犬のマウンティングの理由と正しい対処法|叱らず落ち着かせるコツ
対象の目安: 全ライフステージ

クッションに腰を振る、遊んでいるうちに相手の犬に乗りかかる、興奮すると人の足にしがみつく。マウンティングと呼ばれるこの行動は、飼い主さんが戸惑いやすい犬のしぐさのひとつです。「発情しているの?」「オスだから?」と思われがちですが、実際の理由はもっと幅広く、性行動とは限りません。この記事では、マウンティングの多様な理由と、必ずしも止めなくてよい場合との線引き、そして叱らずに落ち着かせる正しい対処法を整理します。
マウンティングとは?理由はひとつではない
マウンティングは、相手や物に前足でしがみつき、腰を振るような動きをする行動です。「発情」「オスの性行動」というイメージが強いですが、去勢・避妊済みの犬でも、オスでもメスでも、子犬でもシニアでも見られます。背景にある気持ちはさまざまで、性的な動機はそのうちのひとつにすぎません。
獣医師監修の情報では、マウンティングの動機として次のようなものが挙げられています。
| タイプ | よくある場面 | 犬の気持ちの例 |
|---|---|---|
| 性行動 | 発情期、異性の犬が近くにいるとき | 本能的な繁殖行動 |
| 遊び・興奮 | ほかの犬や人と遊んでいる最中 | 楽しくてテンションが上がった |
| 要求・かまってほしい | 飼い主に向かって | 遊んで、注目して |
| ストレス・葛藤(転位行動) | 落ち着かない場面、してよいか迷う場面 | どうしたらいいか分からず気を紛らせたい |
| ひとり遊び・退屈の発散 | クッションやおもちゃに向かって | 手持ちぶさた、暇つぶし |
マウンティングが性本能だけでなく、遊びの誘い・興奮・優位性の表現・葛藤による転位行動など複数の動機で起こることは、獣医師監修のペット情報でも解説されています。「オスだから」「発情だから」と決めつけず、どんな場面で出るかを見ることが大切です。
このように、マウンティングは「困った悪癖」ではなく、犬にとっては意味のある自然な行動です。まずは、いつ・何に向かって・どんな様子で行うのかを観察することが、対応を考える出発点になります。
相手も場面もさまざま
マウンティングの相手は、人・ほかの犬・クッションやぬいぐるみ・おもちゃなど多岐にわたります。相手によって、背景の気持ちが少しずつ違います。
- 人に対して: 遊びの誘いや「かまって」という要求、興奮の表れであることが多い場面です。過去に反応してもらえた経験があると出やすくなります。
- ほかの犬に対して: 同性同士でも起こります。性行動というより、遊びの延長や興奮、力関係の確認であることが多いとされます。相手の犬が嫌がるとトラブルにつながります。
- クッション・ぬいぐるみ・おもちゃに対して: ひとり遊びや退屈の発散、興奮のはけ口になっていることがあります。
同じ「腰を振る」動きでも、うれしくて興奮しているのか、落ち着かなくて気を紛らせているのかで、必要な関わりは変わります。相手と場面をセットで見てあげましょう。
子犬の遊びの中では自然な行動
子犬がきょうだいや遊び相手にマウンティングをするのは、めずらしいことではありません。これは身のこなしを覚えたり、犬同士のやりとりを学んだりする成長過程の一部と考えられています。ほとんどは一時的なもので、成長とともに落ち着いていくことも多いものです。
そのため、子犬のマウンティングを見るたびに強く叱る必要はありません。ただし、相手の犬がはっきり嫌がっている、遊びがヒートアップして興奮しすぎている、といった場面では、いったん遊びを止めてクールダウンさせてあげると、行き過ぎを防げます。
必ずしも止めなくていい場合と、問題になる場合
大切なのは、すべてのマウンティングをやめさせようと気負わないことです。ごくたまに短時間するだけで、相手も嫌がらず、犬自身にも支障がないなら、神経質に取り締まる必要はありません。一方で、次のような場合は減らしていく取り組みが必要です。
注意
とくに、椎間板ヘルニアや膝蓋骨脱臼(パテラ)のある犬では、腰に負担のかかるマウンティングは避けたい行動です。また、執拗さがエスカレートして習慣化すると、あとから減らすのが難しくなるため、困りごとになっているなら早めに向き合うほうが取り組みやすくなります。
叱らず落ち着かせる正しい対処法
問題になっているマウンティングへの基本は、叱って抑え込むことではありません。興奮を高めずに動作を中断し、別の落ち着いた行動へ切り替えることです。飼い主が慌てたり大声を出したりすると、犬にとっては刺激になって逆効果になりがちです。
- 1
無言で、そっと中断する
始まったら、名前を強く呼んだり叱ったりせず、静かに間に入って体を離します。相手が人なら、その場をすっと立ち去って対象をなくすのも有効です。声を荒げず淡々と、が基本です。 - 2
別の行動へ誘導する
落ち着いたタイミングで、オスワリやフセ、こちらへオイデなど、すでにできる指示を出して別の行動に切り替えます。マウンティングの代わりに「座って待つ」を選べるようにしていきます。 - 3
興奮が高いときはクールダウン
遊びの中でヒートアップしているなら、いったん遊びを中断します。必要に応じてハウスやサークルで少し休ませ、興奮が下がってから再開します。ハウスは罰の場所にしないよう、ふだんから安心できる場所にしておきます。 - 4
