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犬が草を食べる理由と対処法|吐くのは大丈夫?危険な草と、やめさせ方・受診の目安

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犬が草を食べる理由と対処法|吐くのは大丈夫?危険な草と、やめさせ方・受診の目安

散歩の途中、道端の草むらに顔を突っ込んで、むしゃむしゃと草をかじり始める。しばらくして「ケポッ」と草まじりの液体を吐いて、何事もなかったように歩き出す——。犬と暮らしていると、一度は目にする光景です。「お腹の調子が悪いの?」「栄養が足りていない?」「そもそも草って食べさせていいの?」と、そのたびに気になりますよね。

犬が草を食べる行動は、獣医学の世界でも「はっきりした理由はわかっていない」とされる一方で、飼い主への調査や実験から「多くの犬が普通にやっている行動で、たいていは病気とは関係がない」ことがわかってきています。ただし、道端の草には除草剤や寄生虫の卵、犬に有毒な植物、口や鼻に刺さるイネ科のノギといった別のリスクがあり、「食べる行動そのもの」より「何を食べているか」に目を向ける必要があります。

この記事では、犬が草を食べる理由として考えられていることと研究でわかっていること、吐いたときの見方、散歩道の草に潜む危険、無理なくやめさせる方法、猫草を与える是非、そして動物病院に相談したい目安を順に整理します。拾い食い全般のしつけは拾い食い対策の記事、嘔吐そのものの見分け方は犬が吐く原因と受診の目安の記事、秋の散歩道の有毒植物は秋の中毒リスクの記事にまとめているので、ここでは「草を食べる行動」に焦点をしぼります。

犬が草を食べるのは「よくあること」: 研究でわかっていること

まず安心してほしいのは、草を食べる犬はまったく珍しくないということです。カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の研究グループ(Sueda、Hart、Cliff)が2008年に発表した調査では、飼い主や獣医学生に対して複数の段階でアンケートを行い、「草を食べるのは体調が悪いときで、吐くために食べている」「栄養不足を補っている」という2つの通説を検証しました。

心理学者スタンレー・コーレン氏がPsychology Todayでこの研究を紹介した記事によると、結果はおおよそ次のとおりです。

調査の段階対象主な結果
予備調査犬を飼っている獣医学生25人全員の犬が草を食べていた。食べた後に常習的に吐くのは8%
来院した飼い主への調査毎日植物に触れる機会がある犬の飼い主47人79%が「草や植物を食べたことがある」と回答。吐いたのはごく少数
インターネット調査草を食べる犬の飼い主を対象としたインターネット調査(回収3,340件中、基準を満たした有効回答1,571件)68%の犬が毎日〜毎週のように草を食べる。食べる前にしばしば体調不良の様子が見られると回答したのは9%、食べた後に頻繁に吐くと回答したのは22%

研究グループは、若い犬ほどよく草を食べ、しかも体調不良の様子や嘔吐を伴う割合が低いことも報告し、「草を食べるのは家庭犬の正常な行動で、一般に病気や栄養不足とは関係がない」と結論づけています。つまり「草を食べる=どこか悪い」ではなく、「草を食べたあとで吐く犬はむしろ少数派」というのが、いまのところ最もまとまったデータです。

海外の獣医情報サイトも、この見方でおおむね一致しています。VCA Animal Hospitalsの解説では「草を食べた後に吐くのは全体の25%未満、食べる前に体調不良の様子を見せるのは約10%」として、「ほとんどの草を食べる犬は事前に病気ではなく、食べた後も吐かない」とまとめています。PetMDも「報告者のほぼ全員が、草を食べた後の嘔吐はまれだと答えている」として、嘔吐目的説は誤解に近いとしています。

また、オーストラリア(ニューイングランド大学)の研究チームが犬12頭に草を与えて観察した2007年の試験(Bjone、Brown、Price、Recent Advances in Animal Nutrition in Australia)では、満腹のときは草を食べにくく、空腹のときのほうが食べやすい傾向が報告されています。PetMDも「2007年の研究で、草を食べる行動は空腹度に影響されることがわかった」と紹介しています。これも「体調が悪いから」ではなく「食べたいから食べる」という見方を支える結果です。

