犬に生肉・ローフード(生食)を与えても大丈夫?|2026年も続く米国の回収・FDA警告から考える、細菌リスクと家庭での扱い方
対象の目安: 全ライフステージ


冷凍庫から出した生肉のパックを、そのまま器に移して与える。SNSや海外ブランドの広告で、そんな「ローフード(生食)」の写真を見かける機会が増えました。食いつきがいい、自然に近い、原材料がわかりやすい。そう感じて生食を選んだり、手作りの生肉ごはんを取り入れたりしている家庭もあると思います。
一方で、生食の本場といえる米国では、2026年に入ってからも冷凍の生食ドッグフードで病原性の細菌が見つかり、米国食品医薬品局(FDA)による「与えないで」という勧告や、メーカーの自主回収が続いています。1月には8ロットから始まった勧告が、5月には180を超えるロットの回収に広がりました。
この記事は、生食を選ぶ気持ちを否定するためのものではありません。ただ、生の肉には、加熱した食事にはないリスクがあること、そしてそのリスクは食べる犬だけでなく、一緒に暮らす人にも及びうることは、知ったうえで選んでほしいと考えています。2026年の回収事例を入口に、どんな病原体が問題になるのか、獣医師団体や公的機関は何と言っているのか、それでも与える家庭はどう扱えばよいのかを、一次情報をもとに整理します。残暑で室温が下がりきらない9月は、解凍の仕方ひとつで菌の増え方が変わる季節でもあります。
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この記事の前提
先に、この記事がどの時点の、どの範囲の情報をもとにしているかを書いておきます。
- 情報は2026年9月時点のものです。回収事例は、FDAの勧告ページとFDAが掲載したメーカーの回収告知で、編集部が確認できた範囲に限っています
- 回収事例はいずれも米国で販売された製品です。日本国内で同じ製品が流通しているかどうかは、この記事では扱っていません
- 生食の「メリット」については、この記事では評価しません。扱うのは、病原体のリスクと、家庭での扱い方です
- 特定の商品やブランドの推奨はしません
メモ
2026年、米国で続いた生食フードの勧告と回収
1月: Raaw Energyへの「与えないで」勧告
2026年1月23日、FDAは米国のRaaw Energyというメーカーの冷凍ドッグフード8ロットについて、ペットに与えないよう勧告しました。
きっかけは、犬の体調不良について消費者がコネチカット州農務局に寄せた苦情です。その追跡調査として、コネチカット州とニュージャージー州の農務局が未開封の製品を検査したところ、8検体すべてから病原性の細菌が見つかりました。検出されたのは、リステリア・モノサイトゲネス、サルモネラ、カンピロバクター・ジェジュニの3種類です(すべての検体からリステリアが検出され、一部の検体ではサルモネラやカンピロバクターも見つかっています)。
FDAは当初、この8ロットの回収をメーカーに求めましたが、勧告の時点では「適切な回収は始まっていない」と記載していました。その後の経過は次のとおりです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年1月23日 | FDAが8ロットについて「与えないで」と勧告 |
| 2026年5月21日 | メーカーがドッグフードの製造をすべて一時停止(回収告知による) |
| 2026年5月22日 | メーカーが2025年7月17日から12月23日までに製造した全製品と、2026年3月31日製造の1ロットの回収を発表。FDAも勧告を更新し、対象は180を超えるロットに |
| 5月22日の更新時点 | 更新では、4検体すべてでリステリア陽性と記載。勧告の発出後、回収対象の製品を食べた動物の体調不良について、追加の苦情が寄せられたと記載 |
製品は2ポンド(約0.9kg)または5ポンド(約2.3kg)の透明なプラスチックチューブに入った冷凍品で、茶色の段ボール箱で販売されていました。製造日を示す日付コードは、チューブと箱の白いシールに印字されていると案内されています。この「どこにロットや日付が書いてあるか」という情報は、あとで回収対象かを確かめる話につながります。
5月: Albright's Raw Pet Foodの自主回収
2026年5月6日、米国のAlbright's Raw Pet Foodが、冷凍の「Chicken Recipe for Dogs Complete and Balanced」1ロットの自主回収を発表しました(FDAの掲載は5月7日)。
こちらは苦情がきっかけではありません。FDAが行った定期的なサンプリング検査で、サルモネラ陽性となったものです(告知によれば、陽性だったのは1つの複合検体で、第三者機関による確認検査は告知の時点で結果待ち。メーカーは念のための自主回収としています)。製品は1ポンド(約450g)の真空パックに入った冷凍ブロックで、回収告知では、ペットにも人にも健康被害の報告はないとされています。
体調不良が出る前に、検査で見つかって回収された。これは制度がうまく働いた例とも言えますが、裏を返せば、見た目やにおいでは汚染がわからないということでもあります。
