犬の狂犬病予防注射が通年接種になる|2027年3月2日施行の制度改正と、2026年度は何が変わらないのか
対象の目安: 全ライフステージ

毎年春になると届く、市区町村からの狂犬病予防注射のお知らせ。「4月から6月のあいだに受けさせること」という案内を、当たり前のものとして受け取ってきた方が多いと思います。この「春の3か月しばり」が、制度として廃止されることが決まりました。2026年4月1日に省令が公布され、狂犬病の予防注射は通年で受けられるようになります。
ただし、ここが今いちばん誤解されやすいところなのですが、実際にルールが切り替わるのは2027年3月2日からです。この記事を公開している2026年8月時点では、まだ従来どおりのルールが生きています。何が、いつ、どう変わるのか。そして「通年になった」あとも変わらないことは何か。厚生労働省の通知と法令の条文を確認しながら整理します。
2026年8月時点では、まだ何も変わっていない
まず結論から書きます。2026年8月現在、犬の狂犬病予防注射のルールはこれまでと同じです。生後91日以上の犬の所有者は、狂犬病予防法施行規則第11条第1項により、毎年4月1日から6月30日までの間に1回、予防注射を受けさせなければならないと定められています(3月2日以降にすでに接種済みの犬を除く)。2026年度(令和8年度)の接種期間はすでに終わっており、まだ受けていない場合は速やかに動物病院で接種を受けてください。
制度が実際に切り替わるのは、2027年(令和9年)3月2日からです。時間の流れを整理すると次のようになります。
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 2023年(令和5年) | 地方分権改革の提案募集で、自治体側から通年接種を可能にするよう提案が出る |
| 2023年12月22日 | 「地方からの提案等に関する対応方針」が閣議決定。令和7年度中に結論を得るとされる |
| 2024年12月9日〜20日 | 厚生労働省が全国の都道府県・市区町村にアンケートを実施 |
| 2025年11月14日 | 第100回厚生科学審議会感染症部会で見直し案が示される |
| 2026年4月1日 | 狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第73号)を公布 |
| 2027年3月2日 | 改正省令が施行され、通年接種が可能になる |
注意
改正省令の名称(令和8年厚生労働省令第73号)、公布日(令和8年4月1日)、施行期日(令和9年3月2日)は、厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長通知「狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令の公布について(公布通知)」(感発0401第1号)を参照しました。改正前の予防注射の時期の規定は、e-Gov法令検索で公開されている狂犬病予防法施行規則第11条第1項の条文を確認しています。
改正で変わるのは、大きく2つ
飼い主に関係する改正内容は、大きく2点です(公布通知の「改正の内容」には、このほかに「その他、所要の規定の整備を行うもの」が挙げられています)。どちらも「時期」に関するもので、注射そのものの中身や回数を変えるものではありません。
4月1日〜6月30日という時期の限定がなくなる
これまでは、狂犬病予防法第5条第1項の「毎年1回」という義務を、施行規則が「4月1日から6月30日までの間に1回」と具体化していました。改正ではこの時期の限定が廃止され、通年での接種が可能になります(規則第11条第1項関係)。
厚生労働省の資料によると、この見直しは自治体側からの提案がきっかけでした。第100回厚生科学審議会感染症部会の資料1には、接種時期が4月から6月に限定されていることによる具体的な支障事例として「諸般の事情により、3か月の間に注射を受けさせることが困難な場合もある。」「予防接種の時期が自治体の繁忙期と重なり、負担感が大きい。」の2点が挙げられています。同じ資料のアンケート結果概要では、4月〜6月が注射時期となっていることに支障があると回答した自治体のうち、年度当初の繁忙期と重なるため業務の支障となっているという回答が8割以上を占めたことも報告されています。公布通知にも、この改正は「4月1日から6月30日までの間に犬に予防注射を受けさせることのできなかった所有者について、法令違反となる状況を是正し、より柔軟性を持たせるもの」と記されています。
