炎・肥大性骨異栄養症、レッグ・ペルテス病(小型犬)、腱や筋肉のけが
成犬〜シニア肘の関節炎、肩の関節炎や慢性的な軟部組織のけが、首や背骨の問題による神経の痛み、骨の腫瘍十字靭帯の断裂、股関節の関節炎、骨の腫瘍、背骨の病気、足先のけがや感染

どの年齢でも、爪や肉球のけが、トゲや草の実、捻挫、骨折・脱臼といった外傷は起こりえます。表はあくまで「よく挙がる候補」の整理で、この中から家庭で原因を当てることが目的ではありません。

年齢×前足・後ろ足の分類は、コーネル大学獣医学部Riney Canine Health Center「What to expect when taking your limping dog to the veterinarian」の整理をもとに、MSD獣医マニュアル、PS保険の獣医師確認記事(成長板早期閉鎖・レッグ・ペルテス病)の情報を加えて編集部で作成しました。

子犬・成長期(〜1歳半ごろ)

成長期の犬には、この時期ならではの骨や関節の病気があります。

  • 汎骨炎(はんこつえん):MSD獣医マニュアルによると、主に大型・超大型犬の6〜16か月齢に見られ、足を引きずる、熱が出る、食欲がない、骨を触ると痛がるといったサインが出たり消えたりします。VCAは、複数の骨に同時に起きたり場所を移ったりして、痛む足が移り変わる跛行になることがあると説明しています
  • 肥大性骨異栄養症:同じく成長期の大型・超大型犬に見られ、前足の前腕の骨(橈骨・尺骨)の痛みと腫れ、発熱、食欲低下、元気消失を伴い、動きたがらなくなることがあります
  • 肘関節形成不全:ACVSによると、大型〜超大型犬で多く、5か月齢ごろから症状が出ることが多い一方、4〜6歳で初めて診断されることもあります。前足の跛行が数週間〜数か月かけて悪化し、運動後に強くなる傾向があります
  • 骨軟骨症:MSD獣医マニュアルによると、成長の速い中型・大型犬の軟骨と骨の形成の乱れで、跛行、関節の腫れ(関節液の貯留)、こわばりが見られます
  • 股関節形成不全:ACVSによると大型犬で多く、遺伝が最大の要因です。足を引きずる、立ち上がりやジャンプを嫌がる、体重を前足に移す、後ろ足の筋肉が落ちる、股関節の痛みなどがサインです
  • レッグ・ペルテス病:MSD獣医マニュアルによると、若いトイ・小型犬種の大腿骨頭(太ももの骨の股関節側の先端)が傷む病気で、後ろ足の跛行、太ももの筋肉のやせ、股関節を動かしたときの痛みが見られます。PS保険の獣医師確認記事は、1歳以下、特に6〜7か月齢の小型犬によく見られるとしています
  • 成長板の早期閉鎖:前足の2本の骨(橈骨と尺骨)の成長がずれて、前足が歪んで歩きにくくなることがあります(PS保険の獣医師確認記事)
  • 膝蓋骨脱臼(パテラ):小型犬に多く、後ろ足をひょいと上げるスキップのような歩き方が典型的です

子犬は遊びの勢いで落ちたり、ぶつけたりすることも多いものです。子犬の跛行は「成長痛だろう」と決めつけず、一度診てもらうと安心です。

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成犬(1〜7歳ごろ)

活発な成犬では、運動中のけがが目立ちます。ドッグランでの急な方向転換、ソファやベッドからの飛び降り、滑りやすいフローリングでの踏ん張りなどが、捻挫や靭帯のけがのきっかけになることがあります。

  • 十字靭帯の病気:ACVSは、座った姿勢から立ち上がりにくい、座る動作がぎこちない、長く休んだあとに目立つ跛行、患肢の筋肉のやせ、膝のポキッ・カチッという音(半月板の損傷を示すことがある)をサインとして挙げています。また、体型の衰えと過体重は、飼い主が影響を与えられる危険因子だとしています
  • 椎間板の病気:ACVSによると、ダックスフンドなど軟骨異栄養性の犬種で多く、椎間板の破裂の症例のうちダックスフンドだけで45〜70%を占めるとされます。アニコム損保の獣医師監修記事は、胸や腰の椎間板ヘルニアでは麻痺が後ろ足だけに出る一方、首の椎間板ヘルニアでは前足にも症状が出ると説明しています。前足を痛がる・引きずる原因が、実は首にあることもあります
  • 足先の外傷や感染:指の間の炎症や、爪の根元の感染でも足をかばうことがあります

