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シニア犬用ドッグフードの選び方|「シニア用」に公的基準はない?何歳から切り替えるか・カロリーとたんぱく質・粒の形状を比較

対象の目安: シニア犬

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シニア犬用ドッグフードの選び方|「シニア用」に公的基準はない?何歳から切り替えるか・カロリーとたんぱく質・粒の形状を比較

うちの大型犬がシニアと呼ばれる年齢に入ったころ、ペットショップの棚の前でしばらく動けなくなったことがあります。「7歳以上」「10歳以上」「12歳から」「13歳以上」。同じ「シニア用」でも書かれている年齢はばらばらで、裏返すとカロリーもたんぱく質もメーカーごとに違います。どれが「正しいシニア用」なのか、見当がつきませんでした。

調べていくと、理由ははっきりしていました。「シニア」という栄養基準の区分は、米国のAAFCOにもNRCにも、日本の総合栄養食の表示ルールにも存在しないのです。シニア用とうたうフードは、成犬の維持期(または全ライフステージ)の基準を満たすように作られていて、その範囲のなかで各社が独自に「シニア向け」の調整をしています。

この記事では、まずその前提を一次資料で確認し、2025年に発表された成犬用とシニア用フードの栄養組成を比べた研究で、実際にどれくらい違うのかを見ます。そのうえで、何歳から切り替えるかの目安、その子の体型と持病から選ぶ手順、比べるべき表示の読み方をまとめ、最後に定番のシニア向け総合栄養食8点の表示を横に並べます。

「シニア用」に公的な栄養基準はない

AAFCOとNRCの区分は「成長・繁殖」と「成犬の維持」

ドッグフードの栄養基準として世界で広く参照されているのが、米国飼料検査官協会(AAFCO)の栄養プロファイルと、米国学術研究会議(NRC)の栄養要求量です。

Merck Veterinary Manual(執筆 Sherry Lynn Sanderson氏)は、AAFCOの栄養要求量の主なライフステージ区分を「成犬の維持(Adult Maintenance)」と「成長・繁殖(Growth and Reproduction)」の2つとしています。そのうえで、AAFCOもNRCも、健康な高齢の犬猫で栄養要求量が変わりうることを認めていない、と指摘しています。同じ項目では、研究によれば成犬の維持期はどの年齢の成犬にも当てはまる一枚岩のステージではなく、若年成犬・成熟成犬・高齢(超高齢)といった段階に分けて考える必要がある、とも書かれています。

2025年にFrontiers in Veterinary Scienceに掲載されたコロラド州立大学などのグループの論文も、冒頭で同じことを確認しています。AAFCOもNRCもシニアというライフステージの定義を定めておらず、シニア用の栄養プロファイルは存在しない。そのため、シニア向けとして売られるフードは、成犬の維持期か全ライフステージの栄養要求量を満たすように作られている、という説明です。

WSAVA(世界小動物獣医師会)の栄養評価ガイドラインにも、AAFCOは成長期・繁殖期・成犬維持期の栄養プロファイルを定めて表示を規制しているが、高齢のペット用フードについてはそれを行っていない、と明記されています。

日本の総合栄養食の表示でも、高齢期は「成犬期」の枠

日本で「総合栄養食」と表示するときのルールは、ペットフード公正取引協議会が運用する「ペットフードの表示に関する公正競争規約」で決まっています。規約と施行規則では、総合栄養食には対象となる成長段階を併記することになっていて、その例として挙げられているのは次の5つです。

  1. 哺乳期
  2. 妊娠期/授乳期
  3. 幼犬期・幼猫期/成長期またはグロース
  4. 成犬期・成猫期/維持期またはメンテナンス
  5. 全成長段階またはオールステージ

「高齢期」「シニア期」という成長段階はありません。ペットフード公正取引協議会の解説ページ「総合栄養食とライフステージについて」の図でも、犬猫のライフステージのうち「成犬・成猫期」と「高齢期」は、どちらも「成犬・成猫期」の総合栄養食の表示に対応づけられています。協議会は総合栄養食の基準について「AAFCOの基準を元にしています」と説明しています。

実際の製品でもこれは確認できます。たとえばニュートロの「シュプレモ エイジングケア シニア犬用」の公式製品ページでは、注意事項の欄に「成犬用総合栄養食」と書かれ、AAFCOの成犬の健康維持の基準に適合している旨が添えられています。商品名はシニア用、総合栄養食としての区分は成犬用、ということです。これはこの製品に限った話ではなく、制度の組み立てがそうなっています。

メモ

「シニア用」「7歳以上」「エイジングケア」は、メーカーが想定する対象を示すマーケティング上の表示です。栄養基準の区分として意味を持つのは、パッケージの「総合栄養食」の欄に併記された成長段階(成犬期・維持期、全成長段階など)のほうです。

AAFCOの主な区分、AAFCOもNRCも高齢犬の要求量の変化を認めていない点、成犬の維持期を細分化すべきという点はMerck Veterinary Manual(Sherry Lynn Sanderson氏)、シニアの定義・栄養プロファイルがないこと、シニア向けフードが成犬維持期か全ライフステージの基準で作られている点はGerman K ほか(Front Vet Sci 2025)、AAFCOが高齢ペット用フードの表示を規制していない点はWSAVA栄養評価ガイドライン(2011年)によります。成長段階の5区分は公正競争規約第5条と施行規則第4条、高齢期と成犬期の対応とAAFCOの基準を元にしている点はペットフード公正取引協議会、成犬用総合栄養食の表示はニュートロ公式製品ページによります(2026年9月確認)。

実際のシニア用フードは、成犬用とどれくらい違うのか

基準がないなら、シニア用フードの中身はメーカーの考え方しだいです。それを実際に測ったのが、先ほどの2025年の論文(German K、Melgoza C、Torres-Henderson C)です。