1,571件の調査の数値(68%・9%・22%)は、Sueda、Hart、Cliffによる2008年のApplied Animal Behaviour Science掲載論文のアブストラクトによります(Psychology Todayの紹介記事では8%と表記されていますが、原論文は9%です)。予備調査の25人・47人の数値(8%・79%)は同論文を紹介したPsychology Todayの記事(スタンレー・コーレン氏)に基づきます。VCAの「25%未満」「約10%」はVCA Animal Hospitalsの解説、12頭の試験(2007年)はBjoneらの原報によるもので、PetMDは同研究の要約のみを紹介しています。いずれも本記事が原論文を独自に再集計したものではありません。

草を食べる理由として考えられていること

「ではなぜ食べるのか」については、正直なところ研究でも1つの答えは出ていません。国内外の獣医師の解説を突き合わせると、次のような説が挙がります。どれか1つではなく、犬によって、また同じ犬でもその日によって、複数の理由が重なっていると考えるのが自然です。

考えられる理由どんな説か裏づけの程度
胃の不快感・吐きたい胃がむかつくときに草の葉先で胃を刺激し、吐いてすっきりさせようとする昔からの通説だが、調査では「食べる前に不調」「食べた後に嘔吐」は少数派
食物繊維・栄養面食事で不足しがちな繊維やビタミン・ミネラルを補おうとする高繊維食で草食いと嘔吐が改善した症例報告はあるが、多くの犬には当てはまらないとする調査結果もある
空腹お腹が空いた時間帯に、手近な草で満たそうとする食後は草を食べにくいという実験結果と合致する
退屈・ストレス・注目刺激不足や不安を紛らわせる、飼い主の反応を引き出す飼い主との接触時間が減ると草食いが増えるとする解説がある
習慣・好み・本能単に味や食感が好き、祖先(オオカミ)の食性の名残オオカミの胃内容物や便から植物が見つかる報告がある
異嗜(いし、pica)食べ物でないものを継続的に口にする状態。病気や栄養障害、行動の問題が背景にある草だけでなく土・石・布などにも及ぶときに疑われる

胃の不快感・吐きたいとき

いちばんよく聞く説明です。国内の動物病院のコラムでも「胃酸過多や食べすぎで気持ち悪いとき、草を食べて吐き出そうとする」(湘南Ruana動物病院)、「食べ過ぎてお腹がむかむかしている時や胃腸の不調がある時に、草を食べて嘔吐することによって体の不調をスッキリさせるという本能」(ひだまり動物病院)といった説明が見られます。

一方で前述のとおり、飼い主調査で「食べる前にしばしば体調不良の様子が見られる」と回答したのは1割前後にとどまります。この説が完全に間違いというわけではなく、「一部の犬・一部の場面ではあり得るが、草を食べる犬の大多数を説明する理由ではない」と理解しておくのが現実的です。もし愛犬が明らかに気持ち悪そうな様子(よだれ・落ち着きがない・口をくちゃくちゃさせる)を見せてから草を探しに行くなら、その日は胃腸の不調のサインとして扱い、ほかの症状もあわせて観察してください。

食物繊維や栄養が足りない?

「栄養不足を草で補っている」という説も根強く、国内の解説でも「不足しがちなビタミン・ミネラル・食物繊維を本能的に草から摂取しようとする」(ピースワンコ・ジャパン)といった説明があります。PetMDは、7年間にわたって草を食べては吐いていた犬が高繊維食に切り替えたところ改善した、という症例報告を紹介しています。

ただし、UC Davisの調査では草を食べる頻度と食事内容(繊維量など)のあいだにはっきりした関係は見られず、研究グループは「栄養不足とは関係がない」と結論づけています。つまり栄養面の説は「例外的に当てはまる犬はいるが、一般化はできない」という位置づけです。総合栄養食を適量与えている犬であれば、草を食べているからといって栄養不足を心配する必要は基本的にありません。逆に、おやつの比率が高い、手作り食で栄養バランスに自信がない、という場合は、草食いをきっかけに食事全体を見直す価値はあります。