「3月2日〜31日に打つと翌年度の票」というルールがなくなる
もう一つが、飼い主にとって分かりにくかった注射済票の年度の扱いです。現行の施行規則第12条第5項は、毎年3月2日から3月31日までの間に実施した予防注射について、市町村長が交付する注射済票は「翌年度のもの」とすると定めています。改正ではこの規定が廃止され、予防注射を実施した時期と、交付される注射済票の年度が揃うようになります。
厚生科学審議会に提出された資料では、この規定について次のような支障が挙げられていました。3月2日以降は注射年月日を確認して交付年度を判断する必要があり飼い主に説明しづらいこと、そして3月2日から3月31日に接種して翌年度の票をすでに受け取っているにもかかわらず、現年度の票を受け取ったと勘違いして、翌年度(4月1日以降)に誤ってもう一度接種してしまう可能性があることです。
メモ
改正内容(規則第11条第1項関係・第12条第5項関係)と施行期日は公布通知を、支障事例および提案の経緯・アンケートの実施時期・対応案の段階での施行予定日(令和9年4月1日)は第100回厚生科学審議会感染症部会の資料1「狂犬病予防法に基づく予防注射時期の見直しについて」を参照しました。
「変わること」と「変わらないこと」を並べて確認する
制度改正の話は、変わる部分ばかりが目立って、変わらない部分が抜け落ちがちです。飼い主として押さえておきたいのは、むしろ後者のほうかもしれません。
| 項目 | 2027年3月2日以降 |
|---|---|
| 接種の時期 | 変わる。4月1日〜6月30日という限定がなくなり通年で接種できる |
| 注射済票の年度 | 変わる。3月2日〜31日接種で翌年度の票を交付する規定が廃止される |
| 毎年1回の接種義務 | 変わらない。狂犬病予防法第5条第1項の義務はそのまま |
| 生後91日以上の犬の登録 | 変わらない。市区町村への登録が必要 |
| 鑑札・注射済票の装着 | 変わらない。犬に着けておく必要がある |
| 生涯にわたって必要か | 変わらない。年齢の上限は法令上ない |
| 集合注射 | 変わらない見込み。改正は集合注射を廃止する趣旨ではない |
| 周知・啓発活動 | 変わらない。3か月程度の強化期間の設定が推奨されている |
つまり今回の改正は「いつ打つか」の自由度を広げるものであって、「打たなくてよくなる」制度ではありません。ここを取り違えないことが何より大切です。
通年になっても、間隔を空けてよいわけではない
制度が通年接種を許すようになると、「去年は6月に打ったから、今年は年末でもいいか」という考え方が出てきそうです。しかし公布通知は、この点にはっきり釘を刺しています。
予防注射の時期の限定がなくなることによって実施間隔が延長することのないよう、少なくとも毎年同時期に1回の予防注射を実施することの徹底について、引き続き犬の所有者に対して幅広く普及・啓発の広報を行うこと、と自治体に求められているのです。
自治体の案内でも、たとえば越谷市はこの改正について「予防注射の接種時期を変更する必要はありません」と明記し、これまでどおり毎年同時期に1回の接種を続けるよう呼びかけています。制度が柔軟になることと、間隔を空けてよいこととは別の話だと考えてください。
「少なくとも毎年同時期に1回の予防注射を実施することの徹底」という運用上の留意点は厚生労働省の公布通知を、接種時期を変更する必要がない旨の飼い主向けの呼びかけは越谷市の告知ページを参照しました。
集合注射や「予防注射強化期間」はなくならない
春に公民館や公園で行われる集合注射を利用している家庭も多いと思います。通年接種になったら集合注射はなくなるのでしょうか。
公布通知は「本改正はこれまで予防注射期間に行っていた周知・啓発活動や集合注射を廃止することを意図したものではない」と明言しています。そのうえで、期間を限定することには周知・啓発の推進やワクチンを無駄なく利用するという利点があるとして、改正後も3か月程度の「予防注射強化期間」を設定し、引き続き予防注射の推進活動を行うことが推奨されると記しています。強化期間の目安については、所有者の混乱を防ぐためこれまでの4月1日から6月30日を設定するが、自治体の実情に応じて時期の変更は可能、とされています。
実際、厚生科学審議会に示されたアンケート結果では、集合注射を行っている自治体は9割以上で、そのうち通年接種が可能となった後も集合注射を続けると回答した自治体は約6割にのぼりました。多くの地域では、これまでどおり春に集合注射の案内が届くと考えてよさそうです。