研究チームは2023年5月、米国コロラド州フォートコリンズの2店舗(全国チェーンと地元の独立店)で扱うドッグフードから、乱数で61製品(25ブランド)を選びました。成犬用として売られていたものが30製品(ドライ21、缶8、フリーズドライ1)、シニア用が31製品(ドライ25、缶6)です。すべてを検査機関で成分分析し、栄養素を代謝エネルギー1,000kcalあたりの量にそろえて比べています。

項目成犬用(30製品)シニア用(31製品)差
エネルギー密度(乾物1kgあたり、中央値)3,993kcal3,844kcalシニア用がやや低い(統計的に有意)
エネルギー密度の範囲3,717〜5,595kcal3,572〜5,038kcal範囲は大きく重なる
粗たんぱく質(1,000kcalあたり、中央値と範囲)76g(62〜128g)76g(52〜116g)差なし
粗脂肪(1,000kcalあたり、中央値と範囲)44g(33〜83g)37g(30〜78g)シニア用が低い(有意)
粗繊維(1,000kcalあたり)7.2g8.5gシニア用がやや多い傾向だが有意差なし
リン(1,000kcalあたり、中央値)2.8g3.0g差なし
ナトリウム(1,000kcalあたり)0.9g(ドライの中央値)0.9g(ドライの中央値)差なし(缶を含む全体でも有意差なし)

平均でみたたんぱく質も成犬用80.9g、シニア用79.9gとほぼ同じでした。つまり「シニア用だからたんぱく質が控えめ」「シニア用だからリンや塩分が少ない」とは、この調査の範囲では言えません。一方で、シニア用のなかだけを見ても、たんぱく質は1,000kcalあたり52gから116gまで2倍以上の開きがあります。

また、61製品のうち11製品(18%)は、AAFCOの成犬維持の要求量を少なくとも1項目満たしていませんでした(いずれもカルシウム・リン・カリウム・カルシウムとリンの比のいずれか)。

著者らの結論は、シニア用フードには定められた基準がないので、年齢だけを理由にすすめるのではなく、その子に必要な栄養の中身で選ぶべきだ、というものです。

注意

この研究には限界があります。対象は米国の2店舗で買えた製品で、日本で売られているフードとは品ぞろえが違います。1製品1ロットしか分析しておらず、著者自身が「仮説を生み出すための探索的な分析」と位置づけています。数値そのものを日本の製品に当てはめるのではなく、「シニア用というラベルだけでは中身が読めない」という方向性の裏づけとして読んでください。

製品の選び方、購入時期と店舗、分析方法、エネルギー密度・たんぱく質・脂肪・繊維・リン・ナトリウムの数値、AAFCOの要求量を満たさなかった製品の割合、結論と限界は、すべてGerman K、Melgoza C、Torres-Henderson C. Exploratory analysis of nutrient composition of adult and senior dog diets. Front Vet Sci. 2025;12 によります。表は同論文の数値から編集部が抜き出して整理したものです(2026年9月確認)。

だから見るのは、ラベルの年齢より「その子の体」

論文の序論には、欧州ペットフード工業会連合(FEDIAF)が2017年に、シニア犬用フードではエネルギー密度を下げ、たんぱく質・食物繊維・オメガ3脂肪酸を増やすことを検討するよう、メーカーに一般的な指針を示したことが紹介されています。ただしデータが限られていたため、具体的な要件にはなりませんでした。同じ序論では、多くの犬は年齢とともにエネルギー要求量が下がって太りやすくなる一方、慢性疾患のある犬や寿命の終わりに近い犬は食欲が落ちて体重を保てず、エネルギー密度の高い食事が必要になることもある、と書かれています。

同じ「シニア」でも、必要な方向が正反対の子がいる。基準が一本にならないのは、そのせいでもあります。

何歳から切り替えるか:体格で違う

環境省の目安:大型犬は6〜7歳、小型犬は8〜10歳

環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」は、ライフステージ別の区分で高齢期を「約7歳から8歳以降の時期」としつつ、老化のスピードには個体差があるので、すべての犬猫がこの時期から高齢というわけではない、と添えています。同じガイドラインのQ&Aでは、シニア用フードへの切り替え時期について、犬は犬種によって時期が違い、シニアに入る時期は大型犬で6〜7歳、小型犬で8〜10歳くらいからと違いがある、としています。

製品の側も、対象年齢は「7歳以上」「8歳以上」「12歳以上」「13歳以上」とまちまちです。これも、シニアの始まりが一律ではないことの表れと言えます。

獣医療の考え方:「推定寿命の最後の25%」

米国動物病院協会(AAHA)の2023年シニアケアガイドラインは、2019年の犬のライフステージガイドラインにもとづき、シニアを「推定寿命の最後の25%から生涯の終わりまで」と定義しています。何歳かではなく、その犬種・体格で見込まれる寿命のどのあたりにいるか、という考え方です。

WSAVAの栄養評価ガイドラインでも、7歳を超える年齢は、それだけで詳しい栄養評価が必要になるわけではないものの、状況をより注意深く見るべき要素のひとつに挙げられています。

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「年齢になったから替える」必要はない

環境省のガイドラインは、ある年齢になったからといって急にその年齢用のフードに切り替えるのはあまり良いことではない、としています(食べなれていないフードに急に替えると、吐いたり下痢をしたりすることがある、という理由です)。今のフードで体重と体型が安定していて、健康診断でも問題がないなら、年齢の数字だけを理由に替えなくてもかまいません。

フードの見直しを考えるきっかけ

  • 同じ量を食べているのに、体重が少しずつ増えてきた(または減ってきた)
  • ウエストのくびれがなくなった、肋骨が触りにくくなった
  • 逆に、背骨や腰の骨が手に当たるようになった、後ろ足が細くなった
  • 散歩の距離や運動量が、若いころより明らかに減った
  • 硬い粒を食べにくそうにする、食べるのに時間がかかる、こぼす
  • 食べる量が減った、残すようになった
  • 健康診断で持病や検査値の変化を指摘された(この場合は獣医師と相談して選ぶ)