空腹

意外に見落とされがちなのが空腹です。前述の実験で「食事の直後は草を食べにくい」という結果が出ているほか、AKC(アメリカンケネルクラブ)の解説でも「空腹時の胆汁による不快感をやわらげるため」という見方を挙げ、対策として「食事を小分けにして回数を増やす(特に朝食)」を提案しています。朝の散歩で必ず草を食べる、夕方の空腹時に多い、というパターンなら、食事の時間と回数を見直すだけで落ち着くことがあります。

退屈・ストレス・飼い主の注目

散歩の刺激が少ない、留守番が長い、運動量が足りない、といった状況で草食いが増えることは、国内外の解説で共通して指摘されています。VCAは「飼い主との接触時間が減ると草食いが増えるとよく言われる」と述べ、不安な人が爪を噛むように、退屈や不安を紛らわせる行動である可能性を挙げています。また、草を食べるたびに飼い主が「ダメ!」と駆け寄る経験を重ねると、「草を食べると構ってもらえる」と学習して行動が強まることもあります。

習慣・好み・本能

「単に好きだから」という説明も、獣医師の解説では真面目に取り上げられています。PetMDは、若い犬の探索行動としての草食いや、食感や香りを楽しんでいる可能性を挙げ、VCAは祖先のオオカミが獲物を内臓ごと食べていたことや、オオカミの調査で植物を食べる個体が一定割合いることに触れて、本能的な行動という見方を紹介しています。いつも同じ種類の草を、決まった場所で、うれしそうに食べているなら、その子にとっては「散歩の楽しみ」の1つになっている可能性が高いでしょう。

異嗜(pica)との違い

草だけでなく、土・石・木の枝・布・ペットシーツ・便など、食べ物でないものをくり返し口にする状態は「異嗜(異食症、pica)」と呼ばれます。VCAの解説では、行動的な原因(不安・欲求不満・取り上げられないように飲み込むなど)のほか、炎症性腸疾患、腸内寄生虫、膵外分泌不全、貧血、栄養不良、糖尿病、クッシング症候群などの病気が背景にあることがあるとされます。国内の動物病院(壱岐動物病院)も、身体的な原因として慢性消化器障害・肝疾患・寄生虫・鉄やビタミンB1の欠乏・内分泌疾患を挙げ、若齢動物に多いこと、放置すると行動の問題は治しにくくなることを指摘しています。

草だけを散歩中に少し食べる、というのは異嗜とは区別して考えてかまいません。ただし「草以外のものも食べる」「家の中でも異常な執着がある」「体重が減る・便がおかしい」といった状況が重なるなら、行動の問題として片づけず、一度検査を受けておくと安心です。

メモ

「草を食べるのはどこか悪いから」「栄養が足りないから」という2つの通説は、いまのところ調査結果では支持されていません。愛犬がときどき草を食べて、そのあと元気で食欲もあるなら、まずは「よくある行動」として落ち着いて受け止めてください。心配すべきは行動そのものより、食べている草に何が付いているか、そして草食い以外の症状が出ていないかです。

吐くのは大丈夫? 草を食べて吐いたときの見方

草を食べたあとに吐く犬は少数派とはいえ、実際に吐かれると心配になります。国内の動物病院の解説では、草を食べてすぐに1〜2回、透明な液体や胃液を吐く程度で、その後元気があるなら、多くの場合は問題ないとされています(湘南Ruana動物病院)。

一方で、次のような場合は「草のせい」で片づけないほうが安全です。

  • 1日に何度も吐く、日をまたいで吐き続ける
  • 吐いたあとぐったりしている、食欲がない
  • 吐いたものに血や異物が混じる、黒っぽい・コーヒーかすのようなものが出る
  • 草を食べる頻度が急に増えた、草を食べないと落ち着かない様子がある
  • 下痢や腹痛(お腹を触られるのを嫌がる・祈りのポーズ)を伴う

こうしたケースでは、慢性胃炎や消化器疾患、寄生虫、異物などが背景にある可能性があり、湘南Ruana動物病院も「くり返す嘔吐は慢性胃炎や消化器疾患を示唆する」と注意しています。海外のVCAも、草食いが目立つ犬では胃食道逆流・炎症性腸疾患・膵炎といった病気を除外するために獣医師に相談することをすすめています。