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シニア(7歳ごろ〜)

年齢を重ねると、関節の変化による慢性的な痛みが増えてきます。

  • 変形性関節症:アニホック動物医療センター小平病院は、朝の動き始めが固い、寒い日に悪化する、長時間の散歩を嫌がるといった特徴を挙げています。はっきりした跛行より先に「散歩を渋る」「段差を嫌がる」といった生活の変化で気づくこともあります
  • 十字靭帯の病気、股関節・肘の関節炎:若いころの関節の病気が、年齢とともに関節炎として表面化することもあります
  • 骨の腫瘍(骨肉腫など):VCAによると、骨肉腫は小型犬より大型犬で多く、足の長い骨、特に前足の手首の上(橈骨・尺骨)や後ろ足の膝から下(脛骨)にできやすいとされます。多くは患肢を引きずり、腫瘍の部分が腫れて熱を持ち、強く痛むことがあります。MSD獣医マニュアルは、跛行、骨の腫れ、けがをしていないのに起こる骨折をサインとして挙げています

シニア犬の跛行を「年のせい」と片づけてしまうのは避けたいところです。関節の痛みは治療やケアで和らげられることが多く、腫瘍のように早く調べたい病気が隠れていることもあります。特に、大型犬で片足の跛行が続く、徐々に悪化している、足の一部が腫れて熱っぽい、というときは、早めに検査を相談してください。

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汎骨炎・肥大性骨異栄養症・骨肉腫の記述はMSD獣医マニュアル「Bone Disorders in Dogs」、汎骨炎で痛む足が移り変わる点はVCA「Panosteitis in Dogs」、レッグ・ペルテス病・骨軟骨症は同「Other Joint Disorders in Dogs」、肘関節形成不全はACVS「Canine Elbow Dysplasia」、股関節形成不全はACVS「Canine Hip Dysplasia」、十字靭帯の病気のサインと危険因子はACVS「Cranial Cruciate Ligament Disease」、椎間板の病気の好発犬種はACVS「Intervertebral Disc Disease」、首の椎間板ヘルニアで前足に症状が出る点はアニコム損保の獣医師監修記事、骨肉腫の好発部位と症状はVCA「Osteosarcoma in Dogs」、変形性関節症の特徴はアニホック動物医療センター小平病院、レッグ・ペルテス病の好発月齢と成長板早期閉鎖はPS保険の獣医師確認記事に基づきます。

家庭で安全に確かめられること

受診の前に、足先に原因が見つかることもあります。ただし、家庭での確認は「見る」ことが中心です。VCAの応急処置の解説は、痛みのある犬は大好きな家族でも咬むことがあるので注意するよう呼びかけ、2人で行う(1人が支えて、1人が足を見る)ことをすすめています。

  1. 1

    まず落ち着かせて、全身を眺める

    いきなり足を触らず、立ち姿・座り方・歩き方を少し離れて観察します。どの足をかばっているか、腫れや傷が見えないか、左右で形が違わないかを確認します。
  2. 2

    2人で、できれば明るい場所で

    1人が犬の体を抱えるように優しく支え、声をかけて落ち着かせます。もう1人が足を見ます。うなる、歯を見せる、体をこわばらせるといった様子があれば、その時点で中止します。
  3. 3

    足先から見る

    痛くない側の足と見比べながら、爪が折れたり割れたりしていないか、爪の根元が赤く腫れていないか、肉球に切り傷・刺し傷・やけどがないか、指の間にトゲや草の実、小石、赤みや腫れがないかを確認します。
  4. 4

    触るのはそっと、嫌がったらやめる

    指先から付け根に向かって軽く触れ、腫れや熱っぽさ、触ると足を引っ込める場所がないかを見ます。関節を曲げたり伸ばしたり、ひねったりして痛みを確かめるのはやめましょう。
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    写真とメモを残す

    見つけた傷や腫れはスマートフォンで撮影し、いつ・どこで・何をしていたときに始まったかをメモします。

注意

家庭でやらないほうがよいこと

  • 関節を無理に曲げ伸ばしする、足を引っぱって「治そう」とする、外れたように見える膝を戻そうとする
  • 深く刺さったトゲやガラス片、釣り針などを無理に抜く(出血や組織の損傷を広げることがあります)
  • 痛がる犬を押さえつけて確認を続ける
  • 痛がっているのに散歩に連れ出して「歩かせて様子を見る」