8月にも続いた冷凍生食の回収
夏になっても、同じような回収は続きました。
- 2026年8月17日: Oma's Prideが、冷凍の生食ドッグフード「Woof Complete Canine Chicken Recipe」6ポンド袋の1ロットを回収。消費者の苦情を受けてFDAが検査し、サルモネラ陽性となったもの。犬3頭の体調不良が報告され、人の健康被害は報告されていないと更新されています
- 2026年8月28日: Northwest Naturalsが、冷凍の生食2製品を回収。FDAが採取・検査した結果、猫用の「Frozen Chicken Recipe」でサルモネラ、犬用の「Frozen Raw Diet for Dogs Chicken Recipe」でサルモネラとリステリアが検出されたもの。健康被害の報告はないとされています
FDAの動物用製品の回収情報一覧を見ると、ほかの種類のフードや原因(異物混入、栄養成分の問題など)による回収も並んでいます。生食だけが回収されているわけではありません。ただ、細菌による回収の中で、冷凍の生食が繰り返し登場していることは確かです。
回収・勧告の経緯は、FDAの勧告ページ「FDA Advisory: Do Not Feed Eight Lots of Raaw Energy Dog Food Due to Contamination with Harmful Bacteria」(2026年1月23日発出、5月22日更新)と、FDAが掲載した各社の回収告知(Raaw Energy 2026年5月22日、Albright's Raw Pet Food 2026年5月6日発表・7日掲載、Oma's Pride 2026年8月17日、Northwest Naturals 2026年8月28日)で編集部が確認できた内容にもとづいています。
猫の生フードで検出されたH5N1と、FDAの要請
細菌とは別に、ここ2年ほど注目されているのがH5N1(高病原性鳥インフルエンザウイルス)です。
FDAは2025年1月17日、生の家禽や牛に由来する原料(加熱していない肉、低温殺菌していない乳や卵など)を使う犬猫用フードの製造者に対して、食品安全計画を見直し、H5N1を「既知の、または合理的に予見できるハザード」として含めるよう求めました。理由として挙げられているのは、国内で相次いだ猫の発症と死亡、そして犬猫がH5N1に汚染されたものを食べて発症したことを示す科学的なデータです。この要請は2025年9月30日にも、秋の渡りの季節を前に改めて周知されています。
実際に、2025年9月3日には、サンフランシスコでH5N1を発症し安楽死となった猫が食べていた生の猫用フード「RAWR Raw Cat Food Chicken Eats」の2ロットからH5N1が検出されたことを、FDAが飼い主に知らせています。全ゲノム解析では、猫とフードから検出されたウイルスが共通の由来を持つことが示唆されました。
犬についてはどうでしょうか。FDAは、犬もH5N1に感染しうるが、猫に比べて症状は軽いことが多く死亡率も低い、としています。また同じ通知の時点では、米国の犬ではH5N1は検出されていない(他国では死亡例がある)と記載していました。
メモ
生食で問題になる病原体
主な4つと、犬・人の症状
2026年の回収で名前が出てきた菌を中心に、主なものを整理します。症状は、FDAの勧告や回収告知、厚生労働省のQ&Aに記載されている内容です。
| 病原体 | 犬に出うる症状(FDAの記載) | 人への影響 |
|---|---|---|
| サルモネラ | 嘔吐、下痢(血が混じることも)、発熱、食欲低下、元気がない。症状が出ないこともある | 下痢、発熱、腹部のけいれん痛など。乳幼児・高齢者・免疫が低下した人で重くなりやすい |
| リステリア・モノサイトゲネス | 軽度から重度の下痢、食欲不振、発熱、神経・筋肉・呼吸器の症状、流産、ショック、死亡 | 妊娠中の人、ごく幼い人、高齢者、免疫が弱い人で重症化しやすい。頭痛、首のこわばり、錯乱、けいれんなど。妊娠中は流産のおそれ |
| カンピロバクター・ジェジュニ | 下痢(水様・粘液状・血便)、嘔吐、しぶり(いきみ)、元気がない、発熱 | 下痢、腹痛、発熱など。数百個程度という少ない菌量で感染が成立することがある。数週間後にギラン・バレー症候群を起こす場合があると指摘されている |
| 腸管出血性大腸菌(O157:H7など) | 2025年の事例では、フードを食べていた犬が嘔吐し、動物病院にかからず治まったと記載 | 溶血性尿毒症症候群(HUS)など、子どもで重い合併症につながることがある |
厚生労働省のQ&Aは、カンピロバクターについて、ニワトリやウシなどの家畜だけでなく、ペットや野鳥、野生動物など多くの動物が保菌していると説明しています。人の食中毒の主な原因として、生や加熱不足の鶏肉、調理中の二次汚染が強く示唆されている、とも書かれています。人が食べる鶏肉で注意される菌が、犬用の生の鶏肉にも同じように問題になりうる、ということです。