要求には応えない
「かまって」の要求で人にしてくる場合、そこで相手をすると要求が通った経験になります。応じず、落ち着いてから遊びやスキンシップに応えることで、「落ち着いていると良いことがある」を伝えます。 - 5
家族で対応をそろえる
誰かが面白がってかまうと、犬は混乱し、学習がやり直しになります。中断のしかたと「応じない場面」を家族全員で統一しましょう。
マウンティングを止めさせるには、まず始まった行動を中断し、オスワリなどで別の適切な行動へ導くこと、人への場合は受け入れず毅然と対応することが、行動診療科獣医や獣医師監修の情報で共通して案内されています。
興奮の総量を下げる生活の工夫
マウンティングの多くは、興奮や退屈、エネルギーの余りが引き金になります。日々の運動や刺激が足りていると、そもそも興奮がたまりにくくなり、行動が出る頻度も下がりやすくなります。
- 散歩の時間や質を見直し、においをかぐ・探索するなど頭も使う時間をつくる
- 知育トイや適度な遊びで、退屈な時間を減らす
- 起床・食事・散歩・就寝の生活リズムを整え、気持ちを安定させる
- 来客時など興奮しやすい場面では、事前にリードやハウスで落ち着ける環境を用意しておく
「やめさせる」ことだけに集中するより、興奮の総量そのものを下げる発想を持つと、対応がぐっと楽になります。
やってはいけない対応
よかれと思ってやりがちな対応の中には、かえってマウンティングを強めてしまうものがあります。
- 大声で叱る・騒ぐ: 犬にとっては「反応してもらえた」ごほうびになったり、興奮をあおったりして、逆に増えることがあります。かまってほしくてしている場合はとくに逆効果です。
- おやつやおもちゃで気をそらす: その場では止まっても、「マウンティングするとおやつやおもちゃが出る」と結びつき、結果的に行動を強化してしまうおそれがあります。中断や誘導のごほうびは、落ち着いた別の行動に対して与えるのが原則です。
- 体罰・押さえつけ・馬乗りで対抗する: 叩く、強く押さえる、飼い主が犬に馬乗りになって「立場を教える」といった対応は、恐怖や対立関係を生み、信頼を損ないます。恐怖からの攻撃行動を招くおそれもあり、避けるべきです。
おやつやおもちゃで気をそらす対応は「ごほうび」として学習され逆効果になりうること、飼い主が犬に馬乗りになってやり返すのは勧められないことは、獣医師監修・行動診療科獣医の解説で指摘されています。
去勢・避妊との関係は慎重に
「去勢すればマウンティングは止まる」と期待されがちですが、そう単純ではありません。性ホルモンが関与しているタイプの行動なら、去勢・避妊で緩和する可能性はあります。一方で、遊びや興奮、要求、ストレスが理由のマウンティングは、手術をしても残ることがあります。
また、いったん習慣として身についた行動は、ホルモンの影響が抜けたあとも学習として残りやすく、手術だけでは解決しないケースが少なくありません。去勢・避妊は、望まない繁殖の防止や一部の病気のリスク低減など、行動以外の意味も含めて考えるものです。マウンティング対策だけを目的に判断せず、メリット・デメリットや時期についてはかかりつけの獣医師とよく相談してください。
動物病院・行動診療科に相談したい目安
多くのマウンティングは、日々の関わりと環境の工夫で落ち着いていきます。ただし、次のような場合は、しつけの問題と決めつけず、動物病院や行動診療科に相談することをおすすめします。
専門家に相談したいサイン
- 頻度が高く執拗で、日常生活に支障が出ている
- 急にマウンティングが増えた・様子が変わった
- 陰部など特定の部位を気にする・しきりになめる・赤みやにおいがある
- 相手の犬とトラブルになり、ケンカに発展してしまう
- 叱らない対応や環境の工夫を続けても、まったく改善しない
とくに、急に増えた・特定部位を気にするといった変化は、皮膚や泌尿器の不調、痛みなど体の問題が隠れていることもあります。ストレスや不安が強く背景にある場合は、行動診療を専門とする獣医師の力を借りると、その子に合った対応が見つかりやすくなります。
よくある質問
去勢・避妊すればマウンティングは止まりますか。
メスの犬や去勢済みのオスでもマウンティングしますか。
クッションやぬいぐるみにするのもやめさせたほうがいいですか。
叱ってやめさせてはいけないのはなぜですか。
ほかの犬にマウンティングしてトラブルになります。どうすれば。
まとめ
マウンティングは、性行動だけでなく、遊びや興奮、要求、ストレス、退屈の発散など、さまざまな理由で起こる自然な行動です。相手も人・ほかの犬・クッションと多様で、子犬では成長過程の一部として現れます。すべてを無理にやめさせる必要はなく、執拗で生活に支障が出ている場合に、落ち着いて向き合っていけば十分です。
対応の基本は、叱らず無言で中断し、オスワリなど別の行動へ導くこと。おやつやおもちゃで気をそらす、大声で叱る、体罰で対抗するのは逆効果になりやすいので避けましょう。運動や生活リズムで興奮の総量を下げる工夫も、大きな助けになります。去勢・避妊で必ず解決するわけではないこと、急に増えた・特定部位を気にするときは体の不調の可能性もあることを頭に置き、困ったときは動物病院や行動診療科に相談してください。
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