とくに「早朝の空腹時に黄色い液体を吐く」「そのあと草を探す」というパターンは、空腹時間が長いときに起こる嘔吐(いわゆる胆汁嘔吐症候群)と重なることがあります。嘔吐の種類や色でわかること、様子を見てよい範囲は、下の記事で詳しく整理しています。

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散歩道の草に潜む5つのリスク

草を食べる行動そのものは正常でも、屋外の草には「何が付いているかわからない」という問題があります。獣医師の解説で共通して挙げられるリスクは、次の5つです。

リスク具体的には主な症状・トラブル
除草剤・農薬公園・歩道・空き地・田畑や果樹園の周辺に散布された除草剤や殺虫剤嘔吐・下痢・よだれ・けいれんなど。足裏や体に付いたものを舐めても摂取しうる
寄生虫の卵・病原体ほかの犬や動物の便で汚染された草。回虫・鉤虫などの虫卵、ウイルス下痢・嘔吐、子犬では回虫による腹部の膨らみなど
有毒な植物ツツジ・サツキ・シャクナゲ、スイセン、スズラン、チューリップやヒヤシンスの球根、アジサイ、キョウチクトウ、アサガオの種など嘔吐・下痢・よだれ・神経症状・不整脈など植物によって異なる
イネ科のノギ・硬い葉イネ科植物の穂先にある棘状の突起(ノギ)や、エノコログサ(ねこじゃらし)・チカラシバのように穂に硬い毛がある草、縁がざらざらした硬い葉口・のど・鼻・耳・目・指の間に刺さる。くしゃみが止まらない、顔を振る、目をしょぼつかせる
大量摂取による閉塞長い草を大量に飲み込んで繊維がからまり、胃や腸に詰まるくり返す嘔吐・食欲不振・腹痛。手術が必要になった症例報告がある

除草剤・農薬

いちばん現実的なリスクです。除草剤は春から秋にかけて公園や歩道、河川敷、田畑や果樹園の周辺などで使われます。獣医師監修の記事では、除草剤が付いた草を食べると嘔吐・下痢・けいれんなどの中毒症状が出るおそれがあり、重篤な場合は命にかかわることもあると注意されています(ワンクォール)。農薬の専門機関である食環境衛生研究所のコラムも、犬猫が除草剤を舐めた場合の対応として、「何を・どのくらい・どうやって」摂取したかを把握したうえで獣医師に相談すること、根拠のない自己流の処置(口に指を入れて吐かせる等)は避けることを挙げています。

散歩コースに「除草剤散布中」「薬剤散布のお知らせ」といった掲示が出ていたら、その周辺の草には近づけないでください。掲示がなくても、草が不自然に枯れて茶色くなっている一帯は散布の可能性があります。

寄生虫の卵・便による汚染

草むらは、ほかの犬や猫、野生動物の排泄場所でもあります。回虫の卵は便と一緒に外に出たあと環境の中で成熟して感染力を持ち、それを犬が口にすることで感染します(アニコム損保・獣医師監修)。エランコジャパンの解説も、犬が「地面の臭いを嗅いだり、舐めたり、あるいは土や草を食べたりすることによって、誤って虫卵を飲み込むと感染します」と述べています。多くの犬が排便する公園の草むらや砂場は、草食いの場所としては避けたい場所です。定期的な糞便検査と駆虫は、この意味でも役立ちます。

有毒な植物

道端や公園の植え込み、庭に植えられている園芸植物の中には、犬が食べると中毒を起こすものがあります。国内の解説記事でよく挙げられるのは、ツツジ・サツキ・シャクナゲ(ツツジ科)、スイセン、チューリップやヒヤシンスの球根、スズラン、アジサイ、キョウチクトウ、アサガオの種子、アロエなどです。「草」のつもりで植え込みの葉や落ちた花・種を口にしてしまうことがあるので、犬が顔を突っ込む場所に何が植わっているかを一度確認しておくと安心です。秋に増える毒キノコ・彼岸花・銀杏・どんぐりなどについては、下の記事にまとめています。