高齢期を約7〜8歳以降とし個体差がある点、シニアに入る時期は大型犬6〜7歳・小型犬8〜10歳くらいとする点、急に年齢用のフードに切り替えるのはあまり良くない点は、環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」によります。シニアを推定寿命の最後の25%とする定義は2023 AAHA Senior Care Guidelines、7歳を超える年齢をより注意深く見る要素とする点はWSAVA栄養評価ガイドライン(2011年)によります。チェックリストは編集部の整理です(2026年9月確認)。

選ぶ前に確かめる:BCS・MCS・持病

ラベルの年齢で選べないなら、何で選ぶか。答えは、その子の体を見ることです。見るのは3つあります。

BCS(ボディコンディションスコア):太り気味か、痩せ気味か

BCSは体脂肪のつき方を見た目と手ざわりで評価する指標です。WSAVAのチャートは9段階で、4〜5を理想としています。5は「余分な脂肪なしに肋骨を触れる。上から見て肋骨のうしろにくびれがあり、横から見るとお腹が引き上がっている」状態です。6以上は理想より重く、3以下は理想より軽い区分です。WSAVAの栄養評価ガイドラインは、多くのペットで目標はBCS4〜5/9で、飼い主には「痩せすぎ」に見えることがあるので説明が大切だ、と書いています。

AAHAの2023年シニアケアガイドラインは、犬の維持エネルギー要求量はおおむね生涯を通じて下がっていくこと、カロリー制限が犬の寿命を延ばすと示されていること、理想のBCSは4.5〜5/9であることを挙げています。

MCS(マッスルコンディションスコア):筋肉が落ちていないか

シニア期に見落とされやすいのが筋肉です。WSAVAのMCSチャートは、背骨・肩甲骨・頭蓋骨・腰骨(腸骨翼)まわりを見て触って、筋肉量を「正常」「軽度の減少」「中等度の減少」「重度の減少」の4段階で評価します。筋肉の減少はふつう背骨の両側の筋肉から気づかれることが多い、とされています。

大事なのは、BCSとMCSが別物だという点です。WSAVAのチャートは、BCSが5を超える太り気味の犬でも筋肉が大きく減っていることがあり、逆にBCSが低くても筋肉はあまり減っていないことがあるので、毎回両方を評価することが重要だ、と説明しています。AAHAも、犬はシニアになると除脂肪体重(筋肉など)が減って脂肪が増える傾向があり、さらに高齢になると全体の体重が減っていく、としています。

「体重は変わらないのに、背中が骨ばってきた」というのは、脂肪が増えて筋肉が減っているサインかもしれません。この場合、カロリーを減らすだけのフード選びは逆効果になりえます。

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持病:ここはフード選びより先に獣医師へ

腎臓病、心臓病、肝臓の病気、糖尿病、消化器の病気、食物アレルギーなど、持病がある場合は、市販のシニア用フードから選ぶ前に獣医師に相談してください。病気によって、たんぱく質やリン、ナトリウム、脂質、食物繊維の適量が変わるからです。先ほどの研究で見たとおり、「シニア用だからリンや塩分が控えめ」とは限りません。

ヒント

健康診断のときに「BCSとMCSはいくつですか」「フードを見直したほうがいいですか」と聞いてみてください。WSAVAの栄養評価ガイドラインは、健康なシニアの動物はより頻繁なモニタリングが必要だとし、飼い主が家庭で食事量と食欲、BCSと体重、便や嘔吐、全体の様子や活動性を見るよう求めています。

BCSの9段階と各段階の記述はWSAVAのBody Condition Score(Dog)、目標BCS4〜5/9と飼い主への説明の大切さ、シニアの動物のモニタリングはWSAVA栄養評価ガイドライン(2011年)、MCSの評価部位・4段階・BCSとMCSを両方評価する必要性はWSAVAのMuscle Condition Score(Dog)によります。維持エネルギー要求量が生涯を通じて下がる点、カロリー制限と寿命、理想BCS4.5〜5/9、シニア犬で除脂肪体重が減り脂肪が増える傾向は2023 AAHA Senior Care Guidelinesによります(2026年9月確認)。

比べるポイント:パッケージのどこを見るか

体の状態の見当がついたら、フードを比べます。環境省のガイドラインとWSAVAのフード選びのガイドラインに沿って、見るところを表にまとめます。

比べるところどこに書いてあるかシニア期の考え方注意
総合栄養食の表示「目的」の欄毎日の主食は総合栄養食を選ぶ。一般食・副食・間食は主食にならない総合栄養食なら、分析試験または給与試験で証明された旨の文言がある
ライフステージ(成長段階)の表示総合栄養食の表示に併記シニア用も多くは「成犬期・維持期」。全成長段階用は成長期の基準も満たす設計「7歳以上」「シニア用」は商品名であって基準の区分ではない
代謝エネルギー(kcal/100g)成分欄の近く、または公式サイト太りやすい子は低め、痩せてきた・食が細い子は高めを検討日本の必要表示事項ではない。表示がなければメーカーに問い合わせる
たんぱく質成分(保証成分)欄健康なシニア犬ではむやみに減らさない。筋肉の維持にかかわる腎臓病などの持病がある場合は獣医師に相談
脂質成分欄エネルギー密度を大きく左右する。太りやすい子は低めが目安痩せてきた子で脂質を削ると、必要なカロリーが取りにくくなる
食物繊維(粗繊維)成分欄体重管理用は高めのことが多い粗繊維は食物繊維の一部しか測っていない。便の状態も見る
粒の大きさ・硬さ・ふやかせるか商品説明、パッケージの写真噛む力が落ちた子は小粒、やわらかい粒、ふやかしやすいもの食べにくそうにするのは歯や口の痛みのこともある
給与量と1カップのグラム数給与方法の欄1日量のグラム数はカロリー密度で大きく変わる表示は目安。体重とBCSで答え合わせをする