犬の症状はFDAの勧告ページ(Raaw Energy)とAlbright's Raw Pet Foodの回収告知、人の症状と重症化しやすい人はFDAの勧告ページとRaaw Energyの回収告知、カンピロバクターの性質は厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」、腸管出血性大腸菌の事例はFDAの勧告(Darwin's Natural Pet Products、2025年7月29日)にもとづきます。症状の有無や重さには個体差・個人差があり、ここに挙げた症状があるから特定の菌だと判断できるものではありません。
「元気な犬」でも、便から菌が出ることがある
生食のリスクを考えるうえで、いちばん見落とされやすいのがこの点です。
FDAはRaaw Energyの勧告の中で、次のように書いています。
Pets do not need to display symptoms of illness to pass bacteria on to their human companions. Infected pets can shed these bacteria in their feces and saliva.
意味としては「ペットは、体調不良の症状を見せていなくても、一緒に暮らす人に菌をうつすことがある。感染したペットは、便や唾液にこれらの菌を出すことがある」という内容です。
つまり、「うちの子は生食でも元気だから大丈夫」は、犬本人についての観察としては正しくても、家族へのリスクがないことの証明にはなりません。
この点を示す研究もあります。
- 1
カナダ・ケベック州の調査(Bernaquezら、2025年)
2020年7月から2023年4月にかけて、薬剤が効きにくい性質を持つサルモネラの人の症例20例が、ひとつのクラスターとして見つかりました。症例の半数(10例)は2歳以下で、そのうち6例は1歳未満でした。菌の大もとは子牛の農場と考えられていますが、とくに乳幼児への主な感染経路として浮かび上がったのが「生肉ベースの食事を与えられていた犬」でした。人の症例と接触していた犬猫14頭のうち8頭が生肉ベースの食事でした。市販の生食を与えていた2つの家庭の犬の便から同じ菌が見つかり、その犬たちは無症状でした。この菌は、一般的に使われる複数の抗菌薬への耐性遺伝子を持っていました。 - 2
英国の調査(Groatら、2022年)
2015年に英国各地の犬の便を集め、生食の犬114頭と生食でない犬76頭を比べた調査です。サルモネラは全体の4%にあたる8頭から検出され、すべてが生食の犬でした。1種類以上の抗菌薬が効きにくい大腸菌は、生食の犬で54%、生食でない犬で17%。第3世代セファロスポリン系が効きにくい大腸菌は、31%と4%でした。著者らは、とくにとても幼い・高齢・免疫が低下した家族(人も犬も)がいる家庭は、このリスクを知っておくべきだとしています。
注意
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家族に、守りたい人がいるかどうか
CDCは、食べ物を介した病原体で重症化するリスクが高い人として、次のグループを挙げています。生食を考えているなら、まず動物病院に相談するよう案内したうえで、家族やペットがこのグループに当てはまるかを考えるよう求めています。
CDCが挙げる、重症化リスクが高い人とペット
- 5歳未満の子ども
- 65歳以上の大人
- 免疫が低下している人(治療中の病気や薬の影響を含む)
- 妊娠中の人
- 子犬などの幼いペット
- 免疫が低下している、または持病のあるペット
ひとつでも当てはまる家庭では、生食にするかどうかを飼い主だけで決めずに、かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。人の家族の側に持病や治療中の病気がある場合は、主治医にも「犬に生食を与えている(与えたい)」と伝えておくと、判断材料になります。
この記事のタグに子犬とシニア犬を入れているのは、このためです。子犬はCDCが重症化しやすいペットとして名前を挙げていますし、シニア犬は持病を抱えていることが少なくありません。「うちの子に合っているか」は、その子の体の状態とあわせて考える必要があります。
重症化リスクが高い人・ペットのグループは、CDC「About Pet Food Safety」の記載にもとづきます。
獣医師団体と公的機関は、どう言っているか
米国獣医師会(AVMA)
AVMAは方針として、病原体を減らす・取り除くための工程を経ていない動物性たんぱく(肉、家禽、魚、卵、乳など)を犬猫に与えることを推奨していません。理由は、犬猫と人の両方に病気のリスクがあるためです。
この方針は2024年1月の代議員会で改訂されています。AVMA Newsの報告によれば、加熱や低温殺菌に加えて、病原体によるリスクを減らす・取り除く別の方法も検討されるべきだという点が書き加えられました。つまりAVMAは「加熱以外は認めない」という立場ではなく、科学的に検証された方法で病原体を減らしてあるかどうかを問題にしています。
現在の方針ページにも、見た目には健康な犬猫でも、生や加熱不十分な動物性たんぱくに含まれる病原体によって不顕性の感染を起こし、ほかの動物や人、とくに幼い人・高齢者・妊娠中の人・免疫が低下した人にとってリスクになりうる、という趣旨の記述も含まれています。
