ワンレッジ
住環境・留守番

犬のマイクロチップと迷子・脱走対策|義務化の今と、花火・お出かけシーズンの備え

対象の目安: 全ライフステージ

アサヒ編集長 / お迎え・住環境担当
・ 約13分で読めます
犬のマイクロチップと迷子・脱走対策|義務化の今と、花火・お出かけシーズンの備え

花火大会やお祭り、帰省やレジャーと、犬と暮らす家庭にとって夏は「外」との接点が一気に増える季節です。同時に、大きな音に驚いてのパニック脱走や、玄関・車のドアからの飛び出しが増える時期でもあります。この記事では、迷子になったときに愛犬が戻ってくる確率を高めるマイクロチップ制度の「今」を整理したうえで、夏に脱走が増える理由と具体的な防止策、そして万一迷子になったときにすぐやることまでを、環境省などの一次情報にもとづいてまとめます。

マイクロチップ制度の「今」――義務化の対象と努力義務

「マイクロチップは義務になったと聞いたけれど、うちの子も入れないといけないの?」という疑問は多い部分です。ここは対象によって扱いが違うので、正確に押さえておきましょう。

改正動物愛護管理法により、令和4年(2022年)6月1日から、犬猫の販売等を行う業者(ブリーダーやペットショップ)には、取得した犬猫へのマイクロチップの装着と情報登録が義務づけられました。これから店頭やブリーダーから犬を迎える場合は、すでにマイクロチップが装着・登録された状態で引き渡されるのが原則です。

一方、すでに犬を飼っている一般の飼い主や、装着されていない犬を譲り受けた場合の装着は「努力義務」です。つまり、装着するかどうかは飼い主の任意ですが、迷子・災害・盗難・事故などで離ればなれになったときに、飼い主のもとへ戻れる可能性を高める手段として推奨されています。

メモ

「義務」なのは主に販売業者、すでに飼っている犬への装着は「努力義務(任意)」です。ただし、任意で装着した場合でも、環境省のデータベースへの登録そのものは義務になります(装着は任意でも、入れたら登録は必要)。ここを混同すると不安をあおられがちなので、まずは対象の違いを押さえておきましょう。装着を検討する場合は、体への負担や適した時期も含め、かかりつけの獣医師に相談するのが安心です。

なお、マイクロチップの装着は、専用の注射器のような器具で首の後ろあたりに埋め込む獣医療行為で、獣医師などが行います。市販の道具で飼い主が自分で装着するものではありません。

登録の仕組み――環境省のデータベースと「戻ってくる」流れ

マイクロチップは、入れただけでは意味が半分しか果たせません。「装着」と「情報登録」はセットです。

登録は環境省の指定登録機関のデータベースへ

登録先は、環境省が指定する登録機関のデータベース「犬と猫のマイクロチップ情報登録」です。パソコンやスマートフォンからオンラインで手続きでき、犬に装着したり装着済みの犬を譲り受けたりした日から30日以内に、飼い主の氏名・住所・電話番号などを登録することが求められます。引っ越しや飼い主の変更、犬が亡くなったときなど、登録内容に変化があったときは変更・届出の手続きが必要です。ペットショップ等で購入した犬は、譲渡時の手続きに加えて、飼い主自身での変更登録を忘れないようにしましょう。

注意

情報が古いままだと、保護されても連絡が取れず「戻れない」ことがあります。引っ越し・電話番号の変更・飼い主の変更があったら、そのつど変更登録を。マイクロチップは「登録情報が最新であること」で初めて力を発揮します。

かつて民間団体(AIPOなど)のデータベースに登録していた場合、それらは環境省のデータベースとは別の仕組みで、自動的には引き継がれません。現在の法律上の登録先は環境省のデータベースなので、必要に応じて移行登録を行うと安心です。詳しい対象や手続きは、環境省のQ&Aで確認できます。

装着・登録の義務の対象、30日以内の登録・変更登録の考え方は、環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」および同Q&Aに基づいています。制度の細部は更新されることがあるため、手続きの際は最新の公式情報を確認してください。

「戻ってくる」流れとGPSではないという事実

ここは誤解が多いところです。マイクロチップはGPS(位置追跡装置)ではありません。スマホで愛犬の現在地を地図上に表示できるようなものではなく、15桁の識別番号が記録された、いわば体内の「身分証明」です。

保護された犬にマイクロチップが入っているかは、専用のリーダー(読み取り機)をかざして確認します。リーダーは動物病院・保健所・動物愛護センターなどにあり、番号を読み取って登録データベースを照会することで、飼い主に連絡が取れる仕組みです。逆にいえば、散歩中の人が保護してもその場ではリーダーがないことがほとんどなので、外から見てわかる情報も併せて備えておくことが大切になります。