VCAは、指の間に異物が見えていて簡単に届く場合は取り除いて洗浄する方法を紹介していますが、判断に迷うとき、深く刺さっているとき、出血しているとき、犬が痛がって触らせないときは、無理をせずそのまま動物病院で処置してもらいましょう。

咬まれないための配慮と口輪

MSD獣医マニュアルは、けがをしている・痛みのある動物は咬んだり引っかいたりすることがあるので、まず自分の身を守るよう書いています。安全にできる場合は口輪(布で代用する方法もある)を使うのが一つの方法ですが、胸にけががある犬や、パグ・ブルドッグのような短頭種には口輪をしないこと、口輪をつけた犬をひとりにしないことも明記されています。ふだんから口輪に慣らしておくと、いざというときに犬の負担も小さくなります。

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痛みのある犬は家族でも咬むことがある、2人で行う、足先から順に異物・肉球・爪を確認する、簡単に届く異物は取り除いて洗浄するという点はVCA「First Aid for Limping Dogs」、けがをした動物は咬むことがある、口輪の使い方と短頭種・胸のけがでは使わない、口輪をつけた犬をひとりにしないという点はMSD獣医マニュアル「What to Do in a Dog or Cat Emergency」に基づきます。

爪や肉球のトラブルが見つかったときは、次の記事も参考にしてください。夏の熱いアスファルトによる肉球のやけど、伸びすぎた爪も、足をかばう原因になります。

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動画を撮って、受診に役立てる

足を引きずっていたのに、動物病院に着いたら緊張して普通に歩いてしまう。これは本当によくあることです。PS保険の獣医師確認記事は、病院で犬が緊張すると足を引きずらなくなることがあり、院内が狭いと正確に評価できないため、動画をいくつか撮り、できれば複数の角度から撮影するとよいとしています。コーネル大学獣医学部も、家で足を引きずっている様子の動画は非常に役に立ち、診察では見えない情報を与えてくれると書いています。

撮り方の工夫として、次のような点を意識すると見返しやすくなります。

  • 平らで滑りにくい場所で、リードをつけて、ふだんの速さで歩かせる
  • カメラから離れていく後ろ姿、近づいてくる正面、真横の3方向を、それぞれ数歩分以上撮る
  • 犬の目線に近い低い位置から、足先まで画面に入るように撮る
  • 寝起きの立ち上がり、階段や段差、方向転換など、症状が出やすい場面も撮っておく
  • 数日おきに同じ条件で撮ると、良くなっているか悪くなっているかを比べやすい

痛がっている犬を動画のために無理に歩かせる必要はありません。すぐ受診したいサインがあるときは、撮影より受診を優先してください。

病院では跛行が出にくく、複数の角度から動画を撮るとよいという点はPS保険の獣医師確認記事、家での動画が診察で見えない情報を与えるという点はコーネル大学獣医学部Riney Canine Health Center、歩く様子の動画が整形・神経の評価に役立つという点はアニホック動物医療センター小平病院の解説に基づきます。撮影の具体的な工夫は、これらをもとに編集部でまとめたものです。

人用の痛み止めは与えない

痛そうな姿を見ると、家にある痛み止めを少しだけ、と考えてしまうかもしれません。けれど、これは避けてください。

危険

人用の解熱鎮痛薬(イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、ナプロキセンなど)を、獣医師の指示なく犬に与えないでください。MSD獣医マニュアルは、これらの薬は獣医師の指示がない限りペットに使うべきではないとしています。

  • イブプロフェン:犬では安全域が狭く、長く使うと胃潰瘍や胃腸の穿孔、腎臓の障害を起こすことがあるとされます
  • ナプロキセン:犬で腸の出血を起こした例があり、黒い便、繰り返す嘔吐、腹痛、ふらつき、貧血などのサインが挙げられています
  • アセトアミノフェン:血液中のヘモグロビンの変化と肝臓の障害が特徴とされ、犬は薬を代謝する力が低く、有害な代謝物がたまりやすいと説明されています
  • アスピリン:胃の刺激や潰瘍、出血が止まりにくくなることなどが知られています

過去に動物病院で処方された犬用の痛み止めや、同居しているほかの犬の薬も、自己判断で使わないでください。誤って人の薬を飲み込んだときは、量と薬の名前がわかるパッケージを持って、すぐに動物病院へ連絡してください。