CDCとFDA
CDCは「犬猫に生のペットフードやおやつを与えることは推奨しない」と明記しています。あわせて「生が必ずしも健康的とは限らない。生のフードも加熱したフードも、質の高い原料でも低い原料でも作られうる」とも書いています。
FDAは、2010年10月から2012年7月にかけて行った調査で、市販の生の犬猫用フード196検体のうち15検体でサルモネラ、32検体でリステリア・モノサイトゲネスが陽性だったと公表し、生のフードを食べるペットと、それを扱う飼い主の両方に健康リスクがあるとしています。
環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
日本の公的資料では、環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」が、「生肉や生魚を与える場合の注意点」という項を設けています。
同ガイドラインは、「犬は肉食動物だから生肉を与えています」という飼い主がいることに触れたうえで、犬は雑食性の動物であり、生肉だけを長く与え続けると栄養バランスが偏ってビタミン類やミネラル類が不足し、カルシウムやリンの不足や過剰から骨格の異常が起きたりすることがある、と説明しています。そして、衛生面については次のように書いています。
肉や魚は、生のまま与えると内部寄生虫が発生したり、細菌性中毒などを起こす可能性があるため、加熱調理したものを与える方がより安全性が高まります。
なお、このガイドラインは平成21年(2009年)10月発行の第二版です。書かれた時期は古いものの、生肉の衛生面についての考え方は、ここまで見てきた米国の機関の見解と方向が一致しています。
AVMAの方針はAVMAの方針ページ、2024年1月の改訂とその内容はAVMA Newsの代議員会報告(改訂案の段階の記述はToday's Veterinary Businessの記事、2023年12月22日でも紹介)、CDCの見解はCDC「About Pet Food Safety」、FDAの調査はFDA「Get the Facts! Raw Pet Food Diets can be Dangerous to You and Your Pet」、環境省の記述は「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」14ページにもとづきます。
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日本の制度: ペットフード安全法と生肉
生肉も「法律の対象」に含まれる
日本では、2009年6月からペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)が施行されています。対象は犬と猫のフードです。
環境省のペットフード安全法Q&Aは、法律の対象になる「愛がん動物用飼料」について、ミネラルウォーター、生肉、スナック、ガム、サプリメントなども含まれるとしています(Q1-1)。さらに「加工したものだけですか。生肉等は含まれませんか」という質問に対して、加工の有無を問わないので、ペットの栄養に供することを目的として販売される場合は生肉も含まれる、と答えています(Q1-5)。
ただし「対象になる」は「安全が保証される」ではない
ここは読み違えやすいところです。
農林水産省の「ペットフード安全法の概要」に載っている製造方法の基準には、たとえば次のようなものがあります。
| 分類 | 基準 |
|---|---|
| 有害微生物全般 | 加熱し、又は乾燥する場合は、原材料等に由来し、かつ、発育し得る微生物を除去するのに十分な効力を有する方法で行うこと |
| 原料全般 | 有害な物質を含み、若しくは病原微生物により汚染され、又はこれらの疑いがある原材料を用いてはならない |
1つめの基準は「加熱し、又は乾燥する場合は」という書き方になっています。生のまま販売する製品にとっては、加熱や乾燥で菌を減らす工程がそもそもありません。2つめの基準は汚染された原材料を使ってはならないというルールですが、環境省のQ&Aは、法律が原料や製品のロットごとの全量検査や報告を義務付けてはいない、とも説明しています(Q2-1)。
つまり、ペットフード安全法の対象に生肉が含まれていることは、生肉が規制の枠の中にあるという意味であって、「だから生食は安全だ」という保証ではありません。米国の回収事例でも、製品はそれぞれの国の制度のもとで流通していました。制度があることと、個々の製品に菌がいないことは別の話です。
ヒント
法律の対象範囲は環境省「ペットフード安全法に関するQ&A」のQ1-1・Q1-5・Q2-1、製造方法の基準は農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課「ペットフード安全法の概要」、表示の義務項目は環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」にもとづきます。法律の解釈や個別の製品が基準に適合しているかどうかについて、この記事は判断を示すものではありません。
冷凍やフリーズドライなら安心?