いくつか補足します。

環境省のガイドラインは、総合栄養食を「犬や猫が必要としている栄養素をすべて含んだフードで、新鮮な水と一緒に与えるだけで健康を維持することができるように、栄養バランスが調整されています」と説明しています。療法食を含む「その他の目的食」は、かかりつけの獣医師の指導のもとで与えるべきもの、とされています。

WSAVAのフード選びのガイドラインは、「全ライフステージ用」と表示されたフードは繁殖と成長のための基準で作られている、と説明しています。成長期の基準も満たすということなので、体重が増えやすいシニア犬に使うなら、カロリーと給与量を確認しておくほうが安心です。同じガイドラインは、カロリー表示が義務づけられているのは米国だけで、表示がない場合はメーカーへの問い合わせや成分値からの計算で確かめるべきだ、とも書いています。

総合栄養食の説明と、その他の目的食を獣医師の指導のもとで与える点は環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」、全ライフステージ用が繁殖と成長のための基準で作られている点、カロリー表示が米国のみの義務である点はWSAVA Global Nutrition Committee「Guidelines on Selecting Pet Foods」(2021年更新)、総合栄養食の証明文言は公正競争規約施行規則第4条によります。表の「シニア期の考え方」「注意」の欄はこれらの出典と、先の研究・AAHAガイドラインをふまえた編集部の整理です(2026年9月確認)。

数値を横並びにするときの注意:「保証成分」と「乾物量」

実際に比べ始めると、すぐにつまずくのがここです。メーカーによって、成分の数値の出し方が違います。

  • 保証成分(保証分析値):日本のパッケージで一般的な表示。現物(水分を含んだ状態)に対する割合で、たんぱく質や脂質は「○%以上」、粗繊維や水分は「○%以下」と最低値・最高値で書かれる
  • 乾物量分析値:水分を除いた重さに対する割合。ヒルズの公式サイトの製品ページはこの形式で掲載している

同じ数字でも意味が違います。水分10%のフードで保証成分のたんぱく質が24%なら、乾物量では約26.7%です(24÷0.9)。ウェットフードは水分が80%前後あるので、100gあたりのたんぱく質が6%でも、乾物量にすると30%を超えます。

もうひとつの比べ方が、先の研究でも使われている「1,000kcalあたり」です。犬は必要なカロリーぶんを食べるので、カロリーあたりに直すと、ドライとウェット、高カロリーと低カロリーのフードを同じ土俵で比べられます。計算は次のとおりです。

  • 1,000kcalあたりのたんぱく質(g)= 保証成分のたんぱく質(%)÷ 代謝エネルギー(kcal/100g)× 1,000

たとえばたんぱく質24%以上・385kcal/100gのフードなら、24÷385×1,000で約62gです。Merck Veterinary Manualによれば、AAFCOの成犬の最低要求量は乾物量で18%、1,000kcalあたりで45gです。

メモ

保証成分の「以上」は最低保証値なので、実際の含有量はそれより多いことがあります。より正確に比べたいときは、メーカーのお客様相談窓口で平均的な分析値を尋ねてみてください。WSAVAのガイドラインも、メーカーはすべての必須栄養素について平均的な分析値を示せるはずだ、としています。

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タイプ別に考える

体の状態ごとに、どの方向のフードを探すかを整理します。ここで挙げるのは「探す方向」であって、特定の製品の効果を示すものではありません。

体重が増えやすい子:カロリー控えめ、たんぱく質は削らない

BCSが6以上、または増えつつある子は、代謝エネルギーの低いタイプを探します。AAHAの2023年ガイドラインは、シニア犬は維持エネルギー要求量が下がるので、BCSを最適に保つためにはカロリー密度を低くし、食物繊維を多くする必要がある、と書いています。

ただし、カロリーを下げても、たんぱく質まで一緒に削らないことが大切です。先の論文の序論は、体重を減らすためのカロリー制限はすべての栄養素の摂取を減らしてしまうので、十分なたんぱく質を確保することが特に重要になる、と指摘しています。AAHAも、シニアの食事は除脂肪体重の減少を補うためにたんぱく質の量と質をやや高めることがある、としています。

見るポイントは、1日量を計算したときに、たんぱく質の総量が今のフードより大きく減っていないかです。そして、フードを替える前に、おやつと給与量を見直すほうが先に効くことも多いものです。

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痩せてきた・食が細い子:まず受診、そのうえでエネルギー密度と食べやすさ

体重が減ってきた、筋肉が落ちてきた、食べる量が減った。この場合は、フードを選ぶ前に動物病院で原因を確かめてください。AAHAは、慢性腎臓病、心臓病、腫瘍などの重い病気や慢性の病気で、筋肉を中心に体重が落ちる悪液質(カヘキシア)が起こりうることに触れています。

病気が否定された、あるいは治療と並行して食事を工夫する段階なら、同じ量でカロリーを取りやすいエネルギー密度の高いタイプや、においが立ちやすく食べやすいタイプを検討します。先の論文の考察も、食欲が落ちて体重を保てない犬ではエネルギー密度の高い食事が必要になることがある、としています。回数を分けて少しずつ与えるのも一つの方法です。

注意

「年だから食が細くなった」と決めつけないでください。食べない・痩せるの裏には、歯や口の痛み、腎臓や肝臓の病気、腫瘍などが隠れていることがあります。フードを替えて一時的に食べるようになっても、原因の病気は進んでいることがあります。

