犬とマダニ感染症SFTS|人にもうつる?症状・予防・マダニを見つけたときの対処
対象の目安: 全ライフステージ

夏はマダニがもっとも活発になる季節です。なかでも近年注目されているのが、マダニが運ぶウイルス感染症SFTS(重症熱性血小板減少症候群)です。SFTSは犬も発症することがあり、感染した犬から人にうつる可能性もある「人と動物の共通感染症」として知られています。2025年10月には東京都内で初めて犬のSFTS感染が確認され、これまで西日本が中心とされてきた分布が東日本にも広がっている状況がうかがえます。この記事では、飼い主が知っておきたい症状や予防、マダニを見つけたときの対応を、公的機関や獣医療の情報をもとに整理します。
SFTSとはどんな病気か
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、SFTSウイルスを持ったマダニに咬まれることで感染するダニ媒介性の感染症です。もともとは人の感染症として知られてきましたが、犬や猫などの動物も発症することがわかっています。
厚生労働省の資料によると、人のSFTSは発熱や全身のだるさ、食欲不振・吐き気・嘔吐・下痢・腹痛といった消化器症状が主な初期症状で、ときに頭痛や筋肉痛、神経症状、出血症状が現れます。致死率は日本の報告で27%とされており、決して軽く見てよい病気ではありません。
犬や猫にとっても同様に、命に関わることがある病気です。とくに問題なのは、SFTSがマダニから動物へ、そして発症した動物から人へと感染しうる「人と動物の共通感染症(人獣共通感染症)」である点です。
人のSFTSの症状や致死率(日本で27%とする報告)は、厚生労働省の「SFTSに関するQ&A」に基づきます。SFTSがマダニ媒介性であり、犬猫も発症することは東京都獣医師会や各自治体の解説でも共通して示されています。
犬にとってのSFTS 致死率と症状
致死率の目安
犬のSFTS致死率は、報告や条件によって幅があります。厚生労働省の資料では犬は約4割、猫は約6割が死亡するとされ、獣医師監修の解説でも犬で約29%、猫で約60%という数値が示されています。おおよそ2〜4割という幅で語られることが多く、いずれにしても発症すれば命に関わりうる病気です。あくまで目安として捉えてください。
注意
主な症状
犬のSFTSでは、次のような症状が報告されています。
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| 全身症状 | 発熱、元気消失、食欲不振 |
| 消化器症状 | 嘔吐、下痢 |
| 血液検査での異常 | 血小板の減少、白血球の減少、肝酵素の上昇 |
血小板は出血を止める働きを担う成分で、これが大きく減ると出血しやすくなるのがSFTSの特徴の一つです。一方で、感染しても明確な症状が出ないまま経過する不顕性感染(無症状〜軽症)のケースもあるとされます。無症状でも体液にウイルスが含まれる可能性はあるため、注意が必要です。
メモ
東京都で犬の感染が初確認 広がる分布
2025年10月、東京都は都内で初めて犬のSFTS症例が確認されたと発表しました。都の発表によると、この犬は15歳で基礎疾患があり、屋内で飼われていましたが、8月下旬に都外に滞在した履歴がありました。9月2日に嘔吐と下痢が出て容体が悪化し、9月18日には飼い主がマダニの付着を発見。その後の遺伝子検査(9月24日)と抗体検査(9月26日)で陽性となり、翌9月27日に死亡しました。ただし基礎疾患があったため、SFTSと死亡との因果関係は不明とされています。
SFTSはこれまで西日本を中心に報告されてきましたが、こうした事例からは分布が東日本へも広がりつつある状況がうかがえます。「うちは関東だから関係ない」「室内飼いだから大丈夫」と決めつけず、どの地域の飼い主にとっても身近な話題として、マダニ対策を意識しておきたいところです。
東京都内での犬SFTS初確認と当該症例の経過は、東京都が2025年10月に公表した注意喚起(プレスリリース)に基づきます。当該犬とSFTSの因果関係は不明とされている点も、あわせて発表で示されています。
人にもうつる? 感染経路を正しく知る