有毒植物の具体名は、わんちゃんホンポ(ツツジ・アザレア・サツキ・シャクナゲ、ユリ・チューリップ・ヒヤシンス・スズラン、アサガオの種子、アジサイ、スイセン、アロエ、キョウチクトウ)、Honda Dog(ツツジ科全般、ユリ科全般、アサガオの種子、アジサイ、スイセンの球根、アロエ)、hotto(アサガオ、スズラン、キョウチクトウ、スイセンなど)の各解説に挙げられているものを整理したものです。中毒の起こりやすさや危険な部位は植物によって異なるため、実際に食べた可能性があるときは植物名を伝えて獣医師に相談してください。

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イネ科のノギと硬い葉

見落とされがちですが、動物病院のブログでたびたび症例が紹介されているのが「ノギ」です。あいむ動物病院(西船橋)の解説によると、ノギ(芒)は、コメ・ムギなどイネ科植物の小穂を構成する鱗片の先端にある棘状の突起です。これが指の間の皮膚、目(結膜・角膜)、耳道、鼻腔、上気道などに入り込み、出血や皮膚炎、目の痛み、頭を激しく振る、キャンと鳴くといった症状につながり、麻酔下での摘出が必要になることが紹介されています。空き地や荒れ地に多いエノコログサ(ねこじゃらし)やチカラシバのように、穂に硬い毛がある草も、同じように毛が刺さったり被毛にからんだりすることがあるので注意してください。成増どうぶつ病院は、鼻詰まりが続いた3歳の小型犬で「一本の針状の草」が鼻腔内から内視鏡で摘出された症例を報告し、散歩中に草むらへ鼻を突っ込んだ際に草が鼻に入ることがあると注意しています。くしゃみが止まらない・顔を激しく振る・鼻詰まりの音がするといった様子が受診の目安になります。

また、ススキやイネ科の葉は縁が硬くざらざらしていて、口の中やのどを傷つけたり、のどに引っかかったりすることがあります。穂が出た草むら、背の高いイネ科の草が茂った場所は、草を食べさせる場所としては向きません。

大量に食べたときの閉塞

「草は消化されないだけで、出てくれば問題ない」と思われがちですが、大量に飲み込んだ草の繊維がからまって胃や腸に詰まった例もあります。グラスゴー大学の獣医師らが2020年にVeterinary Record Case Reportsで報告した4頭では、草の繊維が線状異物として消化管に詰まり、4頭とも外科手術(胃切開・腸切開)が必要になりました。うち3頭は幽門部で繊維が固定されて腸の壊死と穿孔を起こし、腸の切除・吻合が行われています。1頭は術後に重度の腸閉塞(イレウス)が改善せず、手術から12日後に安楽死となりました。まれなケースではありますが、「食いしん坊で草を大量に食べる」「食べても食べても止まらない」犬では、こうしたリスクもあることを知っておいてください。

注意

除草剤が散布された場所の草や、有毒な植物を食べた可能性があるときは、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。「何を・どのくらい・いつ」食べたかを伝え、可能なら食べた植物や掲示の写真を撮っておくと診察の助けになります。家庭で無理に吐かせる、市販薬を飲ませるといった自己流の処置は避けてください(気管を傷つける・誤嚥のおそれがあります)。水を飲みたがるなら少量ずつ与えてかまいませんが、無理に大量に飲ませたり牛乳を与えたりはせず、獣医師の指示を待ちます。

草を食べるのをやめさせる・減らす方法

草食いは正常な行動なので、ゼロにする必要はありません。目標は「安全な草を、少しだけ、飼い主が把握できる範囲で」にすること。叱って押さえ込むより、先回りして環境を整えるほうが、犬も飼い主もストレスが少なくて済みます。

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    いつ・どこで・どんな草を食べるか記録する

    まず1〜2週間、草を食べた日時・場所・草の種類・そのときの様子(食前か食後か、吐いたか、元気か)をメモします。朝の空腹時に多い、特定の草むらだけ、留守番が長かった日に多い、といったパターンが見えれば、対策の的がしぼれます。動物病院に相談するときの資料にもなります。
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    食事の時間と回数を見直す