「冷凍してあるから菌は死んでいるのでは」と考える方は多いと思います。ここははっきり書いておきます。
CDCは「動物由来の生のたんぱくをフリーズドライ、ディハイドレート、冷凍しても、菌の量が減るだけである」としています。日本食品衛生協会の食中毒予防の解説も、細菌の多くは10℃では増殖がゆっくりになり、マイナス15℃では増殖が止まっているが、細菌が死ぬわけではないと説明しています。
2026年の回収事例が、いずれも「冷凍」の製品だったことを思い出してください。冷凍は菌を増やさないための保存方法であって、菌をなくす処理ではありません。
フリーズドライについても同じです。タフツ大学カミングス獣医学部のペット栄養ブログ「Petfoodology」に掲載された2025年10月の解説記事で、Cailin Heinze氏は、より正確な表示が求められるか一般的になるまでは、フリーズドライの肉のフードやおやつは、そうでないと確かめられるまで「すべて生だと考えておくのが賢明」だと書いています。乾いていて手触りがドライフードに近くても、原料を加熱していなければ、扱いは生肉と同じだと考えてください。
メモ
それでも生食を続ける家庭へ: 扱い方の基本
ここまで読んで、それでも生食を続けると決める家庭もあると思います。その判断を責めるつもりはありません。そのうえで、リスクを小さくするための扱い方を、CDC・FDAの案内と、日本の食中毒予防の考え方をもとにまとめます。
- 1
1. 主食にするなら、動物病院に相談しておく
CDCは、生食をペットの主な食事にしているなら、獣医師や獣医栄養の専門家に相談するよう案内しています。栄養のバランスと、家族の状況の両方を伝えてください。 - 2
2. 保存は冷凍、ほかの食品と分ける
使うまでは冷凍しておき、冷凍庫・冷蔵庫の中では密閉できる容器に入れて、人の食品と分けて置きます。肉汁がほかの食品にかからないようにします。 - 3
3. 解凍は冷蔵庫の中で
台所の調理台やシンクに出したまま解凍しないでください。日本食品衛生協会は、室温で解凍すると食中毒菌が増える場合があるとして、冷蔵庫の中や電子レンジでの解凍をすすめています。使う分だけ解凍し、解凍と再冷凍を繰り返さないことも大切です。 - 4
4. 器具とまな板を分ける
生肉を扱う包丁・まな板・計量スプーン・容器は、人の食事用と分けるのが安全です。厚生労働省のQ&Aは、食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存を行う、食肉に触れた調理器具は使用後に洗浄・殺菌する、としています。生肉を水で洗うのは避けてください。FDAは、生の肉汁に含まれる菌が飛び散って、ほかの食品や表面に広がることがあるとしています。 - 5
5. 食べ残しは長く置かない
FDAは、ペットが食べ残した分はすぐに覆って冷蔵するか、安全に捨てるよう案内しています。CDCは、室温に出しっぱなしになった食べ残しは捨てるよう書いています。環境省のガイドラインは、手作りフードなどは器に出した後の品質の変化がドライフードより早いとして、給与時間は20分程度を目安にするようすすめています。 - 6
6. 器を洗い、手を洗う
食器、計量スプーン、給餌マットはこまめに洗います。生のフードを扱う前後には、石けんと水で手を洗います(FDAは20秒以上としています)。調理台など、生のフードが触れた場所も洗って消毒します。 - 7
7. 食後すぐに顔をなめさせない
FDAとCDCは、食べた直後のペットに口のまわりや顔をなめさせないよう案内しています。CDCは、傷口や皮膚が荒れているところをなめさせないようにとも書いています。犬に触れたり、なめられたりしたあとも手を洗います。 - 8
8. 便はすぐに片付け、片付けたら手を洗う
先に書いたとおり、感染した犬は症状がなくても便に菌を出すことがあります。散歩中も室内でも便は早めに処理し、処理のあとは手を洗ってください。小さな子どもがいる家庭では、子どもが犬の便やトイレシートに触れないように配置を考えます。
生食を扱う日のチェック
- 冷凍庫から出した分は、冷蔵庫の中で解凍している
- 生肉専用のまな板・包丁・容器を使っている
- 生肉を水で洗っていない
- 器に出してから長く置いていない。食べ残しは片付けた
- 使った器と器具を洗い、調理台を拭いて消毒した
- 扱う前と後に、石けんで手を洗った
- 食べた直後に、顔や口のまわりをなめさせていない
- 便をすぐに片付け、手を洗った
- 袋や箱、ロット番号がわかるものを捨てずに残している
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9月の残暑と「解凍放置」
9月に入っても、日中にエアコンを止めた台所は思った以上に暖かくなります。朝の支度の途中で冷凍の生食を調理台に出したまま出かけてしまう、夕方まで器に残った生肉がそのままになる。夏の間は気をつけていても、少し涼しくなったと感じる時期にこそ、こうした油断が起きやすいものです。