人用の市販鎮痛薬は獣医師の指示がない限りペットに使うべきではないこと、イブプロフェン・ナプロキセン・アセトアミノフェン・アスピリンの毒性はMSD獣医マニュアル「Poisoning from Human Over-the-Counter Drugs」、犬がアセトアミノフェンを代謝する能力が低いことはアニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」、イブプロフェンの誤食による消化管潰瘍・腎障害は南が丘動物病院の診療コラム、人用の鎮痛薬を自己判断で与えないことはアニホック動物医療センター小平病院の解説に基づきます。

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受診までの過ごし方

受診を決めたら、あるいは様子を見ると決めたら、その間は安静が基本です。VCAは、足を引きずる犬は行動範囲を限定し、運動を制限するようすすめています。

  • ケージやサークル、狭い部屋で過ごさせ、走り回ったりジャンプしたりしないようにする
  • 階段やソファの上り下りをさせない。床が滑るなら、マットを敷いた場所で過ごさせる
  • トイレのために外に出るときは、リードをつけて短時間で済ませる
  • 歩けない犬は、VCAが紹介するように毛布を担架のように使って運ぶ。MSD獣医マニュアルは、けがをした動物を動かすときは頭・首・背骨の動きをなるべく小さくし、板や厚い段ボール、たたんだ毛布などで体を支えるようすすめています。背中や首を痛がる、ふらつくといった様子があるときは特に慎重に
  • 動物病院には事前に電話をして、状況を伝えてから向かう

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行動範囲の限定と運動制限、歩けない犬を毛布で運ぶ方法はVCA「First Aid for Limping Dogs」、搬送時に頭・首・背骨の動きを最小限にし板や段ボール、毛布で支える点と、事前に電話する点はMSD獣医マニュアル「What to Do in a Dog or Cat Emergency」に基づきます。

受診のときに伝えること

VCAは、獣医師がまず、どのくらい前から足を引きずっているか、いつもと違う活動のあとに始まったか、時間とともに悪化したか良くなったかをたずねると説明しています。コーネル大学獣医学部も、獣医師が最初にたずねる項目として、いつ始まったか・急にか徐々にか、良くなっているか悪くなっているか・引きずる足が入れ替わるか、階段・ジャンプ・立ち上がりが難しくなっていないか、最近の活動やけが、与えた薬とその効き目を挙げています。緊張していると話し忘れやすいので、メモにして持っていきましょう。

受診時に伝えたいことメモ

  • いつから(日時)、急に始まったか・徐々にか
  • どの足か(前足・後ろ足、右・左)、足をまったく着かないか・着くがかばうか
  • きっかけ(散歩・ドッグラン・ジャンプ・落下・事故・けんか・虫に刺された可能性など)
  • 時間帯による違い(寝起きに目立つ、運動後に悪化するなど)と、良くなっているか悪くなっているか
  • 以前にも同じ足を引きずったことがあるか、引きずる足が入れ替わることがあるか
  • 足先の傷・腫れ・熱っぽさ、触ると痛がる場所
  • ふらつき、足先のひっくり返り、背中や首の痛み、排尿・排便の変化の有無
  • 元気・食欲・体温の変化
  • 飲んでいる薬やサプリメント、与えてしまった薬(名前と量)
  • 歩き方の動画・傷の写真

診察では、歩き方の観察に加えて、骨・関節・筋肉を触って調べる整形外科的な検査と、神経の検査が行われます。必要に応じてレントゲン、血液検査、関節液の検査、超音波、CTやMRIなどが検討されます。コーネル大学獣医学部は、病院では不安や痛みで十分な診察ができない犬もいるため、獣医師が抗不安薬や鎮静が必要かを判断すると説明しています。

獣医師がたずねること、整形外科と神経の検査、追加検査の種類はVCA「Lameness in Dogs」、飼い主が伝えるとよいことと鎮静の判断はコーネル大学獣医学部Riney Canine Health Centerの解説に基づきます。

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日ごろから整えておきたい土台

跛行の原因の中には、生まれ持った骨格や遺伝の影響が大きく、家庭で完全に防ぐのは難しいものもあります。それでも、足腰への負担を減らす工夫は、どの年齢の犬にも役立ちます。