ヒント
集合注射・周知啓発を廃止する趣旨ではないこと、および3か月程度の予防注射強化期間の設定が推奨されること、目安が4月1日〜6月30日であることは公布通知の「運用上の留意点」を、集合注射を実施している自治体の割合(9割以上)と改正後も継続すると回答した割合(約6割)は第100回厚生科学審議会感染症部会の資料1を参照しました。
2027年3月の切り替わりに、ひとつだけ注意点がある
施行日が3月2日という中途半端な日付であるため、切り替わりの年だけは注射済票の見え方が少し変わります。公布通知には、令和9年3月2日から同月31日までの間に予防注射を実施した犬に対しては令和8年度の注射済票を交付することに留意するよう記されています。
改正前であれば、この時期の接種には翌年度(令和9年度)の票が交付されていました。改正後は「接種した日が属する年度」に揃うため、2027年3月に接種した犬には令和8年度の票が交付されることになります。前年の同じ時期に接種していた犬の場合、令和8年度の注射済票を2枚受け取ることもあり得ます。越谷市はこの点について、令和8年3月に接種した飼い主が令和9年3月に接種すると2枚目の令和8年度の注射済票が交付され、次の令和10年の接種で令和9年度の票に移っていく、という段階的な移行を案内しています。
メモ
令和9年3月2日〜31日の接種に令和8年度の注射済票を交付する点は公布通知の「運用上の留意点(3)その他」を、2枚目の交付を含む具体的な移行の説明は越谷市の告知ページを、令和9年度に再度接種が必要になる旨は大阪市の告知ページを参照しました。自治体によって票の様式や案内の表現は異なります。
犬を新しく迎えたときは「30日以内」
制度改正とは別に、飼い主が迷いやすいのが「途中から犬を迎えた場合」の扱いです。ここは今回の改正で変わらない部分ですが、混同されやすいので確認しておきます。
狂犬病予防法施行規則第11条第2項は、生後91日以上の犬であって、3月2日(1月1日から5月31日までの間にその犬を所有するに至った場合は前年の3月2日)以降に狂犬病の予防注射を受けていないもの、または受けたかどうか明らかでないものを所有するに至った者は、その犬を所有するに至った日から30日以内に予防注射を受けさせなければならない、と定めています。
- 1
迎えた犬の接種歴を確認する
前の飼い主やブリーダー、譲渡元から、狂犬病予防注射を受けた日付と注射済証の有無を確認します。記録がはっきりしない場合は「受けたかどうか明らかでないもの」として扱われます。 - 2
市区町村に登録する
生後91日以上の犬は、飼い主の住む市区町村への登録が必要です。すでに登録済みの犬を譲り受けた場合も、住所や飼い主の変更届が必要になります。マイクロチップが鑑札とみなされる制度もあるため、あわせて確認しておくと安心です。 - 3
30日以内に接種する
接種歴が確認できない場合は、迎えた日から30日以内に動物病院で予防注射を受けさせます。体調がすぐれない場合や、子犬の混合ワクチンとの間隔については、事前にかかりつけの獣医師に相談してください。 - 4
注射済票の交付を受け、犬に着ける
動物病院で交付された注射済証を持って市区町村の窓口で手続きをすると、注射済票が交付されます(病院で手続きを代行している地域もあります)。鑑札とあわせて犬に着けておきます。
注意
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そもそも、なぜ毎年打つ必要があるのか
日本で暮らしていると、狂犬病はどこか遠い話に感じられるかもしれません。厚生労働省のサイトには、現在、日本では犬などを含めて狂犬病の発生はないと記されています。一方で、同じページが「世界の発生状況(WHO、2017年)」として載せている推計によれば、世界の年間の死亡者数は59,000人(うちアジア地域35,000人、アフリカ地域21,000人)とされています。日本国内でも、海外で犬に咬まれた方が日本で発症した輸入感染症例が報告されています。直近は2020年(令和2年)の1例で、厚生労働省はこれを、フィリピンで犬に咬まれ、入国後に発病し死亡した輸入症例と記載しています。
つまり、日本に狂犬病がないという状態は、水際対策と毎年の予防注射によって保たれている結果でもあります。1頭ごとの接種は、その犬自身を守ると同時に、地域全体に病気が広がらないようにするための備えという性格を持っています。制度が通年接種に変わっても、この目的は何も変わりません。