日本食品衛生協会は、調理前後の食品を室温に長く放置してはいけないとして、例として「O157は室温でも15〜20分で2倍に増えます」と書いています。生の肉は、ドライフードとは違う時間の感覚で扱う必要があります。
ヒント
買った製品が回収対象か、確かめる方法
回収は、飼い主がその情報にたどり着けて初めて意味を持ちます。米国の回収告知を読むと、確認に使われる情報は毎回ほぼ同じです。
- 1
1. 袋や箱、ロット番号がわかるものを捨てない
Raaw Energyでは日付コードがチューブと箱の白いシールに、Albright'sではロット番号と期限(Best Buy / Expiration)が、Oma's Prideではロット番号と製造日・期限が回収対象の特定に使われていました。小分けにして冷凍する家庭は、元の袋を捨てる前に、ロット番号・賞味期限・商品名が写るように写真を撮っておいてください。 - 2
2. メーカーの公式サイトと購入店の案内を見る
回収はまずメーカーから告知されるのが一般的です。定期購入や通販で買っている場合は、購入店からの連絡メールも確認します。 - 3
3. 海外の製品なら、FDAの回収情報も見る
米国の製品であれば、FDAの動物用製品の回収情報一覧(Recalls & Withdrawals)で、ブランド名や製品の種類から回収を探せます。FDAの「与えないで」勧告(Outbreaks and Advisories)は、メーカーによる十分な回収が始まっていない段階で出ることもあります。 - 4
4. 国内の製品なら、消費者庁のリコール情報サイトも
消費者庁のリコール情報サイトには、ペットフードの返金・回収情報が掲載されている例もあります。すべての回収が載るとは限らないので、メーカーの告知とあわせて確認してください。 - 5
5. 回収対象だったら、与えずに密閉して捨てる
FDAは、回収対象の製品をすぐに与えるのをやめ、ほかの動物や野生動物が触れられない密閉した容器に入れて捨てるよう案内しています。寄付もしないように、とも書いています。あわせて、保存容器、器、器具、調理台、寝床、おもちゃ、床など、触れた可能性のあるものを洗って消毒し、手を洗います。 - 6
6. 返金や問い合わせに備えて記録を残す
Albright'sの回収告知では、返金の問い合わせにレシートと写真を添えるよう案内されていました。フードを捨てる前に写真を撮り、購入の記録を残しておくと手続きが進めやすくなります。
注意
ロット番号・日付コードの位置は各社の回収告知とFDAの勧告、廃棄と清掃の方法はFDAの勧告ページ(Raaw Energy)、返金の案内はAlbright's Raw Pet Foodの回収告知、国内の回収情報の掲載例は消費者庁リコール情報サイトで確認した内容にもとづきます。
加熱した手作り食・総合栄養食と比べると
生食をやめる、あるいは減らすと決めたとき、選択肢は大きく2つあります。加熱した手作り食と、市販の総合栄養食です。
| 生食(ローフード) | 加熱した手作り食 | 市販の総合栄養食 | |
|---|---|---|---|
| 病原体のリスク | 加熱していないため、原料由来の菌が残りうる。冷凍・フリーズドライでも菌はなくならない | 中心まで十分に加熱すれば、原料由来の菌のリスクは下げられる。調理中の二次汚染には注意 | 製造工程で加熱・乾燥する製品が多い。開封後の保存や器の衛生は必要 |
| 栄養バランス | 肉だけに偏ると、ビタミン・ミネラル不足、カルシウム・リンの不足や過剰につながりうる(環境省) | 犬の栄養要求を満たすには十分な知識が必要(環境省)。レシピ作りは専門家に相談するのが安全 | 「これと水だけで」指定された成長段階の健康を維持できるよう設計されている |
| 家族への影響 | 扱う人・犬と触れ合う人に菌がうつるリスクがある | 生肉を扱う調理の段階では、人の料理と同じ衛生管理が必要 | 生肉ほどのリスクではないが、手洗いや器の洗浄は基本 |
| 手間 | 冷凍・解凍の管理、器具の分離、片付けの徹底 | 調理と栄養設計の手間 | 比較的少ない |
環境省のガイドラインは、手作りフードのメリットとして使う食材や調理方法を飼い主自身が100%把握できることを挙げつつ、犬猫の栄養要求量を満たす最適なフードを作るには「ペットの栄養に関する十分な知識が必要」で、レシピを専門家に相談するのもよいとしています。加熱すれば衛生面のリスクは下げられますが、栄養の偏りという課題は残ります。
CDCの「生が必ずしも健康的とは限らない」という一文は、裏返せば「加熱したら必ず良い食事になる」わけでもない、ということです。どちらを選ぶにしても、その子のライフステージと体の状態に合っているかを、かかりつけの動物病院と一緒に確認するのが近道です。
ヒント
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受診の目安