  • 適正体重を保つ:ACVSは、体型の衰えと過体重を十字靭帯の病気の危険因子として挙げ、どちらも飼い主が影響を与えられると書いています
  • 滑る床を減らす:よく歩く場所や方向転換する場所にマットを敷く
  • 爪と足裏の毛を整える:アニコム損保の獣医師監修記事は、爪や肉球の間の毛が伸びていると滑りやすくなるため、定期的な手入れをすすめています
  • 飛び降りを減らす:ソファやベッド、車の乗り降りにはステップやスロープを使う
  • 運動は「たまに激しく」より「ふだんから適度に」:ACVSは、日ごろから適度な運動で体を整え、食事量を管理して引き締まった体を保つことをすすめています
  • 足先をよく見る習慣:散歩後の足拭きのついでに、肉球・爪・指の間をチェックする

体型と過体重が十字靭帯の病気の危険因子で、日ごろの適度な運動と食事管理で引き締まった体を保つことがすすめられる点はACVS「Cranial Cruciate Ligament Disease」、滑る床への対策と爪・肉球の間の毛の手入れはアニコム損保の獣医師監修記事(膝蓋骨脱臼)に基づきます。

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よくある質問

足を引きずっていたのに、しばらくしたら普通に歩いています。受診は必要ですか。
一度きりですぐに治り、その後は元気も食欲もふだんどおりなら、安静にして様子を見られることもあります。ただし、同じ足を何度も引きずる、寝起きや運動後に繰り返す、数歩だけ足を上げるしぐさが続く場合は、膝蓋骨脱臼や十字靭帯の病気、関節炎などが背景にあることがあります。繰り返すときは歩き方の動画を撮って受診してください。
痛がって鳴いたりしないのに、足を引きずっています。痛くないのでしょうか。
犬は痛みを隠しやすく、鳴かないから痛くないとは限りません。足を引きずる、体重をかけない、触ると引っ込める、なめ続ける、震えるといった様子も痛みのサインのことがあります。また、痛みではなく神経の働きの低下で足を引きずることもあります。鳴かないことを理由に様子見を長引かせないようにしましょう。
引きずる足が日によって変わります。気のせいでしょうか。
成長期の大型犬に見られる汎骨炎のように、痛む足が移り変わる病気があります。免疫が関わる関節炎のように、複数の関節に炎症が起こり、発熱や元気・食欲の低下を伴って、かばう足が日によって変わることもあります。また、まれに痛みがないのに以前注目された経験から足を引きずる犬がいると説明する獣医師もいますが、見極めは難しく、家庭で決めつけるのは避けてください。日付ごとの動画を残して受診すると役立ちます。
冷やしたり温めたりしたほうがいいですか。
原因によって適した対応が変わるため、自己判断で決めず、受診前に電話で獣医師に相談するのが安心です。まずは安静にして、患部を強くもんだり、関節を動かしたりしないようにしましょう。
犬用の痛み止めが家に残っています。飲ませてもいいですか。
以前処方された薬でも、今回の原因や体の状態に合うとは限らず、ほかの薬との飲み合わせの問題もあります。自己判断で与えず、獣医師に相談してください。人用の解熱鎮痛薬は、獣医師の指示なく与えないでください。
シニア犬がゆっくりと足を引きずるようになりました。年齢のせいでしょうか。
関節炎などの年齢に関係する変化のことも多いですが、それでも痛みは治療やケアで和らげられることがあります。また、大型犬で片足の跛行が続く、足の一部が腫れている場合には骨の腫瘍などを調べる必要があることもあります。年齢のせいと決めつけず、一度診てもらいましょう。

まとめ

犬が足を引きずる、びっこをひく、足を上げて歩くのは、病名ではなく「どこかに痛みや不調がある」というサインです。まず、足をまったく着かない、腫れや変形、出血、ふらつきや麻痺、排尿の異常、ぐったりしているといったすぐ受診したいサインがないかを確認しましょう。そのうえで、急に始まったか徐々にか、何歳か、前足か後ろ足かという手がかりを整理すると、獣医師に状況を伝えやすくなります。

家庭でできるのは、足先をそっと見て、無理に曲げ伸ばしせず、咬まれないよう配慮しながら安静を保ち、動画とメモを残すところまでです。人用の痛み止めは与えず、1日たっても良くならない・悪化する・繰り返すときは、ためらわずに動物病院へ相談してください。早めの受診が、その子が再び気持ちよく歩ける近道になります。

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出典・参考

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