    空腹のパターンが見えたら、1日の食事量は変えずに回数を増やす(朝食を少し早める、夜を遅めにする、朝の散歩前に少量を与える)方法があります。AKCも「小分けにして回数を増やす」を対策として挙げています。ひだまり動物病院は散歩前に軽くおやつを与えることを提案しています。フードの量が適正か、おやつに偏っていないかもあわせて確認してください。
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    散歩ルートとリードの持ち方を変える

    草むらの多い道、公園の排便スポット、穂の出たイネ科の草が茂る空き地、除草剤の掲示がある場所は避けるか、通るときはリードを短めに持ちます。草に顔を向けた瞬間に名前を呼び、進行方向を変えて、ついてきたら褒めておやつ。「草より飼い主に注目したほうが良いことがある」を積み重ねます。
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    「ちょうだい」「まて」を練習しておく

    口に入れる前に止められる合図があると、危険な草に近づいたときに役立ちます。おもちゃとおやつの交換から始めて、屋外の落ち葉や安全な草でも練習しておきましょう。詳しい手順は拾い食い対策の記事で紹介しています。
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    散歩の「質」と退屈対策を見直す

    同じコースを黙々と歩くだけでは刺激が足りない犬もいます。においを嗅ぐ時間をしっかり取る、ときどきコースを変える、家では知育トイやノーズワークで頭を使う時間を作る、飼い主と遊ぶ時間を増やす。退屈やストレスが背景にある草食いは、これだけで落ち着くことがあります。
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    どうしても食べたいなら、安全な草を用意する

    「食べる草を選ばせない」のではなく「安全な草だけ食べられるようにする」発想です。市販の犬・猫用の栽培キット(燕麦や大麦の若葉)を家で育てて与える方法は、複数の獣医師が紹介しています。詳しくは次の見出しで。

ヒント

草を食べるたびに大声で叱ったり、リードを強く引いたりするのは避けたいところです。「草に近づくと怒られる」と学ぶより先に「草を食べると飼い主が反応してくれる」と学んでしまい、注目を引く行動として定着することがあります。止めるときは静かに名前を呼んで方向を変え、ついてきたらしっかり褒める、を淡々とくり返してください。
朝の散歩で毎回のように草を食べては黄色い液体を吐いていたので、病院で相談したら「空腹の時間が長いのかも」と言われました。夜ごはんを遅めにして、朝は散歩前にひとつまみだけフードを食べさせるようにしたら、草を探す回数が目に見えて減りました。全部やめたわけではなくて、公園の芝生をちょっとかじるくらいは今もあります。
中型犬と暮らす飼い主

散歩中に意識したいこと

  • 除草剤・薬剤散布の掲示がある場所、草が不自然に枯れている一帯には近づかない
  • 多くの犬が排便する草むら・砂場では草を食べさせない
  • 穂の出たイネ科の草(ノギのある稲・麦など)や、エノコログサ(ねこじゃらし)・チカラシバのように穂に硬い毛がある草、背の高い草むらに顔を突っ込ませない
  • 植え込みの園芸植物(ツツジ・サツキ・ユリ・チューリップ・スイセン・スズラン・アジサイ・キョウチクトウなど)の葉や花・種・球根を口にさせない
  • 草に顔を向けたら名前を呼んで方向転換。ついてきたら褒める
  • 食べてしまったら、どこで・どんな草を・どのくらい食べたかを覚えておく(写真があるとなお良い)
  • 散歩後にくしゃみ・顔を振る・目をしょぼつかせる・足を舐め続けるなどがあれば、ノギの可能性も考える

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猫草を犬に与えてもいい?