生食を食べている犬に、次のような様子が見られたら、動物病院に相談してください。症状はFDAの勧告や回収告知に挙げられているものを中心にしていますが、ここに当てはまらない変化でも、気になるときは早めの相談で構いません。
こんなときは動物病院へ
- 嘔吐や下痢が続く、または血が混じっている
- 発熱がある、ぐったりして元気がない
- 食欲が落ちている、水を飲めていない
- お腹を痛がる、いきむのに便が出ない
- ふらつき、けいれん、呼吸が苦しそうなど、神経や呼吸の症状がある
- 妊娠中の犬で、流産の兆候がある
- 子犬・シニア犬・持病のある犬で、軽くても体調の変化がある
受診のときは、次の情報があると役に立ちます。
- 与えている生食の製品名、ロット番号、賞味期限(袋の写真で十分です)
- 手作りの場合は、使った肉の種類と、どこで買ったか
- いつ、どれくらい食べたか。解凍の仕方や、室温に置いていた時間
- 症状が出はじめた時期と、便や吐いたものの様子(写真があればなお良い)
- 家族に、同じ時期に下痢や発熱などの症状が出ている人がいるか
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よくある質問
うちの犬は何年も生食で元気です。それでもリスクはありますか。
冷凍の生食なら、菌は死んでいるのではないですか。
フリーズドライのおやつも生食と同じ扱いですか。
日本のペットフード安全法の対象なら、国内の生食は安全ですか。
犬もH5N1(鳥インフルエンザ)に感染するのですか。
生肉を与えるなら、何に気をつければいいですか。
人用に売っている生の鶏肉を犬に与えるのはどうですか。
買った生食が回収対象かどうか、どう確かめればいいですか。
生食をやめたいのですが、急に切り替えても大丈夫ですか。
子犬に生食を与えてもいいですか。
おわりに
生食を選ぶ飼い主の多くは、愛犬にとって少しでも良いものを、と考えてその選択をしているのだと思います。その気持ちは、この記事を書いている私たちも同じです。
ただ、2026年に米国で続いた勧告や回収が教えてくれるのは、生の肉には、見た目やにおいではわからない菌が入りうること、冷凍してもそれは消えないこと、そして犬が元気でも、その菌が家族に届くことがある、という事実です。FDAの検査で見つかったもの、苦情から見つかったもの、犬の体調不良が報告されたもの。形はさまざまでも、どれも「普通に売られていた冷凍の生食」でした。
生食を続けるか、加熱した食事に切り替えるか。その答えは、家族構成や犬の年齢、持病によって家庭ごとに違っていいはずです。大切なのは、リスクを知ったうえで選ぶことと、選んだ方法に合った扱い方を続けることです。まずは今日、冷凍庫にある生食の袋のロット番号を確かめてみてください。そして、家族に守りたい人がいるなら、次の診察で「生食を与えているのですが」と、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
この記事の回収・勧告に関する記述は、FDAの勧告ページ(Raaw Energy、2026年1月23日発出・5月22日更新/Darwin's Natural Pet Products、2025年7月29日)とFDAが掲載した各社の回収告知(Raaw Energy、Albright's Raw Pet Food、Oma's Pride、Northwest Naturals)、H5N1に関する記述はFDAのCVM Updates(2025年1月17日発出・9月30日更新の製造者向け要請、2025年9月3日のRAWR Raw Cat Foodに関する通知)にもとづいています。無症状の犬からの菌の検出はBernaquez I et al.(Commun Med. 2025;5:214)とGroat EF et al.(J Small Anim Pract. 2022;63(6):435-441)、フリーズドライの扱いはタフツ大学Petfoodologyの解説(2025年10月27日)、獣医師団体と公的機関の見解はAVMAの方針、CDC「About Pet Food Safety」、FDA「Get the Facts! Raw Pet Food Diets can be Dangerous to You and Your Pet」、環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」、日本の制度は環境省「ペットフード安全法に関するQ&A」と農林水産省「ペットフード安全法の概要」、家庭での食中毒予防は厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」と日本食品衛生協会「食中毒予防の6つのポイント」を参照しました。回収情報は随時更新されるため、最新の状況は各機関のページで確認してください。個々の犬の健康状態や食事の判断は、獣医師にご相談ください。
出典・参考