SFTSは、基本的にはウイルスを持ったマダニに咬まれることで人にも動物にも感染します。加えて、SFTSを発症している犬や猫の血液などの体液に直接触れることで、人が感染する可能性があると報告されています。実際に、発症した動物の体液に接触した獣医療関係者や、ネコに咬まれた人の感染事例が知られています。
一方で厚生労働省は、発症していないネコやイヌ、屋内のみで飼われているネコやイヌから人がSFTSウイルスに感染した事例は、これまでに報告されていないとしています。過度に恐れる必要はありませんが、体調を崩している動物の体液には触れないよう気をつけることが基本です。
注意
夏に大切なマダニ予防
SFTSに特効的な予防ワクチンはなく、対策の中心は「マダニに咬まれないこと」です。日々の予防でリスクを下げることができます。
- 1
動物病院でマダニ予防薬を使う
最も基本になるのが、動物病院で処方されるマダニ駆除・予防薬です。背中に垂らすスポットタイプ、飲むタイプ(錠剤・チュアブル)などがあり、犬の体調や生活に合わせて選びます。地域や気候によっては通年での予防がすすめられることもあります。どの薬をどの期間使うかは、必ずかかりつけの動物病院で相談して決めてください。 - 2
草むら・やぶを避けて散歩する
マダニは草むらや茂み、やぶに潜んでいます。散歩の際は、こうした場所にできるだけ入らないルートを選ぶとリスクを減らせます。草の生い茂った場所での長時間の休憩やお出かけは、とくに注意しましょう。 - 3
散歩後に全身をチェックする
帰宅したら、犬の体をなでながらマダニがついていないか確認します。とくにマダニが好むのは、耳のまわり、首まわり、内股、指の間、口や目のまわりなど皮膚のやわらかい部分です。ブラッシングやスキンシップのついでに習慣にすると、皮膚の異変にも早く気づけます。 - 4
飼育環境を整える
庭や散歩コースの雑草を刈る、寝床を清潔に保つなど、マダニが潜みにくい環境づくりも予防につながります。飼い主自身も、草むらに入るときは肌の露出を少なくすると咬まれにくくなります。
散歩後のマダニチェックポイント
- 耳のまわり・耳の内側
- 首まわり・あごの下
- 内股・わきの下
- 指の間・肉球のまわり
- 口や目のまわりなど顔まわり
- おなかや胸などの被毛が薄い部分
ヒント
マダニを見つけたときの対応
犬の体にマダニを見つけても、あわてて自分で取ろうとしないことが大切です。マダニは皮膚に口(口器)を差し込んで吸血しているため、無理に引き抜くと口器が皮膚内に残って化膿したり、つぶすことで体液が飛び散り感染のリスクを高めたりするおそれがあります。
注意
除去してもらったあとも、しばらくは犬の様子を観察してください。犬が急に発熱したり、元気や食欲がなくなったり、嘔吐・下痢が続いたりする場合は、マダニに咬まれた事実を伝えたうえで動物病院を受診しましょう。人も、マダニに咬まれてからおよそ6日〜2週間ほどの間に発熱などの症状が出た場合は、咬まれたことを医療機関に伝えて受診することが大切です。
よくある質問
室内飼いの犬でもSFTSの予防は必要ですか。
SFTSは必ず重症になりますか。
感染した犬から家族にうつることはありますか。
マダニを見つけたら市販のピンセットで取ってもいいですか。
まとめ
SFTSはマダニが媒介するウイルス感染症で、犬も発症し、感染した犬から人にうつる可能性もある人と動物の共通感染症です。犬の致死率は報告により約20〜40%とされ、猫はさらに高い(約6割)と報告されています。2025年10月には東京都で犬の感染が初めて確認されるなど、分布は東日本へも広がりつつあり、地域を問わず対策が求められます。
予防の基本は、動物病院で処方するマダニ予防薬の使用と、草むらを避けること、散歩後の全身チェックです。マダニを見つけても素手でつぶさず、無理に引き抜かず、動物病院で取り除いてもらいましょう。犬が急に発熱や元気消失を示したとき、飼い主自身がマダニに咬まれたり体調を崩したりしたときは、自己判断せずに受診してください。ノミ・マダニ・フィラリア予防の全体像は、あわせて次の記事も参考にしてください。
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