「猫草」は特定の植物の名前ではなく、ペットが食べても差し支えない草の総称で、燕麦(エンバク)や大麦などイネ科植物の若葉を指すのが一般的です(ペット&ファミリー損保・獣医師監修)。ペットショップやホームセンターで栽培キットや育った鉢が手に入ります。

犬に与えてよいかについては、「草を食べる理由はどの説も研究途上で科学的に証明されたものはない」としたうえで、「犬や猫の食性から考えると草をしいて与える必要はないが、食べてお腹を壊さないなら少量与えて悪いものでもない。市販の栽培キットなどを用いて草を供給してあげる分には、健康上、問題はないはず」とする獣医師の解説があります(女性セブンプラス・鳥海早紀獣医師)。ひだまり動物病院も「市販の犬用猫草を与える」を対策の1つに挙げ、保護犬団体ピースワンコ・ジャパンの解説記事も「犬用の安全な草(燕麦など)を栽培し、自宅で食べさせてあげるのも一つの方法」としています。

ポイントは次の3つです。

  • 必須ではない: 総合栄養食を食べている犬に、栄養面で猫草が必要なわけではありません。「欲しがる子に、安全な選択肢として」と考えてください。
  • 少量から: 食べ過ぎると吐く回数が増えたり、消化管に負担がかかったりします。最初は数本から、便や吐き気に変化がないか確認しながら増やします。下痢をしている、体調が悪いときは与えないでください。
  • 若い葉を: 育ちすぎて葉が硬くなったものは口を傷つけることがあります。やわらかい若葉のうちに与え、屋外の草と同じように、穂が出たら使わないのが無難です。

なお、「猫草を与えれば散歩中の草食いがなくなる」というほど単純ではありません。空腹や退屈が背景にあるなら、そちらの対策とあわせて使うのが現実的です。

動物病院に相談したい目安

草を食べる行動そのものは、元気で食欲があり、便も普通なら、あわてて受診する必要はありません。ただ、次のような変化があるときは「草のせい」で片づけず、動物病院に相談してください。

受診を考えたいサイン

  • 草を食べるたびに毎回のように吐く、または1日に2回以上吐く日が続く
  • 草を食べる回数や執着が急に増えた。草を食べないと落ち着かない
  • 元気がない、食欲が落ちている、体重が減ってきた
  • 嘔吐や下痢が続く、便がゆるい日が長い
  • 吐いたものや便に血・黒っぽいもの・異物が混じる
  • 草以外のもの(土・石・布・便など)も口にするようになった(異嗜の可能性)
  • 除草剤の散布場所や有毒な植物を食べた可能性がある(この場合はすぐ連絡)
  • 草むらのあとにくしゃみが止まらない、顔を激しく振る、目を痛がる、足の指の間を気にする(ノギの可能性)
  • 子犬・シニア犬・持病のある犬で、草食いとともに体調の変化がある

「1日に2回以上の嘔吐が続く」「嘔吐後に元気や食欲がない」「吐物に血や異物」「草を食べる頻度の急増」を受診の目安とする整理は湘南Ruana動物病院、「嘔吐・下痢・体重減少・食欲低下・血便・元気消失を伴う場合は獣医師の評価が必要」とする点はAKC、胃食道逆流・炎症性腸疾患・膵炎などの除外のために相談をすすめる点はVCA Animal Hospitalsの解説に基づきます。

受診するときは、記録しておいた「いつ・どこで・どんな草を・どのくらい」に加えて、嘔吐や便の写真、食事内容(フードの種類と量・おやつ)、駆虫や糞便検査の履歴、散歩の時間と回数を伝えると、診察がスムーズです。診察では、糞便検査で寄生虫を確認したり、必要に応じて血液検査や画像検査で消化器や内分泌の病気を調べたりすることがあります。