噛む力が落ちた子:小粒・やわらかい粒・ふやかし・ウェット併用

硬い粒を食べにくそうにする、こぼす、時間がかかる、という子には、小粒のもの、粒がやわらかめのもの、ふやかしやすいものが候補になります。ぬるま湯でふやかすと香りも立ちます。AAHAのガイドラインでは、最近の研究として、食事に水分を加えるとシニア犬で栄養素の消化率が上がったという報告が紹介されています。

ウェットフードを併用する方法もあります。環境省のガイドラインによれば、ドライの水分は10%程度以下、ウェットは75%程度で、ウェットは風味が良く食べやすいので犬が好む傾向があります。ただし、後の比較表のとおり、ウェットは100gあたりのカロリーがドライの4分の1から3分の1程度しかないことが多く、同じカロリーを取るには量が増えます。トッピングにする場合は、そのぶんドライを減らしてください。

ヒント

食べにくそうにするのが急に始まった、片側だけで噛む、口を気にする、よだれが増えた、という場合は、フードの形状より先に歯と口の中を診てもらってください。

シニア犬の維持エネルギー要求量の低下とカロリー密度・食物繊維、たんぱく質をやや高める点、悪液質、水分を加えると消化率が上がった研究の紹介は2023 AAHA Senior Care Guidelines、カロリー制限時にたんぱく質の確保が重要になる点と、食欲が落ちた犬でエネルギー密度の高い食事が必要になることがある点はGerman K ほか(Front Vet Sci 2025)の序論・考察、ドライとウェットの水分量と特徴は環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」によります(2026年9月確認)。

主なシニア向け総合栄養食の表示を比べる

楽天市場やYahoo!ショッピングで見つけやすい定番のシニア向け総合栄養食から8点を選び、各メーカーの公式サイトに掲載されている表示を並べました(2026年9月確認)。製品はリニューアルで成分が変わることがあるので、購入時はパッケージの表示を確認してください。

ドライフード6点

製品公式サイトの対象表示代謝エネルギー(100gあたり)たんぱく質/脂質/粗繊維(公式掲載値)たんぱく質の乾物量換算(概算)1,000kcalあたりのたんぱく質(概算)粒
ヒルズ サイエンス・ダイエット シニア 7歳以上 小粒 高齢犬用 チキン7歳以上364kcal19.1%/14.6%/2.1%(乾物量分析値)19.1%算出不可(現物の水分が未掲載)小粒
ヒルズ サイエンス・ダイエット 小型犬用 シニアライト 7歳以上 肥満傾向の高齢犬用 チキン小型犬・7歳以上・肥満傾向309kcal19.4%/10.9%/14.1%(乾物量分析値)19.4%算出不可小型犬用
ヒルズ サイエンス・ダイエット シニア 13歳以上 小粒 高齢犬用 チキン(シニア アドバンスド)13歳以上366kcal21.4%/14.6%/2.4%(乾物量分析値)21.4%算出不可小粒
ロイヤルカナン ミニ エイジング 12+12歳以上の小型犬385kcal24.0%以上/12.0%以上/2.5%以下(保証分析値、水分10.5%以下)約26.8%以上約62g以上ふやけやすく食べやすい
ピュリナ ワン ドッグ ほぐし粒入り これからも健康ケア 7歳以上 チキンシニア犬(7歳程度から)・全犬種約379kcal28%以上/13%以上/4.5%以下(保証成分、水分12%以下)約31.8%以上約74g以上ほぐし粒入り
ニュートロ シュプレモ エイジングケア シニア犬用シニア犬用・全犬種用(総合栄養食の区分は成犬用)350kcal26.0%以上/13.0%以上/4.0%以下(保証成分値、水分10.0%以下)約28.9%以上約74g以上噛みくだきやすいドーナッツ粒

ウェットフード2点

製品公式サイトの対象表示代謝エネルギー(100gあたり)たんぱく質/脂質/粗繊維(保証成分)水分たんぱく質の乾物量換算(概算)1,000kcalあたりのたんぱく質(概算)形状・容量
ロイヤルカナン ミニ エイジング ウェット成犬時体重10kgまでの小型犬・8歳以上95kcal6.0%以上/3.1%以上/1.9%以下83.3%以下約35.9%以上約63g以上パウチ85g
ニュートロ シュプレモ シニア犬用 トレイシニア犬用・全犬種用110kcal6.5%以上/5.5%以上/0.7%以下82.0%以下約36.1%以上約59g以上パテタイプ・トレイ100g

表から読み取れることをいくつか挙げます。

  • 同じ「シニア用」のドライでも、代謝エネルギーは309kcalから385kcalまで、約25%の差があります。1日400kcalを与える場合、309kcalのフードなら約129g、385kcalのフードなら約104gで、1日あたり25gほど変わります。
  • ヒルズは乾物量、ほかのメーカーは現物の保証成分で掲載しているので、公式サイトの数字をそのまま並べると誤解します。乾物量に直して比べると、たんぱく質の数値は製品によって19%台から30%台まで開きがあります。ただし保証成分からの換算は「以上」「以下」の値を使った概算で、実際の含有量とは一致しません。
  • ウェットは乾物量に直すとたんぱく質が高く見えますが、1,000kcalあたりではドライと大きくは変わりません。比べる物差しで印象が変わる、というよい例です。

各製品の対象・代謝エネルギー・成分値・粒の説明は、ヒルズペット・ニュートリション(ヒルズ公式サイトの各製品ページ。成分は乾物量分析値として掲載)、ロイヤルカナン ジャポン、ネスレ日本(ピュリナ)、マース ジャパン(ニュートロ)の公式製品ページによります。乾物量換算と1,000kcalあたりの値は、編集部が公式掲載値から計算した概算です(乾物量=保証成分÷(1-水分の上限)、1,000kcalあたり=保証成分÷代謝エネルギー×1,000)。1日量の例は400kcalを代謝エネルギーで割った計算です(2026年9月確認)。