鑑札・迷子札との併用が「戻る力」を底上げする

マイクロチップと、首輪につける鑑札・迷子札は、役割が違うので「どちらか」ではなく「両方」が理想です。

  • 迷子札(名札): 誰でもその場で連絡先が読めるスピード重視。保護した人がすぐ電話できる
  • 鑑札: 狂犬病予防法にもとづく犬の登録の証で、装着が義務。番号から飼い主にたどれる
  • マイクロチップ: 首輪が外れても体内に残る確実性重視。ただし読み取りにはリーダーが必要

ヒント

脱走の多くは首輪やハーネスごと、あるいは首輪が抜けて起こります。迷子札で「その場で連絡」、マイクロチップで「首輪が外れても身元が残る」と二重にしておくと、どちらかが欠けても手がかりが残ります。迷子札には携帯番号など、すぐつながる連絡先を。

なお、住んでいる市区町村が「狂犬病予防法の特例制度(ワンストップサービス)」に参加している場合は、環境省データベースへの登録などが狂犬病予防法上の登録とみなされ、マイクロチップが鑑札とみなされる仕組みがあります。参加しているかどうかは自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。参加していない地域では、従来どおり金属の鑑札の装着が必要です。

ワンストップサービス(狂犬病予防法の特例)の枠組みは、厚生労働省「マイクロチップの装着等の義務化に係る狂犬病予防法の特例に関する対応について」に基づきます。参加自治体は一部にとどまるため、適用の可否は各市区町村の案内をご確認ください。

夏に脱走・迷子が増えるのはなぜ?

身元表示を整えたら、次は「そもそも逃がさない」対策です。夏は一年のなかでも脱走のリスクが高まる季節。理由を知ると、対策のポイントが見えてきます。

  • 花火・雷・お祭りの音: 大きな破裂音や雷鳴に驚き、パニックになって走り出す。人の制止が届きにくい
  • 開口部が増える: 暑さで窓や玄関を開ける機会が増え、網戸を破ったり隙間から飛び出したりしやすい
  • お出かけ・帰省: 慣れない土地や車の乗り降りで、ふとした隙にリードが外れて逃走する
  • 抜けやすい装備: 夏毛で体が細く感じられ、首輪やハーネスがすっぽ抜けやすくなることも
近所の花火の音で愛犬が急にパニックになり、リードを持つ手をぐいと引かれて肝を冷やしました。それ以来、音が鳴りそうな日は早めに家に入れて、玄関にもゲートをつけています。
花火大会の夜を経験した飼い主

音を怖がる犬の落ち着かせ方や環境づくりは、

でも詳しく紹介しています。

脱走を防ぐ具体策

「うちの子は逃げないから」と思っていても、パニック時の犬は普段と別物です。飛び出しの経路を、先回りしてふさいでおきましょう。

  1. 1

    装備の『抜け』を点検する

    ハーネスは指が2本ほど入る程度に調整し、後ずさりしても抜けにくいタイプを選ぶ。花火の日など不安が高い場面では、首輪とハーネスの2点をそれぞれ別のリードにつなぐ『ダブルリード』にしておくと、片方が外れても保持できます。
  2. 2

    玄関・窓まわりの飛び出しをふさぐ

    玄関の内側にペットゲートを設け、来客や宅配の開閉時に犬が外へ出られない二重構造にする。網戸は犬の力で外れたり破れたりしやすいので、ストッパーや面格子で補強し、開けっぱなしにしない工夫を。
  3. 3

    車の乗り降りを管理する

    ドアを開けた瞬間の飛び出しは事故に直結します。乗車中はクレートやシートベルト用ハーネスで固定し、ドアを開ける前に必ずリードを短く持つ。給油やトイレ休憩でも、犬だけを車内に残さないことを徹底しましょう(夏の車内は短時間で高温になります)。
  4. 4

    音が鳴る日は『前もって』家の中へ

    花火大会やお祭りの予定がわかっている日は、暗くなる前に室内へ。カーテンを閉めて音や光を和らげ、クレートなど落ち着ける居場所を用意しておくと、パニックによる衝動的な脱走を減らせます。

注意

締めくくりに「もし今、逃げたら」を想像してみてください。首輪・迷子札はついているか、連絡先は最新か、マイクロチップの登録情報は現住所になっているか。この3点が揃っているだけで、再会できる可能性は大きく変わります。

迷子になったら――すぐやること

それでも離ればなれになってしまったら、初動の早さが再会率を左右します。慌てず、しかし並行して動きましょう。

  1. 1

    まず周辺をすぐ捜索する

    パニックの犬は遠くまで行かず、近くの物陰や側溝、車の下などに潜んでいることがあります。名前を呼びながら、いつもの散歩コースや逃げた方向を中心に早めに探します。名前を呼ぶより、静かに近づいた方が保護しやすい場合もあります。
  2. 2