- FDA Advisory: Do Not Feed Eight Lots of Raaw Energy Dog Food Due to Contamination with Harmful Bacteria(2026年1月23日発出、5月22日更新)|U.S. Food and Drug Administration
- Raaw Energy Expands Recall of Dog Food Because of Listeria Monocytogenes Health Risk(2026年5月22日)|FDA
- Albright's Raw Pet Food Announces Voluntary Recall of Select Chicken Recipe for Dogs Complete and Balanced(2026年5月)|FDA
- UPDATED: Oma's Pride Voluntarily Recalls One Lot of Woof Complete Canine Chicken Recipe(2026年8月17日)|FDA
- Northwest Naturals Voluntarily Recalls Two Raw Pet Food Products Because of Possible Salmonella & Listeria Monocytogenes Health Risk(2026年8月28日)|FDA
- Cat and Dog Food Manufacturers Required to Consider H5N1 in Food Safety Plans(2025年1月17日発出、9月30日更新)|FDA
- FDA Notifies Pet Owners That Tests Show H5N1 Contamination in Certain Lots of RAWR Raw Cat Food Chicken Eats(2025年9月3日)|FDA
- FDA Advisory: Do Not Feed Certain Lots of Darwin's Natural Pet Products Pet Food Due to E. coli O157:H7 and Salmonella(2025年7月29日)|FDA
- Get the Facts! Raw Pet Food Diets can be Dangerous to You and Your Pet|FDA
- Recalls & Withdrawals(動物用製品の回収情報一覧)|FDA
- About Pet Food Safety|Healthy Pets, Healthy People|CDC
- Raw or Undercooked Animal-Source Protein in Cat and Dog Diets(AVMA方針)|American Veterinary Medical Association
- Delegates update AVMA policies on diets for cats and dogs, animal loss support services|AVMA News
- AVMA Delegates to Debate Raw Food Diets(2023年12月22日)|Today's Veterinary Business
- Dogs fed raw meat-based diets are vectors of drug-resistant Salmonella infection in humans(Bernaquez I et al., Commun Med. 2025;5:214)PMC全文
- UK dogs eating raw meat diets have higher risk of Salmonella and antimicrobial-resistant Escherichia coli faecal carriage(Groat EF et al., J Small Anim Pract. 2022;63(6):435-441)PMC全文
- Raw Pet Food Risks: A Research Update(2025年10月27日)|Petfoodology(タフツ大学カミングス獣医学部)
- 飼い主のためのペットフード・ガイドライン 〜犬・猫の健康を守るために〜(PDF)|環境省
- ペットフード安全法に関するQ&A|環境省
- ペットフード安全法の概要(PDF)|農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課
- カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)|厚生労働省
- 食中毒予防の6つのポイント|公益社団法人日本食品衛生協会
- リコール情報サイト|消費者庁
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