製品ごとの見どころ

表の8点について、どんな子の候補になりうるか、選ぶときに確かめたい点をまとめます。特定の製品をすすめるものではありません。その子の体型・筋肉・持病によって合う合わないがあり、効果を保証するものでもありません。

ヒルズ サイエンス・ダイエット シニア 7歳以上 小粒 高齢犬用 チキン

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ヒルズ サイエンス・ダイエット シニア 7歳以上 小粒 高齢犬用 チキン

7歳以上の高齢犬向けの小粒ドライです。公式サイトの掲載は代謝エネルギー100gあたり364kcal、乾物量でたんぱく質19.1%・脂質14.6%・粗繊維2.1%、200ccカップ1杯で約90gとされています。今のフードから大きくカロリーを変えずに、粒を小さくしたい子の候補になります。公式サイトの成分は乾物量の値なので、ほかの製品と比べるときはパッケージの保証成分を見てください。体重が増えやすい子は、同じシリーズの低カロリー品と比べてから選ぶと迷いにくくなります。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ヒルズ サイエンス・ダイエット 小型犬用 シニアライト 7歳以上 肥満傾向の高齢犬用 チキン

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ヒルズ サイエンス・ダイエット 小型犬用 シニアライト 7歳以上 肥満傾向の高齢犬用 チキン

体重が増えやすい小型のシニア犬向けの低カロリータイプです。公式サイトでは代謝エネルギー100gあたり309kcal、乾物量でたんぱく質19.4%・脂質10.9%・粗繊維14.1%、200ccカップ1杯で約75g。同社の「小型犬用 高齢犬用」ドライと比べて脂肪分約24%オフ・カロリー約15%オフとされています。繊維が多いぶん、便の量や回数が変わることがあるので、切り替え中は便の様子を見てください。BCSが理想の範囲に入ったら、このまま続けるか元のタイプに戻すかを動物病院で相談するとよいと思います。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ヒルズ サイエンス・ダイエット シニア 13歳以上 小粒 高齢犬用 チキン(シニア アドバンスド)

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ヒルズ サイエンス・ダイエット シニア 13歳以上 小粒 高齢犬用 チキン(シニア アドバンスド)

13歳以上を対象にした小粒ドライです。公式サイトでは代謝エネルギー100gあたり366kcal、乾物量でたんぱく質21.4%・脂質14.6%・粗繊維2.4%、200ccカップ1杯で約85gとされ、腎臓と心臓の健康のためにナトリウムとリンのバランスに配慮していると説明されています。同じシリーズの7歳以上用より乾物量のたんぱく質がやや高めです。ただしこうした配慮は療法食の代わりではありません。腎臓や心臓の病気を指摘されている子は、市販品から選ぶ前に獣医師に相談してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ロイヤルカナン ミニ エイジング 12+

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ロイヤルカナン ミニ エイジング 12+

12歳以上の小型犬向けで、公式サイトでは「ふやけやすく食べやすいフード」と説明されています。代謝エネルギーは100gあたり385kcalで、今回のドライ6点のなかでは最も高い値です。保証分析値はたんぱく質24.0%以上・脂質12.0%以上・粗繊維2.5%以下・水分10.5%以下(分析値の食物繊維は7.5%)。給与量表は体重2〜10kgで、200mlカップの目安は74gです。食が細くなった小型犬や、ふやかして与えたい子の候補になります。反対に、体重が増えやすい子では同じ量でもカロリーが多めになるので、給与量をしっかり計ってください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ピュリナ ワン ドッグ ほぐし粒入り これからも健康ケア 7歳以上 チキン

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ピュリナ ワン ドッグ ほぐし粒入り これからも健康ケア 7歳以上 チキン

7歳程度からのシニア犬向け、全犬種用の総合栄養食です。公式サイトでは保証成分がたんぱく質28%以上・脂質13%以上・粗繊維4.5%以下・水分12%以下、代謝エネルギーは約379kcal/100g、200ccカップ1杯で約80g。今回のドライのなかでは保証成分のたんぱく質がいちばん高い製品です。公式サイトでは「噛むことで歯の健康も維持するほぐし粒入り」と説明されています。給与量表が1kgから45kg以上まであるので、中型犬や大型犬のシニアでも使いやすい設計です。公式サイトでは1週間程度かけて切り替える方法が案内されています。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ニュートロ シュプレモ エイジングケア シニア犬用

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ニュートロ シュプレモ エイジングケア シニア犬用

全犬種用のシニア犬向けドライで、公式サイトでは「噛みくだきやすいドーナッツ粒タイプ」と説明されています。保証成分値はたんぱく質26.0%以上・脂質13.0%以上・粗繊維4.0%以下・水分10.0%以下、代謝エネルギーは350kcal/100g。この記事の前半で触れたとおり、公式サイトの注意事項には「成犬用総合栄養食」と明記されていて、シニア用の多くが成犬期の基準で作られていることがよくわかる例です。内容量は2kgから13.5kgまであり、多頭飼いや大型犬の家庭でも選びやすいでしょう。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ロイヤルカナン ミニ エイジング ウェット

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ロイヤルカナン ミニ エイジング ウェット

成犬時の体重が10kgまでの小型犬の、8歳以上向けウェットフードです。公式サイトでは犬用総合栄養食の分類で、1袋85g、代謝エネルギーは95kcal/100g(1袋あたり約81kcal)。保証分析値はたんぱく質6.0%以上・脂質3.1%以上・水分83.3%以下です。常温で1日量を2〜3回に分けて与えるよう案内されています。硬い粒が食べにくくなった子や、ドライの食いつきが落ちた子のトッピングに向きますが、トッピングにするならそのぶんドライを減らしてください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