    警察へ連絡する

    保護された犬は落とし物(遺失物)として警察に届けられることがあります。最寄りの警察署・交番に、特徴や逃げた場所・時間を伝えて届け出ましょう。
  3. 3

    保健所・動物愛護センターに連絡する

    保護動物は自治体の保健所や動物愛護(保護)センターに集まります。管轄の窓口に、犬種・毛色・首輪の有無・マイクロチップの有無などを伝えて照会します。マイクロチップがあれば、読み取りから飼い主へ連絡が届く可能性があります。
  4. 4

    動物病院・近隣・SNSにも手を広げる

    保護した人が近くの動物病院に連れて行くこともあります。周辺の病院への声かけや、地域のSNS・掲示板での情報発信も有効です。写真や特徴を添えると見つかりやすくなります。

連絡先はひとつに絞らず、警察・保健所・動物愛護センターへ並行して届け出るのがポイントです。窓口によって保護情報の集まり方が違うため、複数に手がかりを残しておくことで再会の確率が上がります。飼い主と一緒に写った写真は、捜索と所有者の証明の両方に役立つので、日頃から用意しておきましょう。

迷子・脱走に備える『わが家の3点セット』

  • 首輪+迷子札(すぐつながる携帯番号を記載)
  • 狂犬病予防法の鑑札(装着は義務)
  • マイクロチップ(登録情報を現住所・現在の連絡先に更新済み)
  • 飼い主と一緒に写った写真(紙にも印刷)
  • かかりつけ・最寄りの警察/保健所/動物愛護センターの連絡先メモ

よくある質問

すでに飼っている犬にもマイクロチップは義務ですか。
義務なのは主に令和4年6月以降に犬猫を販売する業者(ブリーダー・ペットショップ)です。すでに飼っている犬への装着は『努力義務』で任意ですが、迷子や災害ではぐれた際に飼い主のもとへ戻れる可能性を高める手段として推奨されています。装着を検討する場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。
マイクロチップがあれば、スマホで居場所がわかりますか。
いいえ。マイクロチップはGPS(位置追跡装置)ではなく、識別番号が記録された『身元証明』です。位置をリアルタイムで追うことはできません。保護された際に専用リーダーで番号を読み取り、登録データベースを照会して飼い主に連絡が届く仕組みです。位置追跡が必要な場合は、別途GPS機器の利用を検討してください。
マイクロチップを入れれば、鑑札や迷子札はもう不要ですか。
役割が違うため併用がおすすめです。迷子札は誰でもその場で連絡先を読めるスピード重視、マイクロチップは首輪が外れても体内に残る確実性重視です。鑑札は狂犬病予防法にもとづく登録の証で装着が義務です。なお自治体が特例制度(ワンストップサービス)に参加している場合はマイクロチップが鑑札とみなされることがあるため、お住まいの市区町村にご確認ください。
引っ越したら何か手続きは必要ですか。
はい。登録した氏名・住所・電話番号などに変更があったときは、環境省のデータベースで変更登録を行います。情報が古いままだと、保護されても連絡が取れず戻れないことがあります。引っ越しや電話番号の変更のたびに更新しておきましょう。
花火の音を怖がってパニックになります。どうすれば。
予定がわかる日は暗くなる前に室内へ入れ、カーテンを閉めて音や光を和らげ、クレートなど落ち着ける場所を用意します。玄関ゲートやダブルリードで飛び出し経路を先にふさいでおくことも大切です。音への恐怖そのものへの向き合い方は、関連記事もあわせて参考にしてください。

まとめ

マイクロチップは「販売業者に義務、すでに飼っている犬には努力義務(任意・推奨)」というのが今の日本の制度です。装着したら環境省のデータベースへの登録と、引っ越しなどでの変更登録までがワンセット。そしてマイクロチップはGPSではないため、鑑札・迷子札との併用で「戻る力」を底上げしておくことが肝心です。夏は花火・雷・お出かけで脱走が増える季節。装備の抜け・網戸・玄関・車のドアといった飛び出し経路を先回りでふさぎ、万一のときは警察・保健所・動物愛護センターへ並行して連絡する――この備えが、いざというときに愛犬と再会するための力になります。お住まいの自治体の制度や連絡先も、平常時に確認しておきましょう。

あわせて読みたい

犬の防災|台風・大雨シーズンの備えと同行避難の準備

あわせて読みたい

犬の留守番の練習と環境づくり|ひとりの時間を安心して過ごすために

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事