よくある質問

犬が草を食べるのは病気のサインですか。
多くの場合は違います。草を食べる犬の飼い主を対象とした米国のインターネット調査(有効回答1,571件)では、食べる前にしばしば体調不良の様子が見られると回答した飼い主は9%、食べた後に頻繁に吐くと回答したのは22%にとどまり、研究グループは『草を食べるのは家庭犬の正常な行動』と結論づけています。ただし、草食いと同時に嘔吐・下痢が続く、元気や食欲がない、体重が減る、草以外のものも食べるといった変化があるときは、胃腸や寄生虫、内分泌の病気が隠れていることがあるので受診してください。
草を食べたあとに吐きました。様子を見ていいですか。
草を食べてすぐに1〜2回、透明な液体や胃液を吐く程度で、そのあと元気で食欲もあるなら、多くは問題ないとされています。1日に何度も吐く、日をまたいで続く、吐いたあとぐったりしている、血や異物が混じる、下痢を伴う場合は、草のせいと決めつけずに動物病院へ。吐いたものの写真を撮っておくと診察に役立ちます。
栄養が足りていないから草を食べるのでしょうか。
総合栄養食を適量与えている犬であれば、栄養不足が理由であることは多くないと考えられています。調査でも草を食べる頻度と食事内容にはっきりした関係は見られませんでした。ただ、高繊維食で草食いと嘔吐が改善した症例報告もあり、おやつの比率が高い・手作り食で栄養バランスに不安がある場合は、草食いをきっかけに食事全体を見直す価値はあります。フードの切り替えや繊維の追加は、獣医師に相談しながら行ってください。
公園の芝生なら食べさせても大丈夫ですか。
管理された芝生でも、除草剤や殺虫剤が使われていることがあり、多くの犬が排便する場所では寄生虫の卵が付いている可能性があります。薬剤散布の掲示がなく、排便スポットから離れていて、穂の出たイネ科の草が混じっていない場所なら、少しかじる程度は多くの場合問題ありませんが、『安全と言い切れる屋外の草は少ない』というのが獣医師の共通した見方です。心配なら家で育てた燕麦などの草を用意するほうが安心です。
子犬が草を食べます。大人になれば治りますか。
若い犬ほどよく草を食べ、しかも吐きにくい傾向が報告されていて、探索行動や遊びの一部として食べていることが多いと考えられます。成長とともに減る子もいれば、習慣として続く子もいます。子犬は回虫などの寄生虫に感染しやすいので、草を食べる場所を選ぶこと、定期的な糞便検査と駆虫を欠かさないことが大切です。土・石・布など草以外のものも食べる場合は異嗜の可能性があるので、早めに相談してください。
猫草は犬にも与えていいですか。
欲しがる犬に、市販の栽培キットで育てた燕麦や大麦などの若葉を少量与えることは、健康上問題ないとする獣医師の解説が多いです。ただし必須ではなく、食べ過ぎると吐く回数が増えることがあるので、数本から始めて様子を見てください。体調が悪いとき・下痢をしているときは与えず、葉が硬くなったものは使わないようにします。
草を食べるのを叱ってやめさせてもいいですか。
大声で叱ったりリードを強く引いたりするのはおすすめしません。『草を食べると飼い主が反応する』と学んで、注目を引く行動として定着することがあるからです。草に顔を向けたら静かに名前を呼んで方向を変え、ついてきたら褒める、を淡々とくり返すほうが効果的です。あわせて、草むらの少ないルート、食事回数の見直し、退屈対策で『食べたくなる状況』を減らしていきましょう。

まとめ

犬が草を食べるのは、研究でも「家庭犬の正常な行動」と位置づけられている、よくある行動です。理由は1つに決まっておらず、胃の不快感・食物繊維・空腹・退屈やストレス・好みや習慣といった説が重なっていると考えられています。「体調が悪いから」「栄養が足りないから」という通説は、調査ではむしろ少数派であることがわかっています。

飼い主が本当に気をつけたいのは、草そのものより「草に付いているもの」と「草の種類」です。除草剤や農薬、動物の便に含まれる寄生虫の卵、ツツジやユリなどの有毒な植物、イネ科のノギや硬い葉、そして大量に飲み込んだときの閉塞。これらは散歩ルートの選び方とリードの持ち方でかなり避けられます。やめさせたいときは、叱るよりも、食事の回数・散歩の質・退屈対策を見直し、名前を呼んで方向を変える練習を積み重ねるのが近道です。どうしても食べたがる子には、家で育てた燕麦などの安全な草という選択肢もあります。

そして、毎回のように吐く、回数が急に増えた、元気や食欲がない、嘔吐や下痢が続く、便や吐いたものに血や異物が混じる、草以外のものも食べる——こうした変化が重なったときは、「草のせい」で片づけず、記録を持って動物病院に相談してください。愛犬が草をかじる姿を、あわてず、でも目を離さずに見守るための材料として、この記事が役立てばうれしいです。

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