ニュートロ シュプレモ シニア犬用 トレイ

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ニュートロ シュプレモ シニア犬用 トレイ

全犬種用のシニア犬向けウェットで、公式サイトでは「やわらかく食べやすいパテタイプ」、総合栄養食と説明されています。1トレイ100gで、代謝エネルギーは110kcal/100g、保証成分値はたんぱく質6.5%以上・脂質5.5%以上・水分82.0%以下。公式サイトの目安は、体重5kgの成犬に1日290gを約2回に分けて、ドライフードと併用するときは1トレイあたりドライフードを30g減らす、というものです。この引き算が書いてあるのは、トッピングで食べすぎを防ぐのに便利です。開封後は冷蔵保管し、なるべく早く与えるよう案内されています。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

11歳を過ぎたころ、年齢だけ見て低カロリーのシニア用に替えたら、半年で背中がごつごつしてきました。体重はほとんど変わっていなかったので気づくのが遅れたんです。健康診断で筋肉が落ちていると言われ、獣医師と相談してカロリーとたんぱく質を見直し、元の系統に戻しました。ラベルの年齢より、背中を触る習慣のほうが大事だったと思っています。
大型犬と暮らす飼い主

療法食はこの記事の対象外です

腎臓病、心臓病、肝臓病、尿石症、糖尿病、消化器の病気、食物アレルギーなどのための「療法食(食事療法食)」は、この記事の比較には含めていません。

公正競争規約では、療法食は総合栄養食とは別の「目的」で、適用される疾病や健康状態を記載するルールになっています。ペットフード公正取引協議会は、療法食には獣医師の指導に基づいて給与するべきものである旨の注意書きがつくと説明しており、環境省のガイドラインも療法食はかかりつけの獣医師の指導のもとで与えるべきもの、としています。

AAHAの2023年ガイドラインによれば、腎臓病ではたんぱく質を制限した腎臓病用の食事で生存期間が延びたという研究がある一方、健康な犬や早期の腎臓病ではたんぱく質の制限は必要なく、制限はIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のステージ2で検討し、ステージ3で推奨される、とされています。つまり、「シニアだから腎臓のためにたんぱく質を減らす」という自己判断は、健康な子にとっては筋肉を減らす方向に働きかねません。

注意

療法食を処方されている子は、この記事の製品に自己判断で切り替えないでください。逆に、健康な子に療法食を「予防のつもり」で与えるのも避けてください。どちらも、獣医師と相談して決めることです。

療法食の表示ルールは公正競争規約第6条・施行規則第5条、獣医師の指導に基づいて給与するべき旨の注意書きはペットフード公正取引協議会、獣医師の指導のもとで与える点は環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」、腎臓病でのたんぱく質制限と生存期間、健康な犬と早期腎臓病では制限不要、IRISステージ2で検討・ステージ3で推奨の点は2023 AAHA Senior Care Guidelinesによります(2026年9月確認)。

切り替え方

環境省のガイドラインは、シニア用フードへの切り替えについて、特に健康に留意してスムーズに切り替えられるよう、慣れた食餌に少しずつ混ぜて1〜2週間かけて徐々に切り替えることをすすめています。急がず進めてください。

  1. 1

    切り替え前に、体重とBCSを記録する

    今の体重、BCS、背中や後ろ足の筋肉の手ざわり、便の状態を書き留めておきます。あとで「替えてよかったか」を判断する基準になります。
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    新しいフードの1日量をカロリーで決める

    パッケージの給与量表を出発点に、今のフードで体重が安定しているなら「今のフードの1日のカロリー」を新しいフードの代謝エネルギーで割ってグラム数を出します。カロリー密度が違うフードを同じグラム数で与えると、それだけで摂取カロリーが変わります。
  3. 3

    少しずつ混ぜる割合を増やす

    最初の数日は新しいフードを4分の1ほど混ぜ、様子を見ながら半分、4分の3と増やして、1〜2週間で切り替えます。便がゆるくなったら、ひとつ前の割合に戻して日数をかけます。
  4. 4

    2〜4週間後に答え合わせをする

    体重、BCS、筋肉の手ざわり、便、食欲、元気を切り替え前の記録と比べます。体重が動くようなら、1日量を1割ほど増減して調整します。

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食べないとき、受診を考える目安

シニア犬が新しいフードを食べない、あるいは急に食べなくなったとき、フードの問題なのか体調の問題なのかは家庭では見分けにくいものです。環境省のガイドラインは、正常な犬でもフードを1〜2日間食べない個体もいるが、積極的に食べない場合には病気の前兆と考えてよい、としています。数日にわたって嘔吐をくりかえす、お腹が膨れていて触ると痛がる、といった項目も注意すべき点に挙げられています。

フード選びより先に動物病院に相談したいサイン

  • 丸1日以上ほとんど食べない、または食べる量が減った状態が続く
  • 食べたそうにするのに、口に入れると落とす、片側で噛む、口を気にする
  • フードを替えても替えなくても、体重が減り続けている
  • 背中や後ろ足の筋肉が目に見えて落ちてきた
  • 水を飲む量やおしっこの量が急に増えた
  • 嘔吐をくりかえす、下痢が続く、便に血や粘液が混じる
  • お腹が膨れていて、触ると痛がる
  • 元気がない、散歩に行きたがらない、寝ている時間が急に増えた

食べない理由が「フードの好み」だけのこともあります。その場合でも、においを立たせるためにふやかす、ウェットを少しトッピングする、器の高さや置き場所を変える、といった工夫を試す前に、一度は体調の問題でないことを確かめておくと安心です。

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正常な犬でも1〜2日食べない個体がいるが積極的に食べない場合は病気の前兆と考えてよい点、数日にわたる嘔吐・お腹の膨れと痛みを注意点とする点は、環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」によります。チェックリストはこの出典とAAHA・WSAVAのガイドラインをふまえた編集部の整理です(2026年9月確認)。