日本国内での発生がない旨、および2020年の輸入感染症例(フィリピンで犬に咬まれ、入国後発病・死亡)は、厚生労働省「狂犬病」のページを参照しました。年間推計死亡者数59,000人(うちアジア35,000人・アフリカ21,000人)は、同ページが「世界の発生状況(WHO、2017年)」として掲載している2017年時点のWHOの推計値です。
接種していないと、法令上はどうなるのか
狂犬病予防法第5条第1項は、犬の所有者に対して予防注射を毎年1回受けさせる義務を、同条第3項は交付された注射済票を犬に着けておく義務を定めています。そして同法第27条は、第5条の規定に違反して犬に予防注射を受けさせず、または注射済票を着けなかった者を、20万円以下の罰金に処すると定めています。
これは努力目標ではなく法律上の義務です。室内で飼っているから、外に出さないから、といった理由で免除される規定は置かれていません。今回の改正は、この義務の内容を緩めるものではなく、あくまで「4月から6月に受けさせられなかった場合に法令違反となってしまう状況」を是正するためのものです。
狂犬病予防法第5条(予防注射・注射済票)および第27条(20万円以下の罰金)の内容は、e-Gov法令検索で公開されている狂犬病予防法の条文を確認しました。改正の趣旨(法令違反となる状況の是正)は厚生労働省の公布通知の記載によります。
メモ
猶予証明書の運用については、川口市の「狂犬病予防注射実施猶予証明書について」のページを参照しました(窓口・郵送・オンラインでの提出を案内)。名称・提出方法・猶予期間の扱いは自治体によって異なります。
飼い主が今からできること
制度が変わるのは2027年3月です。それまでにできる準備は多くありません。むしろ「これまでどおりを続ける」ことが最良の対応になります。
2026年度〜2027年春に確認したいこと
- 2026年度(令和8年度)の狂犬病予防注射をすでに受けているか、注射済票を受け取っているかを確認する
- まだ受けていない場合は、動物病院に相談して速やかに接種の予約を取る
- 注射済票と鑑札が首輪などに着いているか、外れたり読めなくなったりしていないか点検する
- 接種した日付をカレンダーやアプリに記録し、翌年も同じ時期に受けられるようにしておく
- 2027年春に届く市区町村の案内で、集合注射の日程と強化期間の設定を確認する
- 引っ越しや飼い主の変更があった場合は、登録内容の変更手続きを済ませておく
通年接種になって選択肢が広がるのは、仕事や介護、犬自身の体調などで春の3か月に予定を合わせられなかった家庭にとっては、たしかにありがたい変更です。ただ、その自由度は「打たない期間を延ばすため」ではなく「毎年きちんと打ち続けるため」に使うものだと考えると、迷いが少なくなります。
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よくある質問
2026年の夏に狂犬病予防注射を受けさせても大丈夫ですか。
通年接種になるのは、いつからですか。
通年になったら、接種の時期をずらしてもよいのですか。
春の集合注射はなくなりますか。
3月に接種した場合、注射済票の年度はどうなりますか。
生後91日以上の犬を新しく迎えました。いつまでに接種が必要ですか。
高齢や持病で接種が難しい場合はどうすればよいですか。
まとめ
犬の狂犬病予防注射をめぐる今回の改正は、「4月1日から6月30日まで」という時期の限定と、「3月2日から31日に打つと翌年度の注射済票」という分かりにくい特例の、2つを廃止するものです。省令は2026年4月1日に公布され、施行は2027年3月2日から。したがって2026年度は、これまでと同じルールが適用されます。
変わるのは「いつ打てるか」であって、「毎年1回打つ」という義務そのものではありません。厚生労働省も、接種間隔が延びないよう毎年同時期に1回の接種を徹底するよう求めており、集合注射や強化期間も続く見込みです。制度が柔軟になる分、飼い主が自分で接種のタイミングを覚えておく重みは少し増えるかもしれません。接種した日を記録しておく、翌年の同じ時期にリマインダーを置いておく。そんな小さな備えが、これからは効いてきます。運用の細かな部分は自治体ごとに違いますので、最終的にはお住まいの市区町村からの案内を確認してください。
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