よくある質問

7歳になったら、シニア用に切り替えないといけませんか。
必ずしも切り替える必要はありません。『シニア用』という栄養基準の区分はAAFCOにもNRCにも日本の総合栄養食の表示ルールにもなく、シニア用の多くは成犬期・維持期の基準で作られています。環境省のガイドラインも、ある年齢になったからといって急にその年齢用のフードに替えるのはあまり良いことではない、としています。今のフードで体重・体型・筋肉・便の状態が安定していて、健康診断でも問題がなければ、続けることも選択肢です。見直しのきっかけは年齢の数字より、体重や体型、食べ方の変化です。
シニア用フードは、成犬用よりたんぱく質が少ないのですか。
そうとは限りません。2025年に発表された米国の市販フード61製品の分析では、たんぱく質の中央値は成犬用もシニア用も1,000kcalあたり76gで差がなく、シニア用のなかでは52〜116gと2倍以上の幅がありました。AAHAの2023年ガイドラインは、シニアの食事では除脂肪体重の減少を補うためにたんぱく質の量と質をやや高めることがあるとし、健康な犬や早期の腎臓病ではたんぱく質の制限は不要としています。製品ごとに保証成分と代謝エネルギーを見て比べてください。
腎臓のために、シニアになったらたんぱく質を減らしたほうがいいと聞きました。
健康な犬については、AAHAの2023年シニアケアガイドラインが、健康な犬や早期の腎臓病ではたんぱく質の制限は必要ないとしています。制限はIRISのステージ2で検討し、ステージ3で推奨される、という位置づけです。自己判断でたんぱく質を減らすと、シニア期に落ちやすい筋肉をさらに減らす方向に働きかねません。腎臓の数値が気になる場合は、フードを選ぶ前に血液検査や尿検査を受け、必要なら獣医師の指示で療法食を使ってください。
大型犬と小型犬で、切り替える時期は違いますか。
違います。環境省のガイドラインは、シニアに入る時期を大型犬で6〜7歳、小型犬で8〜10歳くらいとしています。AAHAは、シニアを『推定寿命の最後の25%』と定義していて、寿命の短い大型犬ほど早くシニア期に入る考え方です。製品の対象年齢も7歳以上、12歳以上、13歳以上などまちまちなので、年齢の表示は目安のひとつとして読み、体の状態で判断してください。
『全ライフステージ用』のフードは、シニア犬に与えても大丈夫ですか。
総合栄養食なので与えることはできます。ただしWSAVAのガイドラインによれば、全ライフステージ用は繁殖と成長のための基準で作られています。体重が増えやすいシニア犬に与える場合は、代謝エネルギーと給与量を確かめ、体重とBCSを見ながら量を調整してください。食が細くなった子にとっては、エネルギーを取りやすい選択肢になることもあります。
ドライフードをふやかして与えてもいいですか。
噛む力が落ちた子や食いつきが落ちた子には、ぬるま湯でふやかすのは一般的な工夫です。AAHAの2023年ガイドラインでは、食事に水分を加えるとシニア犬で栄養素の消化率が上がったという研究が紹介されています。ふやかしたフードは傷みやすいので、食べ残しは長く置かずに片付けてください。急に硬いものを食べにくそうにし始めた場合は、歯や口の痛みのこともあるので、動物病院で口の中を診てもらってください。
シニア用に替えたら食べなくなりました。どうすればいいですか。
まずは切り替えのペースを落とし、今までのフードの割合を増やして様子を見てください。環境省のガイドラインは、シニア用フードへは慣れた食餌に少しずつ混ぜて1〜2週間かけて切り替えることをすすめています。それでも丸1日以上ほとんど食べない、体重が減る、吐く・下痢が続く、元気がないといった場合は、フードの好みではなく体調の問題の可能性があるので、動物病院を受診してください。
療法食とシニア用フードは何が違いますか。
療法食は、特定の病気や健康状態の食事療法を目的としたフードで、公正競争規約では総合栄養食とは別の目的として扱われ、適用される疾病や健康状態を記載するルールになっています。ペットフード公正取引協議会は、獣医師の指導に基づいて給与するべきものである旨の注意書きがつくと説明しています。シニア用は健康な高齢犬を想定した総合栄養食で、病気の治療を目的としたものではありません。療法食は、獣医師の指示で選んでください。

まとめ

「シニア用」というラベルには、公的な栄養基準の裏づけがありません。AAFCOとNRCにはシニア期の定義も栄養プロファイルもなく、日本の総合栄養食の表示でも、高齢期は「成犬期・維持期」の枠に入ります。2025年の研究でも、シニア用は成犬用より脂質とエネルギー密度がやや低い傾向はあったものの、たんぱく質やリン、ナトリウムには差がなく、シニア用どうしでも中身は大きく違っていました。

だから、選ぶ順番はこうなります。

  1. その子の体を見る。BCSで太り気味か痩せ気味か、MCSで筋肉が落ちていないかを確かめる
  2. 持病があれば、フード選びより先に獣医師に相談する。療法食は獣医師の指示で
  3. 体型に合わせて探す方向を決める。太りやすい子はカロリー控えめでたんぱく質は削らない、痩せてきた子はまず受診したうえでエネルギーを取りやすいもの、噛みにくい子は小粒・やわらかい粒・ふやかし・ウェット併用
  4. パッケージで総合栄養食の表示と成長段階、代謝エネルギー、保証成分を確かめ、必要なら乾物量や1,000kcalあたりに直して比べる
  5. 1〜2週間かけて切り替え、2〜4週間後に体重とBCS、筋肉の手ざわりで答え合わせをする

年齢の数字は、見直しを始める合図としては役に立ちます。けれど答えを教えてくれるのは、ラベルではなく、毎日なでている背中や腰の手ざわりのほうです。食べない、痩せていく、という変化があれば、フードを替える前に動物病院で相談してください。

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